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『嘘ばっか』
- 2023/06/05(Mon) -
佐野洋子 『噓ばっか』(講談社文庫)、読了。

ブックオフでドカ買いしてきたときに
タイトルから勝手に「エッセイかな」と思い込んでました。

改めて手に取ったら、タイトルの冠に「新釈・世界おとぎ話」とあり、
有名なおとぎ話を佐野洋子ブラックアレンジで新解釈した作品集でした。

良く言われている、「おとぎ話は子供向けに残酷シーンをカットしている」とか
「結末がソフトな感じに勝手に変更されている」というようなレベルではなく、
おとぎ話の話の枠組みだけを活かして、そこに人間の悪意とか感情の裏表とか、
そういうイヤーな部分とか、もしくは本人にはどうにもしようがない運の巡りあわせみたいな
諦めて受け入れるしかないような世の中の残酷さのような部分を取り込んで
積極的にダークな感じに仕上げてあります(苦笑)。

読んでいて、「そうそう、人間ってこんな一面もってるよねー、世の中そういうもんだと
割り切って生きていかないとやってられんよなー」みたいに
良い意味で振り切れる感覚を得られるので、ダークな割には読後感はスッキリしてました。




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『私はそうは思わない』
- 2022/02/03(Thu) -
佐野洋子 『私はそうは思わない』(ちくま文庫)、読了。

佐野エッセイ。
タイトルから世の中のおかしなことをズバズバ切ってるのかと思いきや、
自分の日常で考えたことを佐野節で語っている、高尚なエッセイでした。

冒頭の『「まえがき」のかわりの自問自答』が、
質問に対してフランクな口調で答えるという演出になっていたのと、
「お金が一文もなくなったらどうしますか?」というようなありきたりな質問に
結構斜に構えた回答を述べるという内容で、
エッセイという枠組みではなく、私小説みたいだな・・・・と感じたことで
「軽い気持ちで読んではいけない」と背筋が伸びて、読み通すのに時間がかかっちゃいました。

人間の一番いいところは一番悪いところ
いいところと悪いところを分けて考えられる人は
正義の味方みたいな顔して人をぶんなぐっても気づかない人(要約)

そうだよなー。納得。

こういう考察を、具体的なエピソードをもとに主張するのではなく、
これまで生きてきた経験をもとに語っている作品なので、
なんだか哲学的なものも感じてしまいます。

そんな佐野節の中で、「女の敵は女」という表現が出てきて、
「あは、今、言葉狩りされているヤツまで出てきたわ(苦笑)」。
マイメロちゃんは、災難でしたね~。




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『あれも嫌いこれも好き』
- 2018/09/12(Wed) -
佐野洋子 『あれも嫌いこれも好き』(朝日文庫)、読了。

タイトルの通り、著者が日常生活で好きなこと、嫌いなことを、
そのまま好き、嫌いと言わずに、様々な角度からの表現で描いたエッセイ集です。

とにかく佐野洋子節が心地よい作品。
文庫でわずか4ページずつのエッセイですが、
短文を連ね、思ったことを一言ではっきり書き、そして著者の思考の世界にいざなう。
その途中で、くすっと笑えたり、あぁそういう風に考えるのかと驚いたり
起承転結の中に喜怒哀楽が詰まっていて、本当に面白い作品でした。

絵本というのは、しっかりした物語がありながら、
分量は少ない中で伝えていかなければいけないので、
余計なものをそぎ落として、本質を語るという技術が身につくのでしょうかね。
素晴らしいエッセイでした。

紀元2000年、いかに人間が大騒ぎをしたかミレニアム騒動を思いつつ、
たかが、きんさんぎんさん20人分なんて大したことないじゃないかとぶった斬ります。
そんな計量方法、思いつかなかったわ(爆)。
確かに、20人分で語れる時間ですね。
そう思うと、きんさんぎんさん、凄いわ。
100歳というのは、歴史を歩むことなんですね。

こんな思いもよらない発想を社会に対して日々しているんだという
作家という人間に対する羨望も湧いた読書となりました。


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『100万回生きたねこ』
- 2016/11/22(Tue) -
佐野洋子 『100万回生きたねこ』(講談社)、再読。

実家の本棚にずっと飾られている本。
子供の頃、何度も母親に読んでもらいました。

自分でせがんで読んでもらったはずなのですが、
実は、この本、ちょっと怖かったんです。

「死ぬ」という表現が何度も出てきたり、
どのページも別れのシーンで絵が暗かったり、
「ねこ」が飼い主のことを斬って捨てるような表現が並んでいたり。

今になって読み返すと、きつい言葉がずいぶん並んでいるんだと気づき、
未就学児に対して読み聞かせるには、不安を感じてしまうほど。

最後に本当の愛を知ることになるので、
それをもって、愛を教える良い本だという考えで、幼い子供に読み聞かせるのでしょうか。
それとも、世間で名作絵本だと言われているから、皆こぞって読み聞かせるのでしょうか。
それとも、幼い私は、この本を選ぶと大人が喜ぶと見抜いていたのでしょうか(笑)。

いずれにしても、子供心にずしんと残っている本だったということは
やっぱり名作なのでしょうね。


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『シズコさん』
- 2016/10/20(Thu) -
佐野洋子 『シズコさん』(新潮文庫)、読了。

先日読んだ著者のエッセイ
に、お母様のことに触れた文章があり、
「子供の頃に母の手に触ろうとしたら振り払われてトラウマになった」
というような趣旨のことが書かれていて驚きました。

この母娘関係は大丈夫なのかしら?と感じたのですが、
母について、その名も『シズコさん』という本を書いているとのことで
100円で見つけたのを切っ掛けに早速読んでみました。

予想していた以上に、激烈な子供時代の話でした。
男兄弟を溺愛し、その分、長姉である著者にしわ寄せが行き、
家事や育児を何でもさせられた日々。
娘への愛情は注いでもらえなかったものの、任せても大丈夫という信頼は得ていたようで
こき使われるお手伝いさんのような印象。

母への苦手意識は、長姉である著者だけでなく、
妹たちも持っていたようで、後年、息子夫婦と同居していたものの
嫁と上手くいかず追い出される形になった母を
姉妹の誰も引き取りたがらないという事態に。
結局、お鉢が回ってくるのは長姉である著者という、子供時代の再来のような役目。

とにかく中盤まで、この激烈な母の行動があれこれ書かれており、
ヒットした『家族という病』がとても及ばないような、濃い家族の姿が描かれています。
そして、母の特異な行動を書くだけでなく、それに直面した家族たちの動揺や拒否反応も
隠すことなく赤裸々に書いてしまっており、
むしろ、周囲の家族の人たちにとって、厳しい内容の暴露本になっていると
心配してしまうほどでした。

そして、そんな確執ともいうべき家族間のごたごたを経て、
最後に惚けてしまった母は、著者とその妹の世話のもとで最後の人生を過ごします。
怒りや妬み、批判、拒絶といった負の感情の塊だった母は、
惚けることで、それらの感情が払い落とされていったかのようで、
純粋な少女のような姿になっていき、
そして最後は、何も分からない状態、何にお関心が向かない状態に近づいていきました。

そんな状態で迎えた著者と母の和解の瞬間に多くの読者は引き込まれるのでしょうが、
私は本作の後半を通して、「もし母が惚けてしまったらどうしよう」という不安が募るばかりでした。

うちの母は、控え目で我慢するタイプの人間です。
子どもの目から見ても、働き者で我がままを言わず、父に従う昔風の妻に見えます。
まだ60代前半なので、足腰が痛いと言うことはあっても、
大きな病気は抱えていませんし、記憶力とか社会への関心とか全く問題ありません。

そんな安心できる母が、万が一、惚けてしまったら・・・・・。
母方の近い親戚筋には、認知症がひどくなった人はおらず、
みんな生涯通して働き者だったり活動的だったりした人が多いので、
今まで、母が惚けるという事態は想定したことがありませんでした。
父は結構やばいかも・・・・と思っているので(苦笑)、
母は私と一緒に介護する側の人間として想定してました。

でも、本作で読む限り、著者の母は働き者かどうかは別として
家事は何事もテキパキとこなし、社交的でもあったようです。
そんな人も、惚ける人は惚けるんだという事実は、
世間一般の話としては頭ではわかっていても、
目の前にその世界を展開されてしまうと、恐れおののいてしまう自分がいます。

著者は惚けることにより母との和解に至りましたが、
私は、今、母との間に溝を感じていない分、
もし惚けてしまったら距離が広がるのではないかという不安がずしんと募りました。


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『神も仏もありませぬ』
- 2016/09/13(Tue) -
佐野洋子 『神も仏もありませぬ』(ちくま文庫)、読了。

著者の名前は知らず、タイトルと表紙のイラストで買ってきました。
クスクス笑えるお気楽エッセイなのかな?と。

さて読もうかな・・・・と思って著者紹介を見てみると、
『100万回生きたねこ』の作者さんとのこと。
そうか、あの絵本の!私が何度もお母さんに読んでもらったあの絵本の!

で、エッセイを読んでみると、60歳を過ぎた著者の
北軽井沢での日常などを描いており、笑えるお気楽エッセイとは違ったものの、
ふふふと楽しい気持ちになる、へんちくりんなご近所さんがたくさん登場し、
気持ちの良いエッセイでした。

自然とともに生きることを、「自然の中で生きるんだ!」と肩ひじ張るのではなく、
穏やかな心境で自分の思うように暮らしていたら
結果的には自然を感じながら日々を過ごせています・・・・という大人な生活の
姿勢を身に付けている人ばかりで、素敵だなと思います。

読み終わった後にWikiで著者のことを調べたら、
すでにお亡くなりになってたんですね。
お母様、大丈夫だったのかな?と心配してしまいました。


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