『図書館の神様』
- 2017/10/22(Sun) -
瀬尾まいこ 『図書館の神様』(ちくま文庫)、読了。

著者の名前を初めて知ったのは、
本読みさんのBlogで、よく本作のタイトルを見かけたから。
やっと100円で見つけたので、さっそく読んでみました。

が・・・・・なんだか思っていたのと違う・・・・。

熱血バレー選手だった学生時代、
チームメイトをきつく叱責して、その子が直後に自殺してしまうという
重たい過去を背負った主人公。
今はやる気もなく高校で国語の講師として1年契約で働く身。
私生活ではケーキ屋のオーナーシェフと不倫中。

過去が重たすぎるのに比して、今の主人公の思考が軽すぎて
どうにもアンバランス。
しかも、不倫相手の男が、なんでこんな男と!?と思ってしまうほど
魅力が感じられない軽い男。
でも、ケーキ教室では生徒を厳しく指導してしまう熱血男。

似た者同士というか、どうしようもない同士というか。
この2人の会話を読んでいると、気が滅入ります。

高校の文芸部で顧問として活動している時間は、
たった1人の部員の垣内君が大人なので、そのシーンは救われます。

なんで、こんな作品が、人気あるんだろうか?と疑問だったのですが、
中盤で、話の軸が不倫関係から同僚教師との関係や弟との関係、
そして垣内君との関係に移っていってから、俄然面白くなりました。

主人公が、人間関係に対して、あれこれと頭を使って中身のある思考をするようになり、
自分という存在を見つめなおすようになり、その冷静な分析を
興味深く読みました。

どの人間関係も、主人公が尖った感情を向けている一面があり、
ホッとする関係は出てこないのですが、
その緊張感が、作品に緊張感を生み出しており、面白いなと。

前半の弛緩した不倫関係の描写と対極にあり、
後半の味付けための前半だったと思えば、
苦痛だった時間も受け入れられるようになりました。

裏表紙にある「傷ついた心を回復していく再生の物語」というフレーズに、
そうだなぁと深く納得できました。

併録されている「雲行き」も、
義理の父との関係性を描いていて、面白かったです。
女の子の尖がった気持ちと、義理の父の大らかな気持ち、
母のおとぼけなところ、それらの交わりが興味深かったです。


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瀬尾 まいこ

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『強運の持ち主』
- 2017/09/27(Wed) -
瀬尾まいこ 『強運の持ち主』(文春文庫)、読了。

バイト感覚で占い師になった主人公。
今では、ショッピングセンターの一角で自分の領土を確保しています。

占い師の極意は、結局は、相談者の顔を見て、態度を見て、性格を見て
その人が暗に求めているサジェッションを探り出し
それがいかにも天命のような伝え方をするという技術。
そのあたりの、占い師のノウハウ的な部分は面白かったです。

でも、巻き起こる出来事自体は
いまいち気持ちが入っていくことができませんでした。
なんだか、当事者が自分で話をややこしくしているだけで、
本当ならありふれた出来事について右往左往しているだけのような。

占い師という立場で、
迷える人たちを温かく導いてあげているということなのかもしれませんが、
客観的に見ると、物凄くチマチマとした話のような気がしました。

私が、占いというものを、あまり信じていないので
こういう読後感になってしまうのかもしれませんが。

占いというものに、救われる人がいるんだなということが
この作品を通して分かりました。


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瀬尾 まいこ

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『優しい音楽』
- 2017/06/03(Sat) -
瀬尾まいこ 『優しい音楽』(双葉文庫)、読了。

3つの作品が収められています。

彼女が実家に入れてくれず相手の両親に会えない男、
不倫相手が妻と旅行に行くために、その娘の面倒をみさせられる女、
同棲相手がホームレスのおじさんを家に拾ってきてしまう男、
突飛なシチュエーションを設定することで、現代社会の歪みを表現しているように思えつつも、
本当にこれが現代社会の本質なの?と冷静になると、
なんか違う感が残ってしまう作品たちでした。

どんな展開になるんだろう?どんなオチになるんだろう?と
先を読みたくはなりますが、読んだ結果、腑に落ちるかというと、
ちょっとモヤモヤが残ります。

そこまで心に刺さってくるお話ではありませんでしたが、
まぁ、こんな変な思考回路の人たちも居るかもしれないなぁ・・・・・
と許容できる感じですかね。


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『戸村飯店青春100連発』
- 2016/11/09(Wed) -
瀬尾まいこ 『戸村飯店青春100連発』(文春文庫)、読了。

前からタイトルが気になっていた作品。
読んでみました。

こんなにも、無目的に上京したり、大学に進学したりすることを
ポジティブに軽やかに力強く描いた作品は、ないのではないでしょうか(笑)。

コテコテの大阪の中華料理屋に生まれた兄弟。
何でも器用にこなす要領の良い兄と、
お客さんたちに可愛がられる実家にどっぷりな弟。

しかし、それぞれの心の内は、
他人の目を気にしてばかりいる臆病な兄と、
漠然とした不安に目の前のことのみに一生懸命になろうとする弟。

ポップな会話が続きますが、
兄弟それぞれの内面を描いたシーンでは
意外と真面目に自分のことを考えて悩んでいる2人です。

何かしら目的があって大学に進学した人でも、
つまりは私でも、
毎日の学生生活をその目的のために過ごしていた訳ではなく、
むしろ、遊んでいた時間の方が長い訳で、
目的があろうとなかろうと、大学生活ってふにゃふにゃとした時間ですよね。

そんな軟らかい時間の中で、
この兄弟のように、自分のことを見つめる時間というのを作っているのは、
すごく重要なことなのではないかと、本作を通して感じました。
アウトプットとしての目的の有無よりも、
どんなアウトプットを産もうとするのか、その葛藤のプロセスが
20歳前後の時期には大事なのかなと。

それを、重たい話にするのではなく、
ここまでポップに見せながら、ちゃんと読ませる作品になっているというのは
著者の力量だなと思いました。

他の作品もチャレンジしてみたいと思います。


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『幸福な食卓』
- 2016/04/15(Fri) -
瀬尾まいこ 『幸福な食卓』(講談社文庫)、読了。

素敵な本でした!

父を辞めると宣言する父、
家出したのに毎日やってくる母、
天才なのに大学に行かず農業をしている兄、
そんな家族と普通に生活できる主人公、
この一家の面々がすっとぼけてて、とても魅力的です。

兄の恋人のケバいヨシコ、
主人公の恋人の超単純野郎な大浦君、
脇役たちも、かなりずれています。

でも、みんな温かい。
善意の塊というか、悪意がないピュアさというか。
変なことや悪いこともやっているけど、悪意はないんです。

そして、みんな、それぞれの人生哲学を持っています。
どれも変な哲学なんですが、でも、その人の中では筋が通っている。
読んでいて、変わっているなとは思うけど、おかしいとは思わない。
その哲学から出てくる言葉は、すとんと腹に落ちてきます。
そして心地よい。

この作品の中では、死が登場するシーンがいくつかあり、
冷静に考えると非常に悲しいシーンなんだけれども、
その場面に居る人たちの心の動きや、周囲への心遣いを読んでいると、
悲しさよりも温かさの方が強く感じることが出来ます。
人間が作る関係って、素敵だなと思えます。

唯一、この作品内で悪意が全開だった高校の教室は、
一時的な場面としては打開できていましたが、
その後どうなったのかちょっと心配な展開でした。
そこだけが少し心残りとなってしまう作品でした。

でも、全体を通して、非常に温かな心持ちになる素敵な作品でした。


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『Teen Age』
- 2011/04/27(Wed) -
角田光代 他 『Teen Age』(双葉文庫)、読了。

普段、アンソロジーは、あまり読まないのですが、
売れっ子の女流作家さんたちによる青春小説ものということで、買ってきました。

ちょっと視野の広い女の子の
ポップでシニカルな世界観を扱っている作品が多く、面白く読みました。

ただ、反対に、ずしーんと重い作品がなかったので、
読み通した感想としては、少し軽く感じてしまいました。
山田詠美が描くような、重たく冷たい女の子の視線も
一作品ぐらいは読んでみたかったです。

お初の作家さんも何人か居ましたが、
次回、その方の作品を一冊通して読んでから、評価したいと思います。


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