『消えた巨人軍』
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- 2020/11/26(Thu) -
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西村京太郎 『消えた巨人軍』(徳間ノベルズ)、読了。
近所のおっちゃんにもらった本。 戸津川警部なのかなと思ったら、左文字という私立探偵が謎解きをする設定でした。 どうやら本作は左文字シリーズの第1作目だったようですね。 甲子園球場での阪神巨人戦のために東京から新幹線で大阪に向かった巨人軍御一行。 しかし翌日早朝に球団社長のもとにかかってきた電話は、「巨人軍を誘拐した」と言い出します。 定宿にしている旅館に確認すると「黙って宿を変えたのか!」とクレームを言われる始末。 本当に、巨人軍御一行の行方がつかめなくなり、球団は大混乱になります。 37人という集団の誘拐を、どんな手口で行ったのか、 また、身代金5億円をどんな方法で奪うのかが私の関心の的だったのですが、 まずは後者の方が先に展開し、そのスマートさに納得。 5億円ものボリュームのある現金をどうやって奪うのかな?と思っていたのですが、 無駄のない流れと、後追いさせない対策をきちんと取っている隙のなさに、 「この犯人は知的に冷静ですごいな」と興味が高まりました。 なので、この後に続く、誘拐の手法の推理と、犯人追跡の推理も、 犯人を応援するかのような目線で読んでいました。 Amazonのレビューからすると、大阪に詳しい人にとっては、 現場をあちこち訪ねて左文字たちが調査をするくだりが、 物理的な時間として無理だろうという声があるようで、リアリティの面で評価が下がっているようでした。 私は大阪の地理に詳しくないので、そこまで具体的な違和感ではなかったのですが、 あちこち行った割には「あれ?今何時ぐらい?真夜中?・・・・・いやそんなに遅い時間じゃないのか・・・」 という程度の疑問は出てきました。 ただ、私の関心が、物語展開のリアリティよりも、トリックの方に向いていたので、 作品の評価にはあんまり影響しませんでした。 むしろ、岐阜羽島駅の特徴をうまく使った手口に、「なるほどなぁ」と感心しきり。 地元の岐阜の人からするとリアリティがあるのかどうか判断はわかりませんが、 岐阜羽島駅を全く知らない人間からすると、ありえそうに思える描写で、面白かったです。 身代金を払ったらすぐに選手を解放すると言っていたのに、前言をひっくり返した理由なども 具体的に用意されていて、なるほどぉ。 犯人のリーダー格が警察の手に捕まった行動の原因は、 ちょっとこの人の慎重な性格に合わない気がしましたが、 まぁ、それぐらいの気変わりを用意しないと、隙がない犯人で逮捕というエンディングが 作れなかったんだろうなと、変な感慨になりました。 誘拐ミステリとして非常に面白い作品でした。 巨人軍の選手・監督の面々が実名で登場しており、 読売巨人軍全面協力の作品だったのかなと思いました。 逆に、無許可でここまで実名を使い倒してたら驚きです(苦笑)。 どうやら、この左文字シリーズというのは、『恋人はスナイパー劇場版』の原作の 『華麗なる誘拐』も属しているようなので、誘拐モノの優良作品が多いのかなと思いました。 戸津川警部よりも左文字の方を追いかけた方が読書満足度が高そうです。 ![]() |
『特急街道の殺人』
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- 2019/03/15(Fri) -
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西村京太郎 『特急街道の殺人』(双葉社)、読了。
タイトルから、電車の時刻表を使った王道トリックなのかな?と思いましたが、 各地からの特急が到着する高岡駅を中心とした事件という意味のタイトルでした。 たまたま北陸旅行をしていた男が立ち寄った観光案内所に、 「私は朝倉一族の末裔だ」とうそぶく女が登場し、 しかも、その男が昔お見合いをした相手だったという 「そんな偶然あるの!?」という設定から物語が始まります。 「朝倉一族の末裔だから、朝倉の遺構を1億円で買いたい」というような 眉唾な話をもちかけるので、詐欺事件か、心の病かという感じですが、 どちらも絡んでくるという(笑)。 詐欺事件の方は、だんだんと大掛かりな話になってくるので 結構、興味深く読んだのですが、 「あれ?こんな話は前に読んだことがあるような・・・・・」 と思ったら、同じく西村京太郎氏の作品でした(苦笑)。 本作は、関係者の嘘のつき方が下手くそだったのが、 詐欺師っぽくなくて、杜撰な感じです。 まぁ、だから詐欺事件は頓挫したのでしょうけれど。 ![]() |
『欲望の街 東京』
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- 2018/07/23(Mon) -
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西村京太郎 『欲望の街 東京』(徳間文庫)、読了。
気晴らしに、いただきものの本作をば。 十津川警部の短編が4作収録されています。 冒頭の「十津川警部の苦悩」は、部下が署内で拳銃自殺し、 その遺書に「恨むならTさんを恨んでくれ」とあったため、 自らのことではないかと責任を感じる十津川警部。 この設定は面白かったです。 でも、肝心の自殺の理由は、「俺のヘビースモーカーぶりに嫌煙家の彼は悩んでいたんだ」と 思い込んで苦悩し、さらに同時に起きた菓子職人の殺害事件においても 「ヘビースモーカーの彼は吸わない同僚に嫌われていたんだ」と思い込みで推理。 こんな上司が居たら、部下の刑事たちはドン引きでしょう(苦笑)。 証拠も何もない、思い込み、思い付きでの推理が 他の作品でも展開されていき、もう、これは推理小説ではなく 単なる十津川警部シリーズでしかないですね・・・・。
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