『激流』
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- 2017/10/10(Tue) -
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柴田よしき 『激流』(徳間文庫)、読了。
中学校の修学旅行先で、 グループ行動を取っていた最中に生徒が1人失踪した・・・・。 そんな衝撃の修学旅行から20年が経ち、 35歳になったグループメンバーたち。 彼らに、失踪した女子を名乗るメールが届き・・・・。 人が一人いなくなるというコト自体が不気味なことなのに、 その子から20年ぶりにメールが届くなんて衝撃。 メールを受け取った人たちは、驚きながらも自分なリの解釈をつけて 何とか受け止めようとしますが、私だったら発狂しちゃうかも。 メールのことだけじゃなく、 仕事で嫌がらせを受けたり、殺人事件に巻き込まれたり、 ストーカー事件に遭ったり、マンションの住人がやたら近寄ってきたリ、 不可解な事件が彼らのまわりで頻発します。 同級生たちは集まって対策を協議し、推理に頭を捻りますが、 かれらが真相に近づいていっているという実感よりも、 敵がにじり寄ってくるような恐ろしさがあり、 この先どうなっていくんだろうか、一体真相は何なのだろうかと一気読みでした。 そして、サスペンス要素だけでなく、 中学校卒業後の20年間で、それぞれが歩んできた道のり、背負ってきたものが 今の生活を成り立たせているということが良く分かる描写で、 35歳という年齢であっても、人生には重みがあるんだなということを実感しました。 自分と同じような年代の人を描いているから特にそう感じたのかもしれませんが、 それぞれの生き方や判断に共感する部分がありました。 下巻の途中までは、本当に面白く読んだのですが、 結末に近づくにつれて、真相が見えだすにつれて、 ちょっと人間関係が濃すぎというか、無暗に繋がり過ぎなのが気になってきました。 都合が良すぎるんじゃない?世間が狭すぎるんじゃない?と。 例えば、佐原の存在とか。 真相にたどり着いたとき、 あぁ、そういうことだったのか・・・・・と納得する自分と、 えぇ、そんなことだったのか・・・・・とガッカリする自分とが居て、 知りたかったような、知りたくなかったような結末でした。 理性を失くしてしまうような、 人間の情念って怖いな・・・・・という感想になった作品でした。
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『小袖日記』
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- 2015/06/04(Thu) -
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柴田よしき 『小袖日記』(文春文庫)、読了。
現代の世界から、平安の時代にタイムスリップ。 しかも、女官の体に憑依してしまった主人公に与えられた任務は、 『源氏物語』のネタ探し・・・・・。 『源氏物語』は、モデルは居たとはいえ、当然、フィクションとして作られていた部分があり、 その真相はどういうことだったのか・・・・・というところを究明するというのが 基本的なストーリーとなっています。 なるほど、そういう現実世界のエピソードに、脚色をしたのね~という観点で読むと、 ありうるかも!という納得感があります。 ただ、ちょっと、文章が説明くさいのが、読んでいてしんどかったです。 平安時代はどういう暮らしなのかとか、 タイムスリップしたけどパラドックスは云々とか、 そもそもこの時代の女性の権利は・・・・とか。 各エピソードに入っていくまでの入り口が説教臭い印象です。 もっとエンタメに徹しても良いのになぁと思っちゃいました。 あと、主人公のキャラクター設定の軸がぶれているような気がしてしまいまいした。 『源氏物語』なんて、授業で学んだぐらいの知識しかない・・・・と言いながら 主要なストーリーには通じてたりして、「え、ここまで知ってるのが常識なの!?」と 自分の知識の薄さを反省したり。 私は、源氏物語を、現代語訳でさえ読み通していないので、 本作を楽しむ土壌ができていないのかもしれませんが、 かといって、『源氏物語』フリークの方にしてみれば、 本作での独自の解釈は、どのように感じたのでしょうかね。
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『やってられない月曜日』
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- 2013/11/15(Fri) -
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柴田よしき 『やってられない月曜日』(新潮文庫)、読了。
『ワーキングガール・ウォーズ』の系列の作品だと知り、 ワクワクしながら読み始めました。 まずは、「28歳OLが主人公」ということに全く違和感を感じさせない文章が心地よいです。 上手い作家さんであっても、「イマドキの28歳、こんな言葉遣いしないよねー」と 思ってしまうような、「小説口語」みたいなものが引っかかるときがあるのですが、 本作においては、ストレスフリーでした。 大手出版社にコネ入社で入った経理部所属の模型オタク独身28歳と、 同期の801系同人誌オタク女子。 この2人の会話がテンポ良くて、楽しいんですよね。 しかも、両名ともおバカキャラを演じている聡明な女子という印象。 男性社員に言う時は言うし、エリート社員だったらぐっと言葉を飲み込むという サラリーウーマンの鏡のようなキャラ(笑)。 そして、会社ではワイワイやりつつも、 家に帰って独りになると、意外と深ーい内面世界に落ち込んでいくという、 これまた独り身の仕事頑張ってます系女子にありがちな展開。 いろいろ共感するところがありました。 厳しい目線を持っているところにも、 自分の身の丈を考えてあんまり無理しないところにも、 共感というか、安心感を持てました。 自分と同じ立ち位置の人だー、っていう・・・。 で、私的にもやってられない月曜日から始まった今週は、 それでも嬉しい金曜日になり、仕事はさっさと終わらせて、 いきなり能を観に行くという(爆)。 ま、でも、メリハリがないと、深夜2時までサービス残業とか、やってらんないですわ!
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『観覧車』
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- 2012/12/23(Sun) -
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柴田よしき 『観覧車』(祥伝社文庫)、読了。
恋愛ミステリーと銘打たれていますが・・・? 主人公は女探偵。 旦那だった男が失踪し、その職を継ぐ形で探偵業に足を突っ込むことに。 そこで扱う1つ1つの案件が短編の形で続きます。 最初の表題作「観覧車」では、 なんだか、推理の1つ1つが行き当たりばったりというか、必然性が感じられず、 その場当たりな感じで真相に突き進んでいくので、 読んでいる側は、置いてきぼりを食らった気分です。 ちょっとこの時点で、作品とやや距離を感じてしまいました。 その後、それぞれの案件の解決を進めつつ、 失踪した旦那の行方の手がかりも見えてくることになり、物語は輻輳していきます。 この失踪事件の真相をたどっていく方のストーリーは楽しめたのですが、 その影響を受けて、本業の探偵業の方が疎かになっていきます。 なんだか、そこのプロ意識の欠如というか、精神的な不安定さというか、 主人公のそういう性格が馴染めませんでした。 最後も、作品を描ききれなくて、諦めてしまったような印象が残ってしまい。 自分には合わない作品でした。
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『窓際の死神』
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- 2012/05/18(Fri) -
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柴田よしき 『窓際の死神』(新潮文庫)、読了。
死に不用意に近づくと目の前に現れる死神。 そんな死神から、自分の命と身近な人の命を天秤にかけられ・・・・。 と要約してみたものの、そんな話じゃないような違和感(苦笑)。 死神が登場する作品は、それなりの数があると思うのですが、 本作の目新しさは、死神が会社の窓際族だということ!? それよりも、そんなおじさん姿の死神がふらっと目の前に現れ、 自ら死神と名乗りつつ、命の話をし始める、そのアンバランスさというか ある種の滑稽な風景が特徴の作品なのだと感じました。 ただ、「そんな設定必要か?」と思ってしまったのも事実。 死神と主人公との対話が見せ場なのだと思いますが、 なんだか、じれったさを感じてしまいました。 もっと見守るようなスタンスや、もしくは反対に極めて冷酷な展開など、 死神のキャラを活かす方法が無かったものかと思います。 本作では、「(相手を思いやる)想像力が無いから」、 淡々と「死神業」について水から語ってしまうという設定になっていますが、 なんだか、ここが納得的じゃない・・・。取って付け感があります。 日本の昔話のモチーフを匂わせていますが、 そちらも、あまり有効に活かせていないように感じました。 全体的に残念。
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『猫と魚、あたしと恋』
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- 2011/03/15(Tue) -
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柴田よしき 『猫と魚、あたしと恋』(光文社文庫)、読了。
「これは上手い」と思わせる短編集でした。 今まで読んだ柴田作品の中で、一番面白かったかも。 すべて女性が主人公なのですが、 まー、女性の嫌なところ、ダメなところを書き込んでくれてます(苦笑)。 その描写が、ものすごくリアル。 「こういう人いるよなー」という程度のリアルさではなく、 「あぁ、自分の中にもこんな人格がいるかも・・・」と 自分自身に恐怖を覚えてしまうようなリアルさです。 本のタイトルも秀逸。
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『RIKO』
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- 2010/02/28(Sun) -
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柴田よしき 『RIKO』(角川文庫)、読了。
最後まで一気読み。 次にどんな展開が来るのだろうと気になって仕方がありませんでした。 ただ、全編を通して感じるのは不快感。 事件自体が「男性が被害者のレイプ」を扱っているためだけではなく、 主人公リコのプライベートを取り巻く環境が、とにかくどす黒い。 リコ自身の性に関する感覚が、ちょっと異端な方向に振れているだけでなく、 警察組織内でくっついたり離れたりしずぎだろー、というぐらい乱れてます(苦笑)。 しかも、失恋だ不倫だにとどまらず、レイプまがいの出来事まで起こってるし。 各登場人物のバックボーンとなる過去の経緯が、 あまりにもグロすぎます。 それでも、次を知りたくなるように作品を構成したのは、 この作家さんの力量なんでしょうね。 久々の柴田作品でしたが、幅広いジャンルを扱う作家さんだと感嘆。
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『Close to You』
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- 2008/11/22(Sat) -
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柴田よしき 『Close to You』(文春文庫)、読了。
いろんな本読みさんBlogで取り上げられていた作品だったので、 期待して読み始めたのですが、私には合いませんでした。 そもそも事件の動機と犯人像にリアリティが無いし、 複数の事件が一度に起こり過ぎだろうという思いもあるのですが、 何よりも、主人公が魅力的ではありませんでした。 なにをするにも中途半端というか、 この人を特徴づける何かが無いと言いますか・・・・・。 まぁ、「頭でっかちな一介のサラリーマン」という主人公を置いてこそ この物語の意味が生まれるのでしょうけれど、 意志は弱いわ、環境に流されるわ、観察力はないわ、 危機的状況なのに女性にはすぐふらふらするわで、 なかなか応援する気になれないのです。 主人公夫婦の間の「想いのすれ違い」というのも、 なんだか最後まで違和感があったなぁ・・・・。 一か所、「鮎美」が「鮎身」と誤植があったのには笑いました。
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『ワーキングガール・ウォーズ』
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- 2008/02/01(Fri) -
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柴田よしき 『ワーキングガール・ウォーズ』(新潮文庫)、読了。
ハイミスOLと30歳目前海外組の2人の女性の悩ましい日々の物語。 何より2人のキャラクターがウィットに富んでいて、 また彼女たちの周りで巻き起こる騒動がちっちゃなミステリだったりして、 楽しく読めました。 でも、OL翔子が勤める会社での騒動は、 働く女の嫌らしさを見せつけてくれるエピソード満載で、 その毒々しい内容に気持が滅入ることも。 文体の軽さに助けられて、何とか読み進めた場面もありました。 人間が集まって閉鎖的な部屋の中で半日を供に過ごしているのですから いろいろ渦巻くものがあるんだろうなぁ・・・・・と、 自分のことは棚に上げて感じてみたり。 でも、解説で書かれていましたが、 「いじめ」そのものよりも「悪意の気配」のほうが怖いという指摘には納得。 「何かが起こりそう」「自分に厳しい目を向けられてそう」という不安感は 想像を掻き立てて、居たたまれなくなってしまいそうです。 そんなトラップを切り抜ける一つの技が、 女性ならではの「気づき」です。 「カメラを持ってこない一人旅の女には要注意」なんて、 そんな切り口があったのね・・・と脱帽。
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『残響』
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- 2007/03/08(Thu) -
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柴田よしき 『残響』(新潮文庫)、読了。
ミステリー好きの方のblogで時々名前を見かけたので、 以前より気になっていました。 まずは、とっつきやすそうな短編集から。 主人公は、過去の会話を聞き取り自らの口を通して復元する能力を持つ 女性ジャズシンガー。 非現実的な舞台設定のため、 ちょっと距離をとりながら読んでました。 そして、登場してくる女性たちの苦悩の描き方が浅いかなぁと 思われるところもあり、のめりこむことは出来ませんでした。 苦悩をペラペラと本人にしゃべらしてしまうところが 現実感が無いように思えてしまい・・・。 また、その苦悩を文字に落としきれていないような印象も。 ただ、連作形式の本作は読みやすく、 病院の待合室で時間つぶしに読むには手ごろな本でした。
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