『風流武辺』
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- 2016/05/30(Mon) -
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津本陽 『風流武辺』(朝日文庫)、通読。
戦国時代に、茶の湯の道を極めた上田宗箇を描いた作品。 知らない人物の話だったので、 正直、興味を盛り立てるのが難しかったです。 尾張に生まれ、紀州藩に勤めたということから 三重県の地名もときどき出てきましたが、 それだけで500ページの大作に興味を持ち続けるのは しんどかったです。 そもそも、冒頭のところから あまり文章が頭にすんなり入ってこなくて苦労しました。 読むタイミングを間違えたかな。
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『新陰流 小笠原長治』
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- 2016/03/30(Wed) -
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津本陽 『新陰流 小笠原長治』(新潮文庫)、読了。
実家のお店のお客様からいただいた本。 武田家の血を引く小笠原家は、 信長、秀吉、家康、そして武田家の争いの中で翻弄され、 末弟の長治は剣の道をひたすら修行する日々・・・・・。 というわけで、その剣のお話なのですが、 剣術だけでは、私としては物足りなかったです。 武士の世界であっても、やはり、天下をどうやって取るかという 大局観と戦術が面白いのであって、腕一本で身を立てる人の話は、 技量は凄いものの、物語の世界が狭いように感じてしまいます。 広い視野で自分の世界なり、社会を見ている人物が 自分には魅力的だなと感じます。
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『最後の相場師』
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- 2014/08/28(Thu) -
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津本陽 『最後の相場師』(角川文庫)、読了。
株式取引が電子化される前の、 アナログな激しいやり取りが展開するのかと思いきや、 意外と、淡々とした筆致で物語は進んでいきます。 それは、主人公の佐久間平蔵が、 「自分は相場師ではなく、経済学を実践する人間だ」という趣旨のことを述べているように いわゆる相場師のイメージとは違っているからだと思います。 大きな資産を持っていても、老妻と2人でつつましく質素に生きる毎日。 投資の仕方も、「どうやったら儲けられるか」ということよりも 「自分の眼力が正しいことをどうやって証明するか」の方を重視しているかのようです。 だから、分散投資のリスクヘッジは行わず、これだ!と決めた銘柄に全力投資です。 小説として見たときに、この異色の主人公に惹かれる人も多いかもしれませんが、 私は、1人の人間としてのキャラクターがまとまっていないように思えてしまいました。 場面によって、異なる人格が動いているように感じてしまうのです。 お金を持つこと、お金を使うことに執着心がないのに、 なぜ、これほどまでに、日本一の相場師になることに拘るのか、 主人公の中の、動と静、もしくは緩と急が、私にはよく掴めませんでした。 実在の人物をモデルにした小説のようですが、 城山作品の方が小説としてのワクワク感がありますね。
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『則天武后』
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- 2011/05/10(Tue) -
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津本陽 『則天武后』(幻冬舎文庫)、読了。
中国三大悪女の一人とされる則天武后。 悪名ばかりが耳につき、その実態がよくわからない歴史上の人物だったので 本作を読んでみました。 初・津本作品でございます。 太宗の側室の一人だったが、その崩御により出家を余儀なくされ、 普通であれば、そのまま尼僧として生涯を静かに暮らすところを、 策を講じて息子の高宗に取り入り、尼寺から後宮へ復帰するところは 女の強かさを十分に発揮しています。 そして、高宗の正室を失脚させ、寵愛していた側室も失脚させ、 後宮のトップにのし上がっていく様はお見事。 が・・・・・則天武后が実権を握ってから、正直、面白くありませんでした。 家臣たちに互いに密告させ、冤罪で死罪や流罪に陥れ、 ことごとく対立者を抹殺していくことが繰り返されます。 「それだけ」と言っても良いくらいの内容です。 しかし、一瞬の栄華で悪名を轟かせたのではなく、 数十年にわたり、あの広大な唐の領土を女帝として治めたというからには、 恐怖政治だけでは成り立たないと思うのですよ。 確かに、宮廷内の支配の仕方は恐怖政治だったんだろうと思いますが、 客観的な目で見て、内政や外交で評価されるべき手腕を 何かしら持っていなくては、これだけの治世を得ることはできなかったのではないかと思います。 もしくは、本人の政治スキルではなく、有能な官僚を使いこなす才能を 持っていたとか・・・。 ところどころ、それらの才能を暗示する表現はあるのですが、 あくまで描写の中心は恐怖政治だったのが残念です。 人を斬って捨てる描写ばかりを続けるよりも、 政治の才能と対比して残忍さを示す方が、 一層、その恐ろしさを際立てて印象付けることができたのではないかと思います。 というわけで、上下巻を頑張りましたが、期待外れでした。
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