fc2ブログ
『星籠の海』
- 2022/04/06(Wed) -
島田荘司 『星籠の海』(講談社)、読了。

実家に置いてあった分厚い上下2巻本。
両親の趣味ではないと思うので、お客様からいただいたのかな?
3回目ワクチンの翌日は休養日にしたので、一気読みしてみました。

タイトルのカッコよさや装丁の重厚さから、どんな作品なんだろう?とワクワクしたのですが、
開けてみたら御手洗シリーズでした。
というわけでお気楽読書に気持ちを切り替え(苦笑)。

瀬戸内海の西方に浮かぶ小島に、死体が何体も流れ着くという事件が
御手洗の元に持ち込まれ現地に向かいます。

そして話は急に場面が代わり、瀬戸内海の小さな町から女優を目指して上京した少女と
その少女にくっついて上京した男の話に。
この部分の物語が、ありきたりな甘っちょろい関係に、衝撃的な事故の話を絡めたもので、
正直、読むのがしんどかったです。長い・・・・・。

まぁ、この男が後々の事件のキーマンになり、その特異なモノの考え方を読者に納得させるには
これだけのページを割いて説明する必要があったのだと思いますが、
小説のシーンとしてあまり面白さを感じられませんでした。

そのシーンが終わってからは、ぐいぐい面白くなってきました。
瀬戸内海を根城にした村上水軍の話や、
江戸末期に老中の阿部正弘が決断した開国の話、
そしてカルト教団が地方都市を飲み込んでいく様とか、興味深い話がてんこ盛りでした。

カルト教団については、「教祖が韓国人」「合同結婚式」なんていうパワーワードが登場し、
「こんなに露骨に犯罪集団として描いて大丈夫なのかしら?」と変に心配してしまいました。
まぁ、「うちのことをこんなに悪く描くな!」なんていうクレームは起きないでしょうけれど(苦笑)、
それこそ暗闇で狙われそうな怖さがありますわ。

あと、そんな教団に地域をめちゃめちゃにされているという描かれ方をした福山市の市民は
どんな感情を持ったのかなあと、そちらが心配。
福山市市制施行100周年記念で本作が映画化されたようですが、
この描き方でお祝いになるのかしら?と。
まぁ、村上水軍や忽那水軍、阿部正弘を評価高く描いているから大丈夫なのかな。

物語展開や、事件の真相は、まぁ本格小説なので強引なところがあるのは許容範囲です。
こんなものかなと。
小説の舞台の演出が豊かで面白かったです。

阿部正弘については、また別の機会にちゃんと読んでみたいです。






にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  島田荘司 | CM(0) | TB(0) | ▲ top
『天国からの銃弾』
- 2021/06/22(Tue) -
島田莊司 『天国からの銃弾』(カッパノベルス)、読了。

中編3本が収められています。

本格派としてのイメージしかない著者ですが、
冒頭の「ドアX」は、私の苦手な精神の不安定な人の話で、
しかもオチが突飛な印象で、あまり楽しめませんでした。

「高速道路の亡霊」は、高速道路関係の会社の社長に天下りした元官僚と
その社長を強請ろうとする元社員、そして一見無関係に見える女が
ある一点をもって交錯することに。
ま、各人の行動にリアリティがないと言ってしまえばそれまでなのですが、
本作は、無理目な設定をあえて楽しむ作品なのかなと思いました。
高速道路利権という点も絡んで、面白かったです。

最後は表題作。
こちらは、川崎のラブホテル街で起きた自殺騒動を巡る話。
正直、「覚醒剤」という飛び道具が出てきた時点で、
ちょっと私は付いていけなくなりました。
この要素って、必要だったのかなぁ・・・・・。
家族の姿にリアリティがなくなってしまったように思え、自分的にはイマイチでした。
作品発表当時は、受け入れられる設定だったのかなぁ・・・・。




にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  島田荘司 | CM(0) | TB(0) | ▲ top
『殺人ダイヤルを捜せ』
- 2016/03/07(Mon) -
島田荘司 『殺人ダイヤルを捜せ』(講談社文庫)、読了。

電話交換手の女性が、退屈しのぎにHな電話をすることにはまってしまい、
夜な夜な見知らぬ電話番号に架け続けていたところ、
ある日、繋がった先の電話から、「助けて!殺される!」と叫ばれてしまう・・・・。

適度にエロチックで、適度に悪意が充満していて、
旅先から戻ってくる車中で読むには、お手軽なサスペンスでした。

「電話交換手」という職業からして、昭和を感じさせる作品ですが、
その古さのおかげで、読む前のハードルが低めだったので、
テンポのよい物語展開に、そこそこ飽きずに読んでいくことができ、手頃感を感じられる読書でした。

殺人のトリックとしては、かなり手が込んでいる上に、
犯人側の予定通りにモノゴトが進んでくれるという御都合主義的な部分はありますが、
ま、たまには、こういうサスペンスも良いかなと思える感じでした。
メインの電話トリックは、なるほどねぇと思われるものでした。
(私がモノゴトを知らないだけでしょうか!?)

ただ、最後、犯人がトリックをべらべら自分でしゃべってしまう展開は興ざめ。
こういう謎解きに至るストーリーの部分は、丁寧に作って欲しいなぁと思います。


殺人ダイヤルを捜せ (講談社文庫)殺人ダイヤルを捜せ (講談社文庫)
島田 荘司

講談社 1988-07-07
売り上げランキング : 602892

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  島田荘司 | CM(0) | TB(0) | ▲ top
『御手洗潔のダンス』
- 2014/06/28(Sat) -
島田荘司 『御手洗潔のダンス』(講談社文庫)、読了。

有名な探偵シリーズですので、読んでみました。

が、御手洗ファンの人たちには楽しめるのかもしれませんが、
普通の本好きとしては、イマイチな感じでした。
まぁ、新本格というジャンル自体が、得意ではないせいもあるのですが、
中編集だからといって読みやすくなるわけでもありませんでした・・・・・。

起きている事件自体に興味を持てなくて、
「どうやってこの難問を解くんだろう!?」というワクワク感が得られなかったのが
最大の理由だったように思います。
被害者に興味、共感が持てなかったということなのでしょうかね。

あと、探偵役が理屈っぽくて面倒なヤツなのは全然大丈夫なのですが、
本作では、急に社会問題を熱く語り出すので、
「なんだこの政治的メッセージは!?」と、ここでも醒めてしまいました。
ファンタジーなら、ファンタジーの世界で完結させれば良いのに・・・・・と。

最後の「近況報告」は、謎でもなんでもなく、御手洗潔の人となりを述べたもの。
こういうのは、ファンクラブの会報誌でやってくださいよ・・・・・・。


御手洗潔のダンス (講談社文庫)御手洗潔のダンス (講談社文庫)
島田 荘司

講談社 1993-07-06
売り上げランキング : 23678

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  島田荘司 | CM(0) | TB(0) | ▲ top
『占星術殺人事件』
- 2010/03/21(Sun) -
島田荘司 『占星術殺人事件』(講談社文庫)、読了。

「新本格」のエポックメイキングとされる本作に挑戦してみました。

6人姉妹を切り刻んで、それぞれから取った肉体の一部をつなぎ合わせて
完成された美の人形を作るという狂気の発想からスタートするような
異様な事件の物語は、「リアリティがない」として、
普段ならあまり興味を持たないのですが、
この作品は、最後まで気になって読んでしまいました。

あまりに狂気をはらんだ設定なので、
ちょっと距離を置きながらの読書だったのですが、
最後に与えられたヒントでトリックは思いつくことができました。

なので、後半は謎解きというよりも答え合わせとして読み進めたのですが、
犯人も予想通りで、満足感を得るとともに、ちょっとあっけない感じも。

新本格の作品は、謎解きが種になるので、
どうしても動機の面の作り込みが弱いと感じてしまうのですが、
本作も、その感は否めず。

まぁ、でも、この本を一冊読めば、
新本格というジャンルがどういうものかを理解することができるので、
やはり代表的な良作なんだと思います。


占星術殺人事件 (講談社文庫)
占星術殺人事件 (講談社文庫)
おすすめ平均
stars御手洗の反骨精神がすごい
stars最初で最後の名誉
stars時代を感ずる
stars遅ればせながら、、、
starsトリックは世界レベルの作品

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  島田荘司 | CM(0) | TB(2) | ▲ top
| メイン |