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『堤清二 罪と業』
- 2023/07/30(Sun) -
児玉博 『堤清二 罪と業』(文春文庫)、読了。

子供の頃からプロ野球が好きで、『プロ野球ニュース』とか毎日楽しみに見て、
さらに家業で週刊誌を定期購読していたので、週刊誌のプロ野球ネタも楽しく読んでました。
母方の祖父が近畿日本鉄道に勤めていたので、私は近鉄バファローズファンでパリーグを見てましたが
当時は西武ライオンズが常勝レオ軍団と呼ばれていたため、「憎き西武」でした(苦笑)。

西武鉄道が親会社だというのは子供心に理解できていたのですが、
週刊誌とかに登場してくる「堤オーナー」がなんだか黒い印象で表現されていたので、
あ、世間的にも「憎き西武」なのか・・・・と納得してました(爆)。

その後、大人になり、猪瀬直樹氏の『ミカドの肖像』などで堤康次郎氏の凄腕ぶりなどを理解し、
さらに、その家庭環境の複雑さとか、西武グループの上に存在する「コクド」という謎の会社とか、
いろんな要素てんこ盛りで、さらに心象は「黒」に近づいて行った会社です。

その後、セゾングループに属する会社と仕事でお付き合いするようになり、
その会社は明るくアグレッシブな社風だったので、会社を超えて社員さんとよく飲みに行ったりして
楽しい思い出が多いのですが、そんな飲み会の雑談の中で「堤さんとのゴルフコンペ」とかいう
キーワードが出てきたりして、「おー、やっぱり、堤家は絶対的な影響力があるんだなー」と
驚いた思い出があります。

本作は、堤康次郎の三番目の奥さんの長男である堤清二氏へのインタビューを軸に
康二郎と清二、そして妾の子の位置づけの義明と清二という人間模様を描いていきます。

凡人の感覚からすると、結婚離婚を繰り返し何人もの奥さんとの間に子供を作ったり
さらには愛人関係にある女性との間に子供を作って認知したら、
将来的にお家騒動に発展するのが目に見えているのに、なんで好んでそんなことを
するんだろうか?という疑問。

世間的には、「気を付けていたけど想定外に子供ができてしまった」というケースは多いと思いますが
堤康次郎氏の場合は、衆議院議員議長という立場にありながら天皇陛下に拝謁するときに
まだ妾の立場だった堤清二の母親を伴って宮中に参内して、世間の批判に晒されたという
描写があり、この感覚のズレ方にはびっくりしました。
正妻が居るのに妾を宮中に連れて行くなんて・・・。

実業家としては突出した人物かもしれませんが、
人間性としては疑問符を付けたくなってしまいます。
少なくとも、身内に居たり、勤め先のトップだったりしたら、正直やってられないなぁ・・・・と。

そして、そういう独特な感覚を持つ父親と、その人にくっついて宮中に行ってしまう母親のもとで
育てられた子供は、やっぱり独特な感覚の人物に育ってしまうだろうなぁ・・・・と。
父親への反発心も相まって、余計に捻じれてしまっているような印象を受けました。

辻井喬として繊細な表現者の一面を持ちながら、実業家・堤清二としての発言には、
言われた相手が傷つくかもしれないという配慮がみられなかったり、
その場に居合わせた第三者が対応に困るかもしれないという配慮がなかったりして、
「え、そんなこと言っちゃうの!?」と思えるものがあるので、
やっぱり、どこか歪んでいるのかなぁと感じてしまいました。

どういう人物というか、一家だったのかという部分については
非常に興味深い作品でしたが、実業家としての業績については理解していることが前提という
構成だったので、次は、実業家としての堤清二と義明の関係を描いた作品を
読んでみたいなと感じました。




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『伝統の創造力』
- 2016/02/11(Thu) -
辻井喬 『伝統の創造力』(岩波新書)、通読。

骨太の文化論でした。

私は、どうしても著者の本を読むときに、
経営者としての姿を頭に浮かべてしまうので、
いつも、辻井喬氏の活動とのギャップにたじろいでしまい、
冒頭がすんなり頭に入ってきません。

本作は、しかも内容がかなり高尚だったので、
目で追うだけになってしまいました。

もう一度、姿勢を正して、心を落ち着けて読まねばいけませんね。


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『ポスト消費社会のゆくえ』
- 2013/07/27(Sat) -
辻井喬、上野千鶴子 『ポスト消費社会のゆくえ』(文春新書)、読了。

なんという組み合わせ!と驚いて買ってしまいました。

私にとっては、「勤め先の大取引先の親会社を率いてきた実業家 vs フェミニスト」
という認識ですから(笑)。

堤清二という人物は、まぁ、変わった経営者ですから、
学者先生と対談をしても何の不思議も感じないのですが、
しかし、やはり、上野千鶴子となると、やっぱり違和感(苦笑)。

でも、本作の冒頭で、セゾングループの社史の編纂に上野女史がかかわったと知り、
堤清二という経営者は、筋金入りの変わり者だと再認識しました。

でもって本題の部分ですが、こちらは正直イマイチでした・・・・。

作家・辻井喬としてではなく、経営者・堤清二を期待してしまったので
もともと本対談の趣旨とズレたニーズを持って読み始めたところが間違いなのですが。

上野千鶴子がズバッと斬り込んできたときに、
意外とあっさり自説を変えるというか、認識を改める姿勢が目に付きます。
のらりくらり感が激しいと言いますか・・・・。
実業家としての腹黒さなのか、イイトコのお坊ちゃんとしての余裕なのか、
長年生きてきた人の大らかさなのか、作家としての言葉遊びなのか、
それとも辻井喬個人のキャラなのか。
もっと自分の経営哲学を振りかざしてほしいと思ってしまいました。

思想家・辻井喬として本作を読んだ人は、
きっと面白かったのではないかと思います。


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