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『旅の幻燈』
- 2021/01/03(Sun) -
五木寛之 『旅の幻燈』(講談社)、読了。

タイトルと表紙の写真から、朝鮮時代の幼少期の自伝かと思いきや、
なんと自分の性の目覚めに繋がる出来事を1つ1つ描いていくという赤裸々な自伝でした。

最初のシーンは4・5歳のころ、
家で雇っていたお手伝いの韓国人少女とのエピソード。
家に出入りしていた近所の男が、家人のいない隙にその少女をに言い寄り、
その始終を著者が盗み見てしまうという展開。

うーん、こんなに赤裸々に書いてしまってよいのかしら、
どの程度演出がかかってて、どこからが創作なのかしら、それともありのまま??と
読んでいて若干不安になってしまう始末。

その後も、小学校で、中学校で、高校で、大学でと、
様々なエピソードが順に語られていきますが、
中には一歩間違えたら犯罪の域にいっちゃうんじゃないの!?というものもあり、
それを自伝として発表できてしまうところに時代を感じます。
というか、そもそも子供の日常って、こんなに性に尖がっているものなの???

テンポよく描写して見せたり、現在と過去とを自在に行き来する構成など、
さすが五木寛之と思う文章力ですが、それ以上に、犯罪性にドキドキして
じっくり落ち着いて読むことができない感じでした。
そこまでドキドキしてしまうのは、著者の力量のせいだというのもありますが。

昭和初期の女の子って、いろんなルールに縛り付けられて
おしとやかでいることを強制されていた時代なのかと思っていたのですが、
本作を見ていると、みんな自由に生きてるように感じられ、
「昔の女の子」に対する偏見だったのかなぁと反省。
いつの時代も、いろんな女の子がいるということですね。




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『メルセデスの伝説』
- 2020/10/02(Fri) -
五木寛之 『メルセデスの伝説』(講談社)、読了。

積読の山を解消しなきゃいけないなぁ・・・・と思い、
体積のある(笑)ハードカバーの本から一冊選びました。

タイトルから、ベンツの歴史でも扱った本なのかと、それほど期待せずに読み始めたのですが、
ヒトラーが天皇に贈った御料車「メルセデス・ベンツ・770・グロッサー」を巡る
歴史サスペンスもので、最初のドイツ取材のシーンから一気に引き込まれました。

時代は現代(といっても80年代当たり?)、「陛下のメルセデス」をドキュメンタリー番組に
仕上げようと奮闘する女性ディレクターと、その元旦那の放送作家が主人公です。
彼らが取材を進めるにつれ、外部から圧力がかかるようになり、身の危険を感じる状態に。
それでも番組を完成させようと前に進む2人。

そもそも、この「陛下のメルセデス」の存在自体が非常に興味深いもので、
ヒトラーがダイムラーに作らせ、同盟国に贈られたものということで、
本来はダイムラーのプロドライバーが輸送に当たっていたが、
日本皇室への納車においては例外的に日本人ドライバーが担当したとか、
どこまで歴史的事実として正しいのかは分かりませんが、こういう歴史小話はおもしろいです。

Wikiを読む限り、本作での中心エピソードとなった、「白銀のメルセデス」は存在しないのかな?
完全な著者の創作なのかもしれませんが、そういうものがあったのかもしれないと思えるのは
著者の力量ですね。

途中、彼らの取材に対して、ユダヤ人グループが関わってきたり、
参謀本部権力者の生き残りが妨害してきたりと、いろんな方面からの介入があり、
あぁ、戦争の歴史というのは現代の利権関係にも繋がっているのだなと
こんなところで実感しました。

最後、どんな風に物語が閉じられるのだろうかと思っていたら、
思いのほか肉弾アクションになっていったので、著者のイメージとは違う展開にやや気持ちが
ついていけない部分はあったのですが、まぁ、でも、「陛下のメルセデス」を使って
フィクション作品を作るには、これぐらい現実離れした展開にしないと
収まりが付かないのかもしれませんね。

戦争の歴史の中で、こんなエピソードが存在していたのかも・・・・と空想を膨らませるには
面白い作品でした。

タイトルが、「メルセデスの伝説」という何とも凡庸なものになってしまったのは勿体ないなと思いました。
「陛下のメルセデス」とか「白銀のメルセデス」とかではダメだったんですかね?




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『哀しみの女』
- 2018/09/04(Tue) -
五木寛之 『哀しみの女』(新潮社)、読了。

何かの書評で本作を知ったのだと思いますが、
「読みたい本リスト」にずっと載っかったままだったので、
ブックオフオンラインで取り寄せてみました。

まず目に飛び込んできたのは、表紙の女性。
黒い服に、黒い帽子、そして意志の強そうな眼差し。
本文を読み始めたら、これはエゴン・シーレという画家の作品であり、
この画家とモデルの女の関係が、本作の同棲相手と主人公の関係に照射されているというもの。

ある意味、画家とモデルの女の関係は、歴史上の事実として語られているので、
それに沿って現実世界の男と女の関係も進んでいくんだろうなと分かっているのに、
ぐいぐい読ませてくれる展開に、一気読みでした。

それはきっと、主人公の女性の、冷静さというか、自分自身を突き放している感じというか、
彼女自身が、エゴン・シーレという画家を知ったことから、
自分自身の恋愛の状態に客観的な目を持ちえたことによる視点の変化みたいなものが
あったのではないかと思います。

同棲相手に新しい女ができても、動揺することなく、同棲相手とも女とも向き合えたのは、
彼女自身の中に、この絵の女のような射るような眼差しを得たからなのかなと思いました。

あまり自分では手に取らないジャンルの恋愛小説でしたが、
これは大当たり、面白かったです。
五木寛之って、こんな作品も書くんだなと、びっくりしました。

ところで、この絵の黒ずくめの女の後ろにいるピエロみたいな男。
本作中でも特に触れられていなかった、この男は、一体何者!?


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『下山の思想』
- 2018/03/08(Thu) -
五木寛之 『下山の思想』(幻冬舎新書)、通読。

要約すると、無理して成長を求めなくていいよ・・・・という話でしょうかね。
ちょっとまとまりのないエッセイのような印象でしたが、
一応、タイトルはそういう意味だと思います。

著者と同じような年代の人が、「下山の思想」を持つのは別に構わないですが、
40代以下の人が「下山の思想」を持つ国には、未来はないと思います。

書かれている内容よりも、
こういう本が売れるという状況が、あぁ、高齢化社会なんだなぁという思いを
禁じ得ませんでした。


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『蒼ざめた馬を見よ』
- 2017/10/11(Wed) -
五木寛之 『蒼ざめた馬を見よ』(文春文庫)、読了。

著者のエッセイで本作を知り、すぐにBookOFFで見つけたので即買い。

直木賞受賞の表題作をはじめ、5つの短編が収録されています。
いずれもロシア絡みだったり、冷戦絡みだったり。
当時の日本や世界の時代状況が滲み出ている短編集です。

表題作は、冷戦下のソ連で、極秘に国外での自作小説の出版を望む著名小説家の元に
日本人記者が原稿を受け取りにいくという、ある種の冒険譚。
短編なので、物語の進行があまりにあっさりと進んでいくような印象を受けましたが、
しかし、コトの真相の部分は、非常に面白かったです。
これは、長編で読みたかったなぁという思いを抱きました。

個人的に面白いと思ったのは「天使の墓場」。
冬山で遭難事故に遭った高校の山岳部。
吹雪の中で退避したのは、山肌に墜落していた米軍の戦闘機の中。
意識を失い、救出された引率教師は、米軍機の墜落がなかったこととされ、
さらには生徒たちが行方不明扱いになっているということを知る。

こちらも、コトの真相の部分が、そういう展開かぁ・・・・という感じで
時代を感じさせてくれます。

やや陰謀論的なところも含めて、時代ですねぇ。


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『ゴキブリの歌』
- 2017/02/01(Wed) -
五木寛之 『ゴキブリの歌』(角川文庫)、読了。

五木寛之氏には、苦手意識があります。
大学生の頃に大ヒットしていた『大河の一滴』が上手く読めなかったり、
その後の世間での「思想家」としてのイメージがあまり私好みではなかったり、
どうにも歯車が合わない感じでした。

本作は、町の公民館で廃棄処理になろうとしていたものを頂いてきたのですが、
読んでおいてよかったです。

こんなにもカラッとしたエッセイも書いているのかと意外な思いがし、
スイスイ読めて、しかも面白かったからです。

著者が30代後半の時に書いた文章ということで、
若いのに、ややインテリ風が鼻につくところもありますが、
しかし、全体的に、軽いタッチでまとめられており、
奥様とのやりとりなど、冗談も交えた文章で面白いです。

学生時代の新聞配達で、時々すっぽかして新聞を川に捨てた・・・・・なんてことを
昔の日記が見つかりました・・・という話で書いてしまっており、
こんなことを今の新聞に書いたなら、
正義感の強い世間様に大バッシングされるのではないかと思ってしまいますが、
昔はおおらかだったのでしょう。
(ま、おおらかだったにしても、他人が購読している新聞を川に捨てるってアリエナイですが)

ちょっと露悪的なところも、インテリがよくやる庶民派アピールの技術だと思うので
ま、五木寛之的なところが出ているということで、ご愛敬ですかね。


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『人間の覚悟』
- 2015/11/03(Tue) -
五木寛之 『人間の覚悟』(新潮新書)、読了。

五木ファンからすると、心に染み入る温かい言葉のオンパレードなのでしょうけれど、
それほど五木節に思い入れのない立場からすると、
言葉がふわふわしすぎて、つかみどころのない印象受けてしまいます。

前にも書きましたが、言葉の定義の曖昧さが気になってしまい、
文章がすんなり腹落ちしません。

頭を使わずに、感覚的に読むべきものなのかもしれませんが、
どうも私は苦手意識が先行してしまいダメですねぇ・・・・・・。


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『百寺巡礼 第四巻』
- 2014/10/11(Sat) -
五木寛之 『百寺巡礼 第四巻』(講談社文庫)、読了。

いきなり第四巻からで恐縮ですが、
地元のお寺が紹介されていたので(笑)。

真宗高田派の本山である専修寺は、
小学校の写生大会で如来堂を描き、ラッキーにも入選をもらった思い出のお寺(笑)。
どーんと立派なお堂です。

本作で、滋賀県のお寺の数が、人口対比で日本一だと知りました。
確かに紹介されている延暦寺、三井寺、石山寺など、
有名なお寺がたくさんありますが、指摘されないと気づかないものですね。

お寺の訪問記なのですが、
寺が建立された経緯、日本の歴史の中で位置づけ、宗派の中での位置づけ、
建物としての寺の印象、地元の人々の信仰のあり方、季節のレポートなど、
様々な要素がミックスされていて、読者がどんな関心を持って手にとっても
相応に対応できる汎用性を備えています。
さすが、五木寛之、商売上手。

各お寺の写真が2枚ずつ挿入されていますが、
画面へのさりげないどころじゃない著者の映り込みかたに、
やっぱり、この人は自分大好きだよなー。なんて思っちゃいました(苦笑)。


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