『捨てない生きかた』
|
- 2022/07/26(Tue) -
|
五木寛之 『捨てない生きかた』(マガジンハウス新書)、通読。
いただきものの本。 五木寛之氏というと、私が大学生だったころに『大河の一滴』がヒットし、 そこで初めて存在を認識ました。 ヒット本なので、まもなくブックオフで100円で売られるようになり、 試しに読んでみましたが、正直、ピンとこないというのが感想でした。 書かれてい内容がピンとこないというだけでなく、 どういう読者層に刺さっているのかもうまく想像できませんでした。 その後、10年以上著作に触れることはなかったのですが 数年前に近所のおばちゃんに古本の山をドカッと譲っていただき、 その中に著者の作品がたくさん含まれていたので、ちょこちょこ読むようになりました。 その正直な感想は、「こんなすごい小説を書く人だったのか!」というもの。 小説やルポルタージュなど面白い作品がたくさんあり、 まだ読んでないものも手元で積読になっているので楽しみです。 で、本作なのですが、こちらはエッセイ。 帯によると発行から3か月で5刷10万部突破!ということのようですが、 相変わらずこの手の人生を見つめるエッセイ的なものは、私にはピンときません。 なんとなく、著者の同世代の人たちで、生活が別に苦しいわけではないけど 新鮮味が欠けているように感じているような、ないものねだりの人たちが 自分たちの暮らしを肯定してほしくて読んでいるのかな?と 勝手な想像ですが、そんな風に感じながら読んでました。 大きな文字で行間もしっかり空いているので、分量的にもかなりあっさりしてると思うのですが これで先に書いたような帯が付くぐらい売れるというのは、 もう五木ブランドが確立してるということなのでしょうかね。 本の内容より、一つのビジネスアイテムとして考察したくなりましたわ。 ![]() |
『哀しみの女』
| ||
- 2018/09/04(Tue) -
| ||
五木寛之 『哀しみの女』(新潮社)、読了。
何かの書評で本作を知ったのだと思いますが、 「読みたい本リスト」にずっと載っかったままだったので、 ブックオフオンラインで取り寄せてみました。 まず目に飛び込んできたのは、表紙の女性。 黒い服に、黒い帽子、そして意志の強そうな眼差し。 本文を読み始めたら、これはエゴン・シーレという画家の作品であり、 この画家とモデルの女の関係が、本作の同棲相手と主人公の関係に照射されているというもの。 ある意味、画家とモデルの女の関係は、歴史上の事実として語られているので、 それに沿って現実世界の男と女の関係も進んでいくんだろうなと分かっているのに、 ぐいぐい読ませてくれる展開に、一気読みでした。 それはきっと、主人公の女性の、冷静さというか、自分自身を突き放している感じというか、 彼女自身が、エゴン・シーレという画家を知ったことから、 自分自身の恋愛の状態に客観的な目を持ちえたことによる視点の変化みたいなものが あったのではないかと思います。 同棲相手に新しい女ができても、動揺することなく、同棲相手とも女とも向き合えたのは、 彼女自身の中に、この絵の女のような射るような眼差しを得たからなのかなと思いました。 あまり自分では手に取らないジャンルの恋愛小説でしたが、 これは大当たり、面白かったです。 五木寛之って、こんな作品も書くんだなと、びっくりしました。 ところで、この絵の黒ずくめの女の後ろにいるピエロみたいな男。 本作中でも特に触れられていなかった、この男は、一体何者!?
![]() |
||
『下山の思想』
| ||
- 2018/03/08(Thu) -
| ||
五木寛之 『下山の思想』(幻冬舎新書)、通読。
要約すると、無理して成長を求めなくていいよ・・・・という話でしょうかね。 ちょっとまとまりのないエッセイのような印象でしたが、 一応、タイトルはそういう意味だと思います。 著者と同じような年代の人が、「下山の思想」を持つのは別に構わないですが、 40代以下の人が「下山の思想」を持つ国には、未来はないと思います。 書かれている内容よりも、 こういう本が売れるという状況が、あぁ、高齢化社会なんだなぁという思いを 禁じ得ませんでした。
![]() |
||
『蒼ざめた馬を見よ』
| ||
- 2017/10/11(Wed) -
| ||
五木寛之 『蒼ざめた馬を見よ』(文春文庫)、読了。
著者のエッセイで本作を知り、すぐにBookOFFで見つけたので即買い。 直木賞受賞の表題作をはじめ、5つの短編が収録されています。 いずれもロシア絡みだったり、冷戦絡みだったり。 当時の日本や世界の時代状況が滲み出ている短編集です。 表題作は、冷戦下のソ連で、極秘に国外での自作小説の出版を望む著名小説家の元に 日本人記者が原稿を受け取りにいくという、ある種の冒険譚。 短編なので、物語の進行があまりにあっさりと進んでいくような印象を受けましたが、 しかし、コトの真相の部分は、非常に面白かったです。 これは、長編で読みたかったなぁという思いを抱きました。 個人的に面白いと思ったのは「天使の墓場」。 冬山で遭難事故に遭った高校の山岳部。 吹雪の中で退避したのは、山肌に墜落していた米軍の戦闘機の中。 意識を失い、救出された引率教師は、米軍機の墜落がなかったこととされ、 さらには生徒たちが行方不明扱いになっているということを知る。 こちらも、コトの真相の部分が、そういう展開かぁ・・・・という感じで 時代を感じさせてくれます。 やや陰謀論的なところも含めて、時代ですねぇ。
![]() |
||
『ゴキブリの歌』
| ||
- 2017/02/01(Wed) -
| ||
五木寛之 『ゴキブリの歌』(角川文庫)、読了。
五木寛之氏には、苦手意識があります。 大学生の頃に大ヒットしていた『大河の一滴』が上手く読めなかったり、 その後の世間での「思想家」としてのイメージがあまり私好みではなかったり、 どうにも歯車が合わない感じでした。 本作は、町の公民館で廃棄処理になろうとしていたものを頂いてきたのですが、 読んでおいてよかったです。 こんなにもカラッとしたエッセイも書いているのかと意外な思いがし、 スイスイ読めて、しかも面白かったからです。 著者が30代後半の時に書いた文章ということで、 若いのに、ややインテリ風が鼻につくところもありますが、 しかし、全体的に、軽いタッチでまとめられており、 奥様とのやりとりなど、冗談も交えた文章で面白いです。 学生時代の新聞配達で、時々すっぽかして新聞を川に捨てた・・・・・なんてことを 昔の日記が見つかりました・・・という話で書いてしまっており、 こんなことを今の新聞に書いたなら、 正義感の強い世間様に大バッシングされるのではないかと思ってしまいますが、 昔はおおらかだったのでしょう。 (ま、おおらかだったにしても、他人が購読している新聞を川に捨てるってアリエナイですが) ちょっと露悪的なところも、インテリがよくやる庶民派アピールの技術だと思うので ま、五木寛之的なところが出ているということで、ご愛敬ですかね。
![]() |
||
『人間の覚悟』
| ||
- 2015/11/03(Tue) -
| ||
五木寛之 『人間の覚悟』(新潮新書)、読了。
五木ファンからすると、心に染み入る温かい言葉のオンパレードなのでしょうけれど、 それほど五木節に思い入れのない立場からすると、 言葉がふわふわしすぎて、つかみどころのない印象受けてしまいます。 前にも書きましたが、言葉の定義の曖昧さが気になってしまい、 文章がすんなり腹落ちしません。 頭を使わずに、感覚的に読むべきものなのかもしれませんが、 どうも私は苦手意識が先行してしまいダメですねぇ・・・・・・。
![]() |
||