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『私の田中角栄日記』
- 2021/02/18(Thu) -
佐藤昭子 『私の田中角栄日記』(新潮文庫)、読了。

佐藤昭子という名前は知ってますし、「淋しき越山会の女王」という皮肉なニックネームも知ってます。
でも、いずれも知識として知っているというだけで、何の思いもない人物です。
秘書の目で見た田中角栄という政治家のことも興味はありましたが、
それよりも、この時代に首相の政治事務所を取り仕切った女性秘書という存在に興味を惹かれました。

で、読んでみて最初に思ったのは、非常に聡明な女性であるということ。
自分で付けた日記を基に、当時を振り返るという構成になっていますが、
その日記の文章が端的かつテンポがあり、文章能力を感じます。
もちろん、本作用に手が入っているのかもしれませんが、でも、能力高そうだなと思わせる文章です。

ただ、日記を軸にしていますし、また、田中角栄に対する世間の批判への反論という形なので
田中角栄の功績や政治家としての信条が軸に書かれているわけではなく、
あくまで周囲や世間が田中角栄に対しどのような態度をとったかを書き綴り、
それに対して、「私の知ってる本当の角栄はこういう人だ!」という主張なので
当時の政治の流れや派閥がある程度頭に入っていないと、分からない部分もあります。
政治の結果の部分は、知識として知っていますが、
当時の政局までは分からないので、同時代を生きていたら、より楽しめただろうなと残念です。

そもそもの著者と角栄のはじまりは、著者の元旦那が角栄の選挙の手伝いをしていたことに始まり、
離婚後に角栄に請われて秘書になったとのこと。
秘書能力を見抜いての抜擢だったのか、それとも愛人候補として見ていたのか。
本作に登場する著者の娘さんは、作中では書かれていないですが
Wikipedia情報だと父親は角栄とされているようで、こんな公認の愛人関係って成り立つんですね。
当時の日本は、まだまだ緩かったということなのですかね。

角栄の死に目に会わせてもらえないどころが、葬儀にも出られなかったのは
田中真紀子女史との対立関係が原因のようですが、
真紀子 vs 昭子の戦いも、怖いもの見たさで面白いかも。
・・・・・・いや、毒が強すぎてしんどいかな?




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『田中角栄秘録』
- 2015/06/16(Tue) -
大下英治 『田中角栄秘録』(イースト新書)、読了。

田中角栄×大下英治で、面白くないはずがない!
という予想通り、面白かったです。

石破茂の出馬エピソードを序章に、4つの話が収められていますが、
序章の話が、私が知らなかったこともあって、非常に面白く読めました。

都市銀行勤めという安定した立場から、
父親の病死に伴い、20代という若さで衆議院選挙に打って出る覚悟。
それを決めさせたのは、田中角栄と父との間の信頼関係を目の当たりにし、
そして、その角栄が自分に熱心に訴えてきたから。
この人たらしに正面から向き合われたら、逃げ場ないですよね(苦笑)。

子供の頃は、田中角栄という人物が嫌いでした。
金権政治の中心人物で、カネにモノを言わせて強引にコトを推し進めていく人だと思ってました。
社会の時間にロッキード事件を学んだときも、「こんな人物を選挙でトップ当選させるなんて汚れてる!」
と地元の人たちまで悪く思ってました。
ちょうどリクルート事件真っ只中で、私の地元・三重県選出の藤波孝生氏の落選などもあり、
落ちて当然!と子供心に思っていたんだと思います。

しかし、大人になって、田中角栄のエピソードをいろんな本で読むにつけ、
この人たらし術は凄いなと毎度思うようになりました。
意識して行動しているというレベルのものではなく、天性のものですね、これは。

この人のお世話になれば、大の男が泣くという場面もありうるかなと思ってしまいます。

角栄が育てた政治家たちと、田中家の面々とはまた微妙な問題を抱えていたようで、
そちらを今度は読んでみたいなという、ややワイドショー的な関心も持ってしまいました。


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『悪の社会学』
- 2010/10/03(Sun) -
戸川猪佐武 『悪の社会学』(角川文庫)、読了。

世間から悪役視されている政治家や財界人にスポットを当てた一冊。

出だし、著者による悪役論が延々と続くので、
「お題目は良いから、具体例を早く示してよ・・・」と
ちょっとイライラしてしまいました。

田中角栄のエピソードが始まってからは、面白く読めました。
ただ、1冊の中で何人もの人を紹介しようとしているので、
どうしても1人当たりの紙面が限られてしまい、
思いがけない掘り出し物エピソードが出てくるということは
少なかったように感じました。そこは残念。
やっぱり、1人1冊の分量でじっくりと読みたくなってしまいますね。

私も、著者の言わんとする、
「実力がある人物だからこそ敵が生まれて悪役視されてしまう」
「マスコミが短絡的に悪というレッテルを貼るから、彼らの活躍が制限される」
という主張は、その通りだと思います。
特に、最近の世論は、負け組の僻みみたいな批判が多いですからね。

長期的な展望を広い視野で描ける人の構想は、
どうしても既存の安定したシステムを脅かすものになってしまいますから、
現状維持派からすると、敵視せずにはいられない存在でしょうね。

それを押しのけてでも、自分の主義主張を通す実力がある人が、
真の政治家であり、真の財界人であると思います。
そういう気骨のある人は、今だと誰になるんでしょうかね・・・(遠い目)。

余談ですが、著者は、城山三郎の広田弘毅論がお気に召さなかったようで、
最近、城山の著作を読んだ身からすると、批判をじっくり読みたかったなぁというところ。
こういう主義・評価の対決も、面白いですよね。


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『越山 田中角栄』
- 2006/10/04(Wed) -
佐木隆三『越山 田中角栄』(現代教養文庫)、読了。

ロッキード事件が発覚したのは私が生まれる前でしたから、
この人の馬力というものを肌で感じたことはありません。
ただ、今の時代でも活き活きと語られる政治家ですから
何か一つ読んでおこうかと思い、この本をとりました。

ロッキード事件や田中金脈等、
インパクトの大きい事件にスポットをあてるわけではなく、
田中角栄という人物を、多くのエピソードや
周囲の人達による賛否両論を交えて描いてあります。
彼の経歴や業績が整理されて述べられているわけではないので、
話が前後したりして、同時代性に乏しい身としては梃子摺ることもありましたが、
皮肉の聞いた文章はなかなか面白かったです。


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