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『漁港の肉子ちゃん』
- 2019/05/06(Mon) -
西加奈子 『魚港の肉子ちゃん』(幻冬舎文庫)、読了。

その個性的なタイトルと、圧倒的な迫力を持つカバーイラストから
ずっと気になっていた作品。
徳ちゃんもラジオで紹介していたはず。

で、ようやく読んでみましたが、面白かった!

とある日本海側の北の方の漁港に流れ着いた1組の親子。
娘はめちゃめちゃ可愛らしいのに、
母親は肉団子のようで顔は不細工、ついたあだ名が「肉子ちゃん」。
陰口ではなく、みんな彼女をそう呼びます。娘まで。

その体形や顔から、辛い日常を想像してしまいがちなのに、
肉子ちゃんはいつも明るく笑顔で・・・・・というほど穏やかではなく、
喜怒哀楽に激しく、大声で、思ったことを口にして生きており、
なんとも自分に素直な毎日です。

「肉子ちゃん」というあだ名で、周りの人から愛されている様子が
なんともユーモラスに描かれており、
「こんな人生もしかしたら存在するのかも」と思えてしまうほど。

バカが付くほどお人好しで、男に騙され続けた人生なのに、
それでも自分に素直に生きて、周囲の人を笑わせたり安心させたりできるのって
凄いパワーだなと思います。
会って間もない人からは「頭が少し足りないのかも」と思われてしまうところがありますが、
人間社会にスレてないっていうのは、凄いなと。
あの大阪の繁華街で揉まれながら、そこを保っているのは凄いなと。

そして、物語は娘の視点で描かれますが、
その娘は反対に、世の中を非常に冷静な目で眺めており、
それが反抗的な態度になるのではなく、
ありのままに社会を受け入れつつ自分は社会と距離を置き、
シニカルな目で観察しながら、ウィットをまぶしてコミュニケーションをとるという
なんとも大人な態度で生活しています。
この子の目線で語られる漁港の風景がまた興味深いです。

そして、学校での生活。
女子グループの権力争いと、そこから生まれたいじめ関係、
直接いじめはしないけど、傍観者の立場でいじめに間接的に加担すること。
あー、私もこの状況ならそんな態度を取ってしまいそう・・・・という嫌な共感を覚えたり。

時に奇行を見せる同級生の男の子が、
ちょっと情緒的に不安定でセラピーにかかっていると知ってからの
距離の縮め方とか、面白い女の子だなと思ってみたり。

この親子の周囲に登場してくる人々がこれまた温かかったり、人間臭かったり、
小説的に大きな出来事がバンバン起こるわけではないのですが、
この2人の周辺にある日々を切り取ると、こんなに人間味あふれる世界が描けるんだなぁと
一気読みでした。




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『きいろいゾウ』
- 2017/01/07(Sat) -
西加奈子 『きいろいゾウ』(小学館文庫)、読了。

田舎に住む若夫婦「ムコさん」と「ツマ」の物語。

作家として独り立ちしたばかりのムコさんと
生き物と会話ができてしまうツマ。
そんな2人が1か月前に引っ越してきた田舎町には、
ちょっとズレた田舎の人たちと、飼われてるもの、半ノラ、ノラの生き物たちが居て、
毎日たいして変わらない不思議な日々を送っています。

この、何も起きない日々の描写が心地よく、
正月ボケの頭にはちょうど良かったです。

なのに、後半、一天にわかに掻き曇り・・・・・
この急変ぶりが、途中で前触れの表現は出ていたとはいえ、
ちょっと付いていけないぐらいのギャップでした。

前半のファンタジー感に比べて、
後半の現実のドロドロ感というか、
後半も話自体は突飛な内容なので、リアリティとはまた違った、
人間の嫌らしさみたいなドロドロ感が極端で、苦手でした。

やや後半は読み飛ばし気味。

前半の夢物語だけでは、作品として締めようがないというのは分かるのですが、
それにしても急転直下な感じでした。
『さくら』にも、そんなところがありましたし、
この作家さんの作風なんですかね。


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『ダイオウイカは知らないでしょう』
- 2016/01/30(Sat) -
西加奈子、せきしろ 『ダイオウイカは知らないでしょう』(文春文庫)、読了。

『anan』で連載されたという短歌挑戦シリーズ。

西加奈子×せきしろという組み合わせが、
なんとも予測不可能な短歌を生み出しております(笑)。

中学校の国語の授業などで、私も短歌づくりに挑戦したことがありますが、
「五・七・五・七・七」の定型に当てはめることを最優先に考えてしまい、
何とも味気ない文句しか思いつかなかった思い出があります。

しかし、せきしろさんは、思いのたけをぶちまけることを最優先にし、
字余り・字足らずどころか、破調の短歌から入っていきます。
うーん、なんとアグレッシブな!
まず型に囚われてしまう自分からすると、この自由さが羨ましいです。

そして、ストーリー重視の西さん。
小説家という職業柄なのは分かるものの、そのストーリー設定あまりに斬新。
オバマ大統領との不倫の歌とか(笑)。

笑いを狙いすぎじゃない?と思う歌もあれば、
次にいきなりキレイな情景描写の歌を作ったりして、
油断も隙もあったものじゃない。

そんな2人を見守るゲストが登場しますが、
最初は本職の穂村弘さん、東直子さんによる入門指導のような感じで、
褒めつつも型についてポイントは指導するという方法により、
読んでいる側も短歌の基礎が分かったよかったです。

そして、最後に再び穂村弘先生登場。
2人の成長の度合いが良く分かる解説で、面白かったです。

短歌は、1人で作って満足するよりも、
複数人でお題を決めて披露しあうのが楽しいスタイルなのかもしれませんね。


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『うつくしい人』
- 2015/07/31(Fri) -
西加奈子 『うつくしい人』(幻冬舎文庫)、読了。

3つ目の西加奈子作品でしたが、うーん、やっぱり読むのがしんどかったです。

会社を勢いで辞めたOLが離島のホテルでバーテン&ドイツ人と仲良くなり・・・・・
という設定で想像する明るい雰囲気は感じられず、
結構、世界観が暗くてどよーんとしてるんですよね。

さらに、どうも、この方の書く日本語が、私には合わないみたいで、
非常に出だしが読みにくかったです。
文意を解釈するということ以前に、文章自体を上手く読めずにてこずりました。
省略とか、代名詞とか、比喩とか、そういうところの感覚が違うのかなと思います。

てなわけで、世界感に上手く入っていくことができませんでした。

場面設定も、主人公の斜に構えて世界を見ているスタンスも、
家族への冷たいところがある視線も、結構、私好みのラインのはずなのに、
いじめの描写だったり、姉の描写だったり、ところどころ露骨なグロさが
アンバランスな感じがして、作品の中で無理をしているような印象でした。
読んでいて居心地が悪いというか。

でも、島のホテルでの生活は、1週間で良いから、
こんな何もしない日々を、現実世界から隔離された場所で送ってみたいなぁと
心底羨ましく感じました。


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『通天閣』
- 2015/05/23(Sat) -
西加奈子 『通天閣』(ちくま文庫)、読了。

大阪の街の底辺近くで日々を送る40代の男と20代の女のお話。

それぞれの日常が、淡々と・・・・というか、ネガティブ臭を発散しながら
描かれていくので、前半を読んでいくのがしんどかったです。
自分の毎日を変えようという意志がないのに、周囲への視線が冷ややかなので、
読んでいると主人公たちと一緒に自分までもが堕ちていくような
いやーな気分になっちゃうんですよね(苦笑)。

この2人、いったい、どこで交わるんだろうか?と
段々しんどく感じるころになって、タイトルどおり通天閣界隈で接近するのですが、
うーん、なんだかバタバタしてて、私的にはイマイチな展開でした。

ちょっと、楽しみ方が良くわからないまま終わってしまった感じです。


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『さくら』
- 2014/11/19(Wed) -
西加奈子 『さくら』(小学館文庫)、読了。

大学生の僕が語る、兄妹のこと、両親のこと、周囲の人たちのこと。

軽く柔らかな文章なのに、
性のお話が日常に飛び込んできたり、残酷な展開になったり、
気の抜けない構成でした。

中学生あたりまでのお話は、兄弟たちの世の中との関わり方や目の向け方に
非常に面白い観点を感じ、ぐいぐい読めたのですが、
第4章を読み終わったところで、冒頭のシーンとの繋がりを考えたときに
一気に暗転する様子が想像され、まさにそのような展開になったので
読み進めるのがしんどかったです。

しかも、中盤で登場する様々な人物たちとの関係が
きちんとした結末を得ないままぷつりと途切れてしまう感じもあり、
やや風呂敷を広げすぎたかなという印象です。

それでも、1つ1つの場面を、心に残る描き方をする作家さんだなと思いました。

他の作品も読んでみたいです。


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