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『城山三郎の昭和』
- 2022/03/12(Sat) -
佐高信 『城山三郎の昭和』(角川文庫)、読了。

長期出張のお供に通読消化を目標に10冊の本を持ち出したのですが、
最初に手に取った本作に時間がかかってしまい、全然消化できず。
思いのほか、佐高信氏の言葉に重みがあり、熱さも持っており、
すらすらと読み飛ばすことができない本でした。

城山三郎氏は大学の先輩なのですが、当たり前ですが全く接点はないので、
著名な作家に対する本好きの一読者としての見方をしており、
城山三郎氏個人の人生哲学については、それほど思い入れなく作品を読んでいました。

それを、本作では、城山三郎氏のものの考え方、人生哲学を中心に熱く語っており、
読み応えのある一冊でした。

特に印象に残ったのは、戦争なり軍隊なり国家権力なりに対する著者の拒否反応です。
自身が、海軍の一兵卒という立場で、危険な思いや理不尽な思いをしてきたことが
私の感覚としては、結構、極端な平和志向、反国家権力になっているように感じました。

例えば、個人情報保護法に強く反対していたようですが、
権力者たちの情報公開が制限されるということが理由のようです。
私は以前、金融機関に勤めていたので、個人情報保護法施行により仕事の面では
結構制約が増えて影響を受けた立場だったのですが、
当時の理解は「個人のプライバシーを守る」「金融資産などがリスクにさらされることを防ぐ」という
素直にそういう目的の法律だと思っていました。

城山氏の言うように、権力者の秘密を守るという効果も、
まぁ、確かに、裏の目的としてはそういうことがあったかもしれないけれど、
実際には、そういう風にはなっていないよなぁ・・・・・・
だって、有名政治家はみんな新聞・雑誌メディアに叩かれまくり、暴かれまくりだし、
SNSで思わぬ方向から突撃を受けてるし、そんなに防御効果があったようにはみえないなぁ
と思ってしまいました。

思いのほか、左翼的というか、護憲派のような感覚を持っていたのかなとも思え、
どちらかというと本流は保守的思想にある一橋大学のOBとしては
異質な存在なのかなと思いました。

しかし、左翼思想一辺倒では、経済界で名を成した人物の功績を
素直に評価するような作品は残しにくいようにも思え、
城山氏の哲学は、単純に右左で分けられるようなものではないのだろうなと
そこまでは思うことができました。

でも、城山哲学とは何なのか、という直球の部分については、
ご本人が書いた文章で確認すべきなのかなと思い、それには、今後、著者の小説以外の作品を
丁寧に追っていくしかないのかな。
ただ、本作は、そのきっかけを与えてくれる本として、良い作品でした。

あと、大塚金之助先生に胸ぐらをつかまれ、「社会科学は、ここをつかむことなんだ」と
勢いこんで教え諭されたシーンを読んで、あぁ、確かにこういう熱い学びの場だったなと
同窓として熱いものを感じました。




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『実と虚のドラマ』
- 2020/05/22(Fri) -
佐高信 『実と虚のドラマ』(日本経済新聞社)、読了。

近所のおっちゃんにもらった本。

著者の左翼的な思想は苦手なのですが、
企業を見る目は、読む価値があると思っています。

本作は、タイトルでは中身が見えないのですが、
経済小説のモデルとなった人物と、小説家の双方にスポットを当てて、
実際の実業の現場と、小説として読者に魅せる側のそれぞれの哲学を紹介しています。

経済小説の、こんな紹介の仕方があるんだなぁと、
企画そのものに感嘆しました。
そして、夕刊フジで連載できるほど、モデルと作家の組み合わせを実現させる編集部の
実行力もすごいなと思います。

正直、経済小説の読書記録としてまとまったものは、城山三郎氏ぐらいしかなく、
あとは、高杉良とか広瀬仁紀とかを、ちょこっと読んだだけで、
かなり読書歴に偏りがあります。

なので、本作においても、城山三郎氏の作品や、そのモデルの話については
非常に前のめりに興味をもって読めるのですが、
それ以外の著作については、そもそも本を読んでいないため、ワクワク感が減殺される感じはありました。

それにしても、モデルのいる企業小説が流行ったのは、昭和までなんですかね?
例えば、最近の流行作家で企業が舞台となると池井戸潤さんとか頭に浮かびますが、
明確なモデルがいるとか、題材となった事件があるとかいう感じではなく、たぶん創作ですよね。

現代は、現実の事件に題材をとった企業小説は流行らないのですかね?
最近の企業小説で、良い本があったら教えてください。




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『タレント文化人100人斬り』
- 2018/03/15(Thu) -
佐高信 『タレント文化人100人斬り』(現代教養文庫)、再読。

学生時代に買った本だと思います。
実家の本棚の整理をした際に目についたので、パラパラ読んでみました。

『噂の真相』に連載されたコラムで、
タレントや文化人を一刀両断にしています。

とにかく実名でぶった斬るので、
爽快感があるような印象を受けますが、
批判している内容の論理性はないです(爆)。
前後が論理的に繋がっておらず、勢いだけ。
ま、『噂の真相』のコラムなら、その過激さが売りになれば良いのでしょう。

100人斬りとか言ってますが、
同じ人が何回も出てきて、実質は半分の50人にも満たないのではないでしょうか。
それだけ特定の人物への批判の気持ちが強いんだという風にも取れますが、
反対に、結局、名指しで批判しやすい人は50人ぐらいしかいなかったのかなとも取れます。

あと、批判している相手は、ある種、批判され慣れているような大御所がほとんどで
その人を実名で批判したからと言って、それほど衝撃的でもないような気も。
ま、当時は、衝撃だったのかもしれませんが。

まあ、勢いだけで、あまり中身がないので
時間つぶしに読むには良いのではないでしょうか。
同時代を生きていた人でないと面白くないとは思いますが。


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『ケンカの作法』
- 2015/11/15(Sun) -
辛淑玉、佐高信 『ケンカの作法』(角川ONEテーマ21)、通読。

辛淑玉さんという人のことは知らなかったのですが、
サブタイトルで買ってみました。

が・・・・・・・・、うーん、作法も何もあったもんじゃない
お下劣な表現で相手をののしる文章が多くて、
なんだか「こういう会話で盛り上がれる人たちって気持ち悪い・・・・・・」と思ってしまいました。

思想の中身とかの問題ではなく、
コミュニケーションのあり方として、かなり苦手な感じでした。

というわけで、挫折に近い流し読みで終わってしまいました。


ケンカの作法―批判しなければ、日本は滅ぶ (角川oneテーマ21)ケンカの作法―批判しなければ、日本は滅ぶ (角川oneテーマ21)
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『企業原論』
- 2014/12/31(Wed) -
佐高信 『企業原論』(現代教養文庫)、読了。

学生時代、ゼミテンで佐高信大好き人間がいました。
その人の影響で、私も数冊読んでいたのですが、久々に佐高本をば。

人々が企業に対して抱いている違和感や不信感を明瞭に指弾しています。
なぜ、仕事だと言われると怪しいことや間違ったことまで実行に移せてしまうのか、
他人や社会に迷惑をかけることを気にしなくなるのか、
様々な局面での事象を述べています。

書かれた時期が古いので、内容としては、既に知っている事象ばかりというか、
昭和な感じの「過去の企業の姿」と思ってしまうようなものが多く、
今やこんな企業はない・・・・・という印象も受けます。

しかし、実態としては、露骨な企業の姿が批判された時代を経て、
今は、より狡猾に企業が行動するようになっただけであり、
むしろ昭和の頃よりも、根が深い問題になっているのかもしれません。
そして、それに気づかぬ人々は日本は良くなったと感じ、
気づいている人々は、より狡猾に人間や社会を使おうとする。
しかも、彼ら(私も含めて)の感覚は人間や社会を「恣意的に利用する」「悪用する」ではなく、
よりよい生活のために「活用する」「効果を高める」というものだと思います。
それが良いのか悪いのかは別として。

この本が出された当時は、まずは多くの人々にこのような実態を認識させる、意識させるという点で
非常に意味があったのだと思います。

一方で、企業というものを語るにおいては、
企業という組織、経営者という個人、経営陣という組織、従業員という個人、組合という組織など
組織と個人が複雑に絡み合っていることを正しく認識することが大事だと思います。
特に、日本企業という、責任所在のはっきりしない組織においては、
誰が誰の判断で何のために何をしたという事実認識自体が困難だったりします。
本作では、そのような企業の「構造」を明らかにするところにまでは至っておらず、
その点では物足りなさを感じてしまいました。

しかし、本作の意義は、事態を周知させることにあるとするのであれば、
その構造の分析は、別の機会に行うものなのでしょうね。

そして、著者の指摘を、どのように受け止め、理解し、自分の考えに反映させ、今後の行動に移すか、
それは読者それぞれに委ねられているのだとも思いました。


企業原論―ビジネス・エリートの意識革命 (現代教養文庫)企業原論―ビジネス・エリートの意識革命 (現代教養文庫)
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『日本の権力人脈』
- 2006/08/16(Wed) -
佐高信 『日本の権力人脈』(現代教養文庫)、読了。

大元が88年発行のため、
企業トップの名前は知らない人がほとんどでしたが、
バッサリ斬って捨てる佐高節は小気味よかったです。

まあ、評論家の力量やバランス感覚で誰が優れているかとか、
この著者がどのくらいのポジションに居る人なのかということを
深く考えたことはないので、わたしは評論の対象となった人物が
バッサリ斬って捨てられる様を哂って楽しんでいるだけなのですが。

こういう本を読むと、
優れた経営者(もしくは反面教師でもいいですが)の
評伝なんぞをじっくり読みたくなりますね。

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『戦後を読む 50冊のフィクション』
- 2006/06/10(Sat) -
佐高信 『戦後を読む 50冊のフィクション』(岩波新書)、読了。

戦後の問題をテーマにしたフィクション50冊を佐高信氏が解説/推薦する本。

だいたい、自分が好きな作家が推薦する本はハズレ無しで楽しめます。
阿刀田高氏しかり、柳田邦夫氏しかり。
しかしながら、佐高信氏の作品は軽めのものを2~3冊程度しか
読んだことが無いので、氏の推薦が私の感覚にフィットするかは未知です。

自分が読んだことの有る作品では、
『官僚たちの夏』『ゼロの焦点』が紹介されていましたが、
いずれも面白く読めたと記憶しています、。

硬派のフィクションは、
書評ででも薦めてもらわない限りなかなか手にしないので、
興味のもてたものから探してみようかと思います。

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