『深夜特急2』
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- 2019/02/25(Mon) -
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沢木耕太郎 『深夜特急2』(新潮文庫)、読了。
第1巻を読んでから6年以上経ってしまっており、 「どんな経緯で旅に出たんだっけ・・・・?」と、あやふやな記憶での読書となりましたが、 本作ではバンコクからシンガポールまでの旅が綴られています。 途中、「デリーからロンドンまでのバスの旅」という表現が出てきて、 あぁ、そうだ、出発点はデリーなんだった!と思い出しましたが、 本作、全然、デリーに近づいていきません(苦笑)。 バンコクで数日過ごしたものの、香港のような興奮を感じることができず、 熱気を求めてマレーシアを下り、そしてシンガポールへと行きます。 そして、著者は、「ここはシンガポールであって、香港ではないんだ!」と気づきます。 そりゃそうだろ!ってな感じですが、最初に降り立った土地の感激みたいなものを 引きずってしまうのでしょうね。 私自身も、人生で初めての海外は香港でしたが、 その印象は強烈で、活気がある、小さいけどパワーがある、ご飯が美味しい、等々 子供心に凄い町だなと思いました。空港に降り立った時の空気感とか匂いとかも印象的でした。 その後、毎年、家族旅行で東南アジアの国々、 それこそバンコクやシンガポールに行きましたが、香港ほどの印象は残っておらず、 単なる楽しい家族旅行という思い出です。 初めて欧米地域であるカナダに行った時は、これまた大自然とともに印象に残りましたが、 その後のアメリカ、イギリスやフランスは、これまた楽しい家族旅行という程度の思い出です。 やっぱり、初めての文化圏に行った衝撃って、特別なのかなと。 本作では、無意識に香港を求めて彷徨っていた著者が、最後にその虚しさに気づくのですが、 私の目には、どの町も魅力的に見えました。 東南アジア圏は、著者が行っているような地域は 正直私には衛生面が気になって入っていけないようには思いますが、 その根底にある文化というか、初対面同士の人間が作り上げる人間関係というか信頼関係というか そのあたりは日本人と近い感覚なのかなと思います。 どの国の人も根っこの部分では親切ですよね。 インドあたりまで行ってしまうと、私には想像がつかない地域なので 偏見もあるかとは思いますが、初対面での信頼関係って、恐々築いていくようなイメージです。 この後、旅はインドに近づいていくと思うので、 私にとっても未知の世界が広がるワクワク感があります。 早く第3巻をブックオフで見つけないと! ![]() |
『血の味』
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- 2015/06/15(Mon) -
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沢木耕太郎 『血の味』(新潮文庫)、読了。
沢木作品って、どうしても『深夜特急』の印象が強いので、 エッセイとかルポの人だと思ってしまうのですが、 本作は長編小説ということでチャレンジしてみました。 いやぁ、何だか凄い小説でした。引き込まれました。 中学三年生の主人公は、母と妹が出て行き、家には寡黙で本ばかり読んでいる父と二人きり。 学校では推薦入学を勝ち取れるほどの才能があった陸上を突然止め、教師には突っかかり叱られ。 銭湯で女装趣味の男に話しかけられたことで、嫌々ながらその男と交流ができ、 鬱々とした日々に変化が訪れるかと思いきや・・・・・・。 とにかく、主人公の心理描写が、淡々としながらも、 あぁ、中学三年生という年代の男の子ってこんな感じなのかな・・・・と 思えてしまうほど、説得力をもって感じられました。 彼の目から見た友人、教師、女装趣味の男、そして何もしゃべらない父。 一見、女装趣味の男に銭湯で言い寄られるという展開に 気色悪さを覚えてしまうのですが、しかし、本当に気味が悪いのは、この父親。 家族とは会話も無く、ただ黒い本を読んでいるだけ。 かつては精悍な男性だったような思わせぶりなくだりがあるだけに、 現在の残念な感じに陥ってしまったきっかけが気になります。 しかし、そこは、少年の目からは見えない部分。 読者にも見えない部分。 自分の家族にこんな人が居たら、耐えられないだろうなぁ。 いや、家族だからこそ、受け入れられてしまうのだろうか。 気づいときには、そんな父親だったら、それが普通になるのでしょうか。 事件の展開が、思っていなかった方向に行ったため、 中盤から読み止められなくなりました。 小説家としても、凄い人ですね。
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『シネマと書店とスタジアム』
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- 2015/05/22(Fri) -
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沢木耕太郎 『シネマと書店とスタジアム』(新潮文庫)、読了。
『深夜特急』の第1巻で止まってしまっておりますが、 別のエッセイに寄り道(笑)。 タイトルどおり、映画と本とスポーツ(サッカーやオリンピック)のお話です。 映画は、結構、ヒット作品というか、私でもタイトルを知っている作品が多く出てきたのですが、 それでも、天邪鬼な私は、観ていないものが多いという(苦笑)。 一方で、本の方は、かなりマニアックな作品が多く、 触手が伸びるほど惹かれたものは少なかったです・・・・・。 スポーツ観戦は、サッカーや冬季五輪の話ということで、 野球派の私にとっては、少し距離のある感じでした。 と、まぁ、なんだかネガティブな言葉を並べてしまいましたが、 しかし、エッセイとしては非常に面白かったです。 焦点を絞って描かれた世界観が、例え私がスキー競技に興味がなくても、 へぇ~、長野のジャンプ台で、こんな物語が巻き起こってたんだぁ!と 関心を呼び起こされる語り口で、面白かったです。 エッセイのポイントが絞られるほど、 そこに登場する人間自身の物語に接近していくことになり、 その舞台装置については、大きな意味を成さなくなってきます。 そのような文章を読んで、やはり、世界を切り取ること、そして意味づけすることが どんなに重要な行為なのかを実感しました。 1つ、本作の中で紹介されていた『黒い輪』。 私も、かなり前に読みました。 広瀬隆の解説が型破り!というところに着目しつつ、モヤモヤしてしまったのが 私も沢木サンも同じで、なんだかホッとしました(笑)。
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『深夜特急1』
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- 2012/07/17(Tue) -
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沢木耕太郎 『深夜特急1』(新潮文庫)、読了。
大作なので、これまで尻込みしていたのですが、ついに読み始めてしまいました(笑)。 伊豆大島の往復の船の中で読んでいたら、否が応でも旅情は募ります。 雰囲気満点! 初っ端、インドでの情景描写で始まるのでアレレ?と思ったのですが、 長旅の中で、まさに異国情緒溢れる街といえば、インドが筆頭なんでしょうね。 そして、この旅の最初の切っ掛けが、「デリーからロンドンまで乗り合いバスで行けるか?」 という賭けだったと知り、大英帝国と、その植民地インドの関係や文化の相違度に いろいろと想像が膨らみました。 つまりは、第一章で惹き込まれていたわけで、すごい本だと感じました。 デリーに行くまでに「ちょっと立ち寄った」ということになっている 香港・マカオでの経験も、魅力に溢れ、足止めされる理由にうなずけます。 まさに、その街に「生きている」人々の姿が描かれていて、 非常に興味深かったです。 今回、たまたま第1巻を100円で見つけたので試しに読んでみたのですが、 2巻以降も見つけ次第、挑戦したいと思います。
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