『勝手にふるえてろ』
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- 2015/05/28(Thu) -
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綿矢りさ 『勝手にふるえてろ』(文春文庫)、読了。
久々の綿矢嬢は、恋愛小説です。 でも、やっぱり、視点の置き方が変わってます。 これ、褒め言葉(笑)。 主人公は、彼氏が2人居ると申す。イチと二。 でも、読んでいくと、イチは片思い、二は告白されているけど自分自身が乗り気ではない。 そんな中途半端な関係。 どちらも客観的には恋愛関係ではないと思われます(苦笑)。 でも、この主人公に惹かれるのは、私自身共感を覚えるところが多いから。 二に対する冷静を通り越して冷たい評価をしてしまうところ、 しかも、その冷たさを一旦隠して二と普通に会話をしてしまうところなど私自身そっくりです。 ま、告白されたのに回答もしないままズルズルとデートを重ねるようなことはしませんが。 だって、後になって断るときに面倒だから(爆)。 でも、明確に告白されるまでは、ズルズルと一緒に出かけたりしてしまいます。 だって、お誘いを断る理由を考えるのが面倒だから(爆)。 私なら告白された時点で気持ちに整理をつけてお断りしてしまうと思いますが、 その手前での、二という男の思考回路や行動基準への評価の仕方が、非常に納得できます。 せっかく二が求めているであろう相槌を打ってやったのに 謙遜している風を装って即座に否定する回答を寄越してくることへの嫌悪感や、 自分の趣味は押し付けるけど、こちらの嗜好には興味がないことを隠さない幼稚さへの軽蔑とか・・・・。 何よりも、自分のプライドを傷つけられるのが嫌なので、 極力そうなることを回避しようとして、自分がベストを尽くさない理由をこしらえたり、 何かに積極的にアプローチすることを避けて見ているだけで、評論家に徹するようにしたり、 そういう行動の仕方が、主人公と非常に近いです。 なので、共感しつつも、自己嫌悪に陥る読書でした(苦笑)。 主人公は、思いを寄せるイチに対して、中学校卒業以来、 ずっと思いを抱えたままで何も行動してこなかったところまでは私と同じですが、 結局は、同級生に成りすまして同窓会を招集するなど、思わぬところで行動力を発揮し、 さらには、会社に、ニセの産休申請を出してしまったりと、なかなかなぶっ飛び具合を披露してくれます。 私自身は、何かのスイッチが入って、そのような行動力を発揮する自分が全くイメージできないのですが、 主人公がイチと話していた「ドードー鳥の絶滅の理由」から、 相手を選り好みしすぎて結婚できないのは絶滅と同じ・・・・つまりは、私が絶えること・・・・ と考えていったら、結構、深刻な気分になってしまいました。 この気持ちを突き詰めていくと、結婚しなきゃ!出産しなきゃ!と焦った気持ちになり、 主人公のように似非妊娠事件を巻き起こしたりしてしまうほどに慌てる事態に陥るのでしょうか。 ・・・・・・・・うーん、やっぱり自分自身のこととしては、イメージできない。 でも、「結婚しない」ということと、「絶滅」ということとが 自分の中で結びついたこの読書は、大きな発見を得られました。
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『インストール』
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- 2007/11/08(Thu) -
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綿矢りさ 『インストール』(河出文庫)、読了。
とっかかり、光一のキャラが上手くつかめずに手こずりましたが、 かずよしが登場してからは物語がぐっと鮮明になって 面白く読めました。 後半、朝子とかずよしの母親がそれぞれ思わぬ動きを見せてから 最後どういう風に物語を締めるのかと気になってガーッと読んだのですが、 ちょっと拍子抜け。 その後が気になってしまいました。 ところで、パソコン用語について解説めいた文章が出てくるのですが、 2001年って世間的にはまだそんな程度でしたかねぇ? なんだか時代の移り変わりを感じてしまいました。 その頃の私は、「2ちゃんねる」がだいぶ一般化してきたために、 サヨナラしたところだったので・・・。 併録されている「You can keep it.」は、 もう一歩、城島の内面をえぐってほしかったというか、 城島をもっと斜に構えたキャラクターにしてほしかったなと感じました。 学校で発露する子供のいやらしさみたいなものを題材にした作品を 好んで読んでしまう傾向があるので・・・。
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『蹴りたい背中』
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- 2007/05/05(Sat) -
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綿矢りさ 『蹴りたい背中』(文藝春秋2004年3月号)、再読。
父の本棚を漁っていたら、古い『文藝春秋』を発見。 思いのほか面白かったという記憶があった本作を読み直してみました。 「良い!!」というのが最初の3ページほどを読んでの感想。 主人公のユーモア・センスが最高なのに、 物語の他の登場人物達とは決して共有できていない孤独さ、 読者のみに向けられた笑いの視点がシニカルです。 そして、日本語としても読みやすい。 若者言葉に迎合するのではなく、うまく文章に落とし込むことで 書かれた言葉として読みやすさを保ってます。 友人は『インストール』のほうが面白いと評していたので 早くそちらも読んでみたいです。
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