『14歳の本棚』
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- 2015/05/17(Sun) -
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北上次郎編 『14歳の本棚』(新潮文庫)、読了。
中学生を主人公にした小説を集めたアンソロジー。 短編集かと思っていたのですが、 長編や中編小説の一部抜粋などが収録されており、 うーん・・・・・・。 折角の面白そうな作品が、 中途半端な状態でしか読めないことのもどかしさを感じました。 小学校や中学校の国語の教科書が、良い作品を紹介していてもイマイチ面白くないのは、 小説を抜粋して掲載するからだと思うんです。 それと同じ過ちのような気が。 氷室冴子の『クララ白書』が、軽めのタッチで面白かったです。 井上靖の『夏草冬濤』も、きちんとした形で読んでみたいなと感じました。
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『天平の甍』
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- 2007/03/03(Sat) -
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井上靖 『天平の甍』(新潮文庫)、読了。
鑑真の日本渡来にかけた日本人留学僧の物語。 テーマとしては興味があったのですが、 描写が淡々としていて、主人公と距離を感じてしまったため、 最後まで、のめり込むことが出来ませんでした。 この作者らしい筆捌きではあるのですが、 今回は特に描写対象との距離を感じて、冷たい印象を受けました。 『額田女王』のときは、同じような文体でも 物語の力強さを存分に感じることができたのですが・・・。 ボリュームの問題のなのでしょうかね? それにしても、普照の移動ルートが巻頭の地図上に示されていますが、 地図ではピューッと線が引かれていますが、 総移動距離数千kmの壮大な冒険です。 そしてまた、移動にかかる時間の長さ、待つ時間の長さを考えると、 想像もつかないゆったりとしたスケジュールであり、 1分1秒、時間に迫られてせかせかと生活している身からすると、 こんなに時間がかかっても消えない情熱というものに感嘆します。
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『化石』
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- 2005/12/09(Fri) -
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井上靖 『化石』(角川文庫クラシックス)、読了。
自分が死病にとりつかれていることを知った人間が どのように考え、どのように行動するのか。 死病にかかった100人の人間がいれば、100通りの考えと行動があるのだろう。 この一冊を読んだだけで、死病を患った人間を知ったことにはならない。 しかし、たとえ1/100のことであれ、この一冊は、ある人間の死病とのつきあいを 余すところなく描いている。 ちょっとしたきっかけで、大きく変化する心の動きを見事に捉えている素晴らしい作品だった。 一方で、主人公・一鬼が、死病と闘うのではなく、ただ受け入れようとする姿勢、 むしろ、医師や周囲の人間を拒むかのような姿勢を、 実際に必死で死病と闘っている人間、また死病と闘い力尽きた人間は、 どう感じるのだろうかと思うと、居た堪れない気持ちになった。 「生きよう」という気持ちに積極的になれない主人公に対し、 死病と闘った人を見送ったことのある自分は、 複雑な気持ちになった。
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