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『数に強くなる』
- 2023/12/01(Fri) -
畑村洋太郎 『数に強くなる』(岩波新書)、読了。

失敗学の畑村先生による、「数」の捉え方の本。

私自身、小さいときから算数は好きで、学校の勉強でも得意でした。
新しく出てきた数学的概念についても、それほど理解に苦労した覚えがありません。
唯一、ベクトルは苦手でしたけど・・・・・。

そのおかげか、フェルミ推定的な思考法も得意な方だと思います。
大外れしない程度には推測できます。

一方で、子供の頃から数字に親しんできたので、「数に弱い」という人たちから
「どうやったら算数ができるようになるの?」と質問されても上手く答えられません。
大学生の時、アルバイトで個人指導の塾講師を短期間だけやってましたが、
算数に限らずどの教科も「できない」「わからない」という生徒に対して、
どうしたらできるようになるか、という指導が出来ず、すぐに辞めてしまいました。

自分自身、具体的な問題の解き方が思いつかずに「分からない」ということはありましたが
そもそも考え方の部分、例えば公式とか、定理とか自体が分からないということがなかったので、
分からない問題が出てきても、補助線をどう引けば良いかさえ教えてもらえたら
そこからは自分で解答に辿り着けることが多かったです。

しかし、公式自体が何言ってるか分からないとなると、教える術がないというか、
公式が分からないという状態が私には分からないという状態になり、お手上げでした。

例えば、本作内で、「17×18」を暗算するという話が出てきましたが、
「17×20-17×2」で暗算可能だと著者は書いています。
私も、同じような方法で暗算します。
17×18=17×(20-2)=17×20-17×2 ということなのですが、
たぶん、数に弱いという人は、学校で因数分解の公式は勉強しているはずですが、
それを暗算に適用するという考え方を持っていないのかなと思います。
そもそも因数分解が理解できないという人もいるかもしれませんが。

私自身は、算数・数学が好きだったので、今も日常生活で数字があると遊んでしまいます。
車の運転中に、前に居る車のナンバーを見て、「3で割り切れる」「7で割り切れる」とか考えたり
「4つの数字を四則演算して10にできるか」と考えたり。

最近思うのは、そういう風に数字で遊べる興味関心は、個性というか、遺伝というか、
先天的なモノなのではないかということ。
うちは祖父が数学大好きで、私自身、幼稚園から中学校までの期間、祖父に数学を
指導してもらってました。他の教科は独学で塾通いせず。
父も比較的数学は得意だったみたいだし、祖母や母は記録魔なので
家計簿から中元歳暮で誰から何をもらったとか旅行で誰にどの土産を買っていくらだったとか
ぜーんぶ記録して、後から参照できるようにしてます。
こういう家に生まれ育ったら、勉強は好きになるんじゃないかと思います。
逆に、そうではない環境に生まれ育つと、興味関心を持つきっかけって、得にくいよなーと。

本作を楽しんで読める人は、もともと数に強いというか、親しみを覚えている人が多いのではないかと。
もしくは自己評価が低くて「数に弱い」と思い込んでるけど世間平均からすると強い人だったり。
数に弱い人が興味関心をもてる内容なのか、そこは気になりますね。




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『危機の経営 サムスンを世界一企業に変えた3つのイノベーション』
- 2022/08/01(Mon) -
畑村洋太郎、吉川良三
         『危機の経営 サムスンを世界一企業に変えた3つのイノベーション』(講談社)、読了。

メインタイトルだけ見て買ってきたのですが、読み始めたらサムスンの企業改革の話で、
そこでようやくサブタイトルを確認する始末(苦笑)。
日本の企業経営を学ぶつもりで手に取ったのですが、予定外に韓国の話となりました。

たしかに、韓国は経済危機になっていたはずなのに、
いつの間にか財閥グループがどんどん海外マーケットに進出して大ブランドになり、
日本のブランドよりも、分野によっては認知度もシェアも握っているような状態になりました。
私も、会社員時代、財閥グループの金融会社が日本に進出してくるのに
事業提携したりして、社内で、顧客でもあるが同業他社として脅威に感じるという
不思議な存在感を発揮していました。

そんな財閥グループの中でも最も有名なサムスングループに、
会長から請われて経営改革の指導に行ったという吉川氏の話を軸に、
そこに畑村氏が簡単な解説を加えるという構成です。

当初の読書目的とは異なりましたが、
サムスン躍進の理由が、日本人の目で、内部から解説されるという内容に、
非常に興味を持って読み進めることができました。

そもそも吉川氏が韓国に渡った時点では、
サムスンは、日本の有名ブランドの製品を模倣して安く製造するという単純な戦略をとっており、
見本の日本製品を見ながら、だいたい同じような感じに組み立てるという方法で、
マニュアルもない、指導者もない、原価計算もしない、工場の現場の整理整頓もしないという
まぁ、発展途上国にありがちな状態だったようです。

そこに対して、1つ1つ吉川氏が仕組みを導入し、組織内に徹底させていった様子が描かれます。
まずは、吉川氏が、会長に請われてやってきた重要人物としての立ち位置があり、
韓国財閥における会長の絶対的な権限と指導力、そして会長直属の秘書室が持つ権限を
バックボーンにしながら改革をして行けたという、韓国企業ならではの文化があるのかなと思います。
政府による支援も日本よりもっと露骨で徹底してるでしょうし。

本作中ではちょっとしか触れられてませんが、成績の悪い社員を即日クビにしたりしてて
日本よりも首切りがしやすい法体系なのかなと感じました。
そういう人員整理を強行できる方の裏付けがあると、より一層、会長や秘書室の権力は強くなり
トップダウンで指示を落としやすくなりますよね。
多分、日本よりも、グループ本部と各グループ企業、本部と現場、ホワイトカラーとブルーカラーの間の
断絶というか、階層的な意味での絶対的な距離感があるのではないかとも想像しました。

なので、サムスンで著者が実行したことと同じことが日本でできるのかというと
そこには疑問がありますが、ただ、こういうか専制政治的な企業経営ができる場合は
経営理論をそのまま上からズドーンと落として指示できる強さがあるので、
その経営理論がほんとうに有効なのか否かを判断できる良い事例だなと感じました。

畑村氏の解説で印象に残ったのは、その企業が行っている事業や組織の強み弱みに
1つ1つ価値を付けていく、その価値づけとは優先順位付けであるというもの。
優先順位付けとは、つまり困ったときに残さないといけないもの、切り捨てるべきものを
明確化しておくということであり、その事業の成長や進退に応じて
優先順位付けを柔軟に変動させていくことが大事なんだろうなと思います。

こういうところは、自分も経営に取り入れていかないといけないなと学びになりました。




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『「失敗学」事件簿』
- 2022/01/17(Mon) -
畑村洋太郎 『「失敗学」事件簿』(小学館文庫)、読了。

失敗学の畑村先生。
私は、大学の卒論で産業事故を取り扱ったので、
失敗学の話には普通の人より強い興味を持っているという思いがあり、
日々のニュースでも、発生した事故の原因や再発防止策などが特に気になります。

本作では、多くの実際に起きた事故のエピソードが紹介され、
それぞれの事故において検討すべきキーポイントが示されています。

いろいろな事例をもとに書かれているから分かりやすいように思えて、
1事故当たりの説明が少ないので、表面的な話で終わってしまっているように思え、
私的には不満足でした。

紹介事例を1/3に減らして、1事例ごとの解説を3倍に増やしてほしいなと感じました。
私は、紹介された事故のほとんどは記憶がありましたが、
それでも細かな原因の部分の記憶は曖昧なところがあり、
もっと詳しく書き込んでくれないと、根本原因と被害を加速させた原因とが
うまく区別して理解することができないように思えました。

そして、事例がどんどん出てくるので、ポイント解説もあっさりしていて
指摘されていることの重みが適切に伝わらないんじゃないかなと危惧しました。

失敗学の本質は、別の著作で学んだうえで、
本作は事例に沿って本質を検証していく副読本的な扱いにすべきじゃないかなと感じました。




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『気づく力』
- 2015/05/17(Sun) -
畑村洋太郎ほか 『気づく力』(プレジデント社)、読了。

30人近い識者が語る「気づく力」。
1篇あたりの分量もほどほどで、読みやすかったです。

また、「気づく力」という共通テーマを掲げつつも、
その単語の使用を強制していないため、
各識者が思うままに「気づく力」を解釈して自己の考えを述べており、
視点の違いや適用するシチュエーションの多様性などが
逆に興味深い内容になっていました。

様々な局面で、「気づく」とはどういう瞬間を指すのかがイメージでき、
今の自分に足りていない認識力や判断力に、それこそ「気づく」のに良い本でした。


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『「わかる」技術』
- 2014/12/12(Fri) -
畑村洋太郎 『「わかる」技術』(講談社現代新書)、読了。

失敗学という分野で有名な著者ですが、
その観点に限定せずに、広く、現象を捉えるとはどういうことかという観点で
モノゴトを捉える術を述べている本です。

非常に冷静に、抽象化した議論をしているので、
納得度が高いです。
しかも、言葉は平易なので、分かりやすいです。

ところどころ図示することで分かりやすく説明していますが、
図示するために必要なシンプル化という行為の大切さが良く分かりました。

ムダを削ぎ落として本質だけを見る。
この技術を磨きたいです。


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『東大で教えた社会人学』
- 2012/11/27(Tue) -
草間俊介、畑村洋太郎 『東大で教えた社会人学』(通読)。

「東大工学部の人気授業」と書かれていたので買ってきたのですが、
なんだか、のっぺりとした内容に拍子抜け。

『週刊ダイヤモンド』とか『週刊東洋経済』とかの特集記事を
要約した程度の内容に感じてしまいました。

こんな講義を聞いてて、面白いのかなぁ・・・。

理解学部の息抜きには、手頃な講義だということなのかしら?


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