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『本質を見抜く力』
- 2019/10/13(Sun) -
養老孟司、竹村公太郎 『本質を見抜く力』(PHP新書)、読了。

両氏の対談本です。

冒頭、エネルギー政策の話から、地球温暖化の話に続いていくのですが、
温暖化のシミュレーションは一種政治的なものだと切り捨て、
温暖化には良い影響と悪い影響があり、
自然というのは中立だから丸損になることはないという評価に納得しました。

この主張は、ロンボルグの本の方が詳しく書かれていて興味深いと思いますが、
大事なのは、養老孟司氏のような発信力のある人が発言することだと思います。
この養老氏の問いかけにより、一般的な地球温暖化脅威論に疑問を持った人が
ロンボルグの本とかを読むようになると、日本国内での議論が深まって良い方向に進むかなと思います。

そして、温暖化防止目的ではなく、
エネルギーの効率的な活用という目的で省エネを進めることは大事だが
日本や欧州に比べて、米国と中国は国民の生活パターンをコントロールできない点で同じ、
という指摘は、なるほどなと思いました。
日本人や欧州人のように、省エネや自然環境のために多少の不便は受け入れて
みんなでルールを守ろうという感覚は、米国人や中国人にはなさそうです。
日本人の感覚でルール作りやマインド構築を想定していっても、うまくいかないでしょうね。

そして、中盤では、竹村公太郎氏の徳川幕府による国家運営の話がいろいろ登場し、
興味深く読めました。
具体的な内容としては、竹村氏の本の方がじっくり詳しく書かれているのですが、
本作では養老氏との対談ということで、議論に別の視点が加わって、面白かったです。

ただ、本作の対談は、対談のテンポが良いのは一つの魅力ですが、
逆に言うと話のテーマがどんどん飛んで行ってしまって、ちょっと消化不良感が残ってしまいます。
竹村氏の徳川幕府の国家運営に対する評価も、前に本を読んでいたので刺さってきましたが、
前知識が全くなかったら、この対談だけではそこまで印象に残らなかったかも。

先に述べた温暖化論に対する批評も、ロンボルグの主張が頭にあったから納得できたけど、
この対談だけではイマイチ腑に落ちなかったかもしれません。

知的好奇心は刺激してくれる対談ですが、事前の予習の有無で受ける印象がだいぶ変わってきそうです。
そういう点では、自分がスルーしてしまっている問題提起も多そうです。




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『スルメを見てイカがわかるか!』
- 2018/09/18(Tue) -
養老孟司、茂木健一郎 『スルメを見てイカがわかるか!』(角川ONEテーマ21)、読了。

ファンが多そうな2人の対談。
対談であるからには、2人の持っている知識がぶつかりあって
より高いところへと昇華されていく過程を期待したのですが、
何となくお互いに好きなことを言っている印象で、
あんまり噛み合っていないような・・・・・(苦笑)。

でも、養老センセイの提起する視点は、面白いなと思いました。
情報は止まっているけど人間は動いているとか。
情報は洪水のようにやってくるけど、その1つ1つは切り取られた瞬間の静止画でしかなく、
人間の方が常に変化しているから、二度と同じ瞬間に戻れない。
ついつい、情報の洪水の動きの方に目が行ってしまいがちですが、
静止画の群れであるというのは、なるほどなぁと。
そうなると、1つ1つの静止画にいつまでもこだわるのではなく、
次の展開がどうなるかという動きに敏感にある必要があるのかなとか。
まだ消化できるところまで行ってないですが、投げかけられた内容は面白かったです。

茂木センセイの方は、もともと、あまり氏の語る脳sのものの話が
あまり私には刺さってこないところがあって、本作でもピンと来ませんでした。
社会とか、文化とか、思想とかと絡めた脳の話は面白いんですけどね。
脳そのものについてはイマイチ興味が持てず・・・・。

すっきりと「面白かった!」と言い切るほどではありませんが、
ところどころ刺さってくるものがありました。


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『バカにならない読書術』
- 2015/04/20(Mon) -
養老孟司、池田清彦、吉岡忍 『バカにならない読書術』(朝日新書)、読了。

前半は養老センセのエッセイ、後半は養老孟司、池田清彦、吉岡忍の鼎談です。

時々毒ッ気が重たく感じるときがある養老エッセイですが、
本作では読書がテーマなおかげか、興味深く読み通せました。

読書や、読書を通じた人間形成の話について
ご自身の趣味の昆虫採集や、専門の医学の観点でのトピックスを交えながら、
多面的に考察していくプロセスが面白かったです。

様々なオモシロ要素を盛り込みながらも、きちんと一つのところに収斂させていき、
なおかつ全体のストーリーが起承転結になっているというのは、さすがの筆捌きです。

後半の鼎談は、養老孟司池田清彦吉岡忍という、私の中ではあまり
繋がらなかった3人が、仲良さそうにワイワイしゃべっている姿が新鮮でした。

また、アベキン先生の世間の話が出てきたり、
福岡伸一センセの生物学のはなしが出てきたりと、
最近の自分の読書の流れからしても、偶々ヒットしててびっくり。

それにしても、みなさん、読書の幅が広く、また、テーマに沿って過去の読書録をきとんと話せるぐらい
本を読み込んでいるところが凄いなと・・・・・・・当たり前か!

最近、読み流す傾向が強くなってしまった私としては、反省ですな。


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『虫眼とアニ眼』
- 2013/11/10(Sun) -
養老孟司、宮崎駿 『虫眼とアニ眼』(新潮文庫)、読了。

少し前、宮崎駿監督が引退を表明されましたね。
私は別に宮崎アニメのファンと言うほどではないのですが、
それでもやっぱりヒット作は一通り観ています。
『風立ちぬ』は、まだですけど・・・。

なんとなく人当たりは柔らかいけど中身は頑固な職人という人物像を描いていたのですが、
こんなに喋る人だとは思いませんでした。
自説は作品だけで表現して、あとは当たり障りのないことで丸めるのかなと思いきや
結構、極端なことを主張する方だったんですね。
ちょっと驚きました。

冒頭、宮崎駿氏の手による、「理想の街」の絵が何枚も載っており、
1つ1つ細部まで見ていくのにワクワクしましたが、
途中で思ったのは「私の年代がこの空間には登場しない・・・・」と・・・愕然。
専業主婦みたいな人はいるんですけど、子供と老人ばっかりで、
働いている人が絵の中にほとんど居ないんですよね。先生と医者ぐらい。
屋根が青々と茂っている円形の家には住んでみたいなぁと思いましたが、
この町で生きて行く自信はないです。幼さと老いしかない町なんて・・・・。

本題の対談の方は、現実世界に向けての鋭い指摘は、
いくつかナルホドなぁと思うものがありました。
ただ、その解決策というか、「こんな世界であるべきだ」という結論が
現実世界から断絶した遊離した世界のように思えて、あんまり頭に入ってこなかったです。
やっぱり、子供と虫しか登場しない空間の話だったからでしょうかね。

あと、対談形式にはなっていますが、
意外とお互いに、相手の話を聞いてないですよね(爆)。
ま、聞いてないというより、聞き流して、自分の言いたいことを言ってる感じ。
あとがきで、「ぶつかりようがない」というように両者の思想の近さを述べてますが、
ぶつからなければ、ぶつからないなりに、相手の話を受けて、広げるということは
出来ると思うんですよ。相乗効果と言いますか。
この対談では、そこがあまり感じられなかったです。
多分、養老先生の本を読んでるのと変わらない感じ。

てなわけで、なんだか不満ばかり書いてしまいましたが(苦笑)、
期待した割には・・・・という印象でした。


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『まともな人』
- 2011/12/10(Sat) -
養老孟司 『まともな人』(中公文庫)、読了。

養老先生のエッセイ。

意外と、世の中に向けて毒を吐いてます。
皮肉な物言いも多いです。
主張の方向性としては、池田清彦先生に似ているように思います。

でも、清彦先生のような痛快さが、なんか足りない・・・・。
ちょっとドヨ~ンとしている印象を受けます。
なぜだろう?

昆虫採集や解剖という世界のお話が引き合いに出されるからでしょうか?
世間の人はそれを暗い世界だとする・・・という前提で話が進むからでしょうか?

しっかり考えると面白いのですが、
読んだ瞬間の爽快さが足りないのは、毒舌文章とすれば物足りない。


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