『SOSの猿』
- 2017/02/20(Mon) -
伊坂幸太郎 『SOSの猿』(中公文庫)、読了。

ポップに知的で面白い作品を読みたいなぁ・・・と思い、
積ん読状態の伊坂作品の中から本作を選んでみました。
裏表紙に「面白くて考えさせられる、伊坂エンターテイメントの集大成!」
とあったので。

いきなり西遊記や悪魔憑きの話から始まるのですが、
ポップさというより理屈っぽさ全開で、
期待していた突き抜け感は得られなかったです。

エクソシストを副業とする(?)「私の話」と、
株の誤発注問題の原因究明に取り組む男について語る「猿の話」とが
交互に繰り返される物語構成で、
いったいこの話は、どこでどうやって繋がっていくのだろうかと
それが気になってグングン読めました。
そこは、さすが伊坂作品。

読み進められるんだけれども、なんか伊坂作品としては
すっと腹に落ちてこない感じのもどかしさ。
以前にも別の作品で感じたのですが、
内面に落ち込んでいくときに、極端な思考回路で思いつめちゃうタイプの
キャラクターが登場する作品は、理屈っぽくなり苦手なのかも。

「私の話」と「猿の話」は、ちゃんと「五十嵐真の話」として
繋がって収斂していくのですが、
ちょっとずつ不整合を起こしているというあたりは、
面白い仕掛けだなと思いました。
そして、その理由も、悪魔とか孫悟空とかではなく、
ユングを介しつつも、なんとなく現実世界に折り合いをつける感じで
まとめていくところも、さすがです。

スカッと爽快!というまでの終わり方ではなかったですが、
1つ1つ原因は究明されていくので、読み終わったときの
「あぁ、読み終わった」という感覚は十分得られました。


SOSの猿 (中公文庫)SOSの猿 (中公文庫)
伊坂 幸太郎

中央公論新社 2012-11-22
売り上げランキング : 191893

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  伊坂幸太郎 | CM(0) | TB(0) | ▲ top
『死者の精度』
- 2015/12/29(Tue) -
伊坂幸太郎 『死者の精度』(文春文庫)、読了。

死神がターゲットの調査をしにこの世にやってくる。
1週間の調査で、「可」か「否」かの判断が下され、「可」となれば事故死や事件死で命を絶たれる・・・・。

枠組みとしては、他でも読んだことがあるような設定です。
基本的に「可」となることが前提だったり、
死神が特にターゲットに思い入れがあるわけではなく淡々と職務をこなすだけだったり、
死神がこの世に小慣れていないというキャラクター設定など
設定面での味付けはされていますが、
やはり伊坂作品なので、会話の面白さに惹かれました。

全部で6作品が収録されていますが、
教養のある人は映画の話などを踏まえながら自分の哲学を語り、
荒々しい世界を生きてきた人は、しかし真っ直ぐな目で世界のあり様を語り、
しかも、その言葉にはウィットがあるというところから、
作品の世界観に引き寄せられていきます。

死神に「否」という権限を与えながら、
乱発させないところも、世の中甘くないんだよ・・・・・と言われているようで
戒めになりました。


死神の精度 (文春文庫)死神の精度 (文春文庫)
伊坂 幸太郎

文藝春秋 2008-02-08
売り上げランキング : 3139

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  伊坂幸太郎 | CM(0) | TB(0) | ▲ top
『砂漠』
- 2015/08/10(Mon) -
伊坂幸太郎 『砂漠』(新潮文庫)、読了。

いやはや、面白かったです!

タイトルと表紙絵の感じから、冷たい感じのお話を想像してたら、
熱い大学生活の青春ストーリーでした。

伊坂作品は、どこかズレている感じの登場人物が物語をかき回してくれることが多いのですが
本作でも西嶋という不思議な敬語で友人と会話をする男が登場。
正直、自分の日常生活にいたら、多分近寄っていないと思うのですが、
なぜか、この小説の世界観の中では、憎めないんですよねー。

そして、西嶋が集めたマージャン仲間の北村、東堂、南、プラス鳥井。
彼らが繰り広げる会話自体が、「あぁ、大学生活って、こんな感じでくだらなくも楽しい日々だったな」と
思い出に浸るのに十分な青春っぽさ。
ちょうど土曜日に大学の先輩後輩たちと飲み会があったので、
自分の生活の感情ともマッチして、楽しく読めました。

途中で起きる交通事故は、もし自分が直面したらと思うと壮絶な内容ですし、
自分の友人が巻き込まれていたら、正直なんと声をかけてよいものか分からないほどの
強烈な出来事です。
しかし、彼らは、彼らなりのやり方で受け止め、乗り越えていく。
本当に強い5人だなと感じ入りました。

その気になれば、砂漠に雪を降らせることもできる

「その気になれば」というところが、非常に大事なんだなということが伝わってきました。


砂漠 (新潮文庫)砂漠 (新潮文庫)
伊坂 幸太郎

新潮社 2010-06-29
売り上げランキング : 11750

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  伊坂幸太郎 | CM(0) | TB(0) | ▲ top
『あるキング』
- 2014/09/15(Mon) -
伊坂幸太郎 『あるキング』(徳間文庫)、読了。

昨夜、眠気が全然やって来てくれず、
仕方なく本作を手にとって、結果的に一気読み・・・・・。
サクサク読めたのは確かですが、眠れないほど面白かったのかというと因果関係は逆で、
眠れなかったから最後まで読めちゃった、という感じです。
結果、夜3時半就寝。

仙醍市に本拠を置く万年最下位チームの熱狂的なファンの両親のもとに生まれてきた主人公。
幼い頃から両親の指導(もしくは監視)のもとで、野球漬けの日々を送り、
小学生にしてプロ野球投手の球をホームランにするという異様な成長を遂げる・・・・。

前半は、両親の偏ったモノの考えが気持ち悪くて、
不快な気持ちが抑えられない読書となりました。

『マクベス』を題材にして、
「きれいは汚い、汚いはきれい」という矛盾する価値観を様々な現実の局面で提示し、
「常識と思っていることは、必ずしも普遍的な価値観ではない」というようなことを
言おうとしていたのではないかと推測しますが、
私としては、「社会的にダメなものはダメだろー!」と反感を持ってしまいました。

確かに、価値観を制限するような「常識」のありようは、
人間の思考を窮屈にする面もあると思いますが、
一方で、安心・安全な社会を維持するためには、ある程度の枠組みを必要とするのも事実。
私からすると、主人公の両親の思考や行動は、社会を破壊する異分子としての
要素が強すぎて、危険人物にしか思えませんでした。
共感の余地なし。

その両親に育てられた主人公も、前半では、かなりアンバランスな発育を見せており、
情緒面や社会性の面で、いろんな欠落を感じさせるため、
非常に可哀想に感じてしまいました。
人間として様々なものを失って得たものが野球の打者としての才能「だけ」だなんて・・・・と。

後半は、なぜか主人公が、成長とともに社会性をきちんと身につけるようになっていたため
(誰が教育したんだろう?とやや疑問な展開でした)
不快感は覚えずに、面白く読むことが出来ました。
でも、反対に、「きれいは汚い」を映し出す場面がぼんやりとしてしまった感もあり
物足りなさも覚えました。

著者が伝えたかったことが、読む側にきちんと伝わっているのだろうかと、
心配になってしまう作品でした。


あるキング (徳間文庫)あるキング (徳間文庫)
伊坂 幸太郎

徳間書店 2012-08-03
売り上げランキング : 96038

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

マクベス (岩波文庫)マクベス (岩波文庫)
シェイクスピア SHAKESPEARE

岩波書店 1997-09-16
売り上げランキング : 125357

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  伊坂幸太郎 | CM(2) | TB(0) | ▲ top
『チルドレン』
- 2014/07/12(Sat) -
伊坂幸太郎 『チルドレン』(講談社文庫)、読了。

連続短編集です。

陣内という不思議な哲学を持った男の周りで繰り広げられる
くだらなくも奇想天外な出来事について。

出来事に巻き込まれる友人や後輩の視点で物語りは進みますが、
彼らの陣内評が挟まれることで、益々、陣内の特異性が際立ちます。

場面場面で言っていることが違ったり、正反対だったりしますが、
なぜかその根底では一貫性がありそうな(気になる)変な説得力。
そして、預言者じみた言葉が、当たらずとも遠からずで実現するファンタジー。

リアリティがあるんだかないんだか分からないような陣内の存在感です。
そのあたりの、ふわふわした感覚が面白い。

出来事に特別な意味づけをするかのように繰り出される陣内の言葉には、
不思議な含蓄がありました。


チルドレン (講談社文庫)チルドレン (講談社文庫)
伊坂 幸太郎

講談社 2007-05-15
売り上げランキング : 3744

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  伊坂幸太郎 | CM(0) | TB(2) | ▲ top
『フィッシュストーリー』
- 2014/05/28(Wed) -
伊坂幸太郎 『フィッシュストーリー』(新潮文庫)、読了。

中篇4作が収められています。

短編のようなサクッと落として締める爽快感でもなく、
長編のようにじっくり読ませる重厚さでもなく、
意外と中篇って難しいですよね。ダレやすいというか。

でも、本作に納められた4作は、どれも一気に読ませてくれます。
さすが伊坂幸太郎!って感じです。

特に、上手く視点をずらしていきながら作品を構成するところや、
どこか世間とずれている登場人物たちなど、
伊坂作品らしさが溢れています。

「動物園のエンジン」は、ストーリー展開そのものよりも、
3人の男(というよりその中の1人か!?)が交わす会話に惹かれ、
それを対照的な夜の動物園の静けさと不気味さに引き込まれました。

「サクリファイス」は、横溝正史の世界かっ!って思っちゃいましたが、
閉鎖的な村の人間関係がなかなかに興味深かったです。

表題作「フィッシュストーリー」は、時間軸を超えた展開になっていきますが、
1つ1つの時代で、短編が書けそうな雰囲気です。
曲が聞いてみたくなりましたが、映画版を見ると、なんとなく期待を裏切られそうなので(苦笑)
想像の世界にとどめるようにしておきますわ。

「ポテチ」は、おかしな泥棒さんたちが登場してきますが、
その裏に隠された真相は、なかなかに重たいもので・・・・・『重力ピエロ』を思い出しました。
軽い会話と重い現実というのも、伊坂作品によくある構成ですね。


フィッシュストーリー (新潮文庫)フィッシュストーリー (新潮文庫)
伊坂 幸太郎

新潮社 2009-11-28
売り上げランキング : 10720

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  伊坂幸太郎 | CM(0) | TB(0) | ▲ top
『ゴールデン・スランバー』
- 2014/02/16(Sun) -
伊坂幸太郎 『ゴールデン・スランバー』(新潮文庫)、読了。

今日は、美術展でも見に行こうかと思っていたのですが、
朝起きたら風は強いし、雪は残ってるし、風邪ッぴきの咳も残ってるしで、
結局、終日、家でウダウダ。

時間が有り余ってるので長編小説に挑戦ということで、本作をば。

仙台で開催された人気者首相のパレード中に
ラジコンヘリに着けられた爆弾が爆発。首相夫妻が暗殺された。
その実行犯として、なぜか追いかけられることになった青年は・・・・。

最近、陰謀論の本を読んだばかりだったので、
まさに陰謀論ど真ん中の本作は興味深かったです。
警察機構(というかその裏側の政治組織)に罪をなすり付けられ、
必死にもがこうとするものの、情報を集める方も流す方も押さえている権力機構に
太刀打ちできるはずもなく・・・・。
佐藤優ワールドばりのはめられっぷりで(苦笑)。

いつもの伊坂作品のとおり、時間軸が前後するので頭を使わされましたが、
それでもテンポの良い展開と会話の妙を楽しめました。
ただ、中盤、突然登場してきた別の事件の犯人に必然性が感じられず、
さらに医者の絡み方も不自然な印象を受けました。
伏線の回収の仕方が、あまり丁寧でないなぁ、伊坂作品らしくないなぁと。

最後の広場での展開も、思い描いていたほどには劇的でなく、
あら、こんなもんか・・・・というのが正直な感想。

脇役たちも、現実世界の感覚からすると違和感満載のキャラが多いのですが、
その謎もあまり明確にされることなくお話が閉じられてしまい、
謎が謎のまま残ったというか、深く考えるだけ無駄なのかと思ってしまうほど。

まぁ、第三部において、20年たっても事件の真相は闇のままということが示されているので、
物語の核心はうやむやなままなんだろうなとは思っていたものの、
ここまでフワッとしてると、自分一人ポツンと取り残された感が。
話を広げすぎちゃった感じですかね。


ゴールデンスランバー (新潮文庫)ゴールデンスランバー (新潮文庫)
伊坂 幸太郎

新潮社 2010-11-26
売り上げランキング : 2375

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

アビイ・ロードアビイ・ロード
ザ・ビートルズ

EMIミュージック・ジャパン 1998-03-11
売り上げランキング : 26575

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  伊坂幸太郎 | CM(0) | TB(1) | ▲ top
『陽気なギャングが地球を回す』
- 2014/02/11(Tue) -
伊坂幸太郎 『陽気なギャングが地球を回す』(祥伝社文庫)、読了。

銀行強盗4人組の話。
爽快な手際のよさで銀行から4千万円を奪った主人公たち。
しかし、途中で現れた別の現金輸送車襲撃犯のグループに車と金を乗っ取られ・・・。

「こんなに銀行強盗が連発する世の中なんて嫌だ!」と思いつつも(苦笑)、
主人公4人+αの面々のキャラクターに惹かれて、
「こんな人たちが住んでいる世界なら有り得るのかもな」と思えてしまうのが
伊坂作品の凄いところ。

そう、何よりも私が伊坂作品で好きなのは、とにかく良くしゃべる男たち。
世の中の本質からどうでも良いことまで、とにかく作品を通して
しゃべりまくってます。
こういう「無駄な知性」って、大好きなんですよねー(失礼!)。

4人はそれぞれ特殊な能力というか、
一般人よりも一部が非常に優れているのですが、
その組み合わせも小気味良く噛み合っています。

そして、伏線をきちんと回収して、最後に全てを繋げてみせるプロット。
ここまで読後感がすっきりする作家さんも珍しいです。

最後にライバルにぎゃふんと言わせて、さて次に行こうか!という爽やかさ。
あぁ、楽しかった。


陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)
伊坂 幸太郎

祥伝社 2006-02
売り上げランキング : 4743

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  伊坂幸太郎 | CM(0) | TB(0) | ▲ top
『魔王』
- 2013/03/30(Sat) -
伊坂幸太郎 『魔王』(講談社文庫)、読了。

どのように要約すれば良いのか悩む作品です。

念じた相手に思った通りの言葉を発せさせることができる不思議な能力を持った男の話。
ファシズムに覆われていく日本の政治状況を描いた話。
なんでもよく話す兄弟の話。

うーん、どれも違う。しっくりこないです。

自分としては、なんだか尻切れトンボで終わってしまった印象を受けたため、
「何のための能力だったの!?」「これからの日本はどうなるの!?」
「弟がやろうとしていたことはなんだったの!?」
と、様々な疑問が湧いてしまい、感想に結論がつけられないんだと思います。

ま、そこを考えさせることを目的とした作品なのでしょうけれど。

個人的には、ファシズムに流されてしまう日本人の様子が興味深かったです。
現実に起こりそうな具体性とリアリティがありました。
実際に、今、日本人が「強いリーダー」を求めているという状況にも
非常にマッチしていて、読んでいて、少し恐怖を感じました。

小説としては、あんまり好みの展開ではなかったのですが、
(尻切れトンボな印象の作品はちょいと苦手・・・)
登場人物たちが「考えている内容」が興味深かったです。


魔王 (講談社文庫)魔王 (講談社文庫)
伊坂 幸太郎

講談社 2008-09-12
売り上げランキング : 9871

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  伊坂幸太郎 | CM(0) | TB(0) | ▲ top
『終末のフール』
- 2012/08/28(Tue) -
伊坂幸太郎 『終末のフール』(集英社文庫)、読了。

上手いよねー、やっぱ、上手いよねー。

連作としての構成、それぞれの章がお互いに影響しあう関係性、
主人公の口から吐き出される台詞、そして結末。

どれも、読んだ人間に何かを残してくれます。

3年後に隕石が衝突して地球は滅亡する、
でも、そんな未来に向けて、前向きに生きる人々の姿。
シチュエーションは極端なのですが、それを受け入れられる人間達の姿があります。

ひとつ気になったのは、隕石衝突の試算がされて、回避不能と分かった後の日本。
治安は大混乱となり、強盗や略奪が横行する街となったとの描写が・・・。

しかし、あの大震災の後の日本人の姿を見ていると、
たとえ隕石の衝突が予測されたとしても、ここまでの混乱にはならないのではないか
との思いが湧き上がってきました。

これが核戦争というような人間起因のものであれば、
市民活動家みたいな人々が大手を振って登場し、事態は混乱はしたのかもしれませんが、
隕石という、ある種の自然災害であれば、日本人は事態を受け入れるような気がします。

ま、震災と地球滅亡とを同列で語ってはいけないのでしょうが、
なんとなく、日本人はもっと強いような気がしました。


終末のフール (集英社文庫)終末のフール (集英社文庫)
伊坂 幸太郎

集英社 2009-06-26
売り上げランキング : 46789

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  伊坂幸太郎 | CM(0) | TB(1) | ▲ top
| メイン | 次ページ