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『アイネクライネナハトムジーク』
- 2020/08/13(Thu) -
伊坂幸太郎 『アイネクライネナハトムジーク』(幻冬舎文庫)、読了。

伊坂作品らしい連作短編集だと思います。
各お話の登場人物たちがどこかで繋がっていて、
でも時間軸は10年先に行ったり20年前に戻ったり、
なかなか複雑な関係性を有しています。

その中で、「この女性のお父さんのことを知ってて、あなたはこんなことを言うのか」
というような脅し文句が時間を超えて引き継がれていくところが
いかにも伊坂ワールドですねぇ(笑)。

今回、面白いなと思ったのは、そんなに変な人が出てこないところ。
確かに、変わった性格の人は居るのですが、
特殊能力を持った人は出てこない(ボクシング世界チャンプぐらい!?)ので、
とても親近感を持てる世界観でした。

そこらへんに広がってそうな普通の世界なのに、
1人1人が魅力的で、面白い言葉を残していきます。
普通の人より、ちょっとウイットに富んでて、
普通の人より、結構、忍耐力があって、
普通の人より、かなり機転が利く。
そんな人たちのお話です。

私はあんまり格闘技の世界に興味がないので、
ボクシングヘビー級の世界チャンピオンというのがどれほど凄いことなのか
正直わからないのですが、男の子だけでなく、女の子まで夢中にさせちゃうというのは
それだけ偉大な成果ということなんでしょうね。
日本中を熱狂させる何かがあるのかな。

ボクシングというスポーツが、これだけ様々な人の人生を変える力があるんだなというのが
意外な発見でした。




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『残り全部バケーション』
- 2020/05/16(Sat) -
伊坂幸太郎 『残り全部バケーション』(集英社文庫)、読了。

当り屋や恐喝など、いろんな悪事を、他人からの依頼でやってあげる
悪の代行業コンビ溝口&岡田。
そんな生活から岡田が足を洗おうとして・・・・・・という話から始まります。

最初は、岡田目線で物語を見ていたので、
溝口の口八丁手八丁で適当に生き抜いていく姿に、
「こんなダメな人って、いるよねー」と距離を置きながら見ていたのですが、
岡田の次に別の男と悪徳コンビを組んでいく溝口の様子を見ていたら、
だんだんと、なぜか応援するような気持ちも芽生えてしまい、
「岡田をもっと大事にしておけばよかったのに・・・・」というような憐憫の感情も出てくるほどに。

なぜか岡田が素敵な人に見えてしまうという異常事態ですが、
もとは下っ端の悪人にすぎず、なんでこんなにどのキャラも魅力的に見えてしまうのだろうかと
伊坂ワールドの不思議を体験できます。

逆境に陥った時に、残りの人生はバケーションだと開き直れるような人間の図太さって、
大事なのかもなぁ・・・・と思った読書となりました。




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『夜の国のクーパー』
- 2019/03/13(Wed) -
伊坂幸太郎 『夜の国のクーパー』(創元推理文庫)、読了。

私があまり得意ではない第2期の作品ですが、
意外と面白く読めました。

戦争という陰惨なテーマを扱っていますが、
物語をクールな猫の視点で語っていくので、軽いタッチで読めてしまったのかもしれません。

しかし、描かれている内容は、裏切りや嘘、身代わり、格差というようなもので、
かなりしんどい事象がたくさん出てきます。

これを読んでいて思ったのは、
「知らない」ということが、どれだけその社会の持つ世界の広がりを制限してしまうのかということ。
例えば、北朝鮮の一般国民にとって、自分が住む世界の外の世界に対する認識って
本作で描かれたような感じなのかなと思ってしまいます。
本作に登場する国民は「馬」を知りませんでしたが、
北朝鮮国民は「キリン」を知っているのだろうか?とか。

冒頭シーンで、猫が人間に話しかけてきたり、
杉の木からクーパーという怪物が生まれるという伝説が語られたり、
クーパー退治に出かけた戦士たちは体が透明になってしまうという顛末など
ファンタジー満載な展開で、最初は置いてきぼり感を覚えたのですが、
猫の件は別として、クーパーに関する物語は、どうも伝聞情報ばっかりで信憑性がイマイチだな
と思い始めてからは、真相が気になって、一気に面白くなってきた感じです。

自分の目が見て頭が考えている世界は、どれだけ狭いのだろうかと
自分自身の視野について考えさせられるお話でした。




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『陽気なギャングの日常と襲撃』
- 2018/10/09(Tue) -
伊坂幸太郎 『陽気なギャングの日常と襲撃』(祥伝社文庫)、読了。

『陽気なギャングが地球を回す』の続編。
前作を読んだのがかなり前だったので、ギャング団の面々のことを忘れてしまっており、
最初、短編が続くので、「どの人がギャングなんだっけ?」と想像しながらの読書に。

で、各短編で、それっぽい人物(苦笑)が脇役で登場してくるものの、
アクションシーンで活躍するわけではなく
どちらかというと安楽椅子探偵的な活躍だったので、
「あれ、こんな静的なキャラクターだっけ?」と思ってしまいました。

が、そこは伊坂作品。
前半は4つの短編でしたが、
中盤に4人のギャングが集結し、再び銀行強盗。
そして、そこで新たな事件が勃発!

そして、物語の視点は、ギャング団4人のそれぞれに移り、
まさにギャングが物語を動かしていく流れになります。

こりゃまた、複雑な構成にしたのね・・・・と思っていたら、
あとがきによると、最初は短編8つで終わらせる予定だったらしいです。
しかし、4つ書いたところで、1つの物語に収斂させようと構想が変わり、
そこから、この構成に持ち込んだのだとか。

当初の短編4つを手直ししたとは言え、
1つにまとめてしまうのは、相当な力技!
実行できてしまうのは、さすが伊坂幸太郎ですね。

でも、やっぱり脇役で華を添えるギャングよりも、
自分たちが世界を回しているギャング達の方が、読んでいてスカッとします。
それでこそ、響野のおしゃべりや、成瀬の冷徹さや、雪子のドライビングテクニックや
久遠のスリの技術が活きてくるというものです。

さらに続編もあるようなので、楽しみです。




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『オー!ファーザー』
- 2018/06/27(Wed) -
伊坂幸太郎 『オー!ファーザー』(新潮文庫)、読了。

あとがきで著者自身が語っている通り、第1期の最後の作品。
つまり、私が好きな伊坂ワールドの作品ということです。
もちろん、面白かった!

主人公は高校生男子。
スポーツができ、勉強もでき、女の子の扱いもうまく、度胸もある。
なぜかと言えば、父親が4人いるから。
そして、4人の父親と一緒に暮らしているから、それぞれの父親の得意分野を引き継ぎ、
なんでもできる少年が出来上がった・・・・・・って、そんな馬鹿な。

母親の4股交際のせいで、主人公の妊娠が分かった時に父親を名乗り出た男が4人。
その誰もが自分が父親だと譲らず、結局、4人の父親と一緒に生活する羽目に。
でも、主人公は、生まれたときからこの環境なので、
世間を上手く欺きつつ、4人の父親と日々の暮らしを成立させています。

設定がまず伊坂ワールドなのですが、この4人の父親がまた、
ウィットに富んでいるというか、ネジがどっか抜けてるというか、
それぞれが自分なりの信条を持って人生を生きているので
馬鹿な会話の端々に、哲学的な箴言が散りばめられています。
私は、伊坂ワールドの破天荒でテンポの良いストーリーテリングも好きですが、
何よりも、この哲学的お言葉たちが好きなんですよね~。

チンピラに付きまとわられる中学時代の悪友に巻き込まれ、
野球少年の引きこもり事件に巻き込まれ、
女の敵 vs 倫理の敵による知事選挙に巻き込まれ、
主人公の少年は、どこまでもお人好しで、ツイていない男です。

なのに、4人の父親をはじめ、同級生の面倒な女の子に助けられ
裏社会に名前がとどろく恐怖の男にも見守られ、
危機一髪のところで難題を回避していきます。
そして、あらゆる謎が、最後に一気にクリーアされていくというカタルシス。

著者の言うように、伊坂作品的要素が濃すぎる気もしますが、
でもやっぱり、第1期を好む読者としては嬉しい作品でした。

4人のキャラクターあふれる父親たちの中で、
最初は知的な悟さんの言葉に惹かれましたが、
でも、勲さんの言葉は熱かったし、鷹さんの言葉は本質をついてるし、
葵さんの言葉はクールに響きました。

結果、どのお父さんも、カッコよかったです。


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『バイバイ、ブラックバード』
- 2018/02/11(Sun) -
伊坂幸太郎 『バイバイ、ブラックバード』(双葉文庫)、読了。

5股をかけていた優男が、
とある事情から<あのバス>に乗らなければならなくなり、
その前に、5人の彼女に別れを伝えに行くというお話。

事情とは何なのか、<あのバス>とは何なのか、どこに連れていかれるのか、
大事なことが何も見えないまま、彼女に別れを告げるシーンばかりが5つ並びます。

そこに帯同するのは、身長180センチ体重180キロのハーフの繭美。
一体どんな容貌なんだよ・・・・・と想像を逞しくしてしまいますが、
見た目だけではなく、言動も規格外の破天荒な人物。
粗暴な物言いや乱暴な行動、本音を隠さない言いっ放しの発言、
怪物のようなキャラクターです。

そんな怪物と結婚することになったので別れてくれという
かなり無謀な言い訳で別れを切り出す主人公。
彼女にとってみれば、到底、納得できるものではないはずなのに、
みんな各々の事情や理屈で、それを受け入れる方向に流れて行ってしまいます。

その流れは、一種、不思議な理屈でもって進んでいくのですが、
その会話の妙は、いつもの伊坂作品でした。

でも、個人的に気になったのは、
繭美のキャラクターが完成しているようで、実は、大事なところでブレているような気がすること。

そもそも、これだけの剛腕キャラなのに、
<あるバス>に乗る前に、彼女に別れを告げに行く行為自体を認める心の広さが
なんだかキャラクターと合っていないように感じます。
そしてエンディングでの行動。
結末としては、ある種、王道な気もしますが、なんだか繭美がやっちゃうと
ちょっと興ざめな感じがしました。

乗り切れないまま終わってしまった感じがする作品でした。


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『PK』
- 2018/01/12(Fri) -
伊坂幸太郎 『PK』(講談社文庫)、読了。

タイトルの感じや裏表紙の紹介文から、
ちょっと苦手な方の伊坂ワールドかなぁ・・・・と不安に思いながら手に取ったら、
案の定、そっち方面でした。

哲学的な話が何度も振られるものの、
それに対する明確な答えが作品の中では用意されておらず、
読者が自分で考えるように仕向けられる感じです。
その放り出し方が答えのはるか手前で放り出される感じというか、
ヒントもないままに放り出される感じというか、
その冷たさが、この手の伊坂作品ではいつも苦手に感じます。

「PK」「超人」「密使」と3つの話が収録されていますが、
登場人物が重複しているため、当初、長編だと思って読んでしまいました。
で、最後に一気に話がつながってくるのかと期待したら、
そのまま放り出されて終わってしまった感じです。

各ピースが一気にはまっていく爽快感を期待して
良く分からない話を最後まで読み続けてたのに・・・・・・残念。

個々の話を見ていくと、表題作「PK」が一番惹かれたかな。
ワールドカップ予選でのPKシーンにまつわる裏話、
そして作家と大臣の職務における壁のお話。
それぞれの登場人物たちの悩んでいる状況が
一番分かりやすかったように思いました。

そして「超人」、こちらは、名前の通り超人が持つ不思議な能力の話が
どんな風に能力を発揮するのか語られていく展開が面白かったです。

最後の「密使」が、全てをつなぐ話だと思って読んでいたので、
そうではないエンディングに、最後、頭が混乱して終わってしまいました。

投げ出され感が寂しかったです。


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『ジャイロスコープ』
- 2017/08/28(Mon) -
伊坂幸太郎 『ジャイロスコープ』(新潮文庫)、読了。

短編小説集です。

「ジャイロスコープ」という言葉は、
確かに、伊坂作品を表すのにぴったりの言葉かもしれません。
「軸を同じにしながら各々が驚きと意外性に満ちた個性豊かな短編小説集」を指すのだとか。

ただ、本作に関しては、あまり、その表現が合わなかったように思いました。
個々の作品が突飛すぎて、軸を感じられなかったからかもしれません。

最初、「浜田青年ホントスカ」の主人公2人を軸に
連作短編集が展開されていくのかと誤解しておりました(苦笑)。

続く「ギア」は、筒井康隆と椎名誠を足して3で割ったような印象の世界感。
でも、伊坂風の味付けが、あんまり得意ではありませんでした。

「二月下旬から三月上旬」の幻想的な感じというか、
現実と非現実の間を揺らぐような世界感も、私には不得意な感じ。

「彗星さんたち」は、伊坂作品にしては珍しくお仕事小説で、
しかも、新幹線の清掃員という、今となっては知られ過ぎている世界の話で、
あんまり新鮮味を感じることができませんでした。
何も、伊坂さんが書かなくても・・・・・という感じです。

乗り切れないまま最後まで来てしまい、
書き下ろしの「後ろの声がうるさい」で、これまでの短編を繋いでいこうとしていますが、
これまた、ちょっと強引かな。

期待していた伊坂ワールドとは、少し趣が違っていました。


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『SOSの猿』
- 2017/02/20(Mon) -
伊坂幸太郎 『SOSの猿』(中公文庫)、読了。

ポップに知的で面白い作品を読みたいなぁ・・・と思い、
積ん読状態の伊坂作品の中から本作を選んでみました。
裏表紙に「面白くて考えさせられる、伊坂エンターテイメントの集大成!」
とあったので。

いきなり西遊記や悪魔憑きの話から始まるのですが、
ポップさというより理屈っぽさ全開で、
期待していた突き抜け感は得られなかったです。

エクソシストを副業とする(?)「私の話」と、
株の誤発注問題の原因究明に取り組む男について語る「猿の話」とが
交互に繰り返される物語構成で、
いったいこの話は、どこでどうやって繋がっていくのだろうかと
それが気になってグングン読めました。
そこは、さすが伊坂作品。

読み進められるんだけれども、なんか伊坂作品としては
すっと腹に落ちてこない感じのもどかしさ。
以前にも別の作品で感じたのですが、
内面に落ち込んでいくときに、極端な思考回路で思いつめちゃうタイプの
キャラクターが登場する作品は、理屈っぽくなり苦手なのかも。

「私の話」と「猿の話」は、ちゃんと「五十嵐真の話」として
繋がって収斂していくのですが、
ちょっとずつ不整合を起こしているというあたりは、
面白い仕掛けだなと思いました。
そして、その理由も、悪魔とか孫悟空とかではなく、
ユングを介しつつも、なんとなく現実世界に折り合いをつける感じで
まとめていくところも、さすがです。

スカッと爽快!というまでの終わり方ではなかったですが、
1つ1つ原因は究明されていくので、読み終わったときの
「あぁ、読み終わった」という感覚は十分得られました。


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『死者の精度』
- 2015/12/29(Tue) -
伊坂幸太郎 『死者の精度』(文春文庫)、読了。

死神がターゲットの調査をしにこの世にやってくる。
1週間の調査で、「可」か「否」かの判断が下され、「可」となれば事故死や事件死で命を絶たれる・・・・。

枠組みとしては、他でも読んだことがあるような設定です。
基本的に「可」となることが前提だったり、
死神が特にターゲットに思い入れがあるわけではなく淡々と職務をこなすだけだったり、
死神がこの世に小慣れていないというキャラクター設定など
設定面での味付けはされていますが、
やはり伊坂作品なので、会話の面白さに惹かれました。

全部で6作品が収録されていますが、
教養のある人は映画の話などを踏まえながら自分の哲学を語り、
荒々しい世界を生きてきた人は、しかし真っ直ぐな目で世界のあり様を語り、
しかも、その言葉にはウィットがあるというところから、
作品の世界観に引き寄せられていきます。

死神に「否」という権限を与えながら、
乱発させないところも、世の中甘くないんだよ・・・・・と言われているようで
戒めになりました。


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