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『フーガはユーガ』
- 2023/07/02(Sun) -
伊坂幸太郎 『フーガはユーガ』(実業之日本社文庫)、読了。

伊坂作品って、淡々とした描写の中に救いようのない極悪人が出てくるパターンがあり、
本作もそれだったので、苦手なジャンルの作品でした。
伊坂ファンは、その深刻な状況を、最後どんでん返しでやっつけてスッキリした!というところに
快感を覚えるのかもしれませんが、私は、それで心の傷が消えるわけじゃないだろうに・・・・と
思えてしまいます。

本作の主人公は、双子の男兄弟。
兄は学業ができ、弟は運動ができるというコンビ。
父親はDVが激しく、抵抗せずに従っていた母はある日子供を捨てて蒸発。
この他にも、小学校の金持ちのいじめっ子や貧困家庭のいじめられっ子、
性的倒錯者の叔父の家に住まざるを得ない孤児など、社会の歪みに苦しむ子供たち若者たちが
たくさん登場してきて重苦しいです。

でも、決して文章は重たくならず、主人公の飄々としたキャラと世の中を達観したような割り切りで
淡々と物語が進んでいくので、まだ読んでいけます。

物語の枠組みは、とある動画に関するテレビ局制作会社の男からの取材依頼に対して、
ファミレスで主人公が動画の経緯というか、自分の過去というか、それを語るという展開で、
過去語りとして物語が進みますが、最初に「僕の話には嘘も交じってるかもしれない」と
幻惑させるようなことをテレビマンに対して宣言しているので、
どこまでが本当でどこからが嘘なのかな?と疑いながらの読書となり、
相応に疲れますが、それがまた伊坂作品の読書の味ですね。

この作品には、救いがあるのかなぁ・・・・・。
私自身は、社会的弱者の頭上に据えられた透明の天井みたいなものを
感じてしまう物語でした。




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『ガソリン生活』
- 2022/01/02(Sun) -
伊坂幸太郎 『ガソリン生活』(朝日文庫)、読了。

年越し読書は伊坂作品となりました。
実は、タイトルだけ見て、エッセイかな?と勘違いしてました。

望月家の自家用車・緑のデミオが主人公。
車たちはお互いに会話を交わし情報交換をしている世界。
道ですれ違った車と刹那的な会話をし、
入った駐車場で並んだ車と自己紹介をし、自分の運転手の自慢をし、愚痴を言い。

そんな車の世界で流通する情報と、
望月家やその近所の人、たまたま知り合った人達との間で流通する情報。
2つの世界が合わさると、今まで見えなかった世界が見えてくるという趣向。

伊坂作品というと、いろんな視点や時系列が断片的に紹介され、
最後に一気に真実の世界に繋がっていくという構造が特徴ですが、
こちらは人の世界と車の世界という断絶が重なり合いながら
一つの真実に繋がっていくという構造で、伊坂作品らしくも新機軸。

正直、無機物が人間のような心を持つという設定の話は、
あんまり面白いと思えたことがなかったのですが、
本作も途中までは、あんまり車の視点が生かされていないように思ってました。

しかし、日本の有名女優の事故死とダイアナ妃の事故死について
車たちが真相に近づいていくあたりの展開から、
あ、そうか、人目を気にする行為でも車の前でなら気にせずやっちゃうから
車が目撃者という立ち位置を確保できれば、真相究明にショートカットできるのか・・・・と
ある種、都合の良い展開をいくらでも作れてしまうところに
著者の狡猾さというか、上手さを見ることができて、そこから引き込まれました。
ほんとに、真相ってどういうことなんだろうか、伏線はどこで回収されていくんだろうかと。

途中、他の伊坂作品の登場人物たちも絡んできたりして無駄に楽しい(笑)。

人間側も、望月家の次男が小学生のくせに大人びてて・・・・というか、こまっしゃくれてて、
これまた良いキャラクターです。
いじめっこにも大人な目線で向き合って、きっちりと落とし前をつける。
そして、エピローグでもきっちり過去の思い出を今につなげる見事な伏線回収ぶり。

新年早々、面白い読書はじめとなりました。




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『ホワイトラビット』
- 2021/09/22(Wed) -
伊坂幸太郎 『ホワイトラビット』(新潮文庫)、読了。

いかにも伊坂幸太郎的な複雑な構成と叙述トリックが楽しめる作品でした。

誘拐ビジネスで成長してきたベンチャー企業に誘拐担当として従事する兎田。
しかし、兎田の妻が当のベンチャー企業に誘拐され、人質との交換条件に、
とあるコンサルを捕まえてこいとの命令が。
運よくコンサルを見つけたものの、追い詰めた先の一般家庭に立て籠もる羽目になってしまい
コンサルをベンチャー企業の社長のもとに連行しなければいけないのに
その家は警察とメディアに包囲されているという絶体絶命のピンチ。

まー、誘拐事件と空き巣事件と殺人事件がバラバラに発生しているのに
その3つの事件が一つの家という空間に集合してしまうという、
なんともご都合主義的展開なのに、ヴィクトル・ユゴーの言葉に乗せられて、
「なんだか、そんな些末なことは気にしなくてよいかも・・・・」と思えてしまう伊坂ワールド。

3つの事件が交錯する家の中で、状況をいち早く理解し、整理して、
新たな立てこもり事件へと組み立てなおしたのは、空き巣の「黒澤」。
そう、『首折り男のための協奏曲』に登場した伊坂ワールド全開の黒澤です。
どんなに切羽詰まった状況でも、ちょっとシニカルに茶化しながら受け答えしてしまえる男。

彼の提案した脱出プランのおかげで、この作品の複雑怪奇なストーリー構成が出来上がっています。
さらには、とっとと現場から消えればいいのに、わざわざ面倒ごとを買って出るお人好しなところも。
それが、どんどん、事態の複雑化に拍車をかけます。

この複雑な構成を、ワクワク感を与えながら、でもちゃんと一読で分かるように
場面を区切って読者に提示していくその物語構成力というか
ストーリーテリング力というか、もう、言ってしまえばプレゼン力だと思うのですが、
そこが伊坂作品はずば抜けてますね。
面白い。

解説で書かれてましたが、仙台という町の「名前は当然知ってるけど行ったことがない街」の
抽象性が、作品に与える効果もあるんだろうなと納得。
(あ、本作の解説は、多面的なのにシンプルな考察が素晴らしいと思いました)

一気読みの面白さで、満足、満足。

ところで、この文章を書くのに、Wikiで伊坂幸太郎を調べたのですが、
もう50歳になられたんですね!
青年作家の印象が強いので、それにも驚いてしまいました。






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『首折り男のための協奏曲』
- 2020/11/19(Thu) -
伊坂幸太郎 『首折り男のための協奏曲』(新潮文庫)、読了。

裏表紙のあらすじに「二人の男を軸に物語は絡み、繋がり、やがて驚きへと至る」とあったので
長編または繋がりの濃い連作短編集かと思って読んだのですが、
基本的には短編集でした。

最初、首折り男の話から始まり、次の物語は別の話が進んでいくのですが、
途中で急に首折りエピソードが登場します。
ここで、「あ、首折りで繋がる話なのか」と思ったのですが、
次の物語には登場せず、「黒澤」の話になり、以降は黒澤で繋がっていきます。

「あれ?首折りと黒澤は繋がってるんだっけ???」と思い、
3話目を読みながら2話目に戻ったりしていたのですが、面倒くさくなって詳しく読み直すのは止めました。
で、以降は、それぞれバラバラな作品として読むことにしました。
つながりは気づけたら楽しもうぐらいの楽なスタンスで。

結果的には、それが良かったのかなと思います。
繋がり探しに気を使って真剣な読書にならなかったので、気楽に読めました。
黒澤の話が続いて、最後に、「あ、また首折りだ!」という、緩やかなつながり。

解説で、各作品のつながりについて真正面から解説してくれてあったので
モヤモヤもすっきりしました。

殺人とか、事故とか、窃盗とか、問題ごとが身近で起こっているのに、
人間というのは、瞬間的に怖がりながらも、日常生活はのんきだなぁと思ってしまいました。
でも、「隣人が殺人犯だ!」という恐怖に支配されたら何も手につかなくなってしまいますから
「隣人は殺人犯かもしれない」という程度の疑問に収めておく鈍感力が
安らかな生活を送るには必要なのかなと思いました。

相変わらず、会話はウィットに富んでいる伊坂節が楽しめるので、
最初はちょっと構成に悩んで混乱しましたが、全体的には面白かったです。




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『アイネクライネナハトムジーク』
- 2020/08/13(Thu) -
伊坂幸太郎 『アイネクライネナハトムジーク』(幻冬舎文庫)、読了。

伊坂作品らしい連作短編集だと思います。
各お話の登場人物たちがどこかで繋がっていて、
でも時間軸は10年先に行ったり20年前に戻ったり、
なかなか複雑な関係性を有しています。

その中で、「この女性のお父さんのことを知ってて、あなたはこんなことを言うのか」
というような脅し文句が時間を超えて引き継がれていくところが
いかにも伊坂ワールドですねぇ(笑)。

今回、面白いなと思ったのは、そんなに変な人が出てこないところ。
確かに、変わった性格の人は居るのですが、
特殊能力を持った人は出てこない(ボクシング世界チャンプぐらい!?)ので、
とても親近感を持てる世界観でした。

そこらへんに広がってそうな普通の世界なのに、
1人1人が魅力的で、面白い言葉を残していきます。
普通の人より、ちょっとウイットに富んでて、
普通の人より、結構、忍耐力があって、
普通の人より、かなり機転が利く。
そんな人たちのお話です。

私はあんまり格闘技の世界に興味がないので、
ボクシングヘビー級の世界チャンピオンというのがどれほど凄いことなのか
正直わからないのですが、男の子だけでなく、女の子まで夢中にさせちゃうというのは
それだけ偉大な成果ということなんでしょうね。
日本中を熱狂させる何かがあるのかな。

ボクシングというスポーツが、これだけ様々な人の人生を変える力があるんだなというのが
意外な発見でした。




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『残り全部バケーション』
- 2020/05/16(Sat) -
伊坂幸太郎 『残り全部バケーション』(集英社文庫)、読了。

当り屋や恐喝など、いろんな悪事を、他人からの依頼でやってあげる
悪の代行業コンビ溝口&岡田。
そんな生活から岡田が足を洗おうとして・・・・・・という話から始まります。

最初は、岡田目線で物語を見ていたので、
溝口の口八丁手八丁で適当に生き抜いていく姿に、
「こんなダメな人って、いるよねー」と距離を置きながら見ていたのですが、
岡田の次に別の男と悪徳コンビを組んでいく溝口の様子を見ていたら、
だんだんと、なぜか応援するような気持ちも芽生えてしまい、
「岡田をもっと大事にしておけばよかったのに・・・・」というような憐憫の感情も出てくるほどに。

なぜか岡田が素敵な人に見えてしまうという異常事態ですが、
もとは下っ端の悪人にすぎず、なんでこんなにどのキャラも魅力的に見えてしまうのだろうかと
伊坂ワールドの不思議を体験できます。

逆境に陥った時に、残りの人生はバケーションだと開き直れるような人間の図太さって、
大事なのかもなぁ・・・・と思った読書となりました。




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『夜の国のクーパー』
- 2019/03/13(Wed) -
伊坂幸太郎 『夜の国のクーパー』(創元推理文庫)、読了。

私があまり得意ではない第2期の作品ですが、
意外と面白く読めました。

戦争という陰惨なテーマを扱っていますが、
物語をクールな猫の視点で語っていくので、軽いタッチで読めてしまったのかもしれません。

しかし、描かれている内容は、裏切りや嘘、身代わり、格差というようなもので、
かなりしんどい事象がたくさん出てきます。

これを読んでいて思ったのは、
「知らない」ということが、どれだけその社会の持つ世界の広がりを制限してしまうのかということ。
例えば、北朝鮮の一般国民にとって、自分が住む世界の外の世界に対する認識って
本作で描かれたような感じなのかなと思ってしまいます。
本作に登場する国民は「馬」を知りませんでしたが、
北朝鮮国民は「キリン」を知っているのだろうか?とか。

冒頭シーンで、猫が人間に話しかけてきたり、
杉の木からクーパーという怪物が生まれるという伝説が語られたり、
クーパー退治に出かけた戦士たちは体が透明になってしまうという顛末など
ファンタジー満載な展開で、最初は置いてきぼり感を覚えたのですが、
猫の件は別として、クーパーに関する物語は、どうも伝聞情報ばっかりで信憑性がイマイチだな
と思い始めてからは、真相が気になって、一気に面白くなってきた感じです。

自分の目が見て頭が考えている世界は、どれだけ狭いのだろうかと
自分自身の視野について考えさせられるお話でした。




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『陽気なギャングの日常と襲撃』
- 2018/10/09(Tue) -
伊坂幸太郎 『陽気なギャングの日常と襲撃』(祥伝社文庫)、読了。

『陽気なギャングが地球を回す』の続編。
前作を読んだのがかなり前だったので、ギャング団の面々のことを忘れてしまっており、
最初、短編が続くので、「どの人がギャングなんだっけ?」と想像しながらの読書に。

で、各短編で、それっぽい人物(苦笑)が脇役で登場してくるものの、
アクションシーンで活躍するわけではなく
どちらかというと安楽椅子探偵的な活躍だったので、
「あれ、こんな静的なキャラクターだっけ?」と思ってしまいました。

が、そこは伊坂作品。
前半は4つの短編でしたが、
中盤に4人のギャングが集結し、再び銀行強盗。
そして、そこで新たな事件が勃発!

そして、物語の視点は、ギャング団4人のそれぞれに移り、
まさにギャングが物語を動かしていく流れになります。

こりゃまた、複雑な構成にしたのね・・・・と思っていたら、
あとがきによると、最初は短編8つで終わらせる予定だったらしいです。
しかし、4つ書いたところで、1つの物語に収斂させようと構想が変わり、
そこから、この構成に持ち込んだのだとか。

当初の短編4つを手直ししたとは言え、
1つにまとめてしまうのは、相当な力技!
実行できてしまうのは、さすが伊坂幸太郎ですね。

でも、やっぱり脇役で華を添えるギャングよりも、
自分たちが世界を回しているギャング達の方が、読んでいてスカッとします。
それでこそ、響野のおしゃべりや、成瀬の冷徹さや、雪子のドライビングテクニックや
久遠のスリの技術が活きてくるというものです。

さらに続編もあるようなので、楽しみです。




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『オー!ファーザー』
- 2018/06/27(Wed) -
伊坂幸太郎 『オー!ファーザー』(新潮文庫)、読了。

あとがきで著者自身が語っている通り、第1期の最後の作品。
つまり、私が好きな伊坂ワールドの作品ということです。
もちろん、面白かった!

主人公は高校生男子。
スポーツができ、勉強もでき、女の子の扱いもうまく、度胸もある。
なぜかと言えば、父親が4人いるから。
そして、4人の父親と一緒に暮らしているから、それぞれの父親の得意分野を引き継ぎ、
なんでもできる少年が出来上がった・・・・・・って、そんな馬鹿な。

母親の4股交際のせいで、主人公の妊娠が分かった時に父親を名乗り出た男が4人。
その誰もが自分が父親だと譲らず、結局、4人の父親と一緒に生活する羽目に。
でも、主人公は、生まれたときからこの環境なので、
世間を上手く欺きつつ、4人の父親と日々の暮らしを成立させています。

設定がまず伊坂ワールドなのですが、この4人の父親がまた、
ウィットに富んでいるというか、ネジがどっか抜けてるというか、
それぞれが自分なりの信条を持って人生を生きているので
馬鹿な会話の端々に、哲学的な箴言が散りばめられています。
私は、伊坂ワールドの破天荒でテンポの良いストーリーテリングも好きですが、
何よりも、この哲学的お言葉たちが好きなんですよね~。

チンピラに付きまとわられる中学時代の悪友に巻き込まれ、
野球少年の引きこもり事件に巻き込まれ、
女の敵 vs 倫理の敵による知事選挙に巻き込まれ、
主人公の少年は、どこまでもお人好しで、ツイていない男です。

なのに、4人の父親をはじめ、同級生の面倒な女の子に助けられ
裏社会に名前がとどろく恐怖の男にも見守られ、
危機一髪のところで難題を回避していきます。
そして、あらゆる謎が、最後に一気にクリーアされていくというカタルシス。

著者の言うように、伊坂作品的要素が濃すぎる気もしますが、
でもやっぱり、第1期を好む読者としては嬉しい作品でした。

4人のキャラクターあふれる父親たちの中で、
最初は知的な悟さんの言葉に惹かれましたが、
でも、勲さんの言葉は熱かったし、鷹さんの言葉は本質をついてるし、
葵さんの言葉はクールに響きました。

結果、どのお父さんも、カッコよかったです。


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『バイバイ、ブラックバード』
- 2018/02/11(Sun) -
伊坂幸太郎 『バイバイ、ブラックバード』(双葉文庫)、読了。

5股をかけていた優男が、
とある事情から<あのバス>に乗らなければならなくなり、
その前に、5人の彼女に別れを伝えに行くというお話。

事情とは何なのか、<あのバス>とは何なのか、どこに連れていかれるのか、
大事なことが何も見えないまま、彼女に別れを告げるシーンばかりが5つ並びます。

そこに帯同するのは、身長180センチ体重180キロのハーフの繭美。
一体どんな容貌なんだよ・・・・・と想像を逞しくしてしまいますが、
見た目だけではなく、言動も規格外の破天荒な人物。
粗暴な物言いや乱暴な行動、本音を隠さない言いっ放しの発言、
怪物のようなキャラクターです。

そんな怪物と結婚することになったので別れてくれという
かなり無謀な言い訳で別れを切り出す主人公。
彼女にとってみれば、到底、納得できるものではないはずなのに、
みんな各々の事情や理屈で、それを受け入れる方向に流れて行ってしまいます。

その流れは、一種、不思議な理屈でもって進んでいくのですが、
その会話の妙は、いつもの伊坂作品でした。

でも、個人的に気になったのは、
繭美のキャラクターが完成しているようで、実は、大事なところでブレているような気がすること。

そもそも、これだけの剛腕キャラなのに、
<あるバス>に乗る前に、彼女に別れを告げに行く行為自体を認める心の広さが
なんだかキャラクターと合っていないように感じます。
そしてエンディングでの行動。
結末としては、ある種、王道な気もしますが、なんだか繭美がやっちゃうと
ちょっと興ざめな感じがしました。

乗り切れないまま終わってしまった感じがする作品でした。


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