『リズム』
- 2016/05/15(Sun) -
森絵都 『リズム』(角川文庫)、読了。

久々に、素直に青春時代を送っている中学生を読んだ気がします。

どうにも、この頃の中学生を扱った作品は、
いじめだったり、犯罪だったり、非行だったり、棄国だったりと
暗い世界の作品が多いので・・・・。

もちろん、スポコンものなどの爽やかな作品はたくさんあるのですが、
そういう熱いものを持たない、普通の中学生の普通の日常を描いた作品って、
印象に残るものが割と少ないように感じます。

本さうは、物語としてはちょっと緩い部分があるかなとは思いましたが、
主人公さゆき、高校受験でピリピリしている姉、
中卒でバンドをしているフリーターのいとこ、いじめられっ子の幼馴染、
この人間関係の構成が上手いです。

あまり熱意が感じられない日々を送っている主人公ですが、
周囲の人間の弱いところや悲しいことには
本人が自覚している以上に共感力があり、
様々な人に無意識の優しい眼差しを向けています。

そのまなざしが、熱意がない分、自覚がない分、
心地よさや安心感を感じさせてくれます。

主人公自身にとっても、つらいことが起きますが、
そんな時に、友人や担任教師がきちんと気づいてあげられる、
そこは現実世界よりも大分甘い世界が広がっていますが、
たまにはこういう小説の展開もいいなと感じさせてくれる甘さでした。


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森 絵都

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『架空の球を追う』
- 2016/02/08(Mon) -
森絵都 『架空の球を追う』(文春文庫)、読了。

なんとなしに買ってきた本だったのですが、これは面白かったです!

短編集というよりも、掌編集と呼んだ方がしっくりくるような
そんな短いお話が詰まった作品です。

短編というと、星新一氏のショート・ショートや、阿刀田高氏の奇妙な話に慣れ親しんでいるので、
オチがつくことを期待してしまいがちなのですが、
本作では、日常生活のワンシーンを切り取ったような話が多く、
明確なオチがないがために、その余韻でいろいろ思いをめぐらせることが出来ます。

その切り取った日常というのも、大きな事件が起きるわけでもなく、
日常の一コマに過ぎないのですが、
その切り取り方や見せ方が上手くて、自分自身の生活はどうなのかなと
ついつい自分に引き寄せて話を読み進めたくなります。

一方で、「こんな視点があったのか!」「こういう考え方の人っているんだ!」というような
着眼点の面白さを感じる場面も多く、読んでいて面白かったです。

こういう、読み手に寄り添ってくる小説というのは、
読んでいて心地よいですし、安心感を覚えますね。


架空の球を追う (文春文庫)架空の球を追う (文春文庫)
森 絵都

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『DIVE!!』
- 2015/08/17(Mon) -
森絵都 『DIVE!!』(角川文庫)、読了。

高飛び込みにかける中高生たちの物語。
スポーツ青春モノの王道を行くような小説ですが、
王道だからこそ安心してのめり込めます。

高飛び込みは、偶然スポーツニュースなどで目にすると、
その美しさに見とれてしまいますが、なにぶん、日常生活では意識することのない競技のため
普段のトレーニングの様子や、選手同士の関係性などよく分かっていませんでした。

こういうスポーツ小説を読むと、競技そのものよりも、
選手の日常生活の様子を知ることができ、スポーツの奥行きを感じられるのが
楽しみの一つになっています。

今回は、中高生が主人公ということで、
思ったよりも聞き分けの良い子供たちが揃っていたので、
大きな波乱はないままに物語は進んでいきましたが、
競技人口が少なく、かつ本人も家族も日常生活内での時間の投資が必要なスポーツでは、
このように従順な子供と、穏やかな家庭環境にある人々しか成功できないのかもしれませんね。

この作品では、そこまで突っ込んでいないというか、
もう少し純真な目で高飛び込みの競技を描いているので、爽やかな世界観が広がっていますが、
競技と人口や競技者の社会階層などの研究をしてみると
社会学的に面白いかも・・・・・なーんて、余計な感想を持ちながらの読書となりました。

大きな波乱もなく、痛めつけられて敗れ去る描写も控えめで、
著者の優しさなのかなと思う反面、もう少し厳しさがあっても良いかなと感じてしまいました。

いずれにしても、日本における高飛び込みという競技を発展させていく難しさを知り、
夏のオリンピックに向けて興味が湧いてきました。


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『いつかパラソルの下で』
- 2015/04/16(Thu) -
森絵都 『いつかパラソルの下で』(角川文庫)、読了。

厳格な父が交通事故で急死。
呆けてしまった母、厳格さに耐えかねて家を出ていた兄と姉、家に残った妹、
一周忌を前に再び顔を合わせる機会が増えて・・・・・。

他人の理解というのは、こうも難しいものかと思い知らせてくれる作品です。
それがたとえ肉親でも。

父のことを何も知らなかったと反省し、父の知人を訪ね、職場を訪ね、郷里を訪ね、
父という人間のことを事後的に調べる兄姉妹。
しかし、それぞれが語る父の姿は、全く違ったものであり、
父の人生の真実が見えてくる・・・・・いや、果たして見えたのでしょうか。

結局、それぞれの登場人物たちが、自分なりの納得をしたというか、
ストーリーを作ってみただけであり、真実に近づけたのかは誰にも分かりません。
というか、「真実」なるものが実在するのかさえも、怪しいものです。

こういう哲学的なテーマを、
ユーモアを交えた会話を通して読んでいくことができ、
楽しみながらも人生の奥深さを知ることができます。

絶妙なバランス感覚の上に描かれている物語であり、
著者の力量を実感できます。

面白い読書となりました。


いつかパラソルの下で (角川文庫 も 16-5)いつかパラソルの下で (角川文庫 も 16-5)
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『風に舞い上がるビニールシート』
- 2014/12/31(Wed) -
森絵都 『風に舞い上がるビニールシート』(文春文庫)、読了。

直木賞受賞短編集です。

最初の方に収められている作品は、
面白く読みましたが、それほど強い印象を残すものではありませんでした。

しかし、後半に入って、ぐいぐいと攻めてくる感じを受け、
流石の直木賞受賞作だと思うに至りました。

表題作「風に舞い上がるビニールシート」は、何の前知識もなかったので、
女性の日常生活を描いた作品かしら?ぐらいに思っていたのですが、
何の何の、国連難民高等弁務官事務所の仕事が舞台のお話でした。
ソマリア、コソボ、アフガンといった単語が作品の中を飛び回ります。
なのに作品の舞台は平和な東京。
まずはこのギャップが、主人公の置かれたアンバランスな境遇を象徴しています。

東京事務所の現地採用一般職ということでフィールドに出たことがない主人公。
しかし、職場結婚した旦那は毎1年単位で危険地域へと出向き、会えるのは年に数日。
結婚生活は数年で破綻し、そしてついに元旦那は危険地域で銃弾に倒れる・・・・・。

元旦那と知り合う前の過去を何も知らなかった、
元旦那がどんな場所で仕事をしていたのか想像も実感もなかった、
元旦那とはそもそも結婚生活で何かを共有し合えていたのかも自信が持てなくなった、
それは、自分が、元旦那が使命に燃えていたフィールドに出向くことを何度も拒絶したから・・・・。

この絶望感は耐え難いですよね。
なんせ自分の決断により、チャンスを拒絶していたのだから。元旦那の居場所を拒絶していたのだから。

国連という世界中のエリートが集まり時間に追われながら仕事をする厳しい環境、
広報というマスコミにたかられるストレスフルな役割、
そんな状況に置かれながらも、この作品の中に悪意を持った人が出てこないことが救いです。

自分の人生に判断を下し、何かを捨てることの厳しさを知りました。

他の収録作では、「ジェネレーションX」のテンポの良さと、その裏に隠れる人生の哀愁、
「守護神」の仏教文化と現代人の折り合いの付け方など、
いろいろと興味深い側面で日常を見ることができ、
満足度の高い読書となりました。


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『永遠の出口』
- 2014/07/09(Wed) -
森絵都 『永遠の出口』(集英社文庫)、読了。

前に読んだ作品は合わなかったのですが、本作で再チャレンジしておいて良かったです。
この本は面白かった!

主人公の小学校4年生から、高校3年生まで、
主人公の人生に変化や転換、成長のきっかけを与えた出来事を描いた連作短編集です。

私は、特に小学校時代の章にはまっちゃいました。
ちょっとしたことで生じる、友達との間の隙間、そして仲間はずれへと続く展開。
子供の残酷さ、特に少女の排他性と凝集性を良く描いていると思います。
そんな中で、主人公は、比較的冷静な目で事態を捉えているので、
展開がどん詰まりにならずに、次へと繋がっていくことが出来ています。

ところどころに登場する、大人になってからの主人公の言葉により、
いかに子供の世界が狭い中で成り立っているのかを思い知りますが、
一方で、世界の中で自分が主人公だと信じて疑わない心は、
大人になるとどんどん失っていき、自分を世界の脇役に追いやってしまうのだなという
悲しい現実も思い知ります。

中盤、中学校に入ってからの主人公の変貌ぶりには驚きました。
あまりに急展開過ぎるだろう、劇的な人生に描きすぎだろうと、
その物語の作り込みの仕方に、読者として作品に少し距離を置いてしまいました。

ただ、よくよく考えると、いわゆる不良な若者はどの時代にも一定人数居ますが、
それが全員不良青年や不良中年に持ち上がっていくわけではなく、
いつの間にか不良らしい生き方をしている人たちは、その世代の中で減っていっています。
つまりは、何かがきっかけで「一般人」の生活に戻っているわけで、
そのきっかけとは、学校の卒業であったり、就職であったり、結婚であったり、
ま、意外とあっさりとした理由なのかなとも思いました。

そうすると、本作の主人公の辿った人生も、
ある意味、標準的な不良さんの人生だったのかも。
このあたりは、親戚や親しい友人にその手の人たちが居ないので、想像するしかないのですが・・・・。

バイトに明け暮れた高校生活では、
中学時代の反動なのか、やたらと良い子になっているような気もしましたが、
ま、最後は、上手くまとめた感じで、気持ちよく読み終えられました。


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森 絵都

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『カラフル』
- 2013/05/06(Mon) -
森絵都 『カラフル』(文春文庫)、読了。

お初の作家さんです。

何の前情報もないまま、いろんな方のブログでお見かけするので試しに買ってみました。
装丁の雰囲気から、ポップな作品だと思ったのですが、
帯には「不朽の名作」の文字が。
なんだかアンバランスに感じて読み始めたら、中身もアンバランスな印象でした。

前世での罪により、輪廻のサイクルに入れず、下界での修行を言い渡された主人公が、
中学生の男の子の体を借りて、再度、人生というものに挑みます。

最初の展開、天使とのやりとりが非常に軽いです。
当然、その後の展開も軽ーい感じで進み、下界で適当に生きる主人公は、
適当に家族とも生活を送り、適当に中学生活も送っていきます。
確かに、最後は真実に気づくのですが、
それでも、あんまり悟った内容の重みを感じることのできない物語でした。
いくらでも重く深く書けるテーマだと思うのですが、
読みやすさを選択したせいか、「不朽の名作」とは感じられませんでした。

家族の本当の姿って、普段はきちんと捉えられていないように思います。
悪いように解釈したり、自分に都合よく考えたり。
でも、本作ほど良いことづくめでもないように思えて、
ちょっと出来過ぎな展開かなぁという気がしました。

おっ、と思ったのは、
60年なり80年なりの人生を、やり直しの効かない唯一の時間と捉えるのではなく、
長い長い輪廻の中で、下界にホームステイする一時期的な期間なのだと考えること。
これって、結構、肩の荷が下りる考え方だと思います。
もっと気楽に日々を楽しもうというメッセージのように感じられて、
ここは共感できました。


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森 絵都

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