『照柿』
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- 2012/01/03(Tue) -
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高村薫 『照柿』(講談社文庫)、読了。
新年一発目の読書は、高村作品です。 とりあえず時間がたくさんあるので、上下巻モノを・・・ということで選んだのですが、 新年早々、暗いよ(苦笑)。 まず、修飾過剰な文章が読みにくくって、苦労しました。 基本的に、主人公(特に男性)が自分の内面をくどくどと述べるのは苦手なんです・・・・。 なかなか事態が進展しないことも、しんどかったです。 サスペンスだと思って読み始めてしまったので、 人間ドラマだと分かっても、なかなか頭が切り替えられなくて、 もっとスピード感を期待してしまいました。 下巻の後半になって、一気に人物たちが動き出してからはグイグイ読ませてくれましたが、 そこに辿り着くまでの疲労感が蓄積されてしまっていて、 読み終わってすっきり満足とはいきませんでした。 読書では、そのときの自分が求めているものと、その本が与えてくれるだろうものとを、 読む前にきちんと見定めるべきだという当たり前のことを、 新年早々に反省いたしました。
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『マークスの山』
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- 2008/08/29(Fri) -
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高村薫 『マークスの山』(講談社文庫)、読了。
1年半ぶりの高村作品。 毎日、仕事を早々に切り上げ、一気に読み通しました。 最初、精神面で障害のある人物の内面描写が続くので、 読むのに忍耐を要しました。 人間の狂気が顕わになっている状況は、ちょっと苦手な分野なのです。 しかし、事件が動き出し、 合田警部補の視点で物語が語られるようになってからは、 もう、次の展開が知りたくて堪らないという思いに突き動かされるようになりました。 どうやって真相に近づいて行くのか、その一歩一歩から目が離せません。 動機の面がはっきりしないため、 ミステリーとして捉えると苦しいところもあるのですが、 合田警部補をはじめとする捜査員の苦闘、 そしてマークスが関わってきた人たちが持つ悲劇、 この2つを緻密に書き込む筆致が、作品の迫力になっています。 マークスが関わったから悲劇が訪れたのではなく、 悲劇の中に生きていたからマークスとの関わりが出来てしまった人たち。 そう思うと、人生とは残酷なものです。
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『黄金を抱いて翔べ』
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- 2007/01/16(Tue) -
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高村薫 『黄金を抱いて翔べ』(新潮文庫)、読了。
『オーシャンズ11』のような金庫破りのお話かと思い、 軽い気持ちで読み始めたら、ガツンと殴られました。 『テロリストのパラソル』でも、同じような衝撃をうけたなぁ。 銀行から500kgの金塊を盗み出す・・・というのは あくまで登場人物たちを結び付けている舞台装置に過ぎず、 本質は、幸田・北川・野田・モモ・ジイちゃん・春樹が 何を感じ、何を考え、何をしたのか描くことの中にあるのだと思います。 幸田を中心に、それぞれとの人間の関係性が 出来事の推移とともに変化していく様子が緻密に描かれていて ぐいぐい読ませてくれました。 わたしは、途中から金庫破りのことなんぞにはあまり感心が向かなくなってしまい、 極言すれば、金庫破りに挑戦すらできない状況に陥っても、 物語が進んでいくのならば、納得できてしまうような気になっていました。 彼らの関係にひとつの結末が付くのなら、それで十分楽しめるだろうなと。 それぐらい、彼らに引き付けられてしまいました。 惜しむらくは、題名かなぁ。 そして、裏表紙の紹介文。 痛快犯罪モノだと思って手に取り、 私のようにハマるタイプと、「騙された!」となっちゃうタイプと 両極端に分かれそうな気がします。
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『地を這う虫』
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- 2006/11/23(Thu) -
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高村薫 『地を這う虫』(文春文庫)、読了。
本読みさん達の間で非常に評価の高い作家さん。 私は、お初でございました。 「元刑事が事件に遭遇する」という舞台設定に、 私はどうやら推理小説の香を強く意識してしまったようで、 最初の作品を読んだときに、「何か違う」と違和感を感じてしまいました。 話が終わっても腑に落ちない感じと言えばいいのでしょうか? で、次の作品も読み終えて、 「あぁ、事件じゃなくて人間を描こうとしてるんだ」と やっと思い至ったのですが、 気軽な気持ちで読み始めてしまった分、 三作品目から気持ちを入れ込むのもなかなかしんどいものがあり、 結局、上っ面を舐めて終わってしまいました。 「あの案件、部長にどうやって切り出して、落とし所はどうしよう?」 なんて、自分の仕事のことを考えながら読んではいけない作品だったようです。 いつか再チャレンジします。 ところで、高村薫さんって、女性作家さんだったんですね。 種々の作品のタイトルから判断して、男の人かと思ってました。 お恥ずかしい。
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