『県庁おもてなし課』
- 2017/06/09(Fri) -
有川浩 『県庁おもてなし課』(角川文庫)、読了。

高知県を舞台に、まちおこしに取り組む県職員の若者を追った
青春お仕事ストーリー+恋愛もの。

第1章を読んでいる間は、あまりの高知県庁のお役所仕事ぶりに
辟易としてしまいましたが、そのダメっぷりに主人公が気づいてからは、
彼の成長小説な要素も加わり、面白くなってきました。

入庁3年目の若手県職員の主人公、
お役所ルールの異様さに気づいていない県庁の面々、
紅一点民間感覚のバイトの女の子、
そして、元県職員の観光コンサルタントと、その頑固娘と売れっ子作家。

キャラがどれも立っていて、読みやすいです。
ドタバタコメディモノとしては分かりやすい配置になっています。

さらに、本作では、血縁関係の複雑さを観光コンサル一家に味付けしており、
独特な情緒が流れる作品となっています。
やや演出過剰な感じもしますが、軽いノリで描いているので
それほど気にならずに読むことができました。

観光特使のエピソードとか、
もう、そのまま有川さんの体験談のようなのですが、
笑い飛ばしているように見えて、結構な恨み節もこもっているような気が(苦笑)。

そもそも「おもてなし課」なんて名前を付けちゃうぐらいなので、
発案者の知事の思いがこもった施策だと思うのですが、
その割には、本作の中でまったく登場してこないので、そこは違和感。
トップダウン施策には、トップダウンなりのスピード感や発言力があり、
一方では上からの細かい指示や介入があってしかるべきなのに、
そこが描かれていないのはリアリティに欠けると思います。

民間事業者との軋轢についても、ほとんど描かれていないので、
県庁職員と観光コンサルが動いただけで、
そんなに簡単には大きな仕事はできないよ・・・・と思ってしまいます。

なので、本作の位置づけとしては、
お仕事小説ではなく、青春小説やラブコメの要素が強いのかなと。
そして、結局は、お役所仕事をくさすのが目的かと(爆)。

コメディとしては面白く読めます。
地方の可能性を感じることもできます。
でも、リアリティに欠けます。


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有川 浩

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『フリーター、家を買う。』
- 2016/02/15(Mon) -
有川浩 『フリーター、家を買う。』(幻冬舎文庫)、読了。

表紙絵のポップな感じや、テレビドラマの軽そうなイメージ(観てなかったので)から、
コメディタッチの物語を想像していたのに、
なんと引き篭もりの息子、重度の鬱病発症の母親、そんな2人を見ないようにする逃げる父親、
こんな重たい家庭の話で、まずはビックリ。

特に、小心で自信がないのにお酒に逃げて当り散らす父親、これが本当に酷い。
母親の病状が重いことに気づき、嫁いだ姉の本気の怒りにも触れ、
息子が早い段階で改心をしていくので、なおさら父親の現実逃れが際立って酷く目に映ります。

正直、途中で脱落しかけたのですが、
それは、著者の描く内容が、重たい現実を直視したものだったからだと思います。

そんな父親も、母親が自らの体を傷つけるという行為に出たことで、
ついに現実を直視せざるを得なくなり、息子とともに看病に取り組むように。
ここからの父親の改心ぶりは、ちょっと展開が都合が良すぎるんじゃない?という印象もありますが、
しかし、前半での重たい印象を読後まで変に引きずらないようにするには、
こういう展開になっちゃうんでしょうね。

とにかく、前半で、いろいろ考えさせられる本です。

私の父親はきちんとした人なので、母親が鬱病になったとしても放置はしないでしょうし、
私の弟も誰かに当たることを得意としない(怒る行為がストレスになるタイプ)ので、
家の中で会話がなくなるような関係にはならないと思います。

そういう家族関係を築けたことに感謝しつつ、
私が知っている36年間は幸せに暮らせてこれたけれども、
もしかすると、明日、何か凄い事件や新しい出来事が起こって、
急激に家族のあり方が変形してしまうような衝撃が訪れるのかもしれない・・・・・と思うと、
非常に怖くなってしまいました。

「あんなに仲の良い家族だったのに・・・・」「幸せそうな一家だったのに・・・・」というような台詞は
ときどき耳にするものですから、何が起こるかわからないという怖さはあります。

ま、でも、先のことを漠然と不安に思ってても仕方がないので、
今を感謝することに心を注いだ方が良いのだと、この本の感想は締めくくるようにしたいと思います。


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『ヒア・カムズ・ザ・サン』
- 2015/05/20(Wed) -
有川浩 『ヒア・カムズ・ザ・サン』(新潮文庫)、読了。

面白かったです!

雑誌編集者の主人公、同じ職場の同僚。
主人公は、人の想いが詰まったものに触れると、その想いを感じ取ることができる特殊能力を持つ。
そんなある日、その同僚の父親が20年ぶりにアメリカから帰国する・・・・・。

1つの設定を、2つの物語で綴った一冊。

小説だったり、舞台化したりと、いろいろビジネス的な話は尽きないようですが、
単純に2種類の小説を並べた作品として、読み比べてみて面白かったです。
1つ1つの作品自体も、読み応えがありました。

特殊能力に関しては、「そんな都合よく、知りたいことや、意味のあることだけ感じ取れるなんて・・・」
と、都合の良い設定だと思わなくもないですが、
物語の味付け程度に抑えられていて、人間関係を描く部分が主軸だったので、
それほど気にせずに読めました。

むしろ、この主人公のキャラクターが、
この特殊能力のおかげで形成されたものなのだという背景が
説得力を持って描かれていると感じました。

無責任な父親のキャラクターはともかくとして、
それ以外の登場人物たちの思いやりが心地よい作品でした。


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『三匹のおっさん』
- 2014/11/13(Thu) -
有川浩 『三匹のおっさん』(文春文庫)、読了。

この作家さんの作品は3つ目ですが、
どれも受ける印象が違っていて、1人の作家さんとして上手く像を結びません。

どの作品も面白いので、満足して読み終えるのですが、
こんな不思議な感覚になる作家さんは居ませんでした。

セミリタイアした、爺さん手前のオッサン3人が主人公。
もてあました時間を使って、勝手に自警団を結成し、
町の問題を解決していく・・・・・。

この解決の範囲というか、レベル感が、非常に身の丈にあったところで手を打っており、
読んでいて安心感を覚えます。
非常に地に足の着いた生き方をしているオッサンたちだなと。

そして、その孫のユーキくんや娘のサナエちゃんは、
非常に聡明なキャラクター設定であり、応援したくなります。
このオッサン3匹と若者2人の組み合わせが、非常に心地よいです。

脇役として登場してくる祖母の芳江なども、
今時の気を遣いあって逆にギスギスする嫁姑の関係なんてなんのその、
お嬢様感覚が抜けない嫁に向かって、厳しい評価をズバンと下します。
これがまた小気味よい。

今の時代において、人間が抱える嫌な面を描いて見せながらも、
適度なレベルの解決策を提示して、バランスよくソフトランディングさせ、
じんわりと人間のよさを感じさせてくれる作品です。

続編も早々にチャレンジしたいです。


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『阪急電車』
- 2014/08/15(Fri) -
有川浩 『阪急電車』(幻冬舎文庫)、読了。

細やか!

読んでいる立場からすると、こうであって欲しい、こういう展開になって欲しいという
読者の願望にきっちりと寄り添って、細やかに表現しているので、
非常に満足感の得られる読書になります。

勧善懲悪!しかも、その悪を懲らしめる度合いが行き過ぎてなくて絶妙!!

阪急今津線の一駅ごとの乗り降りで、様々な乗客の様子が描かれますが、
ちょっとした出会いから人生に深く踏み込みあう出会いもあれば、
その場限りの刹那的な関わりもある。
そんな、電車の中ならではの人間関係が絶妙なバランスで描かれていて
非常に面白いです。

一駅ごとの連作短編集となっていますが、
前後のお話のオーバーラップのさせ方も絶妙です。
深く入りすぎることなく、「お!この人を次の主人公に据えるのか!」という驚きもあり、
どんどん次の物語を読んでいきたくなります。

大阪と兵庫の間のローカル線のお話だったので、全く土地勘がなく、
そういう点ではファンタジー的な要素も楽しめたのと、
東京を舞台にした物語は、地方の土地勘のない人たちにはこんな感じなんだ・・・・という
その他のお話への思いも馳せられる、なかなか想像力豊かな読書となりました。


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『レインツリーの国』
- 2014/05/27(Tue) -
有川浩 『レインツリーの国』(新潮文庫)、読了。

お初の作家さんです。
古本屋で時々目に付いてはいたのですが、「ラノベ系の作家さん」という印象もあり、
今まで手をつけずに来ていました。
本作はページ数も多くなく、さっと読めるかなぁということでお試しに。

ネット世界で出会った健常者と難聴者のベタベタな恋愛モノ・・・・・と
簡単に要約してしまうこともできますが、
とにかく、真剣にけんかをする2人が、なんだか新鮮で、興味深く読めました。

私自身、けんかをすることが非常に苦手です。
面倒な思いをしたくないという気持ちが強く、少しでもけんかになりそうな芽が出ると
すぐに摘み取ろうとしてしまいます。
もちろん、自分からけんかを吹っかけることもなく、また、その技術も無く。

最初の印象からすると、「ひとみ」は、私と似てけんかを極力回避しようと
努力をする女性のように思ったのですが、
その実、芯が強くて、意外と自己主張をはっきり行います。
それが性格から来る面もあれば、難聴という障害のせいの面もあるのでしょうが、
それでも、相手に本気でぶつかろうとする姿勢を凄いなぁと感じました。

対する「伸」は、関西者の調子のよさを持ちながら、
こちらも自分の芯を持っており、しかも相手に合わせて主張の仕方を変えられるという器用な人物。
田辺センセの小説からの流れで、心地よい関西弁が読めるのは、幸せな気持ちになれます。

いつもだったら、こういうベタベタな甘い恋愛モノは逃げたくなっちゃうのですが、
本作は世界に入っていくことが出来ました。

「弱み」とか「トラウマ」とか「不幸な記憶」とか、
「障害」というものだけに囚われない、普遍的なテーマを扱っていたからかなと思います。

有川作品、食わず嫌いにならなくて良かったです。


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