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『高校入試』
- 2021/03/25(Thu) -
湊かなえ 『高校入試』(幻冬舎文庫)、読了。

とある県の県内No1の県立高校における入学試験の日に起きた
一連の妨害事件とネットでの情報拡散の様子を描いた作品です。

単に、「進学校の入試」というのではなく、
「県内No1県立高校」という舞台設定がミソで、
歴史があり実績も兼ね備えた学校だと、母校思いのOBがたくさんいて、
一家代々この学校出身という家もあり、さらには地元の人からの複雑な視線もあり・・・・
という、余計な価値観がくっついてくるところが興味深かったです。
なぜなら、私も、自分の出身地においてそういう立ち位置にある高校の出身だから(爆)。

地元では、進学校として一目置かれており、
そこに通う生徒も親もOBも、プライドが非常に高いのですが(苦笑)、
でも東京の大学に進学したら、単に「県庁所在地の県立高校」の出身というだけにすぎず、
「あぁ、47都道府県にそれぞれ存在する学校の一つに過ぎないんだな」と自覚しました。
私自身、別に、全国的な知名度なんてない公立高校だという自己評価だったので
「そりゃ、そんなもんだよなー」と軽く考えていたのですが、
逆に東京に出て感じたのは、地元での高校への異常な評価の高さでした。

本作内でもさらっと触れられていますが、そういう高校を出て地元の大学に進んだり
大学卒業後に地元に戻ってきたりした、高校の周辺で人生を歩んでいる人が
母校愛を募らせすぎているというか、こじらせているような印象です。
確かに、地元に残ればOB会のネットワークなどが仕事に活用できるでしょうし、
公私に渡って濃い人間関係を築けそうなので、母校愛が強まると思いますが、
正直、私は、大学のOB会の方が活用しやすいし、OB会自体の考え方がさばけているので、
大学のOB会ばかりに出入りして、高校はほとんど縁がない状態です。

高校-大学と同じ学校の大先輩に良くしていただいているのですが
大学OB会のイベントには「仕事で活用できる人脈が作れるから出てこい」と良く誘ってくれますが、
高校のOB会の方は「仕事リタイアしてからでええぞ」という評価。
高齢OB主体の集まりで、今の仕事というより高校そのものの話に花を咲かせる場のようです。

私は、自分自身の体感があるので、本作の舞台となった「橘一高」という存在は
非常に興味深く読めました。

一方で、登場人物たちについては不自然さを覚えてしまい、共感できませんでした。
受験生が「一高」を受験することができる自分に酔っていたり、親が過保護だったり、
先生も「一高」で教鞭をとれる自分の能力に自信を持っていたり、OBが面倒な物言いをつけてきたり、
そういう一つ一つのエピソードには納得できたのですが、
1人1人の登場人物のキャラクターが腑に落ちない感じでした。

先生同士が冗談とは質が違う嫌みな会話の応酬をしているのを読むと、
「そんな陰険な職場ってあるのかな?」と思ってしまいましたし、
試験の採点のシーンで、早く作業を終わらせること優先で正確さがおざなりになっているのを見て、
自分が勤める学校のランクは、受験で優秀な生徒を取ることと、大学受験で良い大学に入れさせることで
全てが決まるのに、その入り口のところでこんな適当な心構えでいるのかな?と疑問でした。
実際に自分が通っていた高校の先生の姿を思い出しても、それはないんじゃないかと思ってしまいます。
「一高」レベルの先生で、本作で描かれたような適当な人が1人ならまだしも
組織の中でたくさんいるような状況というのは、あんまり現実味がないように思いました。

そして、入試の日に事件を起こした人物の動機。これも腑に落ちず。
過去に採点ミスで「一高」に入学できず、その後の人生を狂わされたという人物が
その恨みつらみを晴らすために単独犯で実行に及んだ・・・・・というなら
理解しやすかったと思います。
しかし、それぞれ別の動機をもっている人々が、しかも恨みつらみとは別の感情で動いている人が
ネットワーキング化されて事件を起こすというのは、さすがに無理があるのではないかと感じました。
そんな人が「一高」の関係者として同時期に寄せ集まってきているというのもご都合主義だし。

登場人物が多すぎて読みにくい、理解しにくいというところも私の評価が下がってしまった点ですが、
それは、解説で、テレビの連続ドラマ用に用意された脚本を小説に仕立て直したと書かれていたので、
読みにくかった理由は納得。テレビと文章の得意分野の差異ですから、
本作はテレビで見るべきだったんでしょうね。

せっかく、舞台装置はおもしろいものだったのに、
ストーリー構成に無理があったということでしょうかね。




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『望郷』
- 2020/12/11(Fri) -
湊かなえ 『望郷』(文春文庫)、読了。

とある島で暮らす人々の姿を描いた連作短編集。
図らずも島の話を続けて読むことになり、『海うそ』ほど濃厚な民俗学的描写はないものの
却って日常生活を描写する優しい言葉の端々に島の歴史や自然環境に由来する制約のような
ものが強く感じられました。

どの話も、日々の暮らしや過去の思い出を振り返る構成で、
特にそこには強い謎解きの意思は働いていないのに、
さらっと描写される数行の言葉で、「意思をもって殺された、抹殺された」という事実が
伝えられ、衝撃度がいや増します。
さずが湊作品、上手いですねー。

とにかく登場人物たちが、偽善ぶることなく、露悪ぶることなく、
素直に本能のままに周囲の人間の行動を受け止め、観察し、そこに悪意を感じ取る。
自然な悪意の存在が恐ろしいです。

そして、湊作品には欠かせない「いじめ問題」の要素。
芸能人が自分のいじめ体験を語る行為について、
「耐えろ、負けないで」と語り掛けるのは、被害者のままで居ろということか、という強烈な反論。

さらに、「母の壁問題」も。
なぜ母親は娘をこうも縛り付けようとするのでしょうか。
支配の対象なのか、不満の捌け口なのか、自分が不自由だったから同じ目に遭わせたいのか、
毒母がリアリティを持って迫ってくるから湊作品は怖いです。
私の母は全く毒母ではないので、実体験がないにもかかわらず、「こんな人居そう・・・・」と
思わせる著者の力は凄いです。

どの作品も、数行の真相でガラッと物語の景色が反転するような威力のある転換点があるのですが、
それが違和感なく受け入れられるというか、狙いすぎだよ~と思ってしまうような不自然な作り込みが
感じられないので、強烈な話が続く割にはすんなり読めました。

どれも面白く、一気読みでした。




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『サファイア』
- 2020/10/03(Sat) -
湊かなえ 『サファイア』(ハルキ文庫)、読了。

宝石の名前が付いた短編が7つ。
宝石が登場する作品もあれば、比喩的な意味で使われている作品もあり。
私自身は、宝石に全く興味がないので、そのテーマの宝石に秘められた意味が
イマイチ読み取れていない可能性も大ですが(苦笑)、
でも、それぞれの作品には湊節が効いてて面白かったです。

冒頭の「真珠」は、一人称の男が中年女性にインタビューしている体裁なのですが、
主人公は女の方。なぜか、とある歯磨き粉のブランドに固執して話を展開するのですが
タガが外れた人間の思考回路って怖いなと思わせる作品でした。

ああ、こういう狂気系の作品が並ぶのかな?とちょっと覚悟したのですが、
次の「ダイヤモンド」は、設定が前科者の登場する話でしたが
彼と周囲の人との交流は心温まるエピソードになっていて、
「どんでん返しがどこで来るのかしら」「いつ毒が吐かれるのかしら」と終盤ソワソワしてしまいましたが
そのまま穏やかにエンディングを迎えて、「あぁ、こういう湊作品もあるのね」という感じでした。

「ムーンストーン」も、いじめの嫌らしい描写は出てきますが、
本筋の話の部分は美しい人間の話になっており、これも「どこで裏切りがあるのかしら」と
ソワソワしながら読んでる自分は、ホント嫌な人間ですね(爆)。

「猫目石」では、心の在り様が一線を越えちゃってるお隣さんが登場してきて、
「おお、湊作品だ!」という印象でしたが、その変な隣人以上に
主人公一家の娘、母、父、それぞれが家族に秘密を抱えており、
困ったちゃん以上に、一般の家族の方が怖いわーという作品でした。

「サファイア」と「ガーネット」は続きものの作品でしたが、
宝石にまつわる悪徳商法をネタにしており、登場人物たちの心の動きよりも
この悪徳商法の手口の方に興味を持ってしまいました(苦笑)。




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『ポイズンドーター・ホーリーマザー』
- 2020/01/22(Wed) -
湊かなえ 『ポイズンドーター・ホーリーマザー』(光文社文庫)、読了。

湊かなえ作品では、「毒親」が登場する印象が多いのですが、
本作はタイトルからすると「毒娘」的な???
別の切り口で日本社会の歪みを斬ってるのかしら?と思ったら、
やっぱり毒親がたくさん登場してきて、あぁ、湊ワールドだわあと納得。

で、毒娘は?と思い、中盤では、
「これは、毒親が、自分のやっていることは正しいことだと思い込んでいるから
 自己評価が『ポイズンドーター・ホーリーマザー』なんだな」と自分自身では納得していました。

ところが、最後に収録された表題作で真相がわかりました。
それまでの短編は娘の目線で語られており、娘から見て毒親を描いているので
一方的な親批判となっています。
ところが表題作では、娘と親の双方の視点から描いているので、
最初は毒親の話かと思っていたのに、もしかすると思い込みの激しい娘による
感情的な親批判なのかもしれないと思えるようになっています。
本当は、清く美しいお母さんなのに・・・・という。

いやぁ、怖いですね。
この表題作が最後に来ることで、それまでの作品も全て、真相は別のところにあるのではないかと
疑えてしまうような構成になっています。
そして、その疑いは、作品だけでなく、自分の親子関係にも向けることができ・・・・・・おぉ怖い。

湊作品を読むと、いつも最後は、「うちのお母さんは真っ当な人でホント良かった」と思います。
普通のお母さんという意味ではなく、ホーリーマザーですよ。
穏やかな人だし、みんなの言うことを聞こうとするし、でも芯は持ってて、でも押し付けず。
近所の人からは「静かな人」と思われているようですが、娘の私からすると
「ちゃんと自分のことを見てくれている頼りがいのある人」です。
でも母娘でベタベタすることをお互いに好まないので、さっぱりした関係です。

こんなお母さん、世の中にはなかなか居ないんだなぁと
いろんな小説や家族が出てくるエッセイやルポルタージュを読むたびに思います。
人間の社会というのは恐ろしいですね。
ホッとできる家庭の中に、恐ろしい人が居るというのですから。
うちはボーっとできる家庭で良かったです。




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『豆の上で眠る』
- 2019/11/20(Wed) -
湊かなえ 『豆の上で眠る』(新潮文庫)、読了。

「変なタイトルだなぁ・・・」と思って買ってきましたが、
そのタイトルの由来は作中で語られており、
童話の『えんどう豆の上にねむったお姫さま』がモチーフになっています。

「布団の上から下にある豆を感じることなんてできるのか?」という
お姫様の能力に対する疑問もさることながら、
「そもそも布団の下の豆を感じられたら何で本物のお姫様だと言えるのか?」という
根本的な疑問を覚える作品ですが、その童話の世界におけるモヤモヤとしたものを
現実世界に持ち込んだらこうなりましたという小説作品になってるように感じました。
この構造は、うまいなと感じました。

仲良し姉妹が小学校低学年の夏休み、遊んでいた神社から、それぞれバラバラに家に帰ったら
妹だけが家に到着し、姉は戻っていなかった。
誘拐だ、神隠しだと大騒動になりますが、手掛かりが何もないまま迎えた失踪から丸2年目の日に
記憶喪失の少女が保護され、姉として家に戻ってきますが、妹は姉を姉として見ることができず
疑惑の目で見続けることになります。

この上段のあらすじは、裏表紙でも書かれていることなので、
妹から見た姉への疑いの眼差しが、小説の中心を占めるのかと思っていたら、
ボリューム的には、姉が失踪した期間における妹、母、祖母を中心とした
姉探しの話の方が多くて、特に情緒不安定になりがちな母と、冷静な祖母、
そんな2人を幼いのに客観的に眺めて「違和感を覚えてもなるべく母の言うとおりにやろう」と
母親の犯人探しに協力する妹。

この3人の心の動きが良く描けていて、興味深く読みました。
娘が突如居なくなるという事件は、現実世界でこの秋にも起きており未だ解決していませんが、
その母親の心情たるやいかがなものなのか。
娘がいないという喪失感、自分に非があったのではないかと責める心、
なぜ妹は姉と一緒に行動しなかったのかと妹を叱責したくなる心、
近隣の人から憐みの目と好機の目で見られる不快感、
様々な感情が心の中に沸き立ってくる様子がしっかり描かれており、
その母親が犯人探しに躍起になる精神バランスの崩れた状態に陥っていくのは
仕方がないことだと思えました。

一方で、この父親の存在感のなさといったら。
姉が家に帰ってこないという当日の夜遅い時間でさえ、のんきな発言をしており
唯一、この家族の中で共感できない人でした。

肝心の姉が戻って来てからのやりとりは、
それまでの、犯人探しをしていた母親の執念や妄想じみた推理のすさまじさに比べると
あっけないくらい簡単に姉を姉として受け入れており、
姉だと本心で認識しているのか、疑問を持っているけど姉だと思い込もうとしているのか
その心の在り様が良くわかりませんでした。

妹は、何かにつけて姉にかまをかけて、本物の姉なのか確認しようとしますが、
どれも中途半端な結末になってしまい、どっちつかずです。
まぁ、これは子供がやることですから仕方ないのですが、
話に進展がないので、読んでいて結構モヤモヤしました。

で、最終盤で一気に姉の口から真相が語られるのですが、
うーん、この真相では腑に落ちない感がすごく残るなぁというのが私の感想です。

ネタバレするので詳しくは書けませんが、
その環境に置かれることを、姉が素直に受け入れたということが信じがたいです。
妹目線で語られる失踪前の姉の描写からしても、あまりそのようなキャラクターには見えませんでした。
そして、その環境には、姉だけでなく、他の人間も巻きこまれていますが、
その人もまた、その環境を受け入れているのが、輪をかけて疑問でした。

ちょっと話を作り込みすぎてしまったのではないかなと感じる展開でした。
まぁ、だからといって、「2年間変質者の男の自宅に首輪をされて監禁されてました」というような
現実世界で起きた事件のような真相を書かれても「そんなリアリティのない展開なんて!」と
思ってしまったかもしれませんが。

人間がつくる社会って、1人の人間が失踪して、何食わぬ顔で2年後に戻ってきても
「はいそうですか、それは良かったですね」と平然とは受け入れられないような
コミュニティメンバーのアイデンティティに対する厳格さと排他性を持っているように思います。
その点が、なんだかうやむやなままで終わってしまっています。
失踪期間中の家族の心の動きが丁寧に描かれていただけに、終盤の失速が残念でした。





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『花の鎖』
- 2019/01/22(Tue) -
湊かなえ 『花の鎖』(文春文庫)、読了。

ドロドロの人間関係が読みたくて本作を手に取ったのですが、
登山愛好家や花を描く画家さんとかが登場してきて、
なんとも爽やかな展開に「これ、湊かなえ作品!?」と驚いてしまいました。

「花」「雪」「月」で3つの章が交互に展開し、
それぞれ若い女性が主人公です。
全く別の生活が展開されているようで、
「有名な画家」とか「登山」とか、共通するキーワードがたくさん登場してきます。
この3人がどうやって繋がっていくのかな・・・・Kって誰なのかな・・・・と
推理しながら読んでいくのが王道な読み方かと思うのですが、
正直、なかなか話が進んでいかないのでイライラしてしまいました。

どうにも、主人公3人の女性の行動が消極的というか、
何もせずに、自分の頭のなかだけで考えて諦めてしまったり逃げを打ってしまったりするところがあり
あんまり共感できませんでした。

そして、湊かなえ作品に期待してしまう「悪意ギラギラ」って感じの人物も居なくて(爆)、
結構、みんな良い人なんですよね。
もちろん、この「K問題」の発端となった人物の行動は自分勝手ではありますが、
でも、相手の行為も勤め人としては自分勝手だなと思いますし。
みんな、常識的な範囲で悪い部分を持っているという感じで、
突き抜けて極悪人という人が出てこないので、なんだか拍子抜け。

肝心の「K問題」、そして3人の主人公の関係性は、
オーソドックスなものでした。
読む人によっては、タイトルで分かっちゃってる人も多いかも。
私は、そこまで考えて本を開かないので、途中まで気づきませんでしたが(苦笑)。

というわけで、このジャンルの物語は、
正直言って、湊かなえさんには求めてないなぁ・・・・という酷な感想となってしまいました。
別の作家さん、例えば恩田陸さんとかが書いたら、また違ったものになっていそう。
というか、読者側の本への期待の角度が違うので、素直に読めそうな気がします。
私の中で、湊かなえ作品というものに強烈な色を付けてしまっているので
上手く読めなかったのかもしれません。




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『少女』
- 2018/07/29(Sun) -
湊かなえ 『少女』(双葉文庫)、読了。

いつも一緒にいる女子高生2人。
親友と思われており、自分たちも相手を一番仲が良い友達だと思っているけど、
心の中にわだかまりも持っており、お互いに言えない言いたいことが募ってます。

このあたりの描き方がうまいなぁと。
特に私は由紀の突き抜けた冷たさが好みでした。
親友が、周囲に合わせることで自分を保とうとしていることを見抜き、
映画を見てウソ泣きしていることや嫌な人にも波風立てない言い方しかできないことを
見抜きながら、言わない。
この冷たさ。

そんな冷たさを親友の敦子も認識しており、
「由紀だったらここは突き放すのかな」なんて風に思いつつも、
そんな由紀のようには振舞えない自分も理解しており、
自分の意気地なさに落ち込んだりしてます。

この2人それぞれの目から眺める世界の切り取り方が面白くて
ぐいぐい読ませてくれます。

由紀は家庭の事情で剣道を辞めざるを得なくなり勉強に走った子。
敦子は試合での失敗がトラウマになり剣道から身を引いた剣道日本一。
2人とも剣道がらみで挫折してるんですよね。
腕の違いはあるにしても、毎日やってきたことから離えざるを得なくなる状況、
その不安定な心の時に、お互いがお互いのちょっとした言動に反応し、思い込み、
それが心の重しになってしまったという設定。
うまいですねー。

夏休み、由紀は小児病棟へ読み聞かせのボランティアに行き、
敦子はグループホームに体育の補習として参加する。
参加した表の動機は違うけど、裏の本音の動機は「死が見たい」というもの。
このあたりは、ちょっと心理が行動に直結しすぎててグロテスクに感じましたが、
湊かなえならアリかな・・・・という変な納得感。

誰かが目の前で死ぬわけではないのに、
「死」というモチーフがずっとベッタリついてまわる不気味さ。

なのに、エンディングは、2人のもやもやが解消される清々しさ。
湊作品でこんな読後感になるものもあるのかと、逆にびっくり。

・・・・・と思ってたら、最後の最後に、そう来るか~という関係性が暴露され、
やっぱり、湊かなえは、グロい!いやミスの女王ですね。


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『Nのために』
- 2018/02/09(Fri) -
湊かなえ 『Nのために』(双葉文庫)、読了。

高層マンションの一室で、そこに住む夫婦2人の死体が見つかった。
居合わせた3人のうち、1人が殺人の罪で収監。
しかし、10年後に語られた事件の真相は・・・・・・。

登場人物それぞれが、それぞれの視点で真相を語っていくスタイルは
いつもの湊作品ですが、殺害された夫婦2人の関係の異常性は、
どの登場人物の口から語られる言葉をもってしても異常で、
「そういう夫婦も居るかもなぁ」と思えなかったです。
そのため、どうにも気持ちが作品に入っていけず・・・・。

杉下のキャラクターは、結構好きでした。
一見良い子に見えて、心の中では世間を突き放して見ているところとか。
親友のような安藤に対しても、シビアな目を向けているところとか。
でも、杉下の10年後が、あんな結末になるなんて、ちょっと安易な感じが。

安藤は、最初、性別を勘違いして読んでました。
意図的にミスリードを誘うような書き方がなされているようですが、
その意図がイマイチ分からず。
ミスリードが、何か物語に重要な意味を与えていたのでしょうか?

成瀬は、現在の姿よりも、子供の頃の描写の方が気になる人物でしたが、
子どもの頃の大事件の真相が有耶無耶のままで、なんだかモヤモヤ。

西崎は小説家志望ですが、肝心の小説の中身が
私の苦手な純文学系で読み込めず。
その内容も、殺された夫婦の精神世界と繋がっていくような話で
私には理解できない世界観でした。

というわけで、物語の構造はいつもの湊作品で、真相に向かうにつれワクワクしましたし、
杉下、安藤、西崎の3人の関係は、ウィットに富んだ会話もあったりして面白かったのですが、
なんだかバランスの悪さを感じてしまう作品でした。

あと、ダイビング好きとしては、
ボートダイビングでバルブ閉めたまま海に飛び込んだら
BCに空気が入ってないから、海面に浮けずに一気に海中へと沈んじゃいますよ・・・・・
というところが引っかかってしまいました(苦笑)。


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『白ゆき姫殺人事件』
- 2017/05/04(Thu) -
湊かなえ 『白ゆき姫殺人事件』(集英社文庫)、読了。

湊さんお得意の、関係者が主観的に事件や人物を語りまくるという構成
本作では、フリーライターが取材をして回っているという形式ですが、
解説にも書かれている「話を盛っちゃう」感が良く伝わってきます。

取材と言いながら、情報を切り貼りしているだけで
何ら自分なりの分析や考察を加えようとしないので、
その盛られた話をそのまま記事にしてしまっていますが、
そのおかげで、本作全体のストーリーは終盤に大きな転換を迎えます。

取材ノートを読み進めると、とある容疑者に対して
いかに怪しいかという肉付けを、各人が勝手に行っていき、
取材記者も都合よくのっかっていく過程が分かりますが、
しかし、読んでいる途中で、引っ掛かる点がいくつも残ります。

しかし、取材は、殺人事件の真相解明というスタンスから、
容疑者がいかに歪んだ人間性を持っていたかというエピソード追求に逸れていき、
引っ掛かりは引っ掛かりとして残ったまま、
物語はどんどん先に進んでいきます。

これらの引っ掛かりが、最後は全てつじつまが合うように解明され、スッキリします。
が、辻褄を合わせるキーポイントとなるのが、
若手バイオリニストへの偏執的とも言えるファンの愛情のあり方であり、
頭の中では辻褄は合いますが、感情的というか生理的には
気持ち悪い・・・・という思いが先に立ってしまいます。
こういう、同じ芸能人を好きになりながらファン同士の間ではいがみ合うという
狭苦しい世界は苦手です。

田舎町の人々の恰好の娯楽となった感のある殺人事件の取材、
ジャーナリストとは呼べない薄っぺらい雑誌記者、
SNSなどでどんどん情報を発信してしまう関係者、
そして、みんなで寄ってたかって「面白い事実」を作り上げようとしてしまう集団心理。

どれも、現代の心の荒み方を表しているようで、
相変わらず、湊作品は、逃げ場がない嫌な感じを読後感に残してくれます。


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『母性』
- 2016/08/02(Tue) -
湊かなえ 『母性』(新潮文庫)、読了。

母と娘の回想が交互に描かれ、
この2人の関係性の変化が時系列で示されていくのですが、
それぞれの視点から見た同じ出来事が、全く違うように解釈されており
あぁ、歴史って、個人でも国家でも、それぞれの立場で全く異なるように
構成されていくんだなということがまざまざと示されています。

特に私は、両親や祖父母を中心とする大人たちの目を気にする子供という
物語設定に非常に関心があるため、本作でも「娘」の視点から描かれた
世界を軸に、いかに「母」と異なる解釈をしているのかという部分を読みました。

「母」は、自分の母から多くの愛情を注ぎこまれ、
母がすべてというような人生を送ってきた、いわゆるマザコン娘。
そんなマザコン娘が自分の娘を持つようになりますが、
娘に愛情を注ぐのではなく、娘に愛情を注ぐ自分を母から褒めてもらいたいという
屈折した愛を「娘」に向けるようになります。
「娘」は、歪んだ愛情であることに感覚的に気づきながらも、
なぜなのかを理解できずに、「母」を畏怖するようになります。

そして、運命の台風の日・・・・・。

舞台装置はばっちりだったのですが、
物語にイマイチ乗り切れない部分があったのは確か。

それはたぶん、最初に「娘」の回想を読んだときに、
すでに「娘」がそのキャラクターを確立してしまっていたことにあると思います。
なぜこの「娘」がこの「母」の下で育ってしまったのか?という究極の点が、
読者が頭の中で想像するしかなかったので、
「そここそを読みたかったのに!」という思いになってしまったのです。

なぜ、「娘」は「母」を恐れるようになったのか、避けるようになったのか、
回想が始まった時点で、すでにそういう行動が当然のようになってしまっているので、
そのような行動が始まった本質的なきっかけを読んでみたかったです。

それでも、「娘」の成長を通して、埋められない「母」と「娘」の距離を
まざまざと見せつけられる作品であり、恐ろしかったです。
独白という形式を、ここまで嫌な感じに描ける著者は、やはり凄いです。


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