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『ポイズンドーター・ホーリーマザー』
- 2020/01/22(Wed) -
湊かなえ 『ポイズンドーター・ホーリーマザー』(光文社文庫)、読了。

湊かなえ作品では、「毒親」が登場する印象が多いのですが、
本作はタイトルからすると「毒娘」的な???
別の切り口で日本社会の歪みを斬ってるのかしら?と思ったら、
やっぱり毒親がたくさん登場してきて、あぁ、湊ワールドだわあと納得。

で、毒娘は?と思い、中盤では、
「これは、毒親が、自分のやっていることは正しいことだと思い込んでいるから
 自己評価が『ポイズンドーター・ホーリーマザー』なんだな」と自分自身では納得していました。

ところが、最後に収録された表題作で真相がわかりました。
それまでの短編は娘の目線で語られており、娘から見て毒親を描いているので
一方的な親批判となっています。
ところが表題作では、娘と親の双方の視点から描いているので、
最初は毒親の話かと思っていたのに、もしかすると思い込みの激しい娘による
感情的な親批判なのかもしれないと思えるようになっています。
本当は、清く美しいお母さんなのに・・・・という。

いやぁ、怖いですね。
この表題作が最後に来ることで、それまでの作品も全て、真相は別のところにあるのではないかと
疑えてしまうような構成になっています。
そして、その疑いは、作品だけでなく、自分の親子関係にも向けることができ・・・・・・おぉ怖い。

湊作品を読むと、いつも最後は、「うちのお母さんは真っ当な人でホント良かった」と思います。
普通のお母さんという意味ではなく、ホーリーマザーですよ。
穏やかな人だし、みんなの言うことを聞こうとするし、でも芯は持ってて、でも押し付けず。
近所の人からは「静かな人」と思われているようですが、娘の私からすると
「ちゃんと自分のことを見てくれている頼りがいのある人」です。
でも母娘でベタベタすることをお互いに好まないので、さっぱりした関係です。

こんなお母さん、世の中にはなかなか居ないんだなぁと
いろんな小説や家族が出てくるエッセイやルポルタージュを読むたびに思います。
人間の社会というのは恐ろしいですね。
ホッとできる家庭の中に、恐ろしい人が居るというのですから。
うちはボーっとできる家庭で良かったです。




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『豆の上で眠る』
- 2019/11/20(Wed) -
湊かなえ 『豆の上で眠る』(新潮文庫)、読了。

「変なタイトルだなぁ・・・」と思って買ってきましたが、
そのタイトルの由来は作中で語られており、
童話の『えんどう豆の上にねむったお姫さま』がモチーフになっています。

「布団の上から下にある豆を感じることなんてできるのか?」という
お姫様の能力に対する疑問もさることながら、
「そもそも布団の下の豆を感じられたら何で本物のお姫様だと言えるのか?」という
根本的な疑問を覚える作品ですが、その童話の世界におけるモヤモヤとしたものを
現実世界に持ち込んだらこうなりましたという小説作品になってるように感じました。
この構造は、うまいなと感じました。

仲良し姉妹が小学校低学年の夏休み、遊んでいた神社から、それぞれバラバラに家に帰ったら
妹だけが家に到着し、姉は戻っていなかった。
誘拐だ、神隠しだと大騒動になりますが、手掛かりが何もないまま迎えた失踪から丸2年目の日に
記憶喪失の少女が保護され、姉として家に戻ってきますが、妹は姉を姉として見ることができず
疑惑の目で見続けることになります。

この上段のあらすじは、裏表紙でも書かれていることなので、
妹から見た姉への疑いの眼差しが、小説の中心を占めるのかと思っていたら、
ボリューム的には、姉が失踪した期間における妹、母、祖母を中心とした
姉探しの話の方が多くて、特に情緒不安定になりがちな母と、冷静な祖母、
そんな2人を幼いのに客観的に眺めて「違和感を覚えてもなるべく母の言うとおりにやろう」と
母親の犯人探しに協力する妹。

この3人の心の動きが良く描けていて、興味深く読みました。
娘が突如居なくなるという事件は、現実世界でこの秋にも起きており未だ解決していませんが、
その母親の心情たるやいかがなものなのか。
娘がいないという喪失感、自分に非があったのではないかと責める心、
なぜ妹は姉と一緒に行動しなかったのかと妹を叱責したくなる心、
近隣の人から憐みの目と好機の目で見られる不快感、
様々な感情が心の中に沸き立ってくる様子がしっかり描かれており、
その母親が犯人探しに躍起になる精神バランスの崩れた状態に陥っていくのは
仕方がないことだと思えました。

一方で、この父親の存在感のなさといったら。
姉が家に帰ってこないという当日の夜遅い時間でさえ、のんきな発言をしており
唯一、この家族の中で共感できない人でした。

肝心の姉が戻って来てからのやりとりは、
それまでの、犯人探しをしていた母親の執念や妄想じみた推理のすさまじさに比べると
あっけないくらい簡単に姉を姉として受け入れており、
姉だと本心で認識しているのか、疑問を持っているけど姉だと思い込もうとしているのか
その心の在り様が良くわかりませんでした。

妹は、何かにつけて姉にかまをかけて、本物の姉なのか確認しようとしますが、
どれも中途半端な結末になってしまい、どっちつかずです。
まぁ、これは子供がやることですから仕方ないのですが、
話に進展がないので、読んでいて結構モヤモヤしました。

で、最終盤で一気に姉の口から真相が語られるのですが、
うーん、この真相では腑に落ちない感がすごく残るなぁというのが私の感想です。

ネタバレするので詳しくは書けませんが、
その環境に置かれることを、姉が素直に受け入れたということが信じがたいです。
妹目線で語られる失踪前の姉の描写からしても、あまりそのようなキャラクターには見えませんでした。
そして、その環境には、姉だけでなく、他の人間も巻きこまれていますが、
その人もまた、その環境を受け入れているのが、輪をかけて疑問でした。

ちょっと話を作り込みすぎてしまったのではないかなと感じる展開でした。
まぁ、だからといって、「2年間変質者の男の自宅に首輪をされて監禁されてました」というような
現実世界で起きた事件のような真相を書かれても「そんなリアリティのない展開なんて!」と
思ってしまったかもしれませんが。

人間がつくる社会って、1人の人間が失踪して、何食わぬ顔で2年後に戻ってきても
「はいそうですか、それは良かったですね」と平然とは受け入れられないような
コミュニティメンバーのアイデンティティに対する厳格さと排他性を持っているように思います。
その点が、なんだかうやむやなままで終わってしまっています。
失踪期間中の家族の心の動きが丁寧に描かれていただけに、終盤の失速が残念でした。





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『花の鎖』
- 2019/01/22(Tue) -
湊かなえ 『花の鎖』(文春文庫)、読了。

ドロドロの人間関係が読みたくて本作を手に取ったのですが、
登山愛好家や花を描く画家さんとかが登場してきて、
なんとも爽やかな展開に「これ、湊かなえ作品!?」と驚いてしまいました。

「花」「雪」「月」で3つの章が交互に展開し、
それぞれ若い女性が主人公です。
全く別の生活が展開されているようで、
「有名な画家」とか「登山」とか、共通するキーワードがたくさん登場してきます。
この3人がどうやって繋がっていくのかな・・・・Kって誰なのかな・・・・と
推理しながら読んでいくのが王道な読み方かと思うのですが、
正直、なかなか話が進んでいかないのでイライラしてしまいました。

どうにも、主人公3人の女性の行動が消極的というか、
何もせずに、自分の頭のなかだけで考えて諦めてしまったり逃げを打ってしまったりするところがあり
あんまり共感できませんでした。

そして、湊かなえ作品に期待してしまう「悪意ギラギラ」って感じの人物も居なくて(爆)、
結構、みんな良い人なんですよね。
もちろん、この「K問題」の発端となった人物の行動は自分勝手ではありますが、
でも、相手の行為も勤め人としては自分勝手だなと思いますし。
みんな、常識的な範囲で悪い部分を持っているという感じで、
突き抜けて極悪人という人が出てこないので、なんだか拍子抜け。

肝心の「K問題」、そして3人の主人公の関係性は、
オーソドックスなものでした。
読む人によっては、タイトルで分かっちゃってる人も多いかも。
私は、そこまで考えて本を開かないので、途中まで気づきませんでしたが(苦笑)。

というわけで、このジャンルの物語は、
正直言って、湊かなえさんには求めてないなぁ・・・・という酷な感想となってしまいました。
別の作家さん、例えば恩田陸さんとかが書いたら、また違ったものになっていそう。
というか、読者側の本への期待の角度が違うので、素直に読めそうな気がします。
私の中で、湊かなえ作品というものに強烈な色を付けてしまっているので
上手く読めなかったのかもしれません。




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『少女』
- 2018/07/29(Sun) -
湊かなえ 『少女』(双葉文庫)、読了。

いつも一緒にいる女子高生2人。
親友と思われており、自分たちも相手を一番仲が良い友達だと思っているけど、
心の中にわだかまりも持っており、お互いに言えない言いたいことが募ってます。

このあたりの描き方がうまいなぁと。
特に私は由紀の突き抜けた冷たさが好みでした。
親友が、周囲に合わせることで自分を保とうとしていることを見抜き、
映画を見てウソ泣きしていることや嫌な人にも波風立てない言い方しかできないことを
見抜きながら、言わない。
この冷たさ。

そんな冷たさを親友の敦子も認識しており、
「由紀だったらここは突き放すのかな」なんて風に思いつつも、
そんな由紀のようには振舞えない自分も理解しており、
自分の意気地なさに落ち込んだりしてます。

この2人それぞれの目から眺める世界の切り取り方が面白くて
ぐいぐい読ませてくれます。

由紀は家庭の事情で剣道を辞めざるを得なくなり勉強に走った子。
敦子は試合での失敗がトラウマになり剣道から身を引いた剣道日本一。
2人とも剣道がらみで挫折してるんですよね。
腕の違いはあるにしても、毎日やってきたことから離えざるを得なくなる状況、
その不安定な心の時に、お互いがお互いのちょっとした言動に反応し、思い込み、
それが心の重しになってしまったという設定。
うまいですねー。

夏休み、由紀は小児病棟へ読み聞かせのボランティアに行き、
敦子はグループホームに体育の補習として参加する。
参加した表の動機は違うけど、裏の本音の動機は「死が見たい」というもの。
このあたりは、ちょっと心理が行動に直結しすぎててグロテスクに感じましたが、
湊かなえならアリかな・・・・という変な納得感。

誰かが目の前で死ぬわけではないのに、
「死」というモチーフがずっとベッタリついてまわる不気味さ。

なのに、エンディングは、2人のもやもやが解消される清々しさ。
湊作品でこんな読後感になるものもあるのかと、逆にびっくり。

・・・・・と思ってたら、最後の最後に、そう来るか~という関係性が暴露され、
やっぱり、湊かなえは、グロい!いやミスの女王ですね。


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『Nのために』
- 2018/02/09(Fri) -
湊かなえ 『Nのために』(双葉文庫)、読了。

高層マンションの一室で、そこに住む夫婦2人の死体が見つかった。
居合わせた3人のうち、1人が殺人の罪で収監。
しかし、10年後に語られた事件の真相は・・・・・・。

登場人物それぞれが、それぞれの視点で真相を語っていくスタイルは
いつもの湊作品ですが、殺害された夫婦2人の関係の異常性は、
どの登場人物の口から語られる言葉をもってしても異常で、
「そういう夫婦も居るかもなぁ」と思えなかったです。
そのため、どうにも気持ちが作品に入っていけず・・・・。

杉下のキャラクターは、結構好きでした。
一見良い子に見えて、心の中では世間を突き放して見ているところとか。
親友のような安藤に対しても、シビアな目を向けているところとか。
でも、杉下の10年後が、あんな結末になるなんて、ちょっと安易な感じが。

安藤は、最初、性別を勘違いして読んでました。
意図的にミスリードを誘うような書き方がなされているようですが、
その意図がイマイチ分からず。
ミスリードが、何か物語に重要な意味を与えていたのでしょうか?

成瀬は、現在の姿よりも、子供の頃の描写の方が気になる人物でしたが、
子どもの頃の大事件の真相が有耶無耶のままで、なんだかモヤモヤ。

西崎は小説家志望ですが、肝心の小説の中身が
私の苦手な純文学系で読み込めず。
その内容も、殺された夫婦の精神世界と繋がっていくような話で
私には理解できない世界観でした。

というわけで、物語の構造はいつもの湊作品で、真相に向かうにつれワクワクしましたし、
杉下、安藤、西崎の3人の関係は、ウィットに富んだ会話もあったりして面白かったのですが、
なんだかバランスの悪さを感じてしまう作品でした。

あと、ダイビング好きとしては、
ボートダイビングでバルブ閉めたまま海に飛び込んだら
BCに空気が入ってないから、海面に浮けずに一気に海中へと沈んじゃいますよ・・・・・
というところが引っかかってしまいました(苦笑)。


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『白ゆき姫殺人事件』
- 2017/05/04(Thu) -
湊かなえ 『白ゆき姫殺人事件』(集英社文庫)、読了。

湊さんお得意の、関係者が主観的に事件や人物を語りまくるという構成
本作では、フリーライターが取材をして回っているという形式ですが、
解説にも書かれている「話を盛っちゃう」感が良く伝わってきます。

取材と言いながら、情報を切り貼りしているだけで
何ら自分なりの分析や考察を加えようとしないので、
その盛られた話をそのまま記事にしてしまっていますが、
そのおかげで、本作全体のストーリーは終盤に大きな転換を迎えます。

取材ノートを読み進めると、とある容疑者に対して
いかに怪しいかという肉付けを、各人が勝手に行っていき、
取材記者も都合よくのっかっていく過程が分かりますが、
しかし、読んでいる途中で、引っ掛かる点がいくつも残ります。

しかし、取材は、殺人事件の真相解明というスタンスから、
容疑者がいかに歪んだ人間性を持っていたかというエピソード追求に逸れていき、
引っ掛かりは引っ掛かりとして残ったまま、
物語はどんどん先に進んでいきます。

これらの引っ掛かりが、最後は全てつじつまが合うように解明され、スッキリします。
が、辻褄を合わせるキーポイントとなるのが、
若手バイオリニストへの偏執的とも言えるファンの愛情のあり方であり、
頭の中では辻褄は合いますが、感情的というか生理的には
気持ち悪い・・・・という思いが先に立ってしまいます。
こういう、同じ芸能人を好きになりながらファン同士の間ではいがみ合うという
狭苦しい世界は苦手です。

田舎町の人々の恰好の娯楽となった感のある殺人事件の取材、
ジャーナリストとは呼べない薄っぺらい雑誌記者、
SNSなどでどんどん情報を発信してしまう関係者、
そして、みんなで寄ってたかって「面白い事実」を作り上げようとしてしまう集団心理。

どれも、現代の心の荒み方を表しているようで、
相変わらず、湊作品は、逃げ場がない嫌な感じを読後感に残してくれます。


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『母性』
- 2016/08/02(Tue) -
湊かなえ 『母性』(新潮文庫)、読了。

母と娘の回想が交互に描かれ、
この2人の関係性の変化が時系列で示されていくのですが、
それぞれの視点から見た同じ出来事が、全く違うように解釈されており
あぁ、歴史って、個人でも国家でも、それぞれの立場で全く異なるように
構成されていくんだなということがまざまざと示されています。

特に私は、両親や祖父母を中心とする大人たちの目を気にする子供という
物語設定に非常に関心があるため、本作でも「娘」の視点から描かれた
世界を軸に、いかに「母」と異なる解釈をしているのかという部分を読みました。

「母」は、自分の母から多くの愛情を注ぎこまれ、
母がすべてというような人生を送ってきた、いわゆるマザコン娘。
そんなマザコン娘が自分の娘を持つようになりますが、
娘に愛情を注ぐのではなく、娘に愛情を注ぐ自分を母から褒めてもらいたいという
屈折した愛を「娘」に向けるようになります。
「娘」は、歪んだ愛情であることに感覚的に気づきながらも、
なぜなのかを理解できずに、「母」を畏怖するようになります。

そして、運命の台風の日・・・・・。

舞台装置はばっちりだったのですが、
物語にイマイチ乗り切れない部分があったのは確か。

それはたぶん、最初に「娘」の回想を読んだときに、
すでに「娘」がそのキャラクターを確立してしまっていたことにあると思います。
なぜこの「娘」がこの「母」の下で育ってしまったのか?という究極の点が、
読者が頭の中で想像するしかなかったので、
「そここそを読みたかったのに!」という思いになってしまったのです。

なぜ、「娘」は「母」を恐れるようになったのか、避けるようになったのか、
回想が始まった時点で、すでにそういう行動が当然のようになってしまっているので、
そのような行動が始まった本質的なきっかけを読んでみたかったです。

それでも、「娘」の成長を通して、埋められない「母」と「娘」の距離を
まざまざと見せつけられる作品であり、恐ろしかったです。
独白という形式を、ここまで嫌な感じに描ける著者は、やはり凄いです。


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『贖罪』
- 2016/04/27(Wed) -
湊かなえ 『贖罪』(双葉文庫)、読了。

湊かなえ節全開です!

5人の人物による、様々なシチュエーションでの独白で構成されていますが、
その設定は『告白』を想起させます。

しかし、そのドギツさは、『告白』以上かも
なぜなら、本作の中で5人も殺されてしまうから。

小学校で起きた少女の強姦致死事件。
被害に遭った少女と一緒に遊んでいた4人は、
犯人が少女を連れていく場面に居合わせながら、
事件後に犯人逮捕につながるような情報を提供できず、
怒り狂った被害者の母親は4人に贖罪を求める・・・・・。

20年前なら、このような物語は、リアリティがないとされていたかもしれません。
しかし、現在、このような展開はありうるのではないかと思えてしまいます。
4人が辿ったその後の人生が、いずれも殺人というところに行きついてしまったのは
さすがに小説世界の話だとはしても、
被害者の母親がヒステリックな行動を起こしたり、
その行動がきっかけになって4人の少女の人生が大きく歪んでしまったりということは
十分にありうることのように思います。

4人の少女も、被害者の母親も、
事件をきっかけに大きな傷を受けており、
可哀想だなと思う一面はありつつも、共感までは至らないのは、
保身の言い訳が言葉の端々に充満しているから。

そんな中で、真紀の話だけは、身に染みてきました。
「きちんとしなければいけない」「しっかりしなければいけない」という強迫観念は
少なからず子供のころの私も持っていたからです。
親の思いを受け止めなければいけない、周囲の期待に添うようにしなければいけない、
そういう思いに駆られて、今の私があるように思います。
この小説のように、変な方向に捻じれることがなかったので、
今の自分には満足できていることが幸いです。

もし、自分が真紀の立場になったら、
事件当時に上手く立ち回れなかった自分を反省し、悔しく思い、嫌いになったのではないかと。
そして、次に迎えた新たな事件において、自分を取り戻すべく、
英雄になるための行動をとるかもしれない、真紀のように・・・・・・と思いました。
(思うだけで、たぶん行動は無理ですけど・・・・)

子供は、子供なりの理屈で世界を捉えているんだな、
自分も、子供のころに自分なりの理屈で周囲の世界を捉えていたんだなと
再認識させてくれる本でした。


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『往復書簡』
- 2014/11/10(Mon) -
湊かなえ 『往復書簡』(幻冬舎文庫)、読了。

2人の人物の間で交わされる往復書簡。
手紙のやり取りを重ねるうちに、2人に大きな影響を与えた過去の出来事について
ポツリポツリと真相の断片が書かれ、一つの姿が今になって露わに・・・・。

最初、手紙の文章が、かなり地の会話文をそのまま書いており、
これを手紙と言ってしまうのは都合が良すぎないか?と
作品の体裁が気になってしまいました。
しかし、段々と話が進んでいくにつれて、そんな形式論はどうでも良くなるほどに
内容が面白くなってきました。

手書きの手紙は、私自身、あまり書く習慣がなく、
極まれに、お礼状を書く程度です。
日常のやりとりに手紙を使う機会はありません。

こうやって、改めて手紙のやいとりというものを読んでみると、
その手間ヒマ、面倒くささのようなものよりも、
手紙という媒体が持つ怖さを強く意識しました。

往復書簡ということで、相互のコミュニケーションが成り立っているように見えつつ、
1つ1つの手紙自体は、片方が片方に向けて一方的に書き綴った内容になり、
思い込みや勘違いもそのまま言葉として載り、ある物語を形作ってしまいます。
そして、読み手の方も、勝手に印象を受け、物語を想像しながら読むことになります。
これで、相互が同一の像を結んでいれば良いですが、
それぞれが自分なりの受け止め方をしていたときに起きるミスコミュニケーションが怖いなと。

しかも、無意識のうちに起きてしまうミスコミュニケーションだけではなく、
意思を持って、極論すれば悪意を持って、物語を事実とは書き換えたり、
大事なことを書かなかったり、小さなことを強調して書いたりと、
いくらでも恣意的に手紙の中身を演出することができます。

もちろん、恣意的に内容を歪めて伝えることは、
メールでも、電話でも、対面での会話でも、やろうと思えばできるのですが、
対面度が近いほど、文面だけでなく、声や表情や振る舞い等からも情報を得て、
どこかオカシイということに気づく機会も増えると思います。
しかし、手紙というのは、1つの完成した世界観を送り届けてくるという点で
おかしなところに気づきにくいのではないか、恣意性を持ちやすいのではないかと思いました。

収録作品では、比較的エンディングは穏やかというか、おとなしいというか、
バッド・エンディングなものはなかったと感じましたが、
果たして、最後の手紙に書かれている内容は本当のことなのだろうか、
お互いに、これ以上悪意に触れたくないという暗黙の了解の下に、
その結末で手を打ってしまったのではないだろうかと、
黒い想像が制限なく広がっていってしまいました。

本当に、人間の嫌なところを作品にして、読者に思い知らせることが得意な作家さんだと
改めて感じ入りました。


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『夜行観覧車』
- 2014/01/18(Sat) -
湊かなえ 『夜行観覧車』(双葉文庫)、読了。

湊作品2つ目ですが、本作も自分本位さ爆発で、人間の嫌なところ満載ですね。

冒頭、殺人事件が起きた家の向かいの家での母娘の会話で始まりますが、
「反抗期」と呼ぶにはあまりにも粗暴で攻撃的な娘の言葉に、正直うんざり。
他人の家の実態までは分かりませんが、ここまで酷い家庭は自分の周りにはなかったような。
少なくとも我が家は違ったので、「なんで、自分の親に向けてこんな言葉遣いをするんだろう」
というか「誰が相手でもこんな汚い言葉を口にすることがストレスだわ・・・」というのが実感です。

でも、この母親の思考停止状態にも、これまたうんざりさせられます。
なんで考えないのだろうか、なんで想像しないのだろうかと。
父親は、輪をかけて現実逃避をする様で。

そして事件が起こったお向かいの家。
医者の父親、後妻で入った美人の母親、そこそこの出来だが女のために自由な娘、
男ということで過度の期待をかけられる息子。
それぞれに溜めているものがあるのに、表面的には仲の良い上流階級家庭。
典型的な気持ちの悪い家族です。

なんで、これほどに不気味な家庭が向かい合わせになっているのかというと、
高級住宅地として宅地開発されてきた「ひばりが丘」の姿が・・・・。
コミュニティ形成のプロセスが、どこか歪だったのだろうなと思わせるに十分な隣人達の動向。

人間の嫌らしさ、本性、悪意が、様々な角度から描かれており、
決して気持ちの良い読書にはならないのですが、読む手を止められません。
この作家さんについては、改めて凄いと実感させられました。

そして、本作で「ひばりが丘」の住人を象徴していると感じたのが、
「権利」「責任」「義務」という言葉の連呼。
学校の授業では学びますよ。概念としては理解してますよ。大事な概念だと思いますよ。
でも、日常会話で使う単語じゃないですよね。
誰かに向かって投げつける言葉でないと思います。
あくまで人々の間で共有するための言葉だと思います。
こういう言葉を平気で他人に(しかも家族に!)投げつけられる人間性が、
本作に登場する人物達の気持ちの悪さを象徴していると思いました。


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