『月魚』
- 2016/10/28(Fri) -
三浦しをん 『月魚』(角川文庫)、読了。

古本屋の物語ということで期待したのですが、
どうにもBL要素が強すぎて好きになれませんでした。

そういう世界があることは理解していますが、
この本で、その要素を取り込むにしても、
無駄に過剰に匂わせすぎではないだろうかという印象です。
私的には、高村薫作品ぐらいの仄めかしまでが楽しめる範囲のようです。

肝心の古本屋のストーリーの方ですが、
思っていたほどには盛り上がりに欠けると言いますか・・・。
山間の金持ちの未亡人が依頼した遺品の本の処分に際して
遠方から来た若い男2人組の古本屋に任せるか、
町の古本屋のおやじに任せるか、親戚を巻き込んでの対決騒ぎに!
と要約してしまうと、ハラハラドキドキの展開のようですが、
そこまで紛糾することもなく、意外とすんなりかたが付いてしまったと言いますか・・・・。

それに、思わせぶりな文章が延々と続くので
読んでいて疲れてしまいました。
その行き着いた崎の展開が意外とオーソドックスで
拍子抜けしてしまったのも原因かも。

うーん、イマイチでした。


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三浦 しをん

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『神去なあなあ日常』
- 2016/05/02(Mon) -
三浦しをん 『神去なあなあ日常』(徳間文庫)、読了。

映画化されたときに、ロケ地になったとして
三重県が一生懸命PR活動をしていましたが、
それほどヒットしなかったような印象が・・・・・残念です。

でも、原作本は売れているので、そちらから挑戦。

神去村という架空の村が舞台ということで、
私はてっきり、その所在自他も架空にしてあるのかと思っていたのですが、
しっかり「三重県」って出てくるんですね。
しかも、映画のロケ地が美杉だったので、そちら方面を思い描いていたら、
尾鷲の林業を取材したものだったとは!

タイトルにもなっている「なあなあ」という方言ですが、
「伊勢の『な』言葉」と言われるほど、三重県人は語尾に「~な」と付けてしゃべります。
私自身、この指摘を知るまで気にしたことがなかったのですが、
確かに、「『な』言葉」は柔らかい印象をもたらすのかもしれません。
それに加えて、紀州弁のちょっと強い口調の単語が混じっており、
神去村の面々が話す会話のリズムに酔いしれました。
とても心地よいです。
そういえば、三重弁の作品って、読むの初めてかも。

小説の世界については、お仕事小説+青春小説として
オーソドックスな展開に、神去村の奇妙な風習というアクセントをつけて
安心して読めるユーモアあふれる作品になっていると思います。

林業については、以前、三重県大台町に林業に従事するために
大阪から移住した人の話をきいたことがあったぐらいで、
正直、仕事として詳しい内容を知らなかったのですが、
ちょうど最近、樵のおじいさんを主人公にした映画を見たため、
上手く映像のイメージも湧いて、楽しく読めました。

田舎で自然を相手にする仕事・・・・・という表現をすると、
都会に疲れたサラリーマンの逃避行的な脱サラを思い浮かべがちですが、
本作の主人公のような若者が、そういう仕事に正面から向き合うと、
人間の生活と仕事と社会との関係というような本質的なものに
触れられるような気がします。

若さゆえに、まっすぐに仕事に向き合い、
自分の成長を通して、仕事のやりがいに浸る人生。
そういう素敵なお話になっていると思います。


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『木暮荘物語』
- 2016/02/13(Sat) -
三浦しをん 『木暮荘物語』(祥伝社文庫)、読了。

築ウン十年のぼろアパートには、
訳ありな人々が、ちょっと変わった日常を過ごしており、
その1人1人の生活を覗いていく連作短編集です。

最初の章からして、3年前に出て行ったきり音信普通の放浪癖彼氏が突然帰ってきて、
今の彼氏となぜか3人で同居生活が始まる不思議な展開。

最初は、若い男女のちょっと変わった恋愛模様を書いていくのかな?と
ちょっと警戒気味になってしまったのですが(苦笑)、
続いて大家のおじいさんの話になったところで、一気に面白くなってきました。

ちょっと世の中に取り残されてしまう不器用さがあり、
世間への反発や反感も心の底に溜まっており、
でも、そんな自分も好きになれず、
もやもやと思いつつも、何かを変えるほどの行動力もなく・・・・
という主人公たちに訪れる変なデキゴト。

そこから変わっていく自分や周囲との関係を
日常目線で描いているので、各章を閉じたときにホッとする感じがあります。

どこかで人生が少し屈折してしまった人も、
ちょっとした切っ掛けで、また少し道行きが変わる、決して真っ直ぐになるわけではないけれど・・・・
という慎ましやかなお話たちだと思いました。


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『ふむふむ』
- 2016/01/30(Sat) -
三浦しをん 『ふむふむ』(新潮社)、読了。

しをんさんが、働く代女性に行ったインタビューの雑誌連載をまとめたもの。
会社員から企業家、職人、フリーランス、研究者まで、
まさに様々な仕事が登場します。

こうやって、仕事の話を聞いてみると、
独立した人は、思わぬ人生の転機を自分のものにしたんだなということが分かりますが、
企業勤めの人であっても、異動や転職で、自分の意志とは異なる転機を迎えている人が多く、
安定なんていう言葉はないんだなと実感。

給料という形で安定した収入があるという意味では、
企業勤めの安心感ではありますが、自分が納得のいく仕事の仕方が出来るかという点では、
企業勤めもフリーランスも変わらない不安定さがあるなと思いました。

一方で、どんなにマニアックな仕事でも、やり方次第で、生計を立てていくことは
可能なのだということも分かりました。
もちろん、本人の努力や、市場をきちんと読んでツボを突くということは必要ですが、
人が居る以上、仕事はどうにでも形作れると腹を括れば、
どんなことでも仕事にできるのではないかと明るい気持ちになりました。

自分で、自分の仕事を誇れるようになること、誇りを深めることが
仕事と向き合う上で、大事であると、再認識しました。

少なくとも、こうやってインタビューの申し入れがあったときに、
「やりましょう!」と応えられるだけの自信を持ちたいなと思いました。


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『星間商事株式会社社史編纂室』
- 2015/08/14(Fri) -
三浦しをん 『星間商事株式会社社史編纂室』(ちくま文庫)、読了。

期待しすぎたのか、イマイチでした。

左遷社員のたまり場、社史編纂室では、会社創立50周年を過ぎても
まだ社史が完成せず、目標を失ったまま制作の日々をダラダラと過ごす面々。

そこに同人誌オタク、南国での悪徳商売、怪文書での恫喝、女神の失踪、
同棲と結婚の境目問題、糸の切れたタコ問題など、様々な要素が絡み合い・・・・・・・

なんだかゴチャゴチャした作品でした。
ここまでいろんな要素を詰め込む必要があるのかと疑問に。
しかも、各要素が現実離れしているというか、地に足の着いていない感じがするものばかり。

一番違和感があったのは、BL同人誌を趣味とする主人公という設定。
著者のエッセイを読んでいれば、そういう世界が好きなんだなということは理解しているのですが、
なんだか、そういう世界を書きたかっただけなのではないかと思えてしまうぐらい、
本作で、ここまで一生懸命BLを書く必要もなかったのではないかという・・・・・。

最後までバタバタしていて、各要素が、それぞれの状況で、
バラバラにそれなりの結論を出したという印象で、
あんまりスッキリ大団円!というエンディングではなかったです。





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『乙女なげやり』
- 2015/05/10(Sun) -
三浦しをん 『乙女なげやり』(新潮文庫)、読了。

初めてしをんエッセイを読んだとき

をををぉっ!

と新鮮に思ったのですが、
うーん、一気に読みすぎたのでしょうか、なんだか食傷気味。
あんまり、目新しさを感じなくなってしまいました。

女流作家さんのエッセイは、こういうスパイラルにはまっちゃうことが多いような気がします。

著者の日常に変化が乏しいからでしょうかねぇ・・・・。


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『しをんのしおり』
- 2015/03/07(Sat) -
三浦しをん 『しをんのしおり』(新潮文庫)、読了。

前回読んだエッセイは、結構な歪みエネルギーを感じるもので惹かれたのですが、
本作はそれほど特異な波長は感じられず、ノーマルなエッセイでした。

もし、この作品から先に読んでいたら、あんまり印象に残らず、
エッセイは読まないでイイや・・・・・という判断になっていたかも。

作品との巡り会わせというものもあるんだなと、内容以外の感想を持って読了。


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『私が語りはじめた彼は』
- 2015/02/09(Mon) -
三浦しをん 『私が語りはじめた彼は』(新潮文庫)、読了。

大学教授の村川は、歴史学を研究するという堅物そうな仕事をしながら、
多くの女性と関係を持ち、離婚をし、新たな家庭を作るという
なかなかに波乱万丈な人生を、本人は飄々と送っている様子。
そんな村川の姿を、関係者の目で描いていく連作短編集。

最初の1、2編が、思いの外じとっと重たい空気だったので、
上手く作品の世界に入っていけませんでした。
男と女の間の、重苦しい雰囲気の間に、各短編の主人公たちは無理やり座らされており、
その居心地の悪さが、読んでいるこちらにまで伝わってきます。

作品の中で描かれている感情が伝わってくるという意味では、
上手いということになるのでしょうが、
その感情の中身が、私の苦手とする空気だったので、どうにも上手く馴染めませんでした。

話が進むにつ入れて、段々とこの作品の読み方が分かってきたのか、
はたまた、語り部となる人物の立場が特殊な設定の人に移ってきたためか、
次第に読みやすくなってきて、面白さも感じることが出来るようになりました。
「予言」とか「水葬」とか、面白かったです。
でも、最初のつまづきを取り戻すところまでは行けませんでした。


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『むかしのはなし』
- 2014/10/30(Thu) -
三浦しをん 『むかしのはなし』(幻冬舎文庫)、読了。

いろんな状況に置かれた主人公たちが
自分の過去についての話をするという構成の短編集。
日記あり、音声ディスクあり、調書あり、様々な形態で過去を記録します。

そんな過去が、少しずつ繋がっていき、ある一つの光景へと収斂していく、
点と点が線でつながり、線が集まって面としての光景を描き、
その面が、最後に1つの出来事を映し出す・・・・・・上手く流れていく展開が心地よいです。

各短編の冒頭に、いくつかの昔話のしをん版要約が付いています。
桃太郎、浦島太郎、花咲か爺・・・・・。
数行にまとめられた話は、「なんでこんな展開なんだろ?」と今更ながら疑問を持つものもあれば、
しをんさん、恣意的に要約しすぎ(笑)というものも。

その昔話のエッセンスを下敷きにして短編を読むと、
短編の持つ人間の嫌な面や、そもそも昔話に込められた毒々しさが際立ってきます。
このあたりの仕掛けも上手いですねぇ。

各短編の主人公も、普通の人から見ると、少し引いているというか、
世間というものに背を向けているようなところのある人物が多いので、
その思考回路も興味深く読めました。
その他大勢に流されない強さというか、良い意味での空気を読まない強さというか。

非常に面白い短編集でした。


むかしのはなし (幻冬舎文庫)むかしのはなし (幻冬舎文庫)
三浦 しをん

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『まほろ駅前多田便利軒』
- 2014/09/20(Sat) -
三浦しをん 『まほろ駅前多田便利軒』(文春文庫)、読了。

直木賞受賞作。

当時、受賞の報を聞いたときに、「へぇ、こんなポップな名前の作品で取れるんだぁ」という
印象を抱いた記憶がありますが、読んでみても、比較的軽いタッチだと思いました。
ただ、ときどきズバッと心に刺さる言葉が出てきたり、
重たいテーマを裏側に抱えていたりと、なかなか油断できない作りになっています。

解説で、鴻巣友季子さんが「文章に自分のスタイルがある」と評していますが、
まさにそのとおりだと思います。
しをん節というのでしょうか、軽いタッチで気持ちよく読めて、しかもドキッとさせられます。

私が買った文庫本は、映画化された当時のもののようで、
表紙が瑛太さんと龍平さんが並んだ写真だったのですが、
まさに、この2人を当てはめて、多田と行天の日々を頭の中に思い描けました。

ハードボイルドっぽい雰囲気を漂わせながら、
女性の感覚で、現実世界から逸脱しない範囲にお話をまとめているように思います。
ぶっきらぼうさと、大胆さと、人情との加減が心地よいというか。
ま、これは男性読者さんにはフィットするのか分かりませんが。

しをん作品は、他にも読みたいものがたくさんあるので、
早く100円で見つけられることを祈願。


まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)
三浦 しをん

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