『遭難者』
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- 2021/02/01(Mon) -
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折原一 『遭難者』(文春文庫)、読了。
ブックオフで50円だったので買ってきました。 7年ぶりの折原作品。 山登りを趣味とする息子は、長野県の会社に就職し、社内の山岳会に所属。 その山岳部での登山で、息子1人が遭難し、数か月後に遺体が見つかった。 父親も山男で遭難死しており、残された母親は、山岳会のメンバーとともに 追悼文集を出すことに。しかし、その文集を読んだ人から、思わぬ指摘が。 作品の中に、追悼文集が丸ごと二冊入っている構成で、 レイアウトやデザイン等も含めて非常に凝ってますが、正直、見た目だけの作品だなという印象です。 まず、追悼文集に掲載されている文章ですが、 追悼という目的でこんな内容やこんな表現では書かないだろうという粗が目について、 体裁と内容がミスマッチです。 無理やり追悼文集にストーリーテリングをやらせている感じになっており、 リアリティがないです。 また、この遭難死した息子には妹がいますが、 兄の死から数カ月しか経っていないのに、母親を一人残して海外旅行に行ったり、 結果的に兄だけでなくもう一人亡くなるのですが、 2名が亡くなる事件を通して結婚相手に出会えたことで「複雑な気持ち」と表現したり。 2名の命と自分の結婚とを同じレベルで比較する感覚が信じられません。 この妹が象徴的でしたが、母親にしても、山岳会の会長にしても その行動や口にする言葉、気持ちの表現の仕方に共感できるところが少なかったです。 事件の真相に関しても、母親や妹が追求に執念を燃やしますが、 小さな情報に触っているだけでちっとも真相に近づかず、 最後は黒幕自らがペラペラと真相を話すことで物語を締めるという かなり手抜きな感じが目につきました。 うーん、企画倒れな感じで残念。 ![]() |
『倒錯の死角』
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- 2014/08/26(Tue) -
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折原一 『倒錯の死角』(講談社文庫)、読了。
倒錯シリーズ。 最初の事件らしい事件が起きるまでが、長い! しかも、そんなに興味を惹かれるような事件でなく、 新聞の三面記事の片隅に載るような内容で、 全然、読んでいて気持ちが乗ってきません。 しかも、翻訳家でアル中の男、その向かいに住む若い女、アル中仲間の窃盗犯の 大きくは3人の登場人物の視点で語られていくのですが、 3人とも共感を覚えないため、肩入れの仕様もありません。 よくぞまぁ、この過酷な読書を読み終えたなぁと、 400ページ近い厚みを前に、ため息をついてしまいました。 倒錯シリーズなら、叙述ミステリとして読むべきなのでしょうし、 『倒錯のロンド』もかつて読んでいるので、 著者の描く世界観は知らないわけではないのですが、 でも、やっぱり、著者が利用する「からくり」は、ちょっと卑怯なように思ってしまいます。 アル中なら、何でもありなのかっ!って。
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『ファンレター』
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- 2013/03/10(Sun) -
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折原一 『ファンレター』(講談社文庫)、読了。
熱狂的な読者から届く厄介な頼みごと。 人気覆面作家の西村香が巻き込まれるゴタゴタを、手紙形式の連作もので描きます。 本作の主人公である「西村香」なる人物、すぐに北村薫さんがモデルだと分かります。 なんたって、「覆面作家」「天駆ける木馬」「ステップ」なんですもの。 ところが、結構な偏屈人間として描いていて、 「北村氏の方は大丈夫なのかしら?」と不安になってしまうぐらいのネタ巻きぶり。 (後で調べたら、北村氏と著者は高校・大学の先輩後輩の間柄で、 ミステリクラブでも一緒という親密な関係なんですね・・・ほっと一安心) で、この覆面作家の偏屈ぶりの大きく上を行くのが 熱狂的ファンと自認する偏執狂の方々。 ファンレターの中で、こういう類の手紙は、どのくらいの割合で存在するんでしょうかね? そういう人たちへの、著者なりの皮肉と復讐の作品だったりするのかしら。 で、わたくし、この手の偏執狂の描写が苦手・・・。 周りが見えてない中で、思い込みを募らせていくという人間の狂気が、 まさに、何をしでかすか分からないという不安を増幅させて、 生理的に嫌な気持ちになってしまうんです。 本作のタッチが、かなり軽めで、ギャグ的ドタバタ要素もあったので、 なんとか最後まで読めましたが、偏執ぶりをじっとり書かれたら、 辛くて読めなかったかも・・・。 自分勝手な人間って、ホント怖いわー。
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『倒錯のロンド』
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- 2006/12/09(Sat) -
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折原一 『倒錯のロンド』(講談社文庫)、読了。
ストーリー構成に思わず唸ってしまいました。 「なるほどねぇ」 読み進めていて、ところどころ腑に落ちないというか、 違和感を覚える箇所があったのですが、 真相がわかったら全て解決。「そういうことだったのね」と。 貫井徳郎さんの『慟哭』を読み終わった後の感覚に似てるかな? ただ、作品の「からくり」を知ったとき、 「現実世界から半分逃避してるな」と感じたのも事実。 複雑なからくりを駆使したストーリーなので感嘆の気持ちが先に来るけど、 「そういう設定なら何でもありじゃない?」と醒めている気持ちも在り・・・。 でも、世の中の犯罪なんてどれも、 明瞭な頭ではなく夢うつつの頭で起こされてるのかもしれません。 いずれにしろ、この作品を面白いと感じたことには変わりありません。 推理小説好きの方のblogを見ると、 必ずと言って良いほどこの作家さんのお名前を目にするので、 今回初めて読んでみたのですが、その評判は伊達じゃないですね。
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