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『サイレント・トーキョー』
- 2022/01/20(Thu) -
秦建日子 『サイレント・トーキョー』(河出文庫)、読了。

相変わらず、テレビドラマのテンポでサクサク進んでいくので読みやすいです。
特に前半は、爆弾魔に巻き込まれたおばさんと若い男の目線から
2つの爆弾事件が続いて起こり、このスピード感がたまらなく面白かったです。

赤の他人をどうやって事件に巻き込み、当事者として遠隔操作するか、
その手口が、なるほどなー、でした。

後半、誰が犯人で、どうやって爆破事件を起こしていたのかという謎解きの部分は、
正直、広げ過ぎた風呂敷をうまく畳めなかった印象でした。
「え、こんな動機なの?」という置いてきぼり感、尻すぼみ感。

そして、中盤でいろんな登場人物が出てくるのですが、
そこも、結局、爆破で殺すために登場してきただけな感じで、
イマイチ広がりがなかったです。

結局、渋谷ハチ公での爆発シーンを描きたかっただけで、
全編を通して伝えたいメッセージというのが、なんだかぼんやりしている印象でした。

そうなると、やっぱりテレビの脚本家が書く小説のレベルだなぁ・・・・・という
ちっちゃい感想で終わってしまうのが残念。




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『ダーティ・ママ!』
- 2021/05/19(Wed) -
秦建日子 『ダーティ・ママ!』(河出文庫)、読了。

シングルマザーの先輩刑事は赤ちゃん連れで捜査活動を行う変わり者。
検挙率が高いという理由で、子連れ勤務が黙認されているという設定。
そこに、ベビーシッター代わりに異動させられた若手刑事が主人公。

ま、ドタバタコメディなので、時間つぶしに軽ーく読んで終わり、という本かな。
それほど期待していなかったので、まぁお手頃な感じでした。

設定に無理がありすぎるとか、
ストーリー展開がご都合主義的だとか、
同僚たちもキャラが立ちすぎだとか、
いろいろ目につくことはありますが、
あんまり深く考えてはいけないかな。

雪平夏見シリーズとは、だいぶ重さが違う作品でした。

脚本家出身の作家さんなので
まぁ、テレビドラマ色というか、視覚的情報優先のプロットになっちゃうのは
仕方がないのかなぁ・・・・。




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『ザーッと降って、からりと晴れて』
- 2020/06/02(Tue) -
秦建日子 『ザーッと降って、からりと晴れて』(河出文庫)、読了。

タイトルと表紙絵の雰囲気から、軽めの恋愛ものなのかなと思い、
裏表紙に連作集とあったので、手軽に読めるだろうと手に取りました。

ところが、文章はポップなのですが、内容は行き詰った人生を変えられないだろうかと
もがく人々の姿を描いており、じっくり面白く読みました。

しかも、人生を変える転機のキーワードとして登場してくるのが「ニューカレドニア」(笑)。
私、たぶん、人生で口にしたことは数回しかないような言葉です。
会社の同期が新婚旅行で行ったので、そのときに何度か同期同士で話したような。

そんな、発語することが珍しい言葉で、短編を連作に積み上げていくという
その発想というか、勇気にびっくり。
各短編の登場人物たちはところどころで繋がっているのですが、
ドラマ脚本家の卵さんの話では、サスペンス脚本の中の登場人物に
いきなり「ニューカレドニア!」と叫ばせる剛腕ぶり(苦笑)。
逆にあっぱれですわ。

結構、当事者にとっては苦しい人間関係なり逆境に困っている様子が描かれていますが、
最後は前向きに終わる気持ちの良い話でした。
それまでがどんなにイジイジした人生でも、自分の判断で人生を「えいやっ!」と
変えることができる決断力を持つ人間は、清々しいですね。




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『サマーレスキュー』
- 2016/12/25(Sun) -
秦建日子 『サマーレスキュー』(河出文庫)、読了。

3つのお話が収録されていますが、
1つ目を読み終わったときに、「え!?これで終わり???」となってしまいました。

「あ、秦建日子か・・・・・」ということで、
ドラマのノベライズ版だと気づきました(苦笑)。

続く2つ目のお話も、1つ目から続いている連作ものではありましたが、
やっぱり、内容が薄いです。

登山における病気や事故、そして死という重たいテーマを扱いながら、
言葉が軽いというか、あまり生死に対する尊厳を感じないというか。
青臭い医師が、言葉遊びをしているような印象を受けました。

最後のお話は、鼻持ちならない主人公を取り巻く看護師や先輩医師の
迫力のある言葉に共感を覚えましたが、
しかし、それでも、物語の展開の軽さというか
都合の良い改心には、なんだか興ざめでした。


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『殺してもいい命』
- 2014/08/16(Sat) -
秦建日子 『殺してもいい命』(河出文庫)、読了。

雪平夏見シリーズの第3弾。
展開の早さ、キャラ作りの上手さ、チョイ出しの誘い度、
どれも上手いのでグイグイ読めちゃうのですが、
ここまでキャラクターに依存しちゃうと、ちょっとなぁ・・・・とも思ってしまいます。

正直、前作もそうなのですが、
雪平夏見ありきの事件ばかりなので、普遍性がないんですよねー。
彼女のキャラが如何に活かされているかという点で楽しもうとすれば
十分に楽しめるのですが、犯罪の持つ社会性とか時代性とかが
この構成だと薄くなっちゃうんですよねー。

かといって、読みやすく、ある意味、手軽に面白さも味わえるので、
ドロップアウトしてしまうには惜しいシリーズです。
ま、気軽に読書をしたいときのラインナップに残しましょうかね。


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『アンフェアな月』
- 2014/06/30(Mon) -
秦建日子 『アンフェアな月』(河出文庫)、読了。

雪平夏見シリーズ第2弾です。
相変わらず、キャラが立ってますなぁ。テレビ向きです。

「その判断でいいの?リスクでかすぎない!?」と感じても、
「ま、このヒトなら有り得るか・・・その方が突飛で面白いし」と思えてしまうところが
論理性や整合性よりも、その瞬間の面白さというテレビの特性を
上手く使っていると思います。

今回も、一気読みでした。

安藤くんとも良いコンビ。
林堂刑事は、意外とすんなり理解してくれる懐の広いヒト。
(衝突がなかったのはやや物足りないかも)
お母さん、言動怪しすぎる・・・・というか、人生をなめてるよね。
沢木、めちゃくちゃなマスコミ野郎だけど、意外と面白い視点持ってるよね。

いろいろ登場人物たちに感想は持ちましたが、
うーん、あんまり深い思いには至りませんでした。
そういうところが、この作家さんの軽さなのかな。
でも、軽い分、ぐいぐい読める疾走感を味わえるというメリットもあり。

ま、長編を一気に読み通したい!というときに
都合の良い作家さんなのかなと思います。


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『推理小説』
- 2012/03/04(Sun) -
秦建日子 『推理小説』(河出文庫)、読了。

読み進む手を止められませんでした。

非常にテンポがよいので、
次の展開が気になって仕方ありません。

動機も、こんな動機があって良いのではないかと思わせる内容で、
私は納得して読めました。

ただ、解決側の主人公・雪平夏見のキャラクター設定が、
どうにも読みにくく感じてしまいました。
場面ごとに印象が違って、1つの人間に統合しきれていないようなチグハグ感。

彼女よりも、瀬崎のキャラクターのほうに惹かれてしまいました。

で、読み終わってから、どんな作家が書いたのだろうかと調べてみたら、
TVドラマ『アンフェア』の原作なんですね。
読み終わってから知りました・・・・・・これぐらい本読みさんの常識なのかもしれませんが(恥)。

なるほど・・・・・TVドラマという視点で見ると、
雪平のキャラクターや行動パターンは、うってつけなのでしょうね。
映像化したときのキャラ立ちの良さは、抜群です。
その分、文字で読むと、隙間だらけという印象になります。

良くも悪くも、TVドラマ作家の特徴が
遺憾なく発揮された作品ということなのでしょうね。
それが本作に限った話なのか、他の作品も同様なのか・・・・・
他の作品も読んでみてから、作家さんとしての評価は定めたいと思います。


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