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『ジゴクラク』
- 2023/09/24(Sun) -
森巣博 『ジゴクラク』(光文社)、読了。

著者本人を彷彿とさせる主人公と、10代後半の少女・舞ちゃんとの博打打ちの物語。

これまで、著者の私小説的な作品は読んだことがありますが、
作り物としての小説は本作が初めてです。

ギャンブルにおいて、いかにドツボに堕ちていくかという悪魔的な要素と、
舞ちゃんとの性的描写とに集中していて、これまで読んだ著作よりも
うーん、読んでいてしんどかったです。

これまでに読んだ本は、例えば、カジノという商売がどうやって金を稼ぐのかという構造的な
面の解説とか、カジノに通う人々は、社会的にどういう立場の人かというような、
博打と社会という関係性を解説している要素が強かったので、
全く博打に縁のない私にも、社会勉強として読んでみると得るものがありました。

しかし、本作は、博打の興奮とエロの興奮が大半を占めていて、
あんまり勉強になる部分がなくて残念。

金森との博打対決の駆け引きでは、人間の弱いところが端的に理解できて、
いざという局面で冷静になれることは大事だなぁと再認識。

博打も、確率論的な数学の観点で分析すると面白い分野だと思うんですけど、
やっぱり集まってくる人たちのギラギラとした金への執着を見ていると、
関わりたくないなぁ・・・・・と思ってしまいます。

本作に登場してくる、中国のおばちゃん4人組のような、
自分のペースで張り続けて、しっかり勝ちを取っていくような根性がないと、
博打の世界には足を踏み入れてはいけないように思いました。




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『戦争の克服』
- 2016/03/03(Thu) -
阿部浩巳、鵜飼哲、森巣博 『戦争の克服』(集英社新書)、読了。

森巣氏と両氏との対談、および三者での鼎談が収められています。

個人的には、鵜飼先生のちょっと毒のあるウィットに富んだお話がヒットでした。
母校の先生なのに認識しておらず、Wikiってみたらフランス文学・思想研究者とのこと。
こりゃ、私好みの路線ですわ(笑)。

なぜ戦争はなくならないのかということを、
国際政治や思想史の観点などから分析していきますが、
各国が表向きに主張している建前、裏側の本音、そして、本音と建前を超えたところにある
純粋に信じていることや歴史からくる国民性といったものが多角的に捉えられていて
非常に勉強になりました。

どうやって戦争をなくすのかという観点になると
「平和を希求する」というような感覚論になってしまうのですが、
しかし、なぜ戦争はなくならないのかということを認識しているか否かは
平和を望むに際しての大きな違いになると思います。

適切な現状認識の大切さを学ぶことが出来ます。


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『日本を滅ぼす<世間の良識>』
- 2015/03/08(Sun) -
森巣博 『日本を滅ぼす<世間の良識>』(講談社現代新書)、読了。

森巣センセも、あんまり立て続けに読んでしまう
ちょっと食傷気味・・・・。

しかも、時事ネタを扱うだけなら、森巣センセでなくても良いような印象も。

というか、いろいろ言ってるけど豪州にお住まいなんですよねぇ・・・・と
なんとなく反発してしまう自分がいたりして。

現実の日本は、確かに、いろいろ問題抱えてるかもしれないけど、
それに文句をつけて批判するのは、
やっぱり国内に居る人がやらないと、変えられないよね・・・・・と、
自戒も込めて思った次第です。


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『無境界家族』
- 2014/07/19(Sat) -
森巣博 『無境界家族』(集英社文庫)、読了。

ブックオフでは見つけられないのに、神保町では良く出会う著者の作品。
前回読んだのは「小説」、今回は「家族についてのエッセイ」。
どちらも似たような造りになっています(笑)。

世界を飛び回る気鋭の学者である妻、
州法に違反してまで飛び級で大学に入り、ハーバード大学院は中退して
ヘッジファンドで大金を稼ぎまくる息子、
そして、博打打ちの自分。

他に類を見ないであろう家族の構成と活動内容ではありますが、
著者の教育論や人生哲学を聞くと、なるほど、こういう家族が出来上がるのか・・・と。
また、想像ですが、著者以上に奥様の人生哲学や価値判断の方が
ぶっ飛んでいそうで興味があります。

「こういう考え方もあるよな」と頭では分かっていても、
それを実行して、しかも「天才の息子」として結果を出していることは
凄いことだと思います。
この徹底力、貫徹力には、学ばねばならないと自省の気持ちが働くとともに
畏怖の気持ちも湧いてきます。いずれにしろ刺激的。

一方で、著者の語る、「日本人論」論や「日本文化論」論は、いまいちピンときません。
いわゆる「日本人論」において、日本人の定義が狭すぎる、少数者を無視している
というような主張を述べていますが、その割には、著者も他の話題で
結構、強引な一般化をして語っています。
もちろん、「一般化しすぎかもしれないが」という断りつきですが、なんだか勢いが殺がれます。

本作は、ある一人の男の人生哲学として読むには非常に面白いです。
ただ、世界や日本を見つめなおすためのフレームを学ぶには違うかなと感じました。

息子のことを語りながら、いつの間にか植民地主義の話になっている、
その無境界=ボーダレスな文脈の展開が、本作も心地よかったです。


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『無境界の人』
- 2014/04/19(Sat) -
森巣博 『無境界の人』(集英社文庫)、読了。

姜尚中センセとの対談で認識した作家さん。
神保町で小説作品を見つけたので、試しに買ってきました。

一応、小説という体裁をとっていますが、
自らの日常を書いたものと思われ、ルポのようにも感じられます。
しかし、そのジャンルはどうでも良いと思うぐらいに
博打の話から日本人論まで、あちこちに話題が展開されていき、
その激しい流れに揺られながら読み進める感覚が、意外と心地よかったです。

博打打ちとしてのキャラ作りなのか、
ちょっと文体がお下品になるときがあるのですが、
そんな風に装っても、地のインテリ部分は隠せないわけで。

日本人論を熱く語り、また日本の「インテリ」たちを扱き下ろしているのですが、
正直、内容にはそれほど目新しい印象を受けませんでした。
ここで著者が打ち砕こうとした日本人論は、
すでに崩れつつあるように思います。
ま、10年以上も前の作品なので、仕方が無いのですが。

むしろ、博打打ちとしての人間観察や哲学の話が面白かったです。
何事も「本物」の人は、語るべきものと語るための言葉を持ってますよね。
ヤッちゃんとエムのカップルも素敵でした。


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