『半島を出よ』
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- 2021/10/04(Mon) -
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村上龍 『半島を出よ』(幻冬舎)、読了。
出版当時から、「北朝鮮軍が福岡に侵攻する」という設定に興味津々で、 ブックオフで50円で見つけたときは興奮して買ってきたのですが、 上下二巻という大作に尻込みして今まで積読でした。 ワクチン2回目接種の翌日を完全休養の読書日に当ててたので、 そこで一気に読破だ~と目論んでいたのですが、なんと38度越えの発熱で読めず眠れず。 結局、1週間近くかかってしまいました。 最初、川崎のホームレスが屯する公園から物語が始まり、 「あれ?架空の日本の話なの?」とびっくり。 日本経済が破綻してしまっており、無職でウロウロする人間の中には殺人や破壊活動などの 前歴がある人間が多数おり、治安も崩壊してしまっているような感じです。 この設定はちょっと残念でした。 案の定、日本政府は事態をコントロールする力を持たず、下巻に至ってはほとんど存在感すらない状態です。 『シン・ゴジラ』的な、外敵と戦う日本国家(日本政府)という構図を想像していたので、 日本的なダメさ加減を示しながらも何とか立ち向かおうとする姿が描かれるのかと思いきや ほんと無気力な政府でした。 民主党と自民党の若手が結合して起こした新党が政権奪取したという設定でしたが、 民主党政権が実際に立ち上がる前に、すでにこのような政権運営能力を予測していた村上氏はさすが(爆)。 一方、北朝鮮側の描写は、本当に興味深く面白かったです。 侵攻作戦自体の組み立てに隙がなく、実際に、統制の取れた特殊部隊が一気に福岡を制圧する様は 圧巻でした。そのあとの、12万人の軍人が北朝鮮から送り込まれるという段取りは、 正直、その規模必要なの?そんな規模で自活できるの?という疑問はありましたが、 福岡制圧が実際にできるかもしれないと思わせてしまう力強いストーリー展開は素晴らしかったです。 私は各国の軍事力についての知識はほとんどないので、本作で描かれている北朝鮮軍の能力が 現実のものと比べて適切な評価なのか過大評価なのかは分かりませんが、 個人的に怖いなと思ったのは、その統率力、忠誠心、自分たちの行動の正しさに全く疑いを持っていないという この組織全体の精神的な強さの部分です。 現実の北朝鮮軍の兵器能力や情報技術が本作よりも多少劣っていたとしても、 この精神力でまとまった組織に攻められたら平和ボケの日本はひとたまりもないだろうなと思いました。 一方で、福岡の地を制圧した後は、市内の事業者から格安で食品や衣料品を調達し、 兵士たちに配給を始めましたが、北朝鮮の品物の品質よりも各段に上等な日本製の下着やたばこ、ビールに 次第に兵士たちの士気が落ちてくるというか、退廃的な雰囲気の影が忍び寄ってきていて、 あぁ、こういうところもリアリティあるなと感じてしまいました。 福岡の発展した街の様子を見ただけでも、北朝鮮での生活との格差に衝撃を受けて 精神的に悪影響を及ぼすのは起こりうる気がします。 北朝鮮軍は、日本人からしたら敵なのですが、 彼ら1人1人の祖国への思いや、自分たちの家族への思い、そして苦しい生活を耐えてきた日々の 描写に触れて、日本人よりもよっぽど自国への誇りを持ってるなと素直に感心してしまいました。 だって、福岡制圧の3日後にはレストランに多くの家族が食事に出かけてて、 北朝鮮軍と警察の交戦に巻き込まれて100名以上の死傷者を出してるんですよ。 なんでこんな時にのんきに出かけるのかなぁ・・・・日本人超お花畑だわぁと思いつつ、 今回のコロナ禍での従順なステイホームの姿勢を見てると、さすがにここまでバカではないような気もします。 もうちょっと事態をちゃんと捉えて、自宅避難をするんじゃないですかね。 というわけで、ところどころ細かな展開は気になるところもありましたが、 最後、政府の力ではなく、若者たちのグループにより事態が一気に動いて終結したことで、 よくまぁ、こんな壮大な物語を一応結末つけることができたもんだ、すごいなと感じました。 市井の任意の人間が事態を解決するという展開は、私が当初求めた展開ではなかったですが、 若者が日本政府を出し抜いて活躍するという設定は、いかにも村上龍らしいのかも・・・・と思い直しました。 Amazonのレビューを読んでみたら、彼ら若者グループの一部の人は、 『昭和歌謡大全集』にも登場していたようですが、全く記憶なし(苦笑)。 結局、読後の感想としては、この若者グループのような架空の存在じゃないと 非常事態にまともに対峙できない日本という国はかなり危ない!というもの。 だから軍備増強だ!とか、そういうことを言いたいのではなく、 日本人一人一人が、もっと日本という国のことを真面目に考える機会を日々持たないとダメだなということです。 政治を自分事として考えていかないといけないですね。 ![]() |
『モニカ』
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- 2018/01/16(Tue) -
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坂本龍一、村上龍 『モニカ』(新潮文庫)、通読。
坂本龍一が書き留めた夢の断片をヒントに、 村上龍が原稿用紙5枚の短編を30編書き上げたというもの。 モニカという架空の女性を主人公に、 様々な情景が語られていきますが、 短すぎて楽しめないまま話が終わってしまう感じです。 ファンの方は、この短い文章から空想の世界をぐーっと広げて 楽しんでいくのでしょうけれど、私はそこまでの忍耐力がないので 脱落してしまいました。 むしろ、坂本センセの超短文の方が印象に残りました。 ただ、村上龍さんが凄いと思うのは、 こういう他分野の一流の人と一緒に新しいことに挑戦する姿勢。 映画監督業とかも賛否あるように思いますが、 挑戦する気概が伝わってきますね。
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『イビサ』
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- 2017/03/11(Sat) -
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村上龍 『イビサ』(講談社文庫)、通読。
途中で、「なんで私、この本を読んでいるのだろう?」と 自問自答を繰り返す羽目になりました。 挫折寸前の読書。 近所のおばちゃんが貸してくれた本の中の一冊なのですが、 まさか、こんなセクシャルな本が混ざっているとは思わず、 軽い気持ちで読み始めてしまい、早々に後悔。 そこで、読むのを止めるという判断ができないのが私の往生際の悪いところで・・・・・。 主人公の女性の境遇にも、 行動にも、価値観にも、 共感できる部分が見つけられませんでした。
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『逃げる中高年、欲望のない若者たち』
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- 2015/11/17(Tue) -
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村上龍 『逃げる中高年、欲望のない若者たち』(KKベストセラーズ)、読了。
「挑発エッセイ」との帯にあるとおり、 確かに、毒のある表現がポンポン飛び出して、容赦ないです。 でも、個々の事象への評価は容赦ないのですが、 だからどう行動すべきかという将来への提言については あまり意見を押しつけてくる感じではなく、 読者に思考を促してきます。 そこが物足りないような気もするし、 そこは自分で考えないといけないような気もします。 でも、挑発的な表現が飛び交った割には 主張が控えめなので、着地が少し居心地悪いような印象の読書になりました。
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『おじいさんは山へ金儲けに』
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- 2015/03/19(Thu) -
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村上龍 『おじいさんは山へ金儲けに』(NHK出版)、読了。
村上龍が、昔話をモチーフに、投資の解説本を書いたようだ・・・・・ というわけで、店頭で見つけて即買ってきたのですが、 正直、期待はずれでした。 うーん、期待はずれというか、昔話を下敷きに村上龍が短編に仕上げているのですが、 その話で何が言いたいのか、正直よく分からない話が多いです。 短編の後に、山崎元氏や北野一氏が投資に関する解説を添えているのですが、 短編と解説とが、こじつけのように感じられて、一冊の本になっている意義を あまり感じられません。 出来が悪いとか言うのではなく、 よく分からなかったというのが、正直な感想です。 最後に収録されている三氏の鼎談の方が スッキリ整理されていて、読み応えがありました。
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『カンブリア宮殿2』
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- 2014/12/06(Sat) -
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村上龍×経済人 『カンブリア宮殿2』(日本経済新聞社)、読了。
シリーズ2作目。 今回も、大企業のトップから、ユニークな中小企業の創業者まで 多彩な面々が登場して、面白かったです。 改めて、一口に「成功した経営者」と言っても、 様々なタイプの人が居るんだなぁと実感しました。 とても丁寧で謙遜深い話し方をする人もいれば、 従業員に「死ね!」というぐらいの勢いでモノを言う経営者もいて、 きっと社風も経営者の数だけあるんだろうなと思いました。 しかし、どんなタイプの人であれ、自分の会社のことについては しっかりと語る言葉を持っており、それが自社の事業の自信だったり誇りだったり 従業員に対する信頼だったりを現しているように感じました。 収録語の村上龍氏のコメントの中で、 収録日にスタジオに付いてきた会社の面々の印象が述べられているところがあったのですが、 当人である経営者を介さずに、村上龍氏が従業員に話しかけたいと思える会社であること、 また、従業員側も堂々と村上龍氏に回答を返してくるところなどを思うと、 従業員自身も会社のことや経営者のことが好きなんだろうなと感じます。 自分も、勤務先との関係や、経営者&上司との関係を、 そんな風に情熱的なものにしていきたいなと思いを新たにしました。
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『日本経済に関する7年間の疑問』
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- 2014/07/20(Sun) -
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村上龍 『日本経済に関する7年間の疑問』(生活人新書)、読了。
引き続き本日も鼻の調子が悪いです・・・・。 くしゅん、くしゅん、ズルズル、といった感じで。 鼻炎薬飲んだから、眠くなりそうだなぁ・・・・。 さて、龍さんが、日本経済に関して一体どんな疑問を投げかけているのだろうか?と 期待しながら読み始めたのですが、 自らが主催するメルマガ「JMM」に書いたコラムを集めた内容で、 肝心の疑問は巻末に一覧化して載っているけど、 それに対する専門家の答えは未掲載・・・・・看板に偽り有!!(怒ッ) でも、疑問自体は載せているから、タイトルは嘘ではないか・・・・・・・詐欺的? 無料メルマガのようなので、本にしても売上云々には影響なさそうなのに・・・。 でも、どんなことが書いてあるのだろうか?と、とりあえずメルマガ登録してしまったので(爆)、 会員獲得には有効な策なのかも。 で、コラムの方ですが、時事問題を中心に思うことを述べてます。 ただ、きっと本文的なものがメルマガの方にあり、 その編集後記的な印象の文章なので、肝の部分が良く分からず、残念。 編集後記的な位置づけのせいなのか、著者の言論スタンスのせいなのか分からないのですが、 重大な時事問題や政治問題に対して、 「総論賛成各論反対」ではなく、「総論の意見表明は留保、各論に斜めからイチャモン」みたいな レベルで話が終わってしまっているのは残念でした。 分析の視点や、本質の突き方は面白いので、 もっときちんとした内容を読んでみたいと思いました。
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『カンブリア宮殿』
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- 2012/12/04(Tue) -
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村上龍×経済人 『カンブリア宮殿』(日本経済新聞出版社)、読了。
TV番組を本にまとめたもの。 時々、テレビを点けたときにやっていれば、見てしまう番組です。 ただ、テレビをつけることがあまりないので、偶然見る感じです(苦笑)。 最初の章には、大企業のトップが並んでいるため、 正直、紙面の量が少ないなぁと物足りなく感じたのですが、 ユニークな中堅企業に移っていくと、 普段目につくような経営論とは着眼点が違っていて、 エッセンスだけでも十分に興味深く読めました。 ちょっと今、自分自身、仕事で壁にぶつかっているのですが、 この本を読みながら、なんで自分は壁を乗り越えられないんだろう・・・ と考えてしまいました。 で、「会社の計画を書いても、実行者が自分じゃないから身が入らないんだ!」と気づき・・・。 会社批判、経営批判になってしまいそうな自分。 なんで長期計画を、一担当が書いて役員にお伺いを立ててるんだろうか??? 頭を転換しようと、「自分がお店を持ったら・・・」と空想し始めたら、 あまりに楽しくて眠れなくなっちゃいました(爆)。 今日の仕事は眠かった。 自分で計画して、自分で実行できる、それが経営者の醍醐味かもしれませんね。
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