『科学の現在を問う』
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- 2015/02/10(Tue) -
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村上陽一郎 『科学の現在を問う』(講談社現代新書)、読了。
JCOの臨界事故、クローン技術の進展、技術者の倫理観など いくつかの具体的トピックスを扱ったエッセイとなっていますが、 個人的には第1章「科学研究の変質」で書かれた 社会における科学者の位置づけの変遷が興味深かったです。 哲学者という立場で、キリスト教的な解釈の下で世界を解明しようとした17世紀。 19世紀には、個別の「科」を専門的に研究する「科学者」となり、 いまや学会などの科学者集団の中で自己完結した存在になっている・・・・・。 最近になって、科学と産業の連携ということが言われ始めていますが、 科学者としての自分の存在意義を見失うと、失敗するだけでなく 大きな後退を生んでしまうのではないかと思います。 STAP細胞の騒動などは、利己心や虚栄心などが勝ってしまった科学者の存在により 科学者全体への不信感を生んでしまったように感じます。 もちろん、iPS細胞のように、実用化が期待されている成果もあるわけですが。 今は、社会の側から科学者に対する不信感が投げかけられているところだと思いますが、 科学者の側から、社会とどう関わっていくのか、社会の中での科学者の役割は何か といったような観点での主張を読んでみたいと思いました。
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『安全と安心の科学』
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- 2014/01/21(Tue) -
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村上陽一郎 『安全と安心の科学』(集英社新書)、読了。
基本的には『安全学』の内容に沿ってます。 入門書というところでしょうか。 具体事例を入れつつ、分かりやすく「安全」「安心」について書かれています。 「安全をどのように確保するか」「どこまでやれば安心なのか」 現実的な目線で述べていると思い、私は著者の判断の仕方を信頼しています。 本作では、原子力発電所の安全性について肯定的な文章で書かれていますが、 3.11後も同様のスタンスを一貫して持っているようで、 一部からは批判が出ているようですね。 3.11後の言論の内容を少し読んでみた限りでは、 「このご時勢にここまで言い切るとは勇気あるなぁ~」と、表現には驚きましたが、 内容的には昔と変わらず信頼できるのではないかと感じました。 (ちょっと誤解を生みそうな表現には危ういものを感じますが) 「安全」と「安心」を混同してはいけない、 また、経済合理性や実現性を無視して「安全」や「安心」を無闇に求めることはマイナス。 こういう観点は、冷静に事態を受け止め、意味のある対策を講じるという点で 非常に重要なことだと思います。
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『安全学』
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- 2013/10/31(Thu) -
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村上陽一郎 『安全学』(青土社)、読了。
一橋フォーラムに合わせて、4度目か5度目となるお勉強。 あれこれあって当日までに読み終わらず(苦笑)。 「リスク」と「コスト」のバランスについて、 非常に分かり易く書いている本だと思います。 正論だけの「行政が悪い!」「警察が悪い!」的な批判では 世の中それほど良くはなっていきません。 「これだけの効果を得るために、我々の社会はカネ・トキ・ヒトを投資する」という 決断をコンセンサスの下でできることが重要なのだと思います。 それは、「国家」という単位も、「自治体」という単位でも、「会社」という単位でも たぶん「家庭」という単位でも同じことだと思います。 そして、このバランス感覚は、「リスク」に向かう時だけでなく、 「チャンス」や「変革」に向かう時も同じだと思います。 この本は、私の座右の書と言っても良いかもしれません。
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『科学者とは何か』
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- 2013/08/15(Thu) -
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村上陽一郎 『科学者とは何か』(新潮選書)、読了。
学生時代、東海村の臨界事故があったときに著者の『安全学』を読み、 「フェイルセーフ」「フールプルーフ」という概念を理解しました。 その時の印象が強くて、著者は安全工学の専門家かと思ってました。 たまたま古本屋で本作を見つけ、積読にしていたのですが、 アインシュタインを読んだ流れで手に取ってみました。 まず、著者のご専門は科学史ということで、 本作はその視点から、科学者の役割の変遷やエポックメイキングな事件を語っていきます。 思っていたよりも広い視点からの著作で、面白かったです。 特に、やはり、この時期は原爆問題に目が行きます。 マンハッタン計画に参画した科学者たちの様々なスタンスを紹介し、 また、日本人科学者としては朝永振一郎と湯川秀樹のスタンス、 さらには両名のスタンスを批評した唐木順三の文章などを紹介し、 興味深く読みました。 というか、原爆開発に対する科学者のスタンスという題材だけで 一冊の本にして欲しいぐらいだと感じました。 他にもたくさんの著作がある学者先生なので、 他の本も追いつつ、もう一度、『安全学』を読みたいと思いました。
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