『北の街物語』
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- 2021/02/11(Thu) -
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内田康夫 『北の街物語』(C・NOVELS)、読了。
浅見光彦シリーズ、気が付けば5年ぶりでした。 特に敬遠してたつもりはないのですが、自分では買わない作家さんなので 頂きものの本がなんとなく積読になっていました。 本作は、浅見家のある北区で起きた窃盗事件と殺人事件が絡む謎解きで、 非常に狭い範囲で物語が進んでいきます。 まぁ、確かに、地方を歩きまわってるだけでは、地元の光彦ファンが黙ってはいないですわね(笑)。 北区というと、私の中では「北区赤羽=ひろゆき氏」というイメージぐらいしかなく(苦笑)、 訪れたこともほとんどない地域かと思います。 いわゆる「下町」なのかな? そんな街で起こる窃盗事件は、大きなブロンズ像が盗まれたというもので、 なんだか牧歌的な雰囲気が漂ってます。 被害者の芸術家も、光彦氏の母親の知り合いだったりして、身近なところで起こってます。 たまには、そういう変化球も面白いのかな。 殺人事件の方も、殺されたのが知らないヤクザということで 可哀そうという共感は覚えず(苦笑)、淡々と捜査が進んでいく様子を読んでいくだけです。 ちょっと面倒くさい感じの大家族が登場してくるので、そこが味付けになっていますが、 事件自体は意外とあっさりしていたような。 ま、地元・北区であんまりきな臭い事件も書けないでしょうから、こんなところですかね。 登場してくるお蕎麦屋さんとか、たぶん実在するのかと思うので、 本作を東京に住んでいた時に読んでいたら、行っていたかもなぁ・・・・・と コロナ禍の今、遠い遠い東京という地に、地方から思いを馳せました。 ![]() |
『贄門島』
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- 2016/03/15(Tue) -
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内田康夫 『贄門島』(ジョイ・ノベルス)、読了。
浅見光彦の父は、亡くなる前年に海難事故に遭い、九死に一生を得ていた! というエピソードから始まる本作は、 浅見シリーズのファンにとっては重要な作品に位置づけられるのではないでしょうか。 私自身は、特に浅見シリーズへの思い入れはないので、単純に推理小説として読みましが、 過去の出来事を辿るという設定のため、殺人事件が発生するまで結構まどろっこしい展開で、 前半は読み疲れる感じでした。 中盤から殺人事件や失踪事件が起き、 しかも、閉鎖的な島民の刺すような視線に晒されながらの探偵活動となり、 結構、ハラハラする展開になっていきます。 そして、島が抱える歴史や文化が、 頼朝時代まで遡っていったり、戦争中の闇に触れたり、 現代世界の国際政治の要素まで取り込んだ真相が明らかになっていき、 後半は面白く読めました。 単なる恨み辛みの殺人事件ではなく、 歴史や文化、経済事情を背負った事件だったので、重厚な仕上がりになっていると思います。 読み応えがありました。
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『棄霊島』
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- 2016/01/13(Wed) -
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内田康夫 『棄霊島』(文春文庫)、読了。
浅見光彦シリーズの上下巻の大作です。 五島列島の取材で意気投合した元刑事が、静岡の御前崎海岸で死体となって見つかる。 現役刑事時代に追っていた軍艦時までの連続殺人事件の疑いがある転落事故に 30年のときを経て光彦が挑む! こんな感じの要約ですかね。 五島列島など観光名所の案内もあり、 軍艦島に象徴される産業の発展と衰退の歴史、 そしてその裏側にある朝鮮人の強制労働など いろんな要素が絡み合っていて面白い作品でした。 光彦シリーズでは、ときどき著者の主義主張が急に語られるような突飛さが気になる時があるのですが、 本作では、大きな歴史のうねりの中で、著者の思いが上手く消化できていたように感じました。 この新幹線、関係者が乗り合わせすぎだろう!と思うところがないわけではないですが、 サスペンスというよりも、歴史ものとして興味深い作品でした。 しかし、本作は、朝鮮人問題を扱っているので、 テレビドラマ化は結構しんどそうですね。
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『上野谷中殺人事件』
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- 2015/05/28(Thu) -
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内田康夫 『上野谷中殺人事件』(角川文庫)、読了。
薄かったので気分転換に読んでみました。 上野駅周辺の再開発工事に際して 地元住民と建設会社を巻き込んだ事件が発生・・・・。 うーん、何だか、自分の要約は間違っている印象。 確かに再開発の問題は、 最初からずっと物語のネタとして扱われているんですけど、 殺人事件との関わりがハッキリしてくるのって、結構、後のほうなんですよね。 なので、物語内での再開発工事の取り扱われ方は、 利害関係の衝突とか、人間関係の悪化とかをもたらす原因としてではなく、 あくまで社会問題の一つとして、賛成か反対かを議論している感じで、 薄い割りに、理屈っぽくて面倒くさいストーリー展開になってます(苦笑)。 肝心の殺人事件は、なんだか浅見光彦シリーズに入れるための 添え物程度だったような気がしました。
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『坊ちゃん殺人事件』
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- 2014/06/01(Sun) -
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内田康夫 『坊ちゃん殺人事件』(角川文庫)、読了。
朝起きたときは、今日は一日お勉強!と思っていたのですが、 日中の気温の高さに「ビール飲みながら読書とか良いよねぇ」と思ってしまい、 1缶開けたら、すぐに2缶目にも手が伸びてしまい、「美味しいなぁ、楽しいなぁ」で 気づいたら、もう夕方です(苦笑)。 うだうだと、頭を使わなくて済む読書ということで、光彦さんをば。 愛媛県へ取材に出かけた光彦さん、 そこで美人の殺人事件と、老人の殺人事件の双方の疑いをかけられます。 安心の、いつもどおりの展開です(笑)。 今回の殺人事件の真相は、 今、世間をお騒がせの例の事件の方に繋がっていき、 なかなか物騒な世の中やねぇ・・・・・という感じです。 ところで、内田センセ、本作の中で愛媛の名物や有名店を バッサリと「美味しくない」「味はそこそこ」的な評価で斬り捨ててます。 固有名詞まで出しているので、驚いてしまいました。 意外と毒舌なんですね。
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『志摩半島殺人事件』
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- 2014/04/02(Wed) -
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内田康夫 『志摩半島殺人事件』(中公文庫)、読了。
最近、やる気がなくなると内田康夫作品に逃げるクセが付いてしまいました(苦笑)。 それぐらい、疲れた心でも読みやすい文章です。 今回は伊勢志摩が舞台。 家族旅行などで行ったことがある土地なので、 地名が出てくるたびに、なんだか嬉しい気持ちになりました。 また、志摩の次に舞台になる三陸も、 3.11の際に頭に刻み込まれた地名がたくさん登場して、 「あぁ、こういう土地柄だったんだぁ」と今更ながらに感じ入ってしまいました。 推理の方は、「えっ、いきなり、こことそこが繋がるの!?」的な ある種の名(迷?)推理が働いた部分もありますが、 ま、志摩の人たちに好意的な描写が多かったので、なんとなく気持ち的にはOKな感じに(苦笑)。 とにもかくにも、すいすい気持ちよく読めることが、 内田作品の癒しの力でございます。
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『鬼首殺人事件』
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- 2014/01/12(Sun) -
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内田康夫 『鬼首殺人事件』(祥伝社文庫)、読了。
12月中旬から、完全なるモチベーションダウンです(苦笑)。 今日も、ぶらぶら近所を散歩して、あとはダラダラ喫茶店で読書。 ダイビングに行く以外の行動力が低下しております。 さて、お気軽読書のつもりで手にした本作ですが、 中盤から戦争だの大日本帝国だのが登場してきて、 思いのほか重たい内容でした。 ちょっと読むタイミングを間違えたかな。 秋田県、過疎状態から脱しようと町おこしに取り組む人々。 このあたりの描写は、私の実家の周りでも似たようなものなので、 共感して読んでいたのですが・・・・。 浅見光彦が、ちょっと左がかった発言で一生懸命訴えているのも、 ちょっと重かったです。 あと、実行犯や黒幕たちのキャラクターが、私の中で上手く像を結びませんでした。 善悪の問題ではなく、1人の人間の思想や行動として、 なんだか一貫性がないような気がして。 というわけで、作品の思想的な部分やテーマの重さが気になって、 あまりストーリーにのめりこめませんでした。 そもそも、ダイイングメッセージであんなに解きにくい言葉を残さなくても・・・(爆)。
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『砂冥宮』
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- 2014/01/04(Sat) -
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内田康夫 『砂冥宮』(実業之日本社文庫)、読了。
東京に戻る新幹線の中で読みました。 安定の内田康夫ですね! すっと読めました。 泉鏡花の取材で三浦半島を訪れた浅見光彦。 ところが、数日後に取材相手は石川県の海岸で死体となって発見される・・・・。 事件の関係者があまりにも偶然に繋がり過ぎていて、 ご都合よ過ぎじゃない?と思うところは多々ありますが、 ま、正月明けの帰京の車中で読むにはお手軽でした。 前回読んだ『神苦楽島』の大作ぶりには驚いたのですが 本作が本来の浅見光彦シリーズの姿なのかなと感じました。 疲れた時の現実逃避の読書には、 このシリーズは良いかもと思いました。
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『神苦楽島』
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- 2013/11/25(Mon) -
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内田康夫 『神苦楽島』(文春文庫)、読了。
初・内田康夫作品でございます。 どうにも、「2時間サスペンスドラマの原作」という偏見を持ってしまい、 今まで関心を向けることができなかったのですが、 こちらも父の知人からいただいた本の中にあったので挑戦。 舞台は淡路島。 淡路島出身の2人が、東京と淡路島で、それぞれ変死体で発見されます。 浅見光彦は、本業の取材という理由を付けて、淡路島に乗り込み、 そこで古来の風変わりな因習に吸い寄せられていく・・・・。 全く前知識がない状況で読み始めたのですが、 浅見光彦シリーズというのは、その地域に伝わる歴史や因習などをテーマに 話が展開していくんですかね?それだと、私の好みですわぁ。 今回は、淡路島に伝わる、「拝み屋」と呼ばれる 呪詛の家系が話のメインになってきます。 しかも、新興宗教が絡んできたりと、おどろおどろしいです。 「信仰」というのは、古来のものであっても、新興のものであっても、 人間の思考が極端に集約された形で現れたものなので、非常に興味深いと思っています。 もうね、「拝み屋って作中に何人登場してくんねん!」って印象はあるものの(苦笑)、 それ以外の淡路島に伝わる因習の1つ1つが興味深く、 楽しみながら読めました。 母方の遠い親戚に淡路島に住んでいる人がいるというのも、 興味を惹かれた土台になっているかもしれません。 中盤で三重県も登場し、「太陽の道」という思想(?)が語られます。 伊勢の斎宮址から淡路島の伊勢久留麻神社までを結ぶ北緯34度32分上に いくつもの神社や遺跡が並んでいるというものですが、 これは、初耳でした。 ただ、これだけたくさんの神社が存在する日本では、 それほど「隠された重大な意味」などはないのではないかと素人目には思っちゃいます。 偶然並んだという意味ではなく、太陽信仰の社を作るんだから 同じ緯度に並べようというという純粋な気持ちの表れなのではないかなと。 変におどろおどろしさを醸し出す必要はないだろうと思うのです。 サスペンスとしては、あまりに推理が順調に進んでいくので、 謎解きとして見ると物足りないかもしれませんが、 因習を物語調に面白く見せてくれる本としては、 非常に面白く読めました。 ちょっと他の作品も読んでみるかどうか、迷ってしまいました。 でも、手を付け始めたら、多作なので大変そう・・・・・。
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