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『宵山万華鏡』
- 2020/09/30(Wed) -
森見登美彦 『宵山万華鏡』(集英社文庫)、読了。

京都・祇園祭が舞台という情報と、表紙絵の感じから
またまた京大の学生諸君が無駄に大暴れする話かと思いきや、
最初の物語の主人公は小学生の姉妹でした。

バレエ教室からの帰り道、宵山の雑踏を覗いてみたくなった姉が
まじめで脱線することができない妹を無理やり祭りの空間に連れ込みます。
2人で手をつなぎながら祭り見学をしますが、最後の最後に手を放してしまい、
2人は離れ離れに・・・・・そして姉はいつまでも戻ってこなかった・・・・・。

幻想的で恐怖感が底流に流れているような展開に、
『きつねのはなし』系の作品か!と思って、気持ちを切り替えて第2話を読んだら、
今度は大学卒業後に久々に祇園祭の夜に京都を訪れた男が
同窓の友人にはめられ、バカげた恐怖体験をするという
一転して『四畳半神話大系』の世界か!という振り幅でビックリ。

で、この振り幅からどうやって物語を進めていくんだ???と思ってたら、
少しずつまたバカ学生世界から幻想世界に近づいていき、
全ての物語がつながったような、微妙にずれているような
絶妙なところでお話が閉じられました。

森見作品の多様性の中の、良い部分を横串でしっかり貫いたような面白い出来上がりでした。

私と著者の作風の相性はイマイチしっくりきてないのですが(苦笑)、
こういう作品が出てくるから、つい読んじゃうんですよねー。




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『新釈 走れメロス 他四篇』
- 2020/06/23(Tue) -
森見登美彦 『新釈 走れメロス 他四篇』(祥伝社文庫)、読了。

「走れメロス」など、古典の名作を森見ワールドで再構成した短編集。
「新釈」となっていますが、「エッセンスだけ抽出しました」と言った方が良いぐらいかもしれません(苦笑)。

舞台は京都の大学、たぶん京都大学。
偏屈な人生哲学のもと、無事に4年で卒業していく同級生を横目に、
大学にだらだらと居続ける齊藤秀太郎。
次第に現実世界と自分の思い描く世界とのギャップに自尊心がついていかず、
世捨て人として天狗になってしまう「山月記」。

自意識過剰な大学生の成れの果てと言ってしまえばそれまでですが、
京都大学の歴史と日本の大学界における位置づけを考えると
こういう学生が出てくるからこそ京都大学の存在意義があるんだよなぁ・・・・と
変なところで納得してしまいます。

そのあとに続く作品にも、ちょいちょい齊藤秀太郎が登場しますが、
こういう社会に何の役にもたたないのに、同窓生に影響を与えまくる人物というのは
やっぱり興味をもって眺めてしまいますよね。

国立大学の歪んだ存在意義を面白おかしく読めるのが、森見作品の魅力かなと思います。
その魅力全開の短編集ですね。

「走れメロス」の、何の必然性もない京都市内を逃げまくるという展開、
そして、お互いに絶対に約束は守らないと分かりあっているメロスとセリヌンティウス(笑)。
信用しあわないという信頼関係が成り立つんだなという変な構図です。
この作品が、一番くだらなくて一番好きだったかも。

本作、「走れメロス 他四篇」というタイトルだけを見て
無垢で真面目な中高生が購入してしまわないことを願うばかりです。




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『有頂天家族』
- 2016/08/30(Tue) -
森見登美彦 『有頂天家族』(幻冬舎文庫)、読了。

京都に住む狸の一家を中心に、
敵対する叔父一族、師事する天狗、迫りくる人間の魔の手、
様々な要素をギュッと詰め込んだ物語です。

冒頭50ページぐらいの、
主人公の狸(三男)と天狗先生の間のエピソードが非常に面白おかしく語られていたので
期待値がグンと上がったのですが、
登場人物があれこれ増えてきて、物語の世界が広がり始めたら
それなりに普通の話に落ち着いてきました。

哲学的に面白い話は、やっぱり少ない登場人物の間で、
あれやこれやと議論されている方が面白いですね。

かと言って、本作がつまらなかったわけではなく、
調子っぱずれな感じの特異なキャラクターたちの間で
京都の風景が揺れていて、興味深かったです。

著者の他の作品よりは、断然とっつきやすかったです。

狸と天狗と七福神と蛙の取り合わせの妙。
京都なら、何でも起こり得そうな懐の深さというか
闇の深さがありますな。


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『太陽の塔』
- 2016/06/04(Sat) -
森見登美彦 『太陽の塔』(新潮文庫)、読了。

森見登美彦氏のデビュー作。

デビューの時から作風はガッチリ固まっていたということを理解できました。

が、この作風は、私には合わないということも再認識しました。

味付けが濃厚すぎて、途中で飽きちゃうんですよね・・・・。

が、「ええじゃないか」の顛末は面白かったです。


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『ペンギン・ハイウェイ』
- 2016/02/19(Fri) -
森見登美彦 『ペンギン・ハイウェイ』(角川文庫)、読了。

どうやって、この作品の世界観を楽しめば良いのか
分からないまま終わってしまいました。

「ぼくはたいへん頭がよく・・・・」なんて自己紹介から始まるので、
どんなに斜に構えた世間評が読めるのだろうかと、
ワクワクしながら読み進めたのですが、
彼が住む世界自体も歪んでいるというか、不思議な人と不思議な現象ばかりで、
すべてが歪んでいるので、自分がどこに立って作品に向き合えばよいのか
つかめませんでした。

作品の中で起きる出来事自体に
興味が持てなかったというのも一因かも。

うーん、残念。


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『四畳半王国見聞録』
- 2015/05/05(Tue) -
森見登美彦 『四畳半王国見聞録』(新潮文庫)、通読。

うーん、これは、どうやって楽しめば良いのか
私には分かりませんでした・・・・・・・。

『四畳半神話体系』の続きモノかと思ったら、
続編というほどの位置づけではなく、世界観がリンクしているという程度で、
マニアでないと、ついていけないのではないかという感じ。

そもそも、修飾過剰&感情過多な文章が、
そういう作家だと分かっていても、やっぱり読みづらかったです。


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『きつねのはなし』
- 2014/06/09(Mon) -
森見登美彦 『きつねのはなし』(新潮文庫)、通読。

これまでに読んだユーモア溢れる作品から一転して
幻想的な小説でした。

こういう、ふわっとした終わり方をする小説は、
つかみどころが無くて苦手としております。
雰囲気を楽しむものなのだと思いますが、そこに理屈を求めたくなってしまうのです・・・・。

表題作「きつねのはなし」は面白く読んだのですが、
2作目からはしんどくなってきました。

変に物語に登場してくるお店や町がリンクしているところも、
なおさら読んでいて重石となって迫ってくる感じでした。


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『四畳半神話体系』
- 2014/01/10(Fri) -
森見登美彦 『四畳半神話体系』(角川文庫)、読了。

森見作品がどんなものか分かった上で読んだので、
本作は非常に楽しめました。

大学入学直後、選んだサークルで出会った小津に、
ばら色の青春を奪われ、下らない2年間を過ごしてしまった主人公。
一念発起?なのかどうかは分かりませんが、
人生を変えるキーワード「コロッセオ」に出会い・・・・・。

このクダラナイ大学生活を、
「もしも最初に選んだサークルが●●だったら・・・・」という設定で、
4つの人生が語られます。

しかも、それぞれの人生で出会うキーパーソンは、
結局同じ顔ぶれで、少しずつ展開は違うものの、同じようにクダラナイ出来事を
経験していくというか、消費していくというか、流されていくというか。

そして、それぞれの人生が、「もちぐま」「蛾の大群」によって
なぜか時系列が繋がっているような不思議な感じ。
この構成の複雑さは、お見事です。
パズルをはめるように、気持ちよく繋がっていきます。

いやはや、恐れ入りました。

そして、大学生活のくだらなさ爆発なところが、
森見作品に惹かれる最大の要素です。

私も、「もし自分があの団体に所属していなかったら・・・・」と想像してしまいました。
私の場合は、受験をしに大学に行ったときに出会った先輩たちに惹かれて
入学後にその組織に所属したので、本作の主人公よりも能動的に行動したのですが・・・
でも、受験の時に先輩たちに出会ってなかったら、全然違う組織に入ってたかもしれませんからねぇ。
テニサーとか(爆)。

でも、楽しい4年間でしたし、今も繋がっている友人達や先輩・後輩たちのことを思うと、
もう一度大学生活をやり直したいという気にはならないですねぇ。
素敵な4年間を出発点に、今もその素敵さが続いているように思っています。


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『夜は短し歩けよ乙女』
- 2013/04/07(Sun) -
森見登美彦 『夜は短し歩けよ乙女』(角川文庫)、読了。

山本周五郎賞ということで期待したのですが、
これは合いませんでした。
内容云々ではなく、文章の持つ雰囲気が合わないということです。
装飾がふんだん過ぎて食傷気味。
エッセイでさらっと読むには良いかもしれませんが、この文量では重いです。

ただ、大学生の無駄なエネルギーのかけ方には賛同。
「バカを一生懸命やる」ことの清々しさをもってる作品ですね。
特に、学園祭のくだりは最高です。
私自身が、学園祭の実行委員をやっていたという理由も大きいのですが、
しかし、すべての知恵と体力を「偏屈王」という劇に注ぎ込むエネルギー、
風刺の効いた会話と展開、周りを巻き込み興味を引き付ける力、
どれも大学生活らしい素晴らしい一面を描いてると思います。

あぁ、バカなことに生活の全てを費やしてた頃が懐かしい。


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『恋文の技術』
- 2012/02/26(Sun) -
森見登美彦 『恋文の技術』(ポプラ社)、読了。

突然、会社の同僚が貸してくれました。
初・森見作品です。

人から借りた本というのは、扱いが難しいですね。
私は、その時に読みたいと思う本を選べるように、
常時70冊ほどを積読状態にしているのですが、
借りた本は、あまり寝かせておくわけにも行かず、早々に読まないといけない。
となると、どうも、義務感で読んでしまって、気乗りしないことも多々あります。
結果、感想が、寂しいものになるという・・・・・。

今回も、戦争責任がテーマの本と併読してしまったため(苦笑)、
なんとも軽く感じてしまって、作品に乗れませんでした。

手紙のやり取りだけで、しかも、片側からの手紙だけで、
各人物のキャラクターや、物語の展開をイメージさせる手腕はお見事です。
でも、肝心のキャラクターや物語が、
非常にありきたりなものに感じてしまいました。
ギャグ的な小ネタも中途半端です。

小説だけでなく、ドラマや映画、舞台、そしてコントなどで
何度と使われてきた枠組みだと思うのですが、
過去のものを突き抜けるような工夫を感じられませんでした。

うーん、残念。

きっと、読むタイミングが悪かったから、余計に厳しい眼で見てしまったのでしょう。
試しに他の作品も読んで見ます。


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