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『レイクサイド』
- 2022/06/17(Fri) -
東野圭吾 『レイクサイド』(文春文庫)、読了。

中学受験を控えて、勉強合宿に臨んだ4人の小学生とその両親8名。
子供の指導だけでなく、親にも受験生の親としての心構えを説くところに特徴がある合宿で、
子供だけで過ごす時間と、親と一緒に過ごす時間のメリハリもつけられており、
こだわりの教育パパ&ママにウケがよさそうなメニューです。

そんな勉強合宿の場に、参加した父親の一人の不倫相手が乗り込んできて、
親たちの空気をザワつかせるだけでなく、殺されてしまうという急展開。
しかも、殺したと名乗り出たのは、その不倫をしていた男の妻。
男は、今回の合宿に参加した息子が血のつながらない義理の息子ということもあり
親たちから微妙な距離を取られ、孤立してしまいます。
さらに、親同士が結託して何かを隠しているかのような言動も見受けられ、
男は、一人で真相追求に取り組むことに。

作品の特徴として、あんまり登場人物たちの心理描写がされず、
淡々と事態が描かれていくので、作品に入っていくのが難しかったです。
しかも、登場してくる親たちの思考回路が保身なのか連帯なのか特殊過ぎて
違和感を覚えていたものの、同じく違和感を覚えた主人公の男の方の思考回路も
とても自分勝手というか、変な理想主義というか、こちらも歪んでいる感じで、
誰にも共感できないので、ふわふわ浮かんだまま読み進めてました。

殺人事件の真相については、途中で出てきた変な事象についても
伏線として一応きちんと回収しているので、そこは上手いなと思いましたが
では、最後に示された真相に納得ができるかと言われると、
「やっぱり変な親子の集まりだなー」としか思えなかったです。

こういう親に育てられた子供は可哀そうだなと思う反面、
でも、こういう子供たちが大人になっていったら相当歪んでそう・・・・・という恐怖もあり。

小説世界だから、読み終えて「面白かった」「つまらなかった」で終わらせられますが、
現実社会でこういう人たちがいたら怖いな・・・・とも思ってしまいました。
例えば、文京区の幼稚園で母親が子供の友達を殺してしまった事件とかありましたが、
あれも確かお受験殺人ですよね。
加害者は精神的に不安定だったというような報道もありましたが、じゃあ、現実世界の加害者と、
この作品に登場してくるお母さん達と、どれだけ差異があるのかというと、
実は近いところにカテゴライズされるんじゃないの?とも思えてしまい、
現実世界と小説世界の線引きができないぐらい、特殊な人間関係に雁字搦めにされた事件も
あると思うと、怖いですね。

人間だれしも、客観性とバランス感覚を失ってしまうと
とんでもないことをしでかしてしまうんでしょうね。




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『探偵倶楽部』
- 2022/06/01(Wed) -
東野圭吾 『探偵倶楽部』(角川文庫)、読了。

短編集ということで、気軽に読めるかなと手に取りました。

富裕層向けの会員制探偵サービスに依頼があった5つのケースの物語。
身内でのドロドロの金銭闘争の果ての殺人事件とか、
ある種、王道な動機の殺人事件と、その偽装のためのトリックを
探偵が謎解きしていくというスタイルに、なんだか古さを感じてしまいました。

そして、文体も、昭和のミステリ作品によくある印象で、なんだか古いなと。
短編という分量の中で事件を解決までもっていかないといけないので
淡々とした描写になってしまうのかもしれませんが、イマイチ世界観に入っていけず。

誰かを殺そうと思った時に、ここまでいろいろトリックやらアリバイ作りやら考えて
実際に実行する人って、どのぐらいいるんでしょうかね?
もしくは、殺人事件を起こした人物の中で、こんなに緻密な計画を立てて実行に移した人って
どれぐらいいるんでしょうか?

作品自体の印象がぼんやりしていたので、そんな余計なことを考えながらの読書となりました。




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『ナミヤ雑貨店の奇蹟』
- 2022/03/07(Mon) -
東野圭吾 『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川文庫)、読了。

あらすじを読むとファンタジー小説のような印象だったので
いつもの東野作品とはちょっと毛色が違うのかなと積読になってました。

窃盗事件を起こした若者3人組が逃げ込んだ空き家は、かなり前に閉店した雑貨店。
朝が来るまで室内で静かにしていたら、夜中に、店舗のシャッターの郵便受けから
手紙が投げ込まれた・・・・・・・内容は悩み相談・・・・・・。

この3人が、なぜかその悩み相談に回答して手紙を返すことに。
イマドキな印象の若者3人が、なぜ赤の他人の恋愛相談にまじめに回答しようとしたのか
最初は少し違和感を覚えましたが、彼らの境遇がだんだんとわかるにつれて、
人間の優しさに対するセンシティブさを持っている人たちなんだなと分かり、
そこは納得できました。

一方で、この空き家が、何十年も前の世界と、手紙によっつ繋がっているという
いわゆるタイムスリップ設定は、最初、「この3人、よく事態が把握できたよなー」と
変なところでびっくり。

届いた手紙が1979年の時代の人間から送られてきているという事実は把握したとして、
意外とあっさりと、本当に1979年から投函されてきたと受け入れているので、
「もうちょっと合理的な発想と直面した事態との狭間で悩むんじゃないの?」と
思っちゃいました。

というか、空き家の外とつながるドアを閉めておくと時間の流れが遅くなるとか、
そういう繊細なことに、よく短時間で気付けたなと、
その観察力にも驚き、ちょっと若者3人組のキャラクター設定とのギャップが
最初の頃は気になっちゃいました。

ただ、相談の手紙が2件目、3件目と続くにあたり、
地方の小さな町の中にある雑貨店で起きている出来事なので、
相談者たちの人間関係がだんだんとつながっていくような展開になり、
それぞれの相談の背景もお互いに影響を及ぼしあっているところもあり、
表面的な質問のやり取り以上に、その裏にあるそれぞれの人間たちの
深い思いというものが段々と見えてくるので、後半、一気に面白くなってきました。

また、最初は若者3人組の回答者側からの視点で物語を書いていましたが、
次は質問者側の目線で物語が進んでいき、そちらの方が物語に気持ちが入りやすかったです。
たぶん、質問者側は、このナミヤ雑貨店をめぐる悩み相談の仕組みに
半信半疑で手紙を出しているので、若者3人組にあるような拍子抜け感がなく
まっとうに考え方ら、そりゃ、変な話だと半信半疑になるよなーと納得。
その納得感があったので、読みやすかったです。

後半、児童養護施設における事故と登場人物たちとの関係性も見えてきて
なかなかに悲しいものをみんな背負っているところも、人生の重みを感じさせます。

ふわっとした始まり方で、最初はちょっと読みにくく思いましたが、
読み切ってみたら、今の人間も捨てたもんじゃないなーと、心が温かくなる作品でした。




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『分身』
- 2020/01/13(Mon) -
東野圭吾 『分身』(集英社文庫)、読了。

けっこう分厚い本でしたが、内容も重たくて、
新幹線や特急の移動で読む時間はたくさんあったのになかなか進みませんでした。

「分身」というタイトルと、顔が全く同じ見ず知らずの女性2人、
そして父親が医学部の教授だったり、母親が看護師だったり、
簡単に真相は推測できますが、発表当時はまだあまり知られていない技術だったのでしょうかね?
ドリーも、その後の報道ですし。
それとも、「なぜその技術が実行に移されたのか」という理由の部分が本題だったのかな?

東京に住む双葉と、北海道に住む鞠子。
それぞれが、母親の怪死、父親の不審な出張、覚えのない自身の行動を問われるなど
腑に落ちない出来事が続き、少ない手がかりからその真相を求めようと動き出します。

しかし、いずれも片親の女子大生。
少ない手持ち資金での調査はほんとうに小さな範囲でスタートしていきます。
そこに、それぞれの目の前に協力者が現れ、そこから調査は進展していくようになります。
この協力者が、「なんで、赤の他人のためにこんな面倒なことまでつきあってあげるの?」という
熱心さで協力してくれ、2人とも、恐縮しながらも協力者をどんどん頼っていきます。
「なんだか無防備だなぁ」と感じてたら、まぁ、裏があるわけで。

現在の世界で動いている組織の大掛かりさと、
20年前の世界で倫理にもとることを実行した1人1人の個人の暴走と、
なんだか話の規模のアンバランスさを感じてしまいました。
さらに、その20年の時を超えさせたのが、たった1回の深夜番組への素人の出演という一瞬の出来事、。
SNSで瞬時に情報が拡散され共有される現在と違って、
テレビで垂れ流されているだけの時代において、こんな劇的な反応があるのかな?とも。

双葉という女の子の言葉遣いも、なんだかリアリティに欠ける男っぽさで、
共感できる登場人物がいないままに読み終わってしまいました。




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『夢はトリノをかけめぐる』
- 2019/10/08(Tue) -
東野圭吾 『夢はトリノをかけめぐる』(光文社文庫)、読了。

世の中はラグビーW杯で盛り上がってますね!
昔のラグビー中継は、社会人も大学も、ラグビーファン向けだったので
素人が見てもチンプンカンプンでしたが、今回の中継ではルール解説をこまめに入れてくれるので
素人でも試合展開についていけるようになってます。
テレビも頑張ればできるじゃん!ってな感じです(←上から目線)。

さて、何かスポーツ物はないかな?と手元の積読の山を探したら、本作が出てきました。
東野圭吾氏によるトリノ冬季五輪の観戦記です。
奥田秀朗氏はスポーツエッセイをいろいろ書かれているので、スポーツ大好きという印象がありましたが
東野氏がウィンタースポーツ好きとは知りませんでした。
ただ、作中で触れられているように、『鳥人計画』というスキージャンパーが主人公の作品を書いているので
言われてみれば、普通の小説家がこんな題材なかなか選ばないよなぁ・・・・とは思います。

で、トリノ冬季五輪の取材エッセイとして、前半は、国内の競技施設で練習しているところにお邪魔し、
後半では実際にトリノに赴き観戦するという内容です。
ただ、普通のエッセイと違って、なぜか「ネコの化身の夢吉」という存在が主人公で
小説仕立てになってます。
夢吉が、東野氏の取材に帯同して、夢吉の視点で描くというもの。

あんまりその演出効果はなかったようにも思いますが、
「エッセイは苦手なので、書き進められるように小説仕立てにした」という趣旨のことを
本人が述べてますので、仕事をするための苦肉の策だったということかなぁ。

スポーツそのものの紹介記や観戦記というわけではなく、
著者の思考が、「僕はこんなにウィンタースポーツ好きなのに、なんで日本では人気がないんだろう?」
という疑問を軸に組み立てられているので、日本社会とウィンタースポーツという関係性が
各競技ごとに考察されていて、結構面白かったです。

著者は、札幌冬季五輪でのジャンプ表彰台独占という快挙の後の大会で
惨憺たる成績だったので人気が長続きしなかったというような理由をいくつか挙げていましたが、
私は、ルール改定の恣意性にあると思っています。

ノルディック複合で荻原兄弟が抜群の成績を残したらルールを変え、
ジャンプで舟木らが好成績を収めたらルールを変え、
フィギアで羽生が王者になるとルールを変え・・・・。
ウィンタースポーツは、日本人が頭角を現すとルールが欧州勢の都合の良いように変えられるという
感覚が私の中にあります。
もちろん、夏季五輪の競技でも、恣意的にルール改定をしているケースはあるのかもしれませんが、
私の印象では冬季の競技に多いような印象です。

それは、ウィンタースポーツは欧州の金持ちが優雅に楽しむものであり、
アジア人がそのトップに立つことなんて許さん!というような感情が入っているような気がします。
その点、夏季の競技は、純粋にルールの下で各国が世界一を競い合うという気持ちが
強いように思います。

「100mを走る」とか「100mを泳ぐ」とか、シンプルな競技では、どの国が勝つかも興味がありますが
それ以上に「何秒を記録するか」という人類の最高到達点を見たいという感情が優先されるのかなと。
だから、ルールで小細工せずに、とにかく最速の人間を見たいという気持ちに従っているのかなと思います。

さらには、冬季五輪は人気のある国が偏ってるので、
商業的に稼ごうと思ったらその国を優遇するのが手っ取り早いですが、
夏季五輪は世界各国で注目されているので、商業的に稼ぐには、いかに各競技を面白く見せて
放映権を高くしてどれだけ多くの国に販売するかという戦略になると思います。

今回のラグビーも、聞くところによると、点の与え方が時代により変わってきたようですが
より熱戦になるように、魅せるプレーが高得点に繋がるように設計を変えてきたように思えました。

スポーツに商売魂を持ち込むな!という声もあろうかと思いますが、
ラグビーW杯は、やぱりこれを商機ととらえた日本企業なり協会なりが一生懸命知恵を絞って
何年もかけて対応してきた結果、このブームに繋がっていると思います。
それを思うと、まだまだ冬季五輪では、ビジネスチャンスが小さいと見られているんでしょうね。




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『ゲームの名は誘拐』
- 2019/01/17(Thu) -
東野圭吾 『ゲームの名は誘拐』(光文社文庫)、読了。

年明けから、なんとなく推理小説を選ぶ日が続いています。
今回は王道の東野作品。
しかし、内容は王道ではなく、狂言誘拐を仕組んだ側の人間の目線で全てが描かれるというもの。

広告代理店に勤める主人公は、
大手自動車メーカーに対する企画提案を、直前で副社長にボツにされ、仕事を外されることに。
むしゃくしゃして夜に副社長宅を見に行ったところ、屋敷から塀を乗り越えて出てきた少女に遭遇。
家に連れて帰り、モノの弾みで狂言誘拐を仕立て上げ、2人で副社長から3億円をせしめることに。

最初に違和感を覚えたのは、副社長の屋敷から逃げ出してきた少女と
いきなり狂言誘拐の悪だくみをするか?ということ。
信用し過ぎじゃない?

結局、そこから綻びが出始めるんですが、
この後に続く主人公の慎重な段取り力を思うにつけ、
やっぱり出だしの行き当たりばったり感はちょっと変な感じです。

狂言誘拐を成立させるための2人の努力のプロセスは結構面白く読めました。
どんな仕掛けで身代金を取るのかなと。
やっぱり、誘拐モノは、身代金引き渡しの企画力と実行力が見せ場ですからね。
ワクワクして読み進められましたが、でも、最後の最後、引き渡しの場面、
ちょっと詰めが甘くないか?とも感じてしまいました。

全体的には面白く読めるんですが、
肝心要のところでリアリティが削がれてしまうようなところがあって若干モヤモヤ。

大手自動車メーカーと広告代理店のビジネス的なやりとりの部分も
なんだかリアリティの点でモヤモヤ。
大手企業の副社長の判断って、こんなのなのかなぁ?と。

面白い雰囲気はずっと保っていたのに、突き抜けるものがなかったのは残念。




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『魔球』
- 2018/01/20(Sat) -
東野圭吾 『魔球』(講談社文庫)、読了。

高校野球が絡んだ殺人事件。
被害者はレギュラー捕手の高校生、彼とバッテリーを組むエースピッチャーは
20年に1人と言われるほどの逸材だった。

高校生が殺害されるという展開がショッキングですが、
その事件の直後に、野球部の中で最初に議論されたのが
誰が次のキャプテンになるか、そして、エースをキャプテンにさせないためには
どうしたらよいかということ。

チームメイトを喪ったことよりも、自分たちのエゴが優先されるやりとりに、
人間の嫌な一面を見せつけられました。
でも、殺人事件という、あまりに非現実的な事態に遭遇してしまうと、
こんな風に卑近な話題に逃げてしまうのかもしれませんね。

そして、警察が少しずつ犯人に迫っていくプロセスが描かれますが、
そんな中で発見される第二の遺体。
この展開は衝撃でした。
あまりに悲しい・・・・。

そこから捜査は行きつ戻りつしながら、
捜査員・高間の推理、チームメイト・田島の記憶により、
ついに真相にたどり着くと、そこには悲しい過去が。

正直、最後に全容が分かった時に、
そこまでのことをするのかしら・・・・・という思いに駆られたところもあります。
事件の被害者の在り様と、それを起こすだけの心理、引き金となった原因、
それが少しアンバランスな印象を受けました。

でも、エースの子が背負ってきた過去の重さを思うと、
全ての哀しみが事件の起きた週に集約されていったのかなという気持ちになりました。

少年と犯罪の物語は、いつも読後感が悲しいです。


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『白夜行』
- 2017/09/06(Wed) -
東野圭吾 『白夜行』(集英社文庫)、読了。

ヒットしているのは分かってたので、読んでみたいなぁと思いながら、
あまりの分厚さに買うのを躊躇っておりました。
が、ブックオフが全品20%引きセールをしていたので
ドカ買いついでに、勇気を出してエイヤッと買ってきました(笑)。

1973年に起きた質屋殺し。
その被害者の息子と、容疑者の1人だった女の娘。
2人の子どもの30歳までの人生が断片的に描かれていきます。

それぞれのエピソードが交互に描かれていくのですが、
第三者の目から見た様子で語られていくので、
その内面が見えてこず、非常に不気味な印象が積み重なっていきます。

事件当時に自宅に居なかったかもしれない息子、
容疑者の女が死んだときに、自殺ではなく事故として処理させた娘、
いずれも小学生の立場で、この設定は気持ち悪いです。
そんな子供が大きくなっていく過程で起こる不審な事件、事故たち。

レイプ事件、ハッキング事件、離婚騒動、失踪事件、そして殺人、
息子の周辺の方が、金銭的な臭いがきついので
まだ現実味があるというか、想像できる範囲の犯罪の匂いですが、
娘の方は、被害者やその周囲の人が精神的に破滅してしまうような
むごたらしい事件が多くて、女の執念深さというか、
怨念みたいなものを感じてしまい、本当に怖いです。

このように20年近い時間の経過の中で起きる事件を、
オイルショックやバブル崩壊などの時事ネタと絡めて
上手く時代背景を利用しながら、社会全体の心理状況や経済状況も
この2人の行動のリアリティを増すように使われていて
上手い見せ方だなと感心しました。

最後まで2人の描写が交わることはないのですが、
その演出もうまいです。

刑事、探偵、会社役員、様々な人が真実を追いかけましたが、
彼らの推理も交わったり、交わらなかったり。
このあたりの匙加減が絶妙でした。

総じていうと、人間って怖い!


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『容疑者Xの献身』
- 2017/05/04(Thu) -
東野圭吾 『容疑者Xの献身』(文春文庫)、読了。

ガリレオシリーズ初の長編。
小説としては直木賞受賞作、映画化もされて大ヒット。
東野圭吾氏の名を知らしめた代表作ですね。

正直、ガリレオシリーズの短編集は、
科学知識を用いた謎解きがメインになっていて、
小説としては軽くてリアリティに欠ける印象受けていたのですが、
本作は長編ということで、初めて湯川センセが現実味のある存在として
作品中で躍動していると感じました。

また、冒頭に犯行シーンを詳細に描いてみせることで、
倒叙ミステリーとして、犯人と推理役のせめぎ合いが面白く、
読む手を止めることができませんでした。

しかも、その結末には、そんなどんでん返しが潜んでいるとは!!!
という展開で、最後まで息のつけない作品でした。

ガリレオシリーズでは、現実世界の法則を相手にする理系の思考が尊ばれる作風ですが、
本作では数学者が主人公であり、理系の中でも抽象世界を相手にする分野なので、
上手く行ったのかなと思いました。

短編で気になったのは、トリックが自然科学に執着するあまり非現実的になっている点でしたが、
本作は、数学者的な論理的思考の世界をまざまざと見せつけてくれて、
あっぱれ!という感じでした。


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『悪意』
- 2017/02/15(Wed) -
東野圭吾 『悪意』(講談社文庫)、読了。

面白くて一気読みでした。

気鋭の作家とされる男と、その幼馴染の子供本作家。
引っ越し間際の男の家を訪れたら、男は殺害されていた・・・・・。
捜査に来た警察官は、子供本作家が以前勤めていた学校のかつての同僚だった。

1つの殺人事件をめぐる推理なのですが、
それを語っていく小説の形態が、
作家の手記と刑事の独白を交互に見せていくという構成で、
客観性がなく、主観的に描かれているというところがポイント。

手記のどこまでが事実なのか、どこに不自然な箇所があるのかを
突き止めていくことで、真相にたどり着いていくという展開で、
捜査自体に大きな動きや大立ち回りはないのですが、
頭の中で大きな世界が動いていくような感覚があり、面白かったです。

報道もルポルタージュも歴史書も
どれほどまでに主観的な描写がなされているのかということを
思い浮かべてしまう作品でした。

日高という男のキャラクターが
随分、散漫な印象というか、固定しない印象でしたが、
その謎が解けてスッキリ!


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