『白夜行』
- 2017/09/06(Wed) -
東野圭吾 『白夜行』(集英社文庫)、読了。

ヒットしているのは分かってたので、読んでみたいなぁと思いながら、
あまりの分厚さに買うのを躊躇っておりました。
が、ブックオフが全品20%引きセールをしていたので
ドカ買いついでに、勇気を出してエイヤッと買ってきました(笑)。

1973年に起きた質屋殺し。
その被害者の息子と、容疑者の1人だった女の娘。
2人の子どもの30歳までの人生が断片的に描かれていきます。

それぞれのエピソードが交互に描かれていくのですが、
第三者の目から見た様子で語られていくので、
その内面が見えてこず、非常に不気味な印象が積み重なっていきます。

事件当時に自宅に居なかったかもしれない息子、
容疑者の女が死んだときに、自殺ではなく事故として処理させた娘、
いずれも小学生の立場で、この設定は気持ち悪いです。
そんな子供が大きくなっていく過程で起こる不審な事件、事故たち。

レイプ事件、ハッキング事件、離婚騒動、失踪事件、そして殺人、
息子の周辺の方が、金銭的な臭いがきついので
まだ現実味があるというか、想像できる範囲の犯罪の匂いですが、
娘の方は、被害者やその周囲の人が精神的に破滅してしまうような
むごたらしい事件が多くて、女の執念深さというか、
怨念みたいなものを感じてしまい、本当に怖いです。

このように20年近い時間の経過の中で起きる事件を、
オイルショックやバブル崩壊などの時事ネタと絡めて
上手く時代背景を利用しながら、社会全体の心理状況や経済状況も
この2人の行動のリアリティを増すように使われていて
上手い見せ方だなと感心しました。

最後まで2人の描写が交わることはないのですが、
その演出もうまいです。

刑事、探偵、会社役員、様々な人が真実を追いかけましたが、
彼らの推理も交わったり、交わらなかったり。
このあたりの匙加減が絶妙でした。

総じていうと、人間って怖い!


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東野 圭吾

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『容疑者Xの献身』
- 2017/05/04(Thu) -
東野圭吾 『容疑者Xの献身』(文春文庫)、読了。

ガリレオシリーズ初の長編。
小説としては直木賞受賞作、映画化もされて大ヒット。
東野圭吾氏の名を知らしめた代表作ですね。

正直、ガリレオシリーズの短編集は、
科学知識を用いた謎解きがメインになっていて、
小説としては軽くてリアリティに欠ける印象受けていたのですが、
本作は長編ということで、初めて湯川センセが現実味のある存在として
作品中で躍動していると感じました。

また、冒頭に犯行シーンを詳細に描いてみせることで、
倒叙ミステリーとして、犯人と推理役のせめぎ合いが面白く、
読む手を止めることができませんでした。

しかも、その結末には、そんなどんでん返しが潜んでいるとは!!!
という展開で、最後まで息のつけない作品でした。

ガリレオシリーズでは、現実世界の法則を相手にする理系の思考が尊ばれる作風ですが、
本作では数学者が主人公であり、理系の中でも抽象世界を相手にする分野なので、
上手く行ったのかなと思いました。

短編で気になったのは、トリックが自然科学に執着するあまり非現実的になっている点でしたが、
本作は、数学者的な論理的思考の世界をまざまざと見せつけてくれて、
あっぱれ!という感じでした。


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『悪意』
- 2017/02/15(Wed) -
東野圭吾 『悪意』(講談社文庫)、読了。

面白くて一気読みでした。

気鋭の作家とされる男と、その幼馴染の子供本作家。
引っ越し間際の男の家を訪れたら、男は殺害されていた・・・・・。
捜査に来た警察官は、子供本作家が以前勤めていた学校のかつての同僚だった。

1つの殺人事件をめぐる推理なのですが、
それを語っていく小説の形態が、
作家の手記と刑事の独白を交互に見せていくという構成で、
客観性がなく、主観的に描かれているというところがポイント。

手記のどこまでが事実なのか、どこに不自然な箇所があるのかを
突き止めていくことで、真相にたどり着いていくという展開で、
捜査自体に大きな動きや大立ち回りはないのですが、
頭の中で大きな世界が動いていくような感覚があり、面白かったです。

報道もルポルタージュも歴史書も
どれほどまでに主観的な描写がなされているのかということを
思い浮かべてしまう作品でした。

日高という男のキャラクターが
随分、散漫な印象というか、固定しない印象でしたが、
その謎が解けてスッキリ!


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『黒笑小説』
- 2016/04/07(Thu) -
東野圭吾 『黒笑小説』(集英社文庫)、読了。

このシリーズで一番面白かったです。

とある文学賞に5度目のノミネートをされたベテラン作家は、
その賞が獲りたくて仕方がないのだけれども、
各社の担当編集者たちは、他の候補者が獲るものと思い、
上辺だけのおべんちゃらを使いながら審査結果を待つことに・・・・・。

同業者を皮肉る作品ですが、これは著者自身の経験も踏まえているのでしょうね。
あれほど直木賞候補者の常連になった人もいないでしょうから(苦笑)。

他の作品は、シンデレラからストーカーまで、幅広いラインナップでどんどん読めます。
個人的には、「みえすぎ」の設定が面白かったです。

オチは相変わらずパンチが弱い気がしますが、
ストーリーの読みやすさや、ポップな展開は、私の好きな感じでした。

気軽に楽しめる短編集です。


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『毒笑小説』
- 2016/01/07(Thu) -
東野圭吾 『毒笑小説』(集英社文庫)、読了。

ブラックユーモアシリーズ
の第2弾。

手だれの著者とあって、さくっと読みやすい短編にまとまっています。
筒井康隆星新一のショートショートに比べると破壊力は落ちますが、
正月ボケのお手軽な読書にはちょうど良い感じです。

今の社会を皮肉っている「手作りマダム」とか「マニュアル警察」とか
面白かったです。

ただ、最後に収録された京極夏彦氏との対談で
「ああ、こいつ、面白くないヤツだと思われるのがすごく怖い」と述べていますが、
自分が作った笑いについてアレコレ分析しながら対談するのなんて、
恥ずかしい行為の極地のように思ってしまうのですが・・・・・。


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『手紙』
- 2015/10/08(Thu) -
東野圭吾 『手紙』(文春文庫)、読了。

なんだか重たい読書が続いてしまいました。

もの凄い感動作!という触れ込みだったのですが、
私は、どの主要登場人物にも共感することができないままに読み終わってしまいました。

弟を大学に行かせてあげたいという一身で強盗を働く兄。
もう、この発想の時点で私の想像の域を超えてしまっているのですが、
この兄が書いて寄越す手紙がノーテンキで、耐えられず・・・・。

そして、そんな兄の行いに翻弄されえる弟は、可哀想ではあるのですが、
なんだか心持ちが固まらないというか、何度か心変わりをする場面の描き方が、
「なぜ、今、そういう判断に揺れるの?」と思うものが多く、共感できず。

弟に思いを寄せる少女の行動も、客観的に見るとストーカーであり、
弟の心情第一に考えてあげているようにも思えず、そこも共感できず。

誰を軸に読んでいけば良いのか分からないまま物語の時間が過ぎていくので、
なんだか読んでいて自分が成長していないように感じてしまう後ろめたさがありました。

弟が勤めた家電量販店の社長が放つ辛らつな言葉が
私には一番ピンと来る内容でした。


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『プラチナデータ』
- 2015/08/05(Wed) -
東野圭吾 『プラチナデータ』(幻冬舎文庫)、読了。

映画化されて一時期盛り上がってましたが、ようやく原作をば。

国民全員のDNA登録により、現場の遺留品から容疑者を一気に突き止めようとする
DNA捜査システムと、その裏側に潜む国家レベルの陰謀・・・・・・という発想は面白いと思ったのですが、
それがただでさえ近未来的な事象なのに、そこにさらに
引き籠りの天才数学者とか、二重人格の警察技術者とか、電子ドラッグとか、幻覚とか、
いろんな非日常的な要素を詰め込みすぎて、物語全体が浮き足立っている印象を受けました。

なんか、何が起きてもおかしくないという物語の前提があってしまうと、
何が起きても、面白みがないというか。

そして、真犯人は相変わらず、ありきたりなところに居るし・・・・・・。

というわけで、東野作品の中では、それほど出来の良いものには思えませんでした。

映画化ありきだったのかな?


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『怪笑小説』
- 2015/07/13(Mon) -
東野圭吾 『怪笑小説』(集英社文庫)、読了。

東野さんの毒ッ気を含んだ短編集。

凄い!と唸るほどの短編の上手さはないものの、
気晴らしに読むにはお手頃な本だと思います。

みんなが日常生活の中で、心の中で毒づきながらも、それでも口には出さずに留めていることを
結構、あからさまに作品の中で吐き出しているので、
この作品を描くのは気持ちよかったのではないだろうかと思ってしまうほどでした。

人間って、黒いですよね。


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『あの頃ぼくらはアホでした』
- 2015/05/12(Tue) -
東野圭吾 『あの頃ぼくらはアホでした』(集英社文庫)、読了。

小説家のエッセイは飽きる・・・・・なんて書きながら
本作を買ってしまいました。
売れっ子男性作家だったら違うかも・・・・という期待を抱きつつ。

著者の中学校~大学時代の、主にバカ話を書いているのですが、
それほどぶっ飛んだ内容でもなく、オーソドックスなエッセイでした。
空いた時間に読むには適当だけど、あえて買い求める内容でもないかな。

村上龍さんみたいに、どうせなら小説にしてくれれば良いのに・・・・・と思ってしまいました。

途中、万引きやキセル乗車の話が出てきますが、
そういやぁ、テレビで過去の万引き談を披露して、袋叩きにあってた女性タレントが居たなぁ
なーんて、思い出しました。
B級女性タレントは叩かれるけど、売れっ子小説家だと笑えるエピソードになってしまうという
まぁ、ありがちな不公平さを感じることができました(苦笑)。

もしくは、無料なために不特定多数の人間が見てしまうテレビという媒体と、
曲がりなりにも意思をもって対価を支払った上で読まれる本という媒体の
構造上の違いに由来する、社会の反応の違いなのかもしれませんが。

世の中というのは、世知辛いものですね。


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『赤い指』
- 2014/07/03(Thu) -
東野圭吾 『赤い指』(講談社文庫)、読了。

実家から持ってきたのですが、加賀恭一郎シリーズ第7作とのこと。
こんな中途半端なところから読み始めるのもどうかと思ったのですが、
かといって本作のために6冊も読むのも大変だと思い、割り切っちゃいました(苦笑)。

サラリーマンの夫のもとに、家に居る妻からすぐに帰ってきて欲しいとの電話が。
家に帰ると、庭には、少女の死体が転がっていた・・・・・。

犯人も犯行状況も、早い段階でオープンになった状態で、
いかに警察の目をそらすかというところが、本作のサスペンスとしての軸になっています。

しかし、この夫婦が取った作戦は、ある意味予想できる範囲内であり、
それほど驚きをもって読めるような展開ではありませんでした。

むしろ本作は、親子のコミュニケーションが、夫婦-息子間で破綻しており、
さらには夫婦-老母間でも破綻しているという、
現代の社会問題、家族問題の方をメインに描きたかったのではないかと思います。

そのテーマ設定において、私個人は、本作には不快感しか感じられませんでした。
先のことが考えられず、少しでも困ったことが起きると思考停止状態になり、
短絡的な判断で取り繕ったり、もしくは判断を先延ばしにして事態を悪化させてしまう
そんな行動しか取れない父と母。
しかも、自分たちの不甲斐なさを、お互いのせいや社会のせいにしてしまう責任感のなさ。

そんな2人に教育されては、というか、教育を放棄されているようなものですが、
こんな息子になってしまうのも止むを得ないという感じです。

息子夫婦が持ち家が欲しいという打算で引き取った老母は、
住み心地の悪い生活空間に閉じ込められ、認知症がどんどんと悪化。
1つの家に住みながら、この4人は、全く別の空間を生きています。

本作を読んでいて、「あぁ、日本には、こんな家族がどれだけの数いるんだろうか」
「こういう生き方の人たちは、きっと同じ生き方をする人々の中で伴侶を得るのだろうな」
「そうすると、どんどん、この手の人たちが再生産されていくのだろうな」
「日本の将来は暗いな・・・・・・」
とまぁ、ある種、偏見と差別意識に満ちた感想を抱いてしまい、
そんな社会が嫌になり、そんな感想を持つ自分も嫌になりました。

自分勝手な話ですが、非常に読後感の悪い読書となってしまいました。


赤い指 (講談社文庫)赤い指 (講談社文庫)
東野 圭吾

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