『名短編、ここにあり』
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- 2021/10/22(Fri) -
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北村薫、宮部みゆき編 『名短編、ここにあり』(ちくま文庫)、読了。
先に続編の方を読んでいたアンソロジー。 続編の方は読む前のイメージと異なっていたので感想が落ち着かないものとなっていましたが 今回はどんな感じかわかってたので楽しめました。 冒頭は、半村良の「となりの宇宙人」。 実は、15年以上前にこの作品を収録した短編集を読んでいるのですが、 その時は、あんまり楽しめなかったようです。 でも、今回は、面白く読めました。 作品自体が持っているユーモアも良かったのですが、 この名短編シリーズの最初の最初に当たる作品がこれだ、あえてこれを選んできたんだという 作品外での評価も加わり、興味深く読めたのかなと思います。 宙さん、いいキャラですよね(笑)。 そして、続編よりは、知っている作家さんは多かったのですが、 聞いたことがない作品ばかりで、「この有名作家がこんな作品を書くのかぁ~」という 意外性も楽しめます。 個人的に面白いなと思った作品は、小松左京「かくし芸の男」、吉村昭「少女架刑」でした。 ![]() |
『謎物語』
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- 2018/04/16(Mon) -
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北村薫 『謎物語』(中公文庫)、読了。
タイトルから、短編集だろうと思って開いたら、 推理小説について熱~く語ったエッセイでした。 しかも、推理小説の中でも、本格小説について語っています。 北村さんの作品って、日常の謎を扱った作品が多いので、 本格好きと言われて、「え、そうなの!?」と一瞬思ってしまいましたが、 よくよく考えると、日常の中に無理やり謎解きを入れ込んでくるというのは、 相当なトリック好きなんだろうなと納得。 しかし、推理小説を書いている人にとって、 推理小説について真正面から語るのって、かなり勇気がいりますよね。 古典から現在のヒット作まで名だたるものは読んでないといけないですし、 読者が知らないようなマニアックな作品も話に上げられないと彩に欠けますし、 何よりも、著者自身の推理小説哲学みたいなものが露になるので リスキーなんじゃないかと。 ところが、北村さん、まさに真っ向勝負で、推理小説観を滔滔と語られています。 ネタバレにならないように細心の注意を払いながらも、 どの作品が好きで、なぜ好きなのか、なぜ凄いと思うのか、 みんなが好きだというこの作品をあまり評価していないのはなぜか というような真っ当な話がしっかりと書き込まれています。 私自身は、あんまり本格モノというジャンルが得意ではないのですが、 なぜ本格好きな人が本格にはまるのかという理由は、 本作を通して、よく伝わってきました。 自分にない目線や思考が知れて、面白かったです。
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『朝霧』
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- 2017/01/15(Sun) -
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北村薫 『朝霧』(創元推理文庫)、読了。
久々に円紫さんシリーズ、第5弾です。 前作の『六の宮の姫君』は、お堅い文学論の内容が続いたので 読むのがしんどい面もあったのですが、 本作は、同じように文学論が続きつつも、 穏やかなレベルに調整されていて読みやすかったです。 卒論という大きな山を越えたからでしょうかね(笑)。 円紫さんによる謎解きももちろんあるのですが、 本作では、文学論の方が興味深く読めました。 俳諧や和歌など、あまり私に馴染みのない分野について 作品の紹介がたくさんあったので、加藤楸邨とか気になっちゃいました。 それにしても、前作では卒論を書くという過程を あれほどじっくりと描いたのに、 本作では、就職後の数年間が一気に流れていきます。 新米編集者としての奮闘ぶりを、もっと読みたかったなという思いもありますが、 ま、お仕事小説ではないですからね(苦笑)。 どの謎も、謎が解けた後にふっと残る嫌な感じが、 なんとも大人な世界を醸し出す作品ですね。
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『鷺と雪』
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- 2014/02/08(Sat) -
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北村薫 『鷺と雪』(文春文庫)、読了。
ベッキーさんシリーズ、間違えて最終巻を読んじゃいました(苦笑)。 直木賞受賞作です。 それを聞かずに読んだら「あぁ、面白かった」となるところですが、 そう聞いてしまうと「本作で受賞するべきなのかなぁ?」と 相変わらず、直木賞の間の悪さを思わずにいられません。 でも、やっぱり、私が読んだ北村作品の中では一二の出来のような気もします。 戦前の上流階級の世界を、お嬢様の目で映しているのですが、 日常の謎解きという本題よりも、戦前の世相と、また戦争前夜という歴史的な位置づけの 両方がうまく描写されている作品だと思います。 やや政治的メッセージ性の強さが、特に本作の最後の十数ページは、 「この立場の人間が、この環境でこんなこと口走るか!?」と気になってしまいましたが まぁ、そこはご愛嬌ということで。 本作はブルジョア階級のお話ですが、 ところどころに庶民の暮らしを垣間見るシーンが出てきます。 両者の対峙により階級社会を嫌でも感じさせてくれますが、 現在の世の中も、対峙が巧妙に隠されているだけで、 階級もしくは階層というのは、確実に存在すると思います。 それらが無いと思い込もうとしてる日本人、 または、本気でないと思っているのんきな日本人、 平等や権利を無闇やたらと口にする一部の人々、 本作を読んだなら、今の時代にもしっかりと目を向けたほうが良いと思います。
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『六の宮の姫君』
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- 2014/01/26(Sun) -
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北村薫 『六の宮の姫君』(創元推理文庫)、読了。
気がつけば、北村ワールドは3年ぶりでした。 特に避けていたわけではないのですが・・・・。 さて、円紫さんシリーズの第4作です。 卒業を控えた主人公は、卒論に「芥川龍之介」を書くことに。 夏のドライブ小旅行、出版社でのバイトなどでの出会いを経て、 芥川の「六の宮の姫君」の謎に迫ります。 正直、お気楽な短編集でも・・・と思って手に取ったのですが、長編でした(苦笑)。 しかも、大正文学における作品や作者がどんどん登場してきて、 非常に濃密な内容となっています。 しんどい・・・・・。 でも、1つの作品における「謎」が気になり、 また「謎」が「謎」を呼ぶ展開に、読み止められませんでした。 結局、朝~お昼にかけて、喫茶店はしごで読書する羽目に(笑)。 前半は、小説的な展開もあって、読みやすくなってます。 正ちゃんの合いの手が、易しい手ほどきになってるんです。 後半は、真相に向けて調査結果を一気に展開させていく流れになり、 小説としては少々味気ない感じになってしまいますが、 菊池寛の作品が読みたくなってきました。芥川よりも。 文学部の人って、こういうことを学んでいくんだー、と変なところに関心も。 (私の出た大学には、文学部がなかったもので・・・・) 書誌学の講義は一度履修したことがありますが、 たしかに「地道な研究をする学問だなぁ」と思いました。 それを地で行く展開ですね。 シリーズの番外編的な感じでしょうかね。
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『街の灯』
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- 2010/11/08(Mon) -
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北村薫 『街の灯』(文春文庫)、読了。
「ベッキーさんシリーズ」ということで、 昭和7年の上流階級のお嬢様方の生活を舞台に謎解きの新シリーズです。 北村作品のお上品さが良く似合う舞台装置だと思います。 そこに突如現れた、女性運転手のベッキーさんこと別宮。 運転だけではなく、剣術も拳銃もお手の物。 なかなか興味深いキャラクター設定なのですが、 これらの技は紹介程度にとどめられ、 謎解きの本番で特に発揮されるわけではありません。 そこが、ちょっと物足りなかったです。 謎解きの方も、お得意の日常の謎ですが、 一人死んじゃったのにはビックリ。 上流階級が舞台だったので、こういう生々しい設定は出てこないと思ってました。 ベッキーさんとお嬢様のどちらかに探偵役を担わせるのではなく、 不思議なコンビネーションの中でなぞ解きをさせるのは、 なかなか新鮮な感じを受けました。
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『覆面作家の夢の家』
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- 2009/08/20(Thu) -
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北村薫 『覆面作家の夢の家』(角川文庫)、読了。
シリーズ3作目にして完結編です。 前作から、また時間がたってしまったので、 「あれっ?このキャラどんな人だっけ??」というレベルからのスタートとなりましたが、 多弁な覆面先生と編集くんに助けられて、すらっと作品の世界に入れました。 (というか、この2人、こんなにいい感じでしたっけ?) しかし、登場人物が亡くなってしまって、読んでいるこちらが動揺してしまうのは、 北村作品らしいところでしょうか。 まさか、崖から転落するとは思っていませんでした。 覆面先生と編集くんのサブストーリーも大団円で、 良かった、良かった、ですね。 (現実世界には、商品に手を出す編集者って多いんですかね?)
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『冬のオペラ』
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- 2009/04/10(Fri) -
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北村薫 『冬のオペラ』(角川文庫)、読了。
なんと1年ぶりとなってしまった北村作品は、「名探偵 巫弓彦」。 覆面作家に続いて、これまた珍妙な探偵の登場です。 そして、ワトソン役の姫宮あゆみ。 彼女がまた、会話を盛り立てる好奇心旺盛なおしゃべりさん。 関心の向く方向がニコライ堂やお寺など 円紫さんシリーズの「私」のような渋い趣味。 これらの点で「まさに北村薫!」という感じの作品で 楽しめました。
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