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『自粛バカ』
- 2023/11/02(Thu) -
池田清彦 『自粛バカ』(宝島社新書)、通読。

いかにもプチインテリ層のウケを狙った感のあるタイトルで、
普通ならスルーするのですが、池田清彦氏だったので一か八かで読んでみました。

うーん、結果は、ハズレ。

世間で報道されていることとか、SNSで流れてくる言葉とかに延髄反射的に反応しているような感じで
放言に近い印象を受けました。

生物学周りの話には、鋭い指摘と思う部分もありましたが、
ご自身の専門領域から離れると、あんまり裏取りせずに印象で語ってるんじゃないかと思えるほど
その情報の信憑性とか、そもそも世間ではそんな声が大きかったっけ?と感じるところもあり
結構読み飛ばしになっちゃいました。

著者の本は私的には当たり外れが大きいのですが、買う時の見極めが難しいです。




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『やがて消えゆく我が身なら』
- 2023/04/30(Sun) -
池田清彦 『やがて消えゆく我が身なら』 (角川ソフィア文庫)、読了。

清彦センセの本、本作は当たりでした!

本業の生物学の分野に関わるトピックスが多く扱われており、
ご本人曰く「身も蓋もない意見」が、バッサリ気持ちよかったです。

政治システムの話、自殺者の話、就職難の話、競争社会の話、
終末医療の話、脳死臓器移植の話、子供の教育の話、自然保護の話、
いろんな社会問題について、「生物学者」としての知見をベースに
持論を展開されているので、自分にはない視点からの指摘が多くて、勉強になります。

著者は、天皇制とか日の丸とかが大嫌いなご様子で、
廃止すべき!との論陣を張られてますが、今回読みながら考えたのは、
著者は、生物学に基づいて人間の社会も評価しているので、
生物の本能に組み込まれていない社会制度に関しては否定的なんだろうなということ。

例えば、サルの社会で、腕力のあるオスザルがボスの地位につき、
群れ全体を統率していくのは当たり前だと考えている。
そのボスザルの血統が、万が一、他のオスに比べて、圧倒的に優位な力の差を
遺伝子レベルで持っているなら、生物として群れが生き残る選択肢として
世襲もありうると考えているのではないかと思います。(これは私の勝手な推測です)
しかし、世襲を強固なものにするために、生物個体としての力の差とは別に、
社会制度とか、国旗国歌とかのような、「仕組み」で正統性を担保しようとするところが
生物学者としてお気に召さないのかなと思いました。

私は、そういう生物学的な価値判断を超越したところにある「仕組み」「社会制度」みたいなところに
興味があるので、それを真っ向から批判する清彦センセの主張は
やっぱり興味深く読むことができます。
政治的な思想で打倒天皇制みたいなことを言われると、ちょっと警戒してしまいますが
生物学的な見地から「意味がない」「集団の弱体化につながりかねない」というような
反対をされると(清彦センセが直接的にそういう言い方で反対しているわけではなく私の解釈です)、
面白いな、なるほどな、と思えます。

いろんなことが学べる清彦本でした。




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『真面目に生きると損をする』
- 2023/02/26(Sun) -
池田清彦 『真面目に生きると損をする』(角川新書)、読了。

タイトルから、世の中にある様々な仕組みやルールの本音と建て前というか
理想と現実のギャップについて語ったのかな?と思いましたが、
特にそういうテーマで縛っているわけでもなく、メルマガをまとめた本とでした。

生物学者という著者の本業からして、語られている内容は、
生物の話、原発の話、コンピュータの話、環境の話と自然科学に関するものが中心ですが、
「理解できることだけが正義と化す」という指摘は、まさにその通りだと思いました。

聞きかじった科学的考察に、不安をあおる言説が加味され、
「こんな危険が言われてるから、CO2は削減だ!」「ここが不安だから原発は反対だ!」という
結局は感情論で終わってしまっていることが多いように思えます。
一見、科学に基づく主張に見えて、入り口だけ科学的だけど
後ろのロジックは辻褄が合わないというか、論理をスキップさせながら無理やり結論に至るので
破綻しちゃってるケースをよく見ます。

でも、言ってる本人は科学的見地に基づき筋の通った主張をしているつもりになっているので、
なかなか自説を曲げないというか、頑固になるケースが多いですよね。

科学って、きちんと基礎が身についている人同士で議論すると
頭の整理がすっきりされて、理解が進むものですが、
科学の基礎がない人が議論に加わると収拾がつかなくなるので大変ですね。
やっぱり中学校までの基礎的理科教育が大事だと思います。

あと、「生物学的には、自分のことしか愛せないのは正常」という言葉が
心に残りました。




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『マツ★キヨ 「ヘンな人」で生きる技術』
- 2021/09/08(Wed) -
マツコ・デラックス、池田清彦 『マツ★キヨ 「ヘンな人」で生きる技術』(新潮文庫)、読了。

マツコさんと清彦センセの対談ということで、期待して買ってきたのですが、
思ったよりも表層的な話で終わっているような気がして、イマイチでした。

マイノリティは日常生活で生きにくい面もあるけれど、
一方で当事者は、デモでシュプレヒコールを上げながら自分たちは特別だという気持ちを
持っているところが厄介というような指摘は、
なるほど面白い視点だなと思いました。

でも、そこからの、もうひと堀りがない。
なんでそういう思考になってしまうのかとか、その思考の結果こういう衝突が生まれてるとか
そういう議論がないので、「厄介ですよ~」という紹介で終わってしまっていて、
せっかくのこの両名の対談なのに、惜しいなぁという印象です。

たぶん、深掘りしたらできるだけの知性と観察力、洞察力をもっているお二方だと思うのですが、
掘らずに次のネタに話をどんどん移していってしまったのは
出版社側の意図によるものではないのかなという気がしました。

対談のタイミングも、3.11直後に予定されていたものが一度延期されて、
そして、そこからさほど間を開けずに行われたようで、
3.11の時の恐怖心がまだ心に大きく影響している段階での対談だったので、
「怖い」「不安」というストレートな気持ちがそのまま吐き出されていて
出版当時に読んでいたら共感するところもあったかもしれませんが、
今読むには、内容が薄くてつらいです。

「原発嫌だ」の感情一点で論が進められているような印象で
もうちょっと論理的な議論が読みたかったです。

うーん、残念。




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『世間のカラクリ』
- 2017/12/18(Mon) -
池田清彦 『世間のカラクリ』(新潮文庫)、読了。

清彦節な本。
様々な科学的テーマに対して、
世間が持つ誤ったもしくは錯覚を与える思い込みを斬っていきます。

個人的に興味深かったのは、地球温暖化の話とSTAP細胞の話。

温暖化に関しては、最近読んだスティーブン・レヴィットの本でも、
「自然科学の知識が豊富な人ほど、穏健な意見よりも極端な意見を持ちがち」という
ポイントの例示として、温暖化主張派と反対派の対立が紹介されていましたが、
自分自身も含め、極端な表現を使ってしまうのはそのとおりだなぁ・・・・と思っていたところでした。

でも、やっぱり、少なくとも本を読むにあたっては、
穏健派の意見よりも賛成派や反対派のエッジの立った意見の方が読みやすいですし、
自分と違う意見であれば、何が違うのかを考えやすいです。

科学的知識の豊富な人の役割として、科学的知識の発信というものがあるならば、
やっぱり立場は極端なぐらいの方が、世間の議論の喚起や深耕には役立ちそうです。
社会的な役割と自分の信念というものを、きちんと整理していられるかという
ところが大事なように思いました。

もう一つのSTAP細胞ですが、これはもう、
で、結局、STAP細胞というのは存在する可能性があるの?ないの?という話であり、
科学者としての推理を読んでいて興味深かったです。

そこに、実績を上げたい、ライバルに差をつけたいという
人間の欲も絡んで、目が曇ってしまっているようです。

理知的なだけでは解決できない人間のドロドロが
ある種、この手の問題の興味深いところですね。


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『この世はウソでできている』
- 2017/05/18(Thu) -
池田清彦 『この世はウソでできている』(新潮文庫)、読了。

清彦センセの本は、刺さったり刺さらなかったり
温度差が結構あるのですが、
これは「世の中のウソ」という社会科学的に興味深そうなテーマを扱ってそうで、
期待していたのに・・・・・・・イマイチでした。

まえがきにて、ウソと社会システムの関係から書き始めていたので、
「これ、これ!」とワクワクしたのですが、
本文に入ったら、なんだか小さな話を突き回している印象が強くて、
イマイチ乗っていけませんでした。

社会の常識を分かりやすく批判するために、
些細なことにケチをつけている感じと言ったらよいのでしょうか。

もっと大きな社会のウソをしっかり書いてくれよ~と思っちゃいました。


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『新しい環境問題の教科書』
- 2015/06/24(Wed) -
池田清彦 『新しい環境問題の教科書』(新潮文庫)、読了。

キヨヒコ先生の本は、結構、環境問題をテーマにしたものが多いです。
生物学者のフィールドと、やはり近しいからでしょうか。

環境問題には、ある種の流行のようなものがある

おっしゃるとおりだと思います。
そして、今は、それが「地球温暖化」であることも、そのとおりだと思います。
少し前まで、「森を守ろう、マイ箸!」とか、「プルタブを拾って車椅子!」とかだったりした気がします。

ただ、本作での主張は、なんだか既読感が・・・・・。
前に読んだ本では、結構、理路整然としていた印象を受けたのですが、
本作は、少し主張が、感情的というか、感覚的になっているような印象を受けました。

世間のみんなが「Co2削減!」といきり立っているときには、
理路整然と指摘するより、斜に構えて嗤うようなモノの言い方をした方が、
人の目に止まるだろうという作戦でしょうかね。

何冊か地球温暖化に疑義を唱える本を読んできた身からすると
ちょっと本作は客観性に欠けるような印象を持ってしまいました。


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『38億年生物進化の旅』
- 2014/02/19(Wed) -
池田清彦 『38億年生物進化の旅』(新潮文庫)、通読。

世間をぶった切るキヨヒコ節を期待したら、
まじめな生物学の本でビックリ。
・・・・というか、これこそが著者の本業ですから、当たり前なのですが。

正直、あまり生物の進化の歴史自体には、
常識以上の知識を求める意欲はないのですが(苦笑)、
ただ、社会進化論に興味があるので、
その周辺知識として、ネオダーウィニズムの考え方は参考になりました。

で、この本でもきちんと説明がされていましたが、
なんで地球上に生物は誕生したんでしょうかね。
頭では分かっても、実感が湧きません。
きっと私には永遠の謎・・・・。


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『環境問題のウソ』
- 2013/12/07(Sat) -
池田清彦 『環境問題のウソ』(ちくまプリマー新書)、読了。

続けざまに、アンチ・エコ派(という言い方で良いですかね?)の本。

武田センセの本では、ちょっと数字の扱い方が気になってしまったのですが、
清彦センセの本では、あまり数字で論破しようとせずに、
むしろ定性的な表現で分かり易く本質を突くように攻めてくるので、
落ち着いて読むことができました。
ところどころ口が悪いですが(苦笑)。

なんとなく数字やグラフを示されると、
正しい主張のように信じてしまいそうになりますが、
定性的に示された方が、根本部分でのロジックのおかしさや怪しさが一目瞭然。

外来種を除去しようという取り組みが、
生物の種の進化の過程を否定し、純潔種への過度なこだわりという
民族主義につながる危険思想だというのは、なるほどぉ、と呻りました。

環境問題は、自然科学的な正しさの判断だけでなく、
政治・経済の面での評価、さらには哲学・思想的な面での分析も
しっかりと行っていかなければいけないということを改めて感じました。


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『正しく生きるとはどういうことか』
- 2013/11/16(Sat) -
池田清彦 『正しく生きるとはどういうことか』(新潮文庫)、読了。

なんとも凄いタイトルですが、
清彦センセということで買ってまいりました。

いつも、その主張の鋭さというか、
建前とか世間体を取っ払った本音の理論に惹かれるのですが、
今回は少し距離を感じてしまいました。

理由は、清彦センセの気合の入り方が半端なかったから(苦笑)。
「リバタリアニズム」などを真正面から語られては、
ついていくのも大変です。
気軽な気持ちで読み始めたので、ちょっと追いつけませんでした。

最後の養老センセとの対談は面白かったです。
ラオスでの虫取り旅の間に行った対談(もしくは旅の会話・笑)のようですが、
じっくりと対談を読んでみたいと思いました。


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