『世間のカラクリ』
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- 2017/12/18(Mon) -
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池田清彦 『世間のカラクリ』(新潮文庫)、読了。
清彦節な本。 様々な科学的テーマに対して、 世間が持つ誤ったもしくは錯覚を与える思い込みを斬っていきます。 個人的に興味深かったのは、地球温暖化の話とSTAP細胞の話。 温暖化に関しては、最近読んだスティーブン・レヴィットの本でも、 「自然科学の知識が豊富な人ほど、穏健な意見よりも極端な意見を持ちがち」という ポイントの例示として、温暖化主張派と反対派の対立が紹介されていましたが、 自分自身も含め、極端な表現を使ってしまうのはそのとおりだなぁ・・・・と思っていたところでした。 でも、やっぱり、少なくとも本を読むにあたっては、 穏健派の意見よりも賛成派や反対派のエッジの立った意見の方が読みやすいですし、 自分と違う意見であれば、何が違うのかを考えやすいです。 科学的知識の豊富な人の役割として、科学的知識の発信というものがあるならば、 やっぱり立場は極端なぐらいの方が、世間の議論の喚起や深耕には役立ちそうです。 社会的な役割と自分の信念というものを、きちんと整理していられるかという ところが大事なように思いました。 もう一つのSTAP細胞ですが、これはもう、 で、結局、STAP細胞というのは存在する可能性があるの?ないの?という話であり、 科学者としての推理を読んでいて興味深かったです。 そこに、実績を上げたい、ライバルに差をつけたいという 人間の欲も絡んで、目が曇ってしまっているようです。 理知的なだけでは解決できない人間のドロドロが ある種、この手の問題の興味深いところですね。
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『この世はウソでできている』
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- 2017/05/18(Thu) -
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池田清彦 『この世はウソでできている』(新潮文庫)、読了。
清彦センセの本は、刺さったり刺さらなかったり 温度差が結構あるのですが、 これは「世の中のウソ」という社会科学的に興味深そうなテーマを扱ってそうで、 期待していたのに・・・・・・・イマイチでした。 まえがきにて、ウソと社会システムの関係から書き始めていたので、 「これ、これ!」とワクワクしたのですが、 本文に入ったら、なんだか小さな話を突き回している印象が強くて、 イマイチ乗っていけませんでした。 社会の常識を分かりやすく批判するために、 些細なことにケチをつけている感じと言ったらよいのでしょうか。 もっと大きな社会のウソをしっかり書いてくれよ~と思っちゃいました。
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『新しい環境問題の教科書』
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- 2015/06/24(Wed) -
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池田清彦 『新しい環境問題の教科書』(新潮文庫)、読了。
キヨヒコ先生の本は、結構、環境問題をテーマにしたものが多いです。 生物学者のフィールドと、やはり近しいからでしょうか。 環境問題には、ある種の流行のようなものがある おっしゃるとおりだと思います。 そして、今は、それが「地球温暖化」であることも、そのとおりだと思います。 少し前まで、「森を守ろう、マイ箸!」とか、「プルタブを拾って車椅子!」とかだったりした気がします。 ただ、本作での主張は、なんだか既読感が・・・・・。 前に読んだ本では、結構、理路整然としていた印象を受けたのですが、 本作は、少し主張が、感情的というか、感覚的になっているような印象を受けました。 世間のみんなが「Co2削減!」といきり立っているときには、 理路整然と指摘するより、斜に構えて嗤うようなモノの言い方をした方が、 人の目に止まるだろうという作戦でしょうかね。 何冊か地球温暖化に疑義を唱える本を読んできた身からすると ちょっと本作は客観性に欠けるような印象を持ってしまいました。
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『38億年生物進化の旅』
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- 2014/02/19(Wed) -
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池田清彦 『38億年生物進化の旅』(新潮文庫)、通読。
世間をぶった切るキヨヒコ節を期待したら、 まじめな生物学の本でビックリ。 ・・・・というか、これこそが著者の本業ですから、当たり前なのですが。 正直、あまり生物の進化の歴史自体には、 常識以上の知識を求める意欲はないのですが(苦笑)、 ただ、社会進化論に興味があるので、 その周辺知識として、ネオダーウィニズムの考え方は参考になりました。 で、この本でもきちんと説明がされていましたが、 なんで地球上に生物は誕生したんでしょうかね。 頭では分かっても、実感が湧きません。 きっと私には永遠の謎・・・・。
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『環境問題のウソ』
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- 2013/12/07(Sat) -
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池田清彦 『環境問題のウソ』(ちくまプリマー新書)、読了。
続けざまに、アンチ・エコ派(という言い方で良いですかね?)の本。 武田センセの本では、ちょっと数字の扱い方が気になってしまったのですが、 清彦センセの本では、あまり数字で論破しようとせずに、 むしろ定性的な表現で分かり易く本質を突くように攻めてくるので、 落ち着いて読むことができました。 ところどころ口が悪いですが(苦笑)。 なんとなく数字やグラフを示されると、 正しい主張のように信じてしまいそうになりますが、 定性的に示された方が、根本部分でのロジックのおかしさや怪しさが一目瞭然。 外来種を除去しようという取り組みが、 生物の種の進化の過程を否定し、純潔種への過度なこだわりという 民族主義につながる危険思想だというのは、なるほどぉ、と呻りました。 環境問題は、自然科学的な正しさの判断だけでなく、 政治・経済の面での評価、さらには哲学・思想的な面での分析も しっかりと行っていかなければいけないということを改めて感じました。
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『正しく生きるとはどういうことか』
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- 2013/11/16(Sat) -
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池田清彦 『正しく生きるとはどういうことか』(新潮文庫)、読了。
なんとも凄いタイトルですが、 清彦センセということで買ってまいりました。 いつも、その主張の鋭さというか、 建前とか世間体を取っ払った本音の理論に惹かれるのですが、 今回は少し距離を感じてしまいました。 理由は、清彦センセの気合の入り方が半端なかったから(苦笑)。 「リバタリアニズム」などを真正面から語られては、 ついていくのも大変です。 気軽な気持ちで読み始めたので、ちょっと追いつけませんでした。 最後の養老センセとの対談は面白かったです。 ラオスでの虫取り旅の間に行った対談(もしくは旅の会話・笑)のようですが、 じっくりと対談を読んでみたいと思いました。
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『やぶにらみ科学論』
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- 2011/11/08(Tue) -
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池田清彦 『やぶにらみ科学論』(ちくま新書)、読了。
これは面白かったです! 前回読んだ本でも、社会やルールに対する斬り込み方が好みだったのですが、 本作では、「科学」という、まさに世の中のルールや信仰について バッサバッさと斬っていき、なおかつ、その斬り倒す論理展開が私の考えに近かったので、 おちゃらけや毒舌も、すっきり爽やかに読めました(爆)。 自然保護を「原理主義」と呼んで、斬り捨てるところなんざ、拍手喝采モノです。 ご指摘の通り、過激な人々は、手段が目的になっているので、 「なんで、そこまでするの!?」と言う問いを発したくなるんですよね。 そして、その問いに、まともな答えが返ってくることは、まず無いという・・・・・。 地球温暖化論も斬っていますが、 私は、「温暖化して何が悪いんだっけ?」と考えているクチです。 そもそも人間の活動だけで、地球規模での気温の上昇や海水温の上昇が 言われている規模で起こりうるのかということ自体も疑問なのですが、 例えば、水温が上がって、サンゴ礁の北上が観察されることについて、 北上して新たな生息地を見つけてるなら、それでいいんじゃないの?と考えてます。 環境の変化に合わせて生き残ったり、滅んだりするのがが進化論でしょ? もし、この世に人間という存在がもともと無かったとしても、 地球の活動や宇宙の活動により、地球の環境は絶えず変化し続けるのですから、 それにより水温が上がってサンゴが北上することもありうるでしょう。 それと何が違うの? もちろん、有害物質の垂れ流しのような、公害による環境破壊はダメだと思いますよ。 環境や生物に良くないということ以上に、人間自身の生活にとってダメージなのですから 公害を発生させるは自殺行為であり、一生物の行動としてバカだと思います。 でも、害を与える行為でなければ、長い目で見れば自然の浄化作用などの中で 調和が図られていくのではないかと感じています。 人間の所作など、地球の偉大さに比べれば、ちっぽけなものなのではないかと。 (このあたりは、非常に感覚的なものであり、科学的裏づけは無い放言です) 人間の近視眼的な都合で公害を引き起こすのは、まさに傲慢さの現れだと思いますが、 一方で、人間の1つ1つの小さな行動が地球に悪影響を与えるのだという警告にも 人間の力を過信した傲慢さを感じてしまいます。 異常気象とか盛んに言われますが、 気象で言う「平年値」って、30年間のデータの平均なのであって、 極論すれば、30年間の異常気象の平均なんですよね~。 1年間が平年並みで終わる年なんてありえなくて、 猛暑日、集中豪雨、台風直撃、水不足、大雪、雷被害、毎年何かが起きるんです。 地球の活動、自然の営みには「ダイナミックな動き」があるということを念頭において その中に、ちっぽけな1人の人間である自分がいて、 集団生活をすることでようやく生き延びているんだということを 自覚しながら生きていきたいと、改めて思い至りました。
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