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『ささら さや』
- 2022/08/20(Sat) -
加納朋子 『ささら さや』(幻冬舎文庫)、読了。

生後2か月の子供を遺し、目の前で交通事故で亡くなった夫。
夫の両親から子供を引き渡せと強く迫られ、
そこから逃げるように埼玉県の佐々良に引っ越した主人公。

この気の弱くて人が好い主人公が、佐々良の町で数々のトラブルに巻き込まれますが、
そんな時に夫の霊が誰かに乗り移り、窮地を助けてくれるという物語。

こうやって要約してしまうと、二流のハートフルコメディのようですが、
正直、冷静になってみると突っ込みどころ満載なんですよ。
「馬鹿っサヤ」という夫の口癖は、発音しにくくないかい?という感じだし、
誘拐並みの強引さで子供を引き取ろうとするジジババはやりすぎじゃない?とか、
そもそも自分の大事な赤ちゃんを入院させた病院がどこか分からないとか母親失格じゃない?とか。

でも、なぜか読めてしまったのは、佐々良の町で主人公が知り合った
三婆+イケイケギャルママの4人組のせいですね(苦笑)。

ドタバタコメディなのですが、この4人キャラがいずれもしっかり立っていて、
実際に近くにいたら鬱陶しいと思うのですが、
こうやって小説になると、その言動に嫌味が感じられないのが
なんだか上手いなーと思ってしまいました。

そして、夫の霊のフェードアウトの仕方も、
変に演出に凝るのではなく、現実世界との折り合いをうまくつけている感じで
気持ちよく読めました。

主人公は、いつになったら働きに出るんだろう?という現実的な疑問はさておき、
さらっと読むには面白い作品でした。




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『カーテンコール!』
- 2022/05/14(Sat) -
加納朋子 『カーテンコール!』(新潮文庫)、読了。

ちょっと間が空いてた加納作品

経営不振で閉校が決まった女子大学において単位不足で卒業できず
半年間の補習講義を、理事長自ら実施することになり、
そこに集められた10名強の落ちこぼれ女子大生たち・・・・・。

この設定から、コメディ要素の強い作品かなと思っていたら、
いきなりLGBTで性自認に悩み、コミュ障となってしまった女の子(心は男の子)の話から始まり、
当人の深刻な悩みが素直に描写されていくので、
「おぉ、重い展開の話だわ・・・・」とやや読書の腰が引け気味になりました。

次の章では、睡眠障害のような症状をもつ女の子が主人公で、
ここまで読んで、「あ、この作品は、何らかの心の病や体の病を抱えて正常な社会生活が
送りにくくなってしまっている女の子たちの物語なのか」と納得。
とても現代的なテーマを扱った作品なんだと認識しました。

そして、彼女たちの問題解決に温かく見守るような姿勢で、しかし全力で取り組むのが、
人生のベテランである理事長、その奥さんの寮母さん、そして盟友の校医さんら。
この学園側のスタッフたちが、厳しくも温かいんですよねー。

結局、現代の社会問題のような病は、周囲にこのような愛情深い人たちが居ないがために
孤独な環境から発症し悪化していってしまうのかなーと感じました。
各章の主人公となる女の子たちの苦しみの原因が、
主にその家庭環境から来ている様子も丁寧に描かれており、
家庭の中で孤独だったんだろうなー、周囲の家族に悪気がない分なおさら孤独なんだろうなーと
思い至りました。

物語は、理事長たちの活躍により温かい雰囲気で幕を閉じますが、
現実社会のことを考えると、なかなかに暗い気持ちになってしまう社会派の作品でした。




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『モノレールねこ』
- 2018/05/29(Tue) -
加納朋子 『モノレールねこ』(文春文庫)、読了。

タイトルの「モノレールねこ」って一体ナニ?と思って読んでいったら、
塀の上にネコが座っている様を描写した呼び方だそうで、
納得(笑)。

その太々しい野良猫が媒介する顔も知らない小学生同士の文通。
1行ずつ、一言ずつのやりとりですが、ツッコミ側のセンスが光る
面白いやり取りです。
そして10年後・・・・・。
分かりやすい展開でしたが、爽やかなお話でした。

続く短編は犬の話。
こりゃ動物シリーズか?と思いきや、だんだん重たい雰囲気になっていきます。
母娘の拗れた関係の話って、気分が沈み込むことが多いのですが、
でも、あらゆる人間関係の中で一番複雑な関係のような気がしていて、
興味深く読んでしまいます。

物語の最後は、明るい未来を想起させるような感じで終わりましたが、
このヒステリックな母親が、そう簡単に大人しくなるのだろうかと
やや疑いの目で見てしまいました。
でも、娘さんからの視線が変わっただけでも、大きな変化にはなりそうですね。

で、次の動物はと言うと、「アンクル」、つまり叔父さん。
事故で家族を一瞬で失い、たまたま留守番をしていた女子中学生と
家に居候している無職の叔父との2人きりの生活がスタートします。

本当に、何もできない叔父さんなのですが、
女子中学生が大人な考えを持っているおかげか、
意外と、良いコンビなんじゃないの?という目で見てしまえます。
この短編集の中で、一番好きなお話だったかも。

その後、いくつかの短編が続きますが、
途中から、各短編の方向性のバラバラ感が気になってきてしまいました。
あと、前半の作品に感じた作者の執念みたいなものが
後半の作品になると薄れてきたような・・・・・・私が読み疲れたのかなぁ。

途中までは結構のめりこんで読んでいたのに
読後感はイマイチすかっとしない残念さがありました。


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『レインレイン・ボウ』
- 2016/12/20(Tue) -
加納朋子 『レインレイン・ボウ』(集英社文庫)、読了。

高校時代の弱小ソフトボール部の面々が、
卒業以来に久々に一堂に会した。
理由は、チームメイトが亡くなったから・・・・・・。

20代で高校時代の仲間が亡くなるのって、
予想していないだけに、衝撃度は大きいですよね。
それが、事故死とかではなく、病死ならなおさら。

そんな衝撃の連絡を受けるところから書き始めて、
1年近い時間軸をもって順番に描いていきます。

心臓病の持病を持っていたのに、ソフトボール部に入部した女の子。
しかも運動神経が良いわけでもなく、むしろ頭が良くて文系イメージ。
部内では侍女のような御付の同級生がいる不思議な存在。
そんな子が職場の過労死で死んでしまう。
なぜ???

その謎を、直球に追いかけるのではなく、
チームメイト1人1人の日常生活を描くことで、少しずつ明らかにしていきます。
この辺の匙加減が上手いんですよね~。

個人的には、弱小ソフトボール部という設定が心惹かれます。
なぜなら、私も、中高ともに一回戦敗退の弱小ソフトボール部だったから。
そして、キャプテンという立場だったので、陶子さんに興味津々。
背負わなくても良い役割を背負いがちなところって、
多分あったと思うんですよねー。

弱小チームだから、入部動機の幅が広すぎて収拾付かないところも共感。
ソフトボールが好きだから・・・・という理由以外に入部する人って、
結構いるんですよね。
友達が入部したからとか・・・・・。

そうなると、厳しい練習で勝つための技術を磨くよりも、
毎日楽しく部活をすることの方が優先されて、
スポーツ派の部員とレクリエーション派の部員をまとめるのが難題!

ま、私自身、楽しく練習できれば良い派だったので、
結局、最後まで弱いままでしたけど。
高校のソフトボール部は、私たちの代で廃部にしちゃいましたし(苦笑)。

中学・高校時代の淡い思い出を浮かびあがらせつつも、
「今、チームメイトたちはどうしてるんだろう???」という思いに至った作品でした。
Facebookとかで繋がっているチームメイトは何人かいるけど、
全く音信不通の子もいます。

そんな子からの久しぶりの連絡が訃報とか、
やっぱり、やりきれないですよね。

古くからの友達とは、楽しく近況報告したいなぁと
呑気な感想になってしまいましたが、
本作は、そんな微妙な女子の友好関係や、
卒業後の仕事での奮闘ぶりを良く描いていて、佳作だと思います。

私は、栄養士の由美子の物語が、
「そんな上手く行かないよぉ~」と思いながらも、
勤め人として、スッキリ爽快に読ませてもらいました。


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『ガラスの麒麟』
- 2014/09/18(Thu) -
加納朋子 『ガラスの麒麟』(講談社文庫)、読了。

女子高生が帰宅途中に通り魔に殺された!

このショッキングの事件の周辺で起きた
不可解な事件の謎を、保健の先生が解いていくという連作短編集。

どうしても設定の関係上、作品の世界観が暗くなってしまうことと、
あと、この作家さんの筆さばきを、どうもまどろっこしいと感じてしまう特性の合わなさもあり、
世界観にぐっと入っていけたというわけではないのですが、
しかし、学園モノというジャンルは非常に好きなので、
やっぱり女子高生のモノの考えの描写などは面白いなぁと思いました。

殺人事件そのものの真相は
なんだか腑に落ちなかったのですが、
この殺された少女が見ていた少々歪んだ世界観というのは
なんとなく受け入れることができました。

保健の先生をはじめとして、
登場人物たちが、みんな結構、ズカズカと相手のテリトリーに入っていくような
大胆さというか、荒々しさというか、雑さというか、そういうものを感じさせるので
どことなくストーリー展開に無理な印象を持ってしまいました。

もう少し、スムーズに、かつコンパクトにまとまっていると
私好みの学園モノになったかなと思います。


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『ななつのこ』
- 2014/02/23(Sun) -
加納朋子 『ななつのこ』(創元推理文庫)、読了。

なんとも複雑な作りの作品でした。

主人公が読んだ短編集に登場する7つの物語。
そのそれぞれに謎解きがついており、安楽椅子探偵が解決します。
で、主人公の身の回りでも、その物語を連想させる謎が起こり、
短編集の作者との間の文通で、作者が謎を解いてくれるというもの。
しかも、文通にとどまらず、作者の周囲の人間が日常に登場し始め・・・・。

とまぁ、三重の関係が出てくるので、
気楽に読み始めたつもりが、頭を使う羽目になってしまいました。

主人公が作者にファンレターを送る経緯はまぁ自然でしたが、
その後、作者と文通が始まる展開がやや無理な印象。
しかも謎解きのやり取りですからねぇ。
その無理さ加減の理由は、最後に明かされるのですが、
うーん、あんまり好きな結末ではなかったです。
ま、途中の都合のよい展開も全てここに原因があるので、
ある意味、不自然さを解消する結末ではあったのですが・・・。
好みの問題ですかね。

ただ、1つ1つの話は面白かったです。
ちょっと文章がくどいところはありますが、
ま、文学少女のクセみたいなものかな・・・と大目に見られる感じです。

あと、文中に「アベック」とかいう単語が出てきたのでビックリ。
勝手に30代ぐらいの若手作家さんだと思い込んでたのですが、
読み終わってから調べたら、50歳手前の方なんですね。
うーん、文章の冗長さは年齢から来るものかしら?
若作りしようとしたら、くどくなったという感じ。

ま、でも、ふんわりとした温かさがあります。


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『螺旋階段のアリス』
- 2013/11/14(Thu) -
加納朋子 『螺旋階段のアリス』(文春文庫)、読了。

大手企業に勤めていた中年男が、
早期退職制度を活用して「探偵」になった!

まー、現実味のない話ではありますが、
『不思議の国のアリス』の世界観を借りた本作の中では、
ファンタジー感に包まれて、だんだん現実味なんてどうでもよくなってきました(苦笑)。

1つ1つの事件も、冷静な頭で考えると
「そんなことは現実世界では起こらないよー」
と思ってしまいがちですが、なんとなくフワフワと、たまにはこんな世界もあっても良いかなと。

まぁ、病院の待合室で本作を読んでいたということもあり、
時間つぶしには適度な軽めの作品でした。


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『七人の敵がいる』
- 2013/10/11(Fri) -
加納朋子 『七人の敵がいる』(集英社文庫)、読了。

本が売れたり、テレビドラマになったりで
タイトルは知っていたのですが、まさかのPTA小説だとは想像していませんでした。

いやぁ、正直な感想は、
私には子供を育てるなんて無理!結婚も無理!
というもの(爆)。

だって、この小説に登場する人々って、
今の自分の生活では意識的に遠ざけられますけど、
結婚して子供を持ったら、この空間に飛び込まざるを得ないわけですからねぇ。

一方で、主人公の陽子のように、
私もこういう経験をすることで、今の自分に足りない部分を気づけるかも・・・
という前向きな気持ちというか、何というか、
人間関係スキルを磨くための得難い経験(苦笑)を捨てているのかもしれないという
負い目も感じます。

私の両親は共働きではありますが、自営業なので、
会社勤めの人に比べると、まだ時間の自由度がある方です。
そのため、私が子供のころ、父親はPTA関係の役員のお鉢が何度か回ってきたようです。
幼稚園ではPTA会長をしてました。

当時は「モンペア」なんて言葉はなかったですし、一応、受験をして入った幼稚園だったので、
PTA運営で頭を抱えるような問題児保護者は然程いなかったのではないかと思います。
でも、「自営業者は時間があると思って、しょっちゅう役目が回ってくる・・・・・」と
父がボヤいていたのを思い出します。

ただ、そのおかげで、両親や私自身も幼稚園の副園長先生との交流が今も続いていますし、
親子それぞれの人的ネットワークを通じて情報が早く入ってきますし、相互連携もできます。
幼・小・中・高とも父親と同じ学校に行っていたので、
一層、お互いのネットワークの関わり合いが強いということもあるかもしれませんが。

てなわけで、健全なPTA組織であれば、それなりに人生で活用できる財産かなと思います。
健全であれば・・・・ね。

本作に登場する組織は、PTAにしろ、学童にしろ、スポーツ少年団にしろ、
組織の目的が歪んでいて不健全極まりないです。
小説の中では、エンタメとして「あはは」と笑って読めますし、
最後にカタルシスも得られて、面白い作品でした。

ただ、現実世界では、私は無理!


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『月曜日の水玉模様』
- 2011/10/01(Sat) -
加納朋子 『月曜日の水玉模様』(集英社文庫)、読了。

時々、本読みさんのBlogでお名前を目にするので、
挑戦してみました。

が・・・あんまり刺さりませんでした。

まず、ちょっと文章がまどろっこしく感じました。
コミカルさを出そうとしながら、冗長さが重さを出してしまっているという感じでしょうか。

あと、ジャンル的には日常ミステリになるんでしょうけれど、
その事件自体も、なんだか捻りすぎててリアリティに欠けます。

登場人物たちは、それなりに魅力的だと思ったのですが、
それぞれの勤め先の仕事ぶりが不自然な印象を残したのもイマイチでした。
顧客情報をそんなに簡単に漏らしていいの?という倫理的な面とか。

残念ながら、次にすぐ手が伸びる感想にはならなかったです。



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