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『リベンジ・ホテル』
- 2013/11/09(Sat) -
江上剛 『リベンジ・ホテル』(講談社文庫)、読了。

「江上作品は合わない・・・」ということで、
もう読まないつもりだったのですが、
父がお客様からいただいたという本の中に一冊入っており、
「ま、タダならいいかぁ」と読んでみました(苦笑)。

結果、またもや惨敗・・・(爆)。
読んでしまった私自身が負けたような気分です。

やっぱり、登場人物たちの行動に現実感がないんですよねー。
本作でいうと、まず最も違和感を覚えるのが、
ホテルを潰してショッピングセンターに再開発しようと目論むメガバンクの
支店長と担当のコンビによる交渉時の説得内容。
当のホテルの支配人に対して、「20年の予定で貸してた15億円の残金を1年で返せ」と言い、
「儲からないホテルは止めた方が良い」「このままでは金融庁から怒られる」なんて
ロジックも何もない言い分を振りかざします。
その担当者は、主人公に「俺は東大出だ!」とまで言い放つ始末。
こんな銀行マン、聞いたことないわ。
もしかしてMHBKって、こんな人が標準なの???

他にも、ホテルが打っていく1つ1つの施策が当たってばっかりで、
苦悩が薄いから共感できないんですよねー。
新人の情熱や純粋さは、馬鹿にしてはいけないエネルギーだとは思いますが、
ビジネスってこんな単純ではないよね・・・・って思っちゃいます。

主人公が時々我を忘れて、ホテルのお客様や取引銀行の担当者に
中身の無い思いつきで感情的な言葉を言い放ってしまうのも、なんだかなぁ。
というか、そもそも主人公は学生時代に草食系男子の極みのような人物だったのでは!?
キャラクターが一定しません。

とまぁ、基本的に猜疑心の目で読んでしまうから、
「カップ麺とおにぎり2個で150円だった」という表現には、
「物価を知らない人だなぁ」と引いてしまいますし、
ホテルマンが勤務中に財布を携帯している前提の描写にも、
「制服姿なのに財布をポケットに入れてるのかな?」と細かなところも疑問に。

やっぱり合わない!!ということを再確認する読書となりました。


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『失格社員』
- 2011/07/24(Sun) -
江上剛 『失格社員』(新潮文庫)、読了。

江上作品合わないかも・・・・・と思っていたにもかかわらず、
もしかすると、たまたま合わない作品に当たってしまったのかも・・・
と、再挑戦して、無残に失敗(苦笑)。

ちょっと普通の人と違う変わったキャラクターが常識とずれた行動を起こすのですが、
彼の周囲の環境も、それに対しておかしな反応を起こしてしまう・・・・。

キャラクター×物語展開という大きな骨組みにおいて、
どちらかの要素に突飛さを持ってくるのは、良くある手法だと思いますが、
両方の要素に突飛さを持ち込んでしまうと、とたんにリアリティがなくなると思うんですよ。

突飛な行動で面白がらせるには、
それ以外の描写に現実をしっかり取り込んでいないと、全てが浮いてしまいます。

一応、世間では、銀行マンとか、保険マンとかは、
学歴競争を勝ち抜いてきた人たちがなる職業だと思うのですが、
そういう人たちにしては、行動が劇画的に過ぎて、納得できません。
もっと、自分の行動の影響や結果を、姑息にずる賢く考えているはずです。
悪い方にも頭が良いということです。
そこが抜けているので、江上作品は馬鹿ばっかりに見えてしまい、
どうにも途中で読む気が失せてしまいます・・・。

あと、登場人物の名前が個性的すぎて、文章から浮いて見えるのも苦手。
ただ、これは池井戸作品にも見られるので、元・銀行マン特有の護身術かもと思いました。
あれだけマンモス組織だと、「これ、俺のことを書いたんじゃないか!?」と
偶然名前が一致してしまったりして、言い出す人が出てくるかもしれませんものね(苦笑)。

その流れで、元銀行マンのモノ書きの比較として、
池井戸作品は楽しめるのに、江上作品を楽しめないのは何でなんだろう?と考えました。
そのとき、江上作品には、なんだか銀行時代への恨み辛みみたいな私怨の匂いを
感じるときがあるんですよ。
「銀行マンなんて馬鹿ばっかりだ!」「銀行組織なんて愚鈍だ!」というような。
(本当はどうか知りませんけど、あくまで作品を読んでの個人的な印象です)

その点、池井戸作品は、自分の銀行時代の経験に対して、
もっとカラッとしたものを感じるんです。
これが、一勧と三菱の組織風土の違いだったら、いやだなぁ。
あくまで、作家個人のキャラクターの差であってほしいです。



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『頭取無惨』
- 2010/04/10(Sat) -
江上剛 『頭取無惨』(講談社文庫)、読了。

メガバンク統合ラッシュ以降の銀行界を舞台にした短編集。
池井戸作品は好きなのですが、どうも本作は肌に合いませんでした。

メガバンクという巨大組織に生きるサラリーマンにしては、
登場人物たちの言動が軽すぎるような気がするんです。
特に、支店長、課長連中の。

メガバンクで、新宿支店のような大店を任されるといえば、
行内で相当のポジションになるはずなのに、
セクハラおやじだったり、瞬間沸騰器型だったり、
残念な人たちがたくさん登場してきます。
どうも、そこにリアリティを感じられませんでした。

また、登場人物たちのセリフ回しや感情の表現の仕方に、
筆者の自己陶酔的なニュアンスを感じてしまって、
ちょっと距離を置いてしまったというところもあります。

銀行名の付け方も、安易でイマイチでした。わかりやすいですけどね。
四和銀行、東海道銀行、四菱銀行、朝日ヶ丘銀行・・・・
「慶早大学」なんて、美しさがまるでない。


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