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『花実のない森』
- 2021/05/29(Sat) -
松本清張 『花実のない森』(光文社)、読了。

サラリーマンの男が、ドライブ帰りに車に乗せたヒッチハイクの男女。
女は上品さの陰に妖艶な美しさがあり、一方の男は粗野な感じの中年男。
女の素性に俄然興味を持ったサラリーマンは、女が誰かを探り始め・・・・・。

第一印象は、「これ、ストーカーだよね」(苦笑)。
正直、車に乗せただけの女に、ここまで執着できるものなのかという心情が理解できませんでしたが
まぁ、ストーカーというのは、そういうものなのでしょう。

毎日の仕事を早く片付けて、女の周辺を探索しまくり。
探偵行為が楽しいのかなぁ・・・・。

この女が、旧華族なり上流階級の人たちと接点を持っていることが分かってきたら、
「一体どういう人物なんだろう?」という興味は、読者の私も感じるようになりましたが、
結局、最後まで主人公の執着心には共感できず。

どうしても、松本清張作品には社会性を求めてしまいがちなので、
こういう作品の評価は、私の中でマイナス点が大きくなってしまいます。

もう少し、旧華族社会側の事情というか、業界情報を描いてくれたら
もっと興味を持って読めたような気がします。




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『死の発送』
- 2021/02/08(Mon) -
松本清張 『死の発送』(角川書店)、読了。

近所の図書室から捨てられそうになっていたのでもらってきた本の山の中の一冊。

若手官僚の時に大金を横領し、服役していた男が7年の刑期を経て出所。
横領した金の一部の行方が捜査でも把握しきれなかったため、
どこかに隠しているのではないかと男を張り込む三流新聞の編集長と記者。
男はやがて、府中競馬場の関係者と接触を始めるが、その後死体となって発見され、
さらに編集長まで殺される・・・・。

「公金横領」とか「政治家の馬主」とか、社会派として知られる著者の
設定の面白さは味わえましたが、いかんせん主題が鉄道を用いた時刻表トリックなので
やや技術論先行型の作品のように思え、私の好みではありませんでした。

競馬の関係者の仕事ぶりというか、
どういう日々を送っていて、どういう人たちが支援しているのかというところが知れたのは
面白かったです。特殊な世界のお仕事小説のようでした。




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『日光中宮祠事件』
- 2018/06/16(Sat) -
松本清張 『日光中宮祠事件』(角川書店)、読了。

短編集です。
殺人事件あり、歴史ものあり、日常生活を描いたものあり、
ちょっと雑多な感じがして読みづらかったです。

ただ、1つ1つの作品は、やっぱり、しっかりしてますね。

印象に残ったのは、「情死傍観」と「老春」。
どちらも、ある人物の日常を追った作品です。

「情死傍観」は、阿蘇の噴火口のそばで茶店を開く老人が主人公。
自殺のために訪れる人に声をかけ、思いとどめるように働きかけをしている人物。
今まで何百人という人を助けてきたのに、わざと見逃した男女がいた・・・・。

この作品は、短い中で、作中作、そしてその後日談という形で
ある手紙が開示されるという凝った作りになっていて、面白かったです。

「老春」は、介護が必要な高齢になったにもかかわらず、
身の回りの世話をしてくれる通いのお手伝いさんに気持ちが動くお爺さん。
お手伝いさんを独占したいのに、来客の部屋に入っていったとか、
隣家の工事のペンキ職人と仲良くしゃべっていたとか、とにかく嫉妬しまくり。

で、怒鳴り散らすだけなら良くある話かもしれませんが、
このご老人、老体に鞭打って、お手伝いさんの家に押しかけたり
相手の男のところに乗り込んでいったり、勇ましいんです。

そんな姿を、息子夫婦の醒めた視点で描いているのが
緩急のつけ方として面白かったです。
息子夫婦的には、かなり面倒になって放っている状態。
お爺ちゃんが事故にあったり、他人に危害を加えたり、家の恥になったり
するようなことさえしてくれなければ、放置しておこう・・・・・みたいな諦め。

他人から見れば、痴呆老人ということになるのでしょうけれど、
家族だからこそ、突き放すこともできず、でも時間を奪われ続けるのも困るという
難しい感覚が伝わってくる作品でした。

というわけで本作は、松本清張と聞いて思い浮かべるイメージとは
違ったところに惹かれました。


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『聞かなかった場所』
- 2016/05/28(Sat) -
松本清張 『聞かなかった場所』(角川文庫)、読了。

出張中に妻が急死したとの連絡を受けた主人公。
心臓が弱かった妻は、なぜ急な坂を上ったのか。
その死因に不審な点を見出した主人公は、
独自の調査を進めることに。

松本清張にしては、事件の世界観が小さいなと思ったのですが、
起承転結の「転」の部分が、予想していなかった方向に向かったので、
中盤でダレずに読めました。

仕事ができる男の逸脱。
うーん、とっさの判断というのは怖いですね。


聞かなかった場所 (角川文庫)聞かなかった場所 (角川文庫)
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『駅路』
- 2015/07/27(Mon) -
松本清張 『駅路』(新潮文庫)、読了。

久々の清張短編集でしたが、イマイチ刺さりませんでした。

トリックだったり、推理のきっかけだったりがちょっと強引な気がして。

清張作品は、長編の方が社会性があって面白いですね。


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『張込み』
- 2010/04/07(Wed) -
松本清張 『張込み』(新潮文庫)、読了。

表題作「張込み」は、ドラマ化されたと知っていたので期待していたのですが、
サスペンスというよりも人間ドラマでした。
なので、推理らしい推理もなく、ちょっと拍子抜け。

その分、「声」は、主人公が途中で被害者になったり、
念を入れたトリックが仕掛けられたりしていて、面白かったです。

作品によっては、
「殺人を犯した人間が世間に顔をさらす役者を目指しちゃいかんだろう」とか
「4歳の子をデパートに置き去りにして処分を図るのはリスキーだろう」とか
突っ込みたくなる部分もあったのですが、
暇つぶしに読むにはちょうどいいぐらいの短編集でした。


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『五十四万石の嘘』
- 2010/02/06(Sat) -
松本清張 『五十四万石の嘘』(中公文庫)、読了。

気がつけば、清張作品は3年半ぶりとなってしまってました。
生誕100周年で近所の出版社は騒いでいたいたというのに(苦笑)。

本作は、武士を描いた短編8作。

ただ、どれも江戸の安定期に入ってしまい、
武士道というものが、骨にしみたものから頭で考えるものになってしまった時代。

ある意味、暇を持て余したお武家さまたちが主人公です。

「えっ?ここで終わっちゃうの?」という拍子抜け感も若干感じた
あっさりした最後の作品が多かったのですが、
人間味のある主人公が多かったですね。


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『黒の様式』
- 2006/08/06(Sun) -
松本清張 『黒の様式』(新潮文庫)、読了。

暑いさ中に読むにはグロい作品でした。

「歯止め」は、先が読めるようになった中盤以降が
ちょっと冗長な感じもしましたが、
作品の締めかたが、恐怖を残していて良かったです。

「犯罪広告」は、登場人物それぞれの行動が
思いつきで視野が狭いため、読んでいて歯がゆい気持ちになりました。
観客となっている村民の心情は、
ワイドショーに向ける現代人の眼差しと同じです。

「微笑の様式」
アルカイック・スマイル・・・
個人的には中宮寺の弥勒菩薩が好きですね。
犯人探しについては、後半、若干慌てた感じで
「おいおい、その人がその動機で犯人なの?!」と
ちょっと驚きました。
最近の作家さんなら、鳥沢博士を主人公にしてシリーズ化しちゃいそうですね。

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『西郷札』
- 2006/06/23(Fri) -
松本清張 『西郷札』(新潮文庫)、読了。

短編集なのに読み応え十分、貫禄十分。

歴史の表舞台に登場する大人物の
「周囲」にいた人々にスポットを当てた作品が、特に面白かったです。
我々が歴史を読むときに、
その存在に気がつかないまま読み飛ばしてしまうような人々の出来事を
資料から掘り起こし、作品として描ききる気力に感嘆。

作品の並び順が、明治~江戸のあたりを前後するため、
若干読みづらい感じもしましたが、
個々の作品は素晴らしかったです。

西郷札
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『分離の時間』
- 2006/06/04(Sun) -
松本清張 『分離の時間』(新潮文庫)、読了。

「分離の時間」「速力の告発」の2本立て
個人的にはイマイチでした。

「分離の時間」のほうは、
なぜこの主人公がこの事件の追求にはまり込むのかがわからなかったため、
最初からちょっと引き気味に読んでしまいました。
話の展開においても、偶然や根拠の薄い推理が多く、
必然性に欠けるように思われました。

「速力の告発」は、自動車事故で最愛の妻と息子を亡くした男が
自動車業界を相手に闘うストーリーで、
最後、思わぬ展開で終わりました。
テーマはなかなか面白かったのですが、
主人公の男の狂気染みた極端な主張と行動に、読んでいて鼻白んでしまいました。
それは多分、私が自動車業界側に立って読んでいたからだと思います。
大企業の理屈というものに、自分も漬かってしまっているのでしょう。

分離の時間
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