『コロヨシ!』
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- 2017/02/26(Sun) -
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三崎亜記 『コロヨシ!』(角川文庫)、読了。
高校生の運動部「掃除部」。 過去の戦争の歴史の経緯から、国家の統制下に置かれることとなったスポーツで、 高校3年間しか活動することを許されない。 そんな架空の国での架空のスポーツに青春を捧げる高校生たちの物語・・・・・。 という要約になると、清く正しく明るい高校生のスポーツものを想像しくなりますが、 この本では、むしろ、国家によるスポーツ統制の重苦しい面が強調されており、 スポーツ小説と謳うには、苦しいところがあるような気がしました。 三崎作品の、「なんだ、この設定は!?」という驚きは、 本作も十分に味わえるのですが、相変わらず私との相性は悪く、 設定に凝り過ぎて、読んでいて世界感が窮屈なんですよねぇ・・・・。 掃除部としてのスポーツ&青春の面をキラキラと描くこともできるだろうに、 そうではなく、国家、統制、制約、政治といった要素をこれでもかというほどに書き込んでいます。 架空の国の架空のスポーツの状態を描写することに一生懸命で、 そこで活動する人々の生活の息吹のようなものが感じられず、 私には合いませんでした。 設定を描くことに一生懸命になりすぎるというのは、 小説としては、本末転倒な気がします。
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『失われた町』
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- 2013/04/14(Sun) -
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三崎亜記 『失われた町』(集英社文庫)、通読。
この作家さんの作品には、いつも、 「目の付けどころが面白いなぁ」と設定に驚かされ、興味を持つのですが、 作品というアウトプットになると、自分の思ってたものとズレるんですよね(苦笑)。 本作も、街の消失という、舞台設定は非常にワクワクするものなのに、 冒頭から、なんだか凄く分かりにくい・・・・。 変に小難しくしてしまっているような気がして、作品に入っていけないんです。 この設定を活かすなら、もっとエンタメ色の強い作品にして欲しいなぁという 自分の嗜好と、著者の思いとが違っているので、仕方がないことなのですが。 登場人物たちの思考が重苦しいこと、 作品の世界観を形作る概念が、複数の要素を絡ませて複雑なこと、 そして、その概念に関わってくる一つ一つの言葉が難解なこと、 どれもが、エンタメ性から距離を作ってしまうんですよねー。 本作は、分量が多いこともあって、 半ば脱落するような飛ばし読みになってしまいました。 残念。
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『バスジャック』
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- 2011/06/27(Mon) -
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三崎亜記 『バスジャック』(集英社文庫)、読了。
「バスジャック」というタイトルから、 乃南アサさんの『再生の朝』がイメージとして連想されて、 勝手に、真面目な小説だとばかり思い込んで読み始めてしまいました。 ところが、最初の短編が、二階扉の話・・・・・・。 「あぁ、そうか、『となり町戦争』の作者か」と、やっと気づきました。 シリアスモードを求める頭で読んでしまったせいか、 ずーっと作品と気持ちがずれているような感覚が付きまとって、 きちんと楽しむことができませんでした。 ただ、『となり町戦争』でも感じたことなのですが、 設定が非常に斬新なので、冒頭でグイグイ引き込まれる割には、 最後の展開があっさりしていて、やっぱり食い足りない印象を受けてしまいます。
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『となり町戦争』
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- 2009/12/30(Wed) -
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三崎亜記 『となり町戦争』(集英社文庫)、読了。
突然、町役場がとなり町と戦争を始めた・・・・。 ファンタジーの世界で現実を皮肉る作品かと期待してました。 全然、物語の設定は違うのですが、『ガリバー旅行記』のような 風刺に富んだ作品なのかと。 でも、思いのほか真面目な内容で、少し重かったです。 設定は非常に興味深いものだったのに、 あまり真相に奥深さがなかったのも、話を淀んだ感じにさせていました。 ただ淡々と戦争が目につかないような形で行われているという。 せめて、戦死者が出る場面を描写してくれたら、 もうちょっとすっきりした気持ちになれたかと思います。 そして、こんな戦争に偵察要員としてかかわった主人公も これまた淡々と業務をこなしていて、テンパリ感がないんですよね。 そして、どんどん内的な思考に落ちていくので、重くて暗いです。 となり町との戦争というシチュエーションと、主人公の重さ暗さに バランスが取れていないように感じました。 せっかくの斬新な設定が、もったいなかったです。
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