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『ナニワ・モンスター』
- 2023/04/09(Sun) -
海堂尊 『ナニワ・モンスター』(新潮文庫)、読了。

砂漠の国でラクダから人間に感染し、アジア地域で猛威を振るう新型ウイルス「キャメル」。
日本政府は国際空港での水際対策に取り組むが、
浪速市の診療所で、発熱した小学生を簡易検査キットで判定したら陽性発覚。
小学生に海外渡航歴はなく、その時点ですでに市中感染が疑われ、
次第に陽性者の判明が続いた後、浪速府全体が経済封鎖という状態に陥る・・・・・。

本作の初出は2009年ということで、当時世間を賑わせていた
新型インフルエンザA/H1N1がモデルとのこと。
しかし、2023年に読むと、これはもう、新型コロナウィルス騒動そのものです。

中国で大流行し、中国から日本に帰国した人が日本国内で発症。
その後も、空港検疫などで水際対策で陽性者や疑いのある者を隔離する対策を取るものの、
海外渡航歴のない日本人の間でもポツポツと陽性者が発生することになり、
市中感染が疑われる状態に・・・・・そして不要不急の外出自粛要請・・・・緊急事態宣言・・・・・・・。

見事なまでに、現実世界で見た展開そのものなのですが、
一番興味を惹かれたのは、著者が示した厚生労働省の対策、そして診療所の医師が想定した対策、
それらがいずれも、実際の日本社会で行われた対策そのものであり、
政府のコロナ対策にはいろいろ批判も出たけど、結局、医師が自分の頭の中でシミュレーションした
一般的な対策と、概ね一緒ということは、まぁこれがオーソドックスな対策なんだろうなということを
改めて実感しました。

水際対策、マスクと手洗い、簡易検査キットとPCR検査、ワクチン、そしてロックダウン。
この展開は、今読めばすんなり頭に入ってきますし、説得力も高いのですが、
この作品が書かれた当時、H1N1インフルエンザまでの知識しかなかった状態で、
本作を読んで、どこまで面白いと感じられたのかな、そもそも理解できたのかなという疑問が
浮かんできました。H1N1もニュースでは騒いでましたけど、どこか他人事な感じでしたし
致死率も高くなかった記憶ですから。
それを思うと、コロナ禍というのは、本当に、時代の転換点だったんだなと思います。
まだ終息したわけではないですけど。

本作は3章立てで、第1章で浪速市の診療所での第1号発生の様子が描かれましたが、
作品の1/3を使って立ち上がりを描いた後、どういう風に話を展開させていくんだろう?と
思って読み進めていたら、第2章は検察特捜部が舞台に。
浪速地検特捜部による厚生労働省本省の局長逮捕、そして本省の捜索という展開に、
キャメルとどう繋がっていくの?という感じでしたが、
途中から「Aiセンター(死亡時画像診断)」というワードが出てきて、
「あ、これは海堂尊氏の政治思想を主張する作品なんだわ」と理解しました。

第3章では、浪速府知事(橋下徹氏がモデルに違いない)を主人公に
フィクサー彦根の策略で、青葉県知事(宮城県の村井嘉浩知事がモデルでしょう)とともに
日本を東日本/関東/西日本で3分割し、いずれは独立させるという
天下国家を論じるような壮大な展開になっていきます。
いやー、Ai以上に政治的メッセージだわ。

著者が、今の検死制度を軸にした死因調査では正確性に難があり、
医療にフィードバックができないから、Ai(死亡時画像診断)の導入による正確な死因調査への
制度改革が必須であり、しかし、改革に要する政治的体力の困難さや利権構造の打破などを思うと
橋下徹氏のような改革派の有力地方首長にしか達成できないことだと考えているんだろうなと思います。
多少の強引さや他の施策での犠牲に目をつぶってでも、
医療改革を成し遂げたいという強い著者の思いを感じます。

ちょっと、小説家という枠をはみ出て、革命家というか活動家的な印象すら覚えてしまいます。
著者の作品は、目の前で展開している物語はサスペンスであっても、
その根底には、Ai技術展開のようなものが深く太く流れているので、
油断して読んでいると、思想の刷り込みがなされそうで、ちょっと怖さも覚えてしまいました。

今後の読書は、足元救われないように注意しながら、でも、骨太の思想に触れるのは楽しみです。




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『モルフェウスの領域』
- 2022/01/16(Sun) -
海堂尊 『モルフェウスの領域』(角川文庫)、読了。

世界初の「コールドスリープ」技術により、今の技術では眼球の摘出しか選択肢がない病気に罹った
9歳の少年を5年間眠らせて、特効薬が日本で承認されるのを待つことにした世界で唯一の実験をしている
医療施設に勤める涼子。
毎日、マニュアル通りに、この少年が眠る装置の操作と管理を5年間一人で行います。

前半は、そんな涼子を中心に、コールドスリープ技術と、それを制御するための「凍眠八則」について
かなり頭でっかちな議論が展開されていくので、知的な刺激は受けますが、
ちょっと小説として楽しむにはくど過ぎるかなぁ・・・・・と思いました。

後半は、この少年が目覚めてからのことが描かれますが、
前半でくどくどと議論展開してきたことが、後半に具体的な少年の行動として
その懸念されていたリスク事象が具現化されたので、興味深く読めました。

ただ、少年が眠っているときは技術的な面のリアリティは気にならなかったのですが、
実際に少年が目覚めて自我を取り戻していく過程を読んでいると、
「コールドスリープ」技術って、SFのテーマ以上の現実味はあるのかしら?と
私は逆に非現実性の方が気になっちゃいました。
特に著者が医師なので、医師として可能性がある技術として評価しているのか気になりました。

記憶の扱いの問題とか、肉体的な成長の問題とか、筋肉などの劣化の問題とか、
腫瘍の成長の問題とか、そういういろいろな要素が、なんだか辻褄が合っていないような気がして
あんまり腑に落ちない感じで、あくまでファンタジーとして読んでました。

前半の主人公だった涼子の、特殊な人物造形のおかげで、
なんとか小説として体裁を保ててた気がしますが、海堂ファンじゃないと楽しめないレベルに
理屈っぽい作品かなと感じました。




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『玉村警部補の災難』
- 2021/11/19(Fri) -
海堂尊 『玉村警部補の災難』(宝島社文庫)、読了。

バチスタシリーズのスピンオフ短編集。
いつもの田口&白鳥コンビではなく、加納&玉村コンビが主役です・・・・・って誰だっけ?

バチスタシリーズもいくつか読みましたが、
そこまで思い入れがないと、刑事の名前まで覚えておりません(苦笑)。
本作の巻末を見ると、バチスタシリーズと本作に収録された短編集と
ちゃんと前後関係が通るように計算されているようですが、
テキトーな読者でスミマセン・・・・・。

というわけで、前知識がほとんどないような状態で読みましたが、
作品そのものはちゃんと楽しめました。

探偵役には、デジタル・ハウンドドッグと渾名される加納警視正がつき、
バサバサと合理的な推理を見せてくれます。
そんな剛腕の彼に翻弄される部下のタマちゃんと病院側の田口センセ。
わかりやすいドタバタ設定です。

起きている事件は、冷静になって考えると
「そんなムチャクチャな殺人事件は、ありえないだろ~」って思ってしまうのですが、
ドタバタ設定と、あと医療側の秒描写がリアルなので、
その大きな振りれ幅に惑わされて、なんだか読めちゃうんですよねー。

専門領域を、素人にもわかるレベルで、でも専門性を見せる形で
ちゃんと文章にできる、しかも物語性をちゃんと添わせることができるというのは、
やっぱり一つの才能ですね。

海堂作品は、まだ積読がいくつか残っているはずなので、
読んでいかないといけないのですが、なかなか骨っぽいので勇気がいるんですよね。
正月休みにでも一気読みしようかしら。




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『ジーン・ワルツ』
- 2021/06/09(Wed) -
海堂尊 『ジーン・ワルツ』(新潮文庫)、読了。

東大医学部がモデルと思われる帝華大学医学部の助教である産婦人科医が主人公。
大学での仕事の傍ら、民間のマリアクリニックへ週1回ヘルプで勤務しています。
そのクリニックは、諸般の事情で間もなく閉鎖が決まっており、
最後の患者である妊婦5人を観ています。

その5人は、10代の望まない妊娠あり、5年間もの不妊治療の末に子供を授かった妊婦あり、
55歳の超高齢妊婦あり、誰もが重たい背景を抱えていたり、何やら怪しい曰く付きな感じの人ばかり。
この5人の出産までの定期健診の様子を軸にしながら
医学部で受け持つ「発生学」の講義の様子や、医局でのボス教授や上司の准教授とのやり取りが描かれ、
相変わらず濃密な海堂ワールドが展開されています。

前半は、学生向けの講義のシーンや、望まない妊娠をした妊婦への説教のシーンが続くので、
やや理屈っぽいというか、著者の思想が主人公を通して全面に展開されているように感じました。
エンタメ感がやや薄いので、小説を楽しもうと思っていると、結構しんどいです。

ただ、この前半の理屈の積み重ねが、後半に物語が動き出したときに重要な意味を持ってくるので
頭の中で整理しながら読んでいく必要があります。

5人の妊婦のうち、最高齢の妊婦の帝王切開手術を予定していた日に、
いろんなことが重なって、他の妊婦のうち3人もの妊婦が産気づくという
まぁちょっと盛りすぎな展開のようにも思えましたが、医師2人と助産師1人で
4人の妊婦の出産に対応するという、素人が考えてもムリゲーな展開にハラハラドキドキ。

その中で、主人公が企んだことも明るみに出て、
閉院間近な産院で、思い切ったことやるなか・・・・という感じで捉えていたら、
最後の最後、なんとも壮大なスケールの計画が発動され、
そのスキーム全体を、この主人公の若い女性一人で考え抜き、そして実際に構築し
動かすところまで漕ぎ着けたという、その構想力と計画力と行動力に脱帽。

医療関係者の方が読んで、この最後の展開に、どれだけのリアリティを感じるのかは分かりませんが、
とにかく構想力が素晴らしいなという一点だけでも、私的には、この読書の満足度が
ぐっと上がりました。

こういう社会に対してモノ申すだけじゃない、自らの行動で主張を具現化していく人物は
清々しさに応援したくなります。

著者の熱い思いが、この主人公に乗り移ったのかなという感覚も。
続編もあるようなので、楽しみです。




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『夢見る黄金地球儀』
- 2019/04/07(Sun) -
海堂尊 『夢見る黄金地球儀』(創元推理文庫)、読了。

バチスタシリーズとは違う作品を読むのは初めてです。
実家の町工場の跡継ぎは、もともとは物理学者になる夢を持っていた男。
それが途中で挫折し、家を継いだら技術者としての父親の壁も超えられず、
営業マンとしての力も中途半端な状態。
そんな男の前に、8年ぶりに悪友が現れ、「ふるさと創生1億円」で作られた黄金の地球儀を
盗み出してしまおうともちかけられた・・・・・

舞台設定はすごく面白いと思いました。
自身には物理の知恵があり、また自宅の工場には様々な工作機械(しかもユニークな)があり、
悪友は常識にとらわれない剽軽なヤツで、そんな面々で立ち向かう相手が
「ふるさと創生1億円」という(笑)。

竹下政権の時は、私は小学生でしたが、
我が町では、1億円を使ってからくり時計を製作し、私の通学路でもある市役所前広場に
ドーンと鎮座しており、時間が来るとチリンチリン音楽が鳴ってました。
「すごーい!」と思ったのは最初の1週間ぐらいで、その後は、ただの時計としか思えませんでした。
今も建ってますが、動いているのかしら?

まぁ、そいう過去の遺物をテーマにするのですから、
行政側の思惑も重なって、出だしは面白かったんですよね。

でも、肝心の盗み出しの場面になると、
なんとも緊張感がないのが気になってしまいました。
ドタバタコメディとして笑わせるにしても、ボケの部分以外に緊張感があるからこそ
緩急がついて笑えると思うんですよね。
バチスタシリーズには、緩急が上手くついていたと思うのに、本作は残念でした。

アイという人物に、プロフェッショナルさが全く感じられなかったのがその原因かな。
遊びで参加するにしても、目標に対して自分の役割を心構えるプロフェッショナルさが
やっぱり必要だと思います。
それがないと、小説として締まらないなぁ。




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『ブラックペアン1988』
- 2015/08/06(Thu) -
海堂尊 『ブラックペアン1988』(講談社文庫)、読了。

面白くて一気読みでした。

大きな事件が起きるわけでもなく、大胆な推理が展開されるわけでもなく、
サスペンス作品としては大きなヤマはないように思えるのですが、
しかし、大学病院の医局という組織を描ききっていて非常に興味深く読めました。

外科を取り仕切る佐伯教授、ライバル大学から半ば押し付けられたビッグマウス高階講師、
佐伯一派の助教授や講師たち、手術室の悪魔こと晩年ヒラの渡海、
そして主人公の外科医1年生・世良。

極端なキャラクターたちのごった煮のような医局の様子を、
1つ1つ丁寧に描いていくことで、こういう組織もあるかな・・・・と思えてきます。
書き方が下手だと、違和感というか、現実離れした集団にしか見えないでしょうから。

むしろ、キャラクターが立っているので、
ストーリーの方では変に話を作り込まないことが良かったのかもしれません。

チームバチスタの主要メンバーの若い頃を知ることができるという点でも、
1粒で2度美味しい作品になっていると思います。


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『ジェネラル・ルージュの凱旋』
- 2013/03/13(Wed) -
海堂尊 『ジェネラル・ルージュの凱旋』(宝島社文庫)、読了。

『ナイチンゲールの沈黙』と対になる本ということで、
早速、こちらも読んでみました。

ナイチンゲールが小児科の話なら、
本作は、同時期に進行している救急救命側のお話です。

ま、冷静に考えたら、殺人事件と贈収賄事件が同時進行している病院なんて
通いたくないのですが(苦笑)、大きな混乱もなく、2つの話を進められるなんて、
その構成力は素晴らしいです。

しかも、方やファンタジー系、こちらはガッツり医療現場を描く社会派。
同じ病院を舞台にしながら、様々なジャンルの作品を書けることも
凄いことだと思います。

これまで読んだ3つの作品の中では、一番読みごたえがあったかも。
死んだ、殺した、隠したみたいなサスペンスよりも、
社会問題を抉っている分、重厚な仕上がりになっていたと思います。

また、物語の展開の大部分が、ナントカ委員会の議場だったり、
もしくは病院長などとの下ネゴであったりと、
大学病院の非常に官僚的な面をこれでもかというぐらい描いているのですが、
そこで交わされる言葉の応酬が、これまたウィットに富んでいて、
しかも、論破する過程は爽快なぐらいです。
会議の描写ばっかりなのに、こんなにワクワクする作品は初めてかも。

ま、最後、きれいに終わらせ過ぎた感じもしますが、
また、新たな問題が湧きあがってきたところで本作は終わってしまったので、
次のシリーズが楽しみです。


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『ナイチンゲールの沈黙』
- 2013/03/05(Tue) -
海堂尊 『ナイチンゲールの沈黙』(宝島社文庫)、読了。

シリーズ2作目に早速挑戦です。
前作における事件から数か月後の東城大学医学部付属病院が舞台です。
基本的な登場人物やコンセプトは同じ(「桜宮サーガ」というらしいですね)。
今回は、小児科の面々が中心です。

ただ、今回扱っている事象は、かなりファンタジー系というかSF系というか。
医療現場に適した科学的な推理が展開される作品と思って読むと、
面喰っちゃうと思います。

発生する殺人事件そのものの解決は、
本作では大した重みを持っていないように感じました。
それよりも、入院患者の子供と看護師・医師・技士との心の通い方やすれ違い方を
描きたいのだろうなと。
そういう意味では、『踊る大捜査線』の医療版なのかなと思います。

ただ、魅力的なキャラクターたちがたくさん登場する割には、
あまりうまく使いこなせていなかったのが残念。
登場人物紹介で終わってしまったような感じです。
この後のシリーズ作品で、それぞれ活躍し始めるのかな?
ま、続きを楽しみにしましょう。


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『チーム・バチスタの栄光』
- 2013/01/14(Mon) -
海堂尊 『チーム・バチスタの栄光』(宝島社文庫)、読了。

ようやく、この大ヒット作を読みました。
うん、面白かったです。納得。

まず、キャラクター作りが非常に上手いです。
強弱の付け方や、際どさと常識のラインの引き方、配置の仕方など、どれもお見事。
文庫本だと上下2巻に分かれていますが、
上下巻で探偵役が交代するところも面白さを際立たせていました。

前半で、主人公に探偵役を担わせますが、
事件の謎解きではなく、そもそもバチスタ手術とは・・・というところを
読者に分かりやすく解説させる役目をしっかりと果たしています。

そして、後半、怒涛の真相究明は、厚生省の異端児にやらせるという
この展開は、ある種リアリティの薄さにつながりかねないのですが、
キャラクターの異質さを際立たせるには、上手い立ち位置だったように思いました。

動機の面については、これまた異様なところはありますが、
私は、むしろ、恨みつらみに傾倒しがちな日本的サスペンスよりは、
こういう強烈な動機の方が、本作には合っているように感じました。

この作品だけで終わらせてしまうには勿体ない登場人物の面々ですね。
このシリーズは、今後も楽しみです。


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