『受城異聞記』
- 2014/08/24(Sun) -
池宮彰一郎 『受城異聞記』(文春文庫)、読了。

5つの作品が収められています。

表題作「受城異聞記」は、幕府がふっかける無理難題に藩滅亡の危機を覚え、
厳冬の北アルプス越えに挑戦する男たちの話。
新田次郎作品を髣髴とさせる自然と闘う人間の姿と、
本来はやらなくても良いことを組織の名誉にかけてやらされている受難の姿とが
二重に思い浮かんできました。

「絶塵の将」は、福島正則が主人公。
この人の出自を詳しく知らなかったので、以前、司馬氏が正則を馬鹿呼ばわりしているのを目にし
ちょっと嫌な感じを受けたのですが、主人公である本作でも、知性に関しては同じような扱いで。
部下を思いやる将だったと書かれているだけでもプラス評価ですかね。

「おれも、おまえも」が一番面白かったです。
茶屋四郎次郎の目を通した、天下をとる前の徳川家康のお話。
商人の容赦のない人物評価と、家康の独特の性格とが
上手く絡み合って、味わい深い短編になっていると思います。

「割を食う」は、ちょっと理論臭いところが読みづらい印象でした。
「けだもの」は、犯行の内容が残忍なら、捕まえた後の拷問も酸鼻。
最後の結末もいろんな人の無念の犠牲の上に成り立っていて、
読むのが苦痛に感じました。


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『島津奔る』
- 2014/03/06(Thu) -
池宮彰一郎 『島津奔る』(新潮文庫)、読了。

朝鮮出兵~関が原の戦いにかけてのお話ということで、
「我らが高虎さんも出てくるかな♪」という感覚で読み始めたら、
主人公・島津義弘に惹きつけられてしまいました。

朝鮮出兵からの退却時、20万人の明・朝鮮軍を、たった数千人の兵で倒し、
さらに他の日本側の陣営の退却の時間も稼いで、戦傷の拡大を防いだという剛の者。
その戦闘シーンの描写の面白さに、一気に惹き込まれました。

明・朝鮮軍は、島津を「石曼子(シーマンズ)」と恐れたとのこと。

「しまづ」からの「シーマンズ」ですが、これは“ Sea Mans' ”に通じる音。
後に琉球貿易で財をなす島津藩にとって、
「海の男」と聞こえる呼び名は、未来を予見しているかのようです。
「島の港」の「島津」という名前も、いっそう際立って見えます。

朝鮮半島から戻った後は、家康と秀吉家臣たちとの政治的な駆け引きがあり、
そして下巻では関が原の戦いへとなだれ込んでいきます。

この大きな2つの戦において、国許の兄・義久の支援を受けらず、
また島津義弘本人にとっても望まぬ「大義なき戦い」を強いられることになります。
この苦しい状況下での冷静な判断、機を見ての勇猛な振る舞い、
そして、それにぴったりと付いてくる家臣団との信頼関係。
凄いですわ。

このような立派な人物が、日本の中心にではなく、
遠く離れた九州の端っこに生まれてくることこそ、
日本の戦国時代における人材力の層の厚さを感じさせてくれます。
ま、反対に、日本全国に優秀な人材が揃っていたからこそ、
誰かが突出するのではなく、戦国時代という戦乱の期間が成立したのでしょうけれど。

歴史上、戦国時代を経験している国は、
中国にしろ、東ローマ帝国にしろ、イスラム帝国にしろ、
素晴らしい人材を輩出する人的資源の土壌を育んでいるのだと、本作を通して認識しました。

大きな歴史の中の、1人の優秀な武将の話。
その大局観と個人の非凡なる才能との対比が面白く、
これぞ歴史小説!という醍醐味が味わえる作品でした。

ところで、高虎さんですが、登場したものの、良くも悪くもない書かれ方で、
登場人物の1人に過ぎない扱いでした。
ま、家康の小間使いのような描き方をされなかっただけでもマシな方でしょうか・・・。

一方、小早川秀秋の書かれ方は、まぁ、分かっているとはいえ、
筑前や岡山の皆さんは、不本意な思いをされているのではないかと、
同じく歴史小説で否定的に扱われがちな高虎さんの地元民として、
勝手に心を寄せてしまいました(苦笑)。

本作の登場人物の描写で、主人公の義弘と並んで興味深かったのが、石田三成です。
根っからの官僚人間として描かれていますが、
大名・武士の心が分かっていない一方で、家臣たちの忠誠心は高く、
また、天下を支配する欲は強いのに、自分の蓄財には関心が無い、
政治的な計略を巡らすのに、戦場での奇襲は好まないなど、
その独特な思考回路が興味深かったです。
しかも、作品の中では、その複雑な思考回路が、きちんと1人の人物として
結びついて出来上がっていることに驚きました。

あー、面白かった!


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『最後の忠臣蔵』
- 2013/03/02(Sat) -
池宮彰一郎 『最後の忠臣蔵』(角川文庫)、読了。

以前読んだ『その日の吉良上野介』と一緒に、
著者の忠臣蔵三部作の1つのようです。

四十七士の中で、ただ一人、生き残った男にスポットを当てた作品です。
大石内蔵助の命で、四十七士の真の姿を伝えるべく、途中で隊を離れたた主人公は、
何度か剣を交えながらも、幕府の政治的判断に翻弄されながら、生き延びます。

討ち入りの翌日、数日後、数か月後、数年後、十数年後の主人公の姿を、
「最後の忠臣蔵」として切り取って、見せてくれます。

劇的な討ち入りおよび切腹のシーンで、我々の意識する忠臣蔵は幕を閉じますが、
武士の道に生きる人々にとっては、赤穂藩に仕えた人々や家族の「その後」にも
当然、武士道の有り様を見ることになるんでしょうね。

足軽という身分から、侍にまで引き上げてもらった主人公ならではの
武士というものへの思いも見え隠れし、非常に面白かったです。


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『その日の吉良上野介』
- 2012/02/05(Sun) -
池宮彰一郎 『その日の吉良上野介』(新潮文庫)、読了。

忠臣蔵事件に関わる人々を通して、この事件を描いた短編集。

浅野内匠頭を短気で、藩主の座には適さない人物として
吉良上野介はその職務に忠実な役人として、
大石内蔵助を、藩政に興味のない藩主に代わって領地を取り仕切る実力者として
それぞれ描いています。

いわゆる一般の「勧善懲悪」な忠臣蔵に比べて、
本作では、吉良の扱いが新鮮に映りました。

松の廊下での刃傷沙汰は原因がよく分かっていないようですね。
この時代の、しかも殿中での事件に関わることであれば、
その原因が類推できる何らかの記録が残っているはずであり、
それが出てこないということは、常人の思考を超えた行動が行われたか、
それとも、幕府を挙げて隠蔽すべき事情があり、歴史から消されたのか・・・・・。
ま、後者は現実的ではなさそうなので、やはり浅野さんに問題があったかと・・・(苦笑)。

その理由を、どれだけリアルに創作できるかが、
忠臣蔵を描く面白さの一つだと思います。
そういう意味では、非常に面白い作品でした。
因果関係に無理が無いんです。

他にも、主要人物以外にスポットを当てた作品も、
その着目の発想が面白く、全編楽しく読めました。

著者は、盗作問題で評価を落としてしまっているようですが、
私個人が楽しむ分には、あまり気にならず、他の作品も読んでみたい作家さんです。
本作の本編とも言える『四十七人の刺客』も面白そうですね。


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『事変』
- 2009/07/25(Sat) -
池宮彰一郎 『事変』(新潮文庫)、読了。

歴史小説のつもりで読み始めたのですが、
時局の説明に相応のページを割いていたり
ところどころで作者の調査者としてのコメントが出てきたりと、
ルポルタージュに近いような印象を受けました。

松岡洋右をはじめ、登場人物たちに魅力的な人たちが多かったので、
もっと小説らしい建て付けにしたほうが、
臨場感あふれる感じになって面白かったのではないかと感じました。

それでも、スリ集団を使ってリットン報告書を奪い取るシーンは
手に汗握る面白さでした。
このスリ一家の方を主人公にして、フィクション要素をふんだんに入れて
物語を構成しても面白かったかもしれません。

読んだ後に、作家のことをWikiで調べたら、
盗作騒動を起こした過去があるようですね。
その作品が、最近ヒットしているという認識だった作品たちなのでビックリしました。

ただ、世間で盗作と騒ぐときは、ほんの数行似通っているというケースが大半ですよね。
素人本読みとしては、「作品全体通して面白かったらそれでいいじゃん」とか
思ってしまうので、これらの作品もいずれ読んでみたいですね。


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