『満願』
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- 2020/01/18(Sat) -
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米澤穂信 『満願』(新潮文庫)、読了。
いろんな賞を受賞したというのでヒットしていた本。 期待して読み始めたのですが、なんだかしっくりこなかったです。 短編集なのですが、1つ1つの話は、真相がなるほどなぁって感じで 物語のプロットは面白かったのですが、 私が持っている米澤作品のイメージと違っていて、 「これで評価されたのかぁ」となんだか腑に落ちない感じがありました。 私の米澤作品のイメージは、古典部のくどくどしさや、 『インシテミル』のような現実感ゼロの世界観です。 1つ1つは面白いんだけど、現実感や人間臭さが溢れてて、米澤作品らしさがないというか、 これらが米澤作品である必要性を感じないというか、 まぁ、作風を決めつけてしまうのは良くないことだとは思いますが。 冒頭の「夜警」は交番モノですが、 新人で配属された警官が、ちょとしたトラブルで腰に手をやる=拳銃に頼るというので 交番長や先輩が不安を持っていた矢先に事件が起きて・・・・。 こういう視点で警察官を見たことがなかったので、 そういう嗜好の人が混じってしまうと組織として非常に危険だなというが実感できました。 オウム事件の頃に、カルト信者が混じると警察機構が崩壊するなと愕然とした感覚に近いです。 バングラディッシュで資源開発を推し進めてきた商社マンが 現地住民の大反対に遭い、そこから殺人事件へと発展していく「万灯」。 バングラディッシュでの話の展開はもっさりしている印象でしたが 日本での展開が急激で、あぁそういう流れになっていくのか、と面白かったです。 ・・・・という風に、1作1作の感想を書いていると、読後感は満足してますね。 作風とかイメージとか意識せずに純粋に読んでいたら、もっと楽しめたのかなと思います。 作家の名前で本を選ぶ弊害ですね(苦笑)。 ![]() |
『追想五断章』
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- 2018/05/23(Wed) -
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米澤穂信 『追想五断章』(集英社文庫)、読了。
古書店に居候する休学中の大学生が受けた仕事は、 亡くなった父親が密かに書いていたと思われる掌編5つを探してほしいというもの。 どの作品もリドルストーリーという結末の書かれていない小説。 しかし、依頼人の手元には、結末と思われる1行が5つ残されている・・・・・・ 他の米澤作品に比べて、なんだか本作は、じめじめ度が異様に高い気がして ちょっと馴染めない世界観でした。 そもそも主人公が、父の急死で家が傾き休学を余儀なくされ、 さらには実家の母親が、「寂しいから戻ってきてくれ」と暗にほのめかすプレッシャー、 居候先の古本屋の叔父は土地転がしに失敗し毎日パチンコ通い。 この環境が、すでに、じめじめです。 そこに登場する依頼人の女も、なんだか暗くて、 依頼の結果探し当てた小説の内容も、どんより暗い。 登場してくる主な人物はみんな若いはずなのに、 誰からも若さを感じられないんですよねー。 陰鬱。 5つのリドルストーリーが、結末云々の前に、 そもそもストーリーが面白くないということもあり、 読み進めるのが大変でした。 唯一、過去の事件についてセンセーショナルに取り上げたという 週刊誌の連中とのやりとりは、生き生きした世界のようで面白かったです。 この米澤穂信は、苦手な世界でした。
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『犬はどこだ』
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- 2017/04/03(Mon) -
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米澤穂信 『犬はどこだ』(創元推理文庫)、読了。
メンタルやられて銀行員を退職した男が 社会復帰がてら犬探しの調査会社を開いた・・・・・。 設定からしてフワッとした感じですが(苦笑)、 物語の展開も、イマイチぴりっとしないまま。 女性が失踪した理由や背景にあまりリアリティが感じられず、 結末についても、何だか突拍子もない感じです。 まぁ、心理的に追い詰められた理知的な人というのは、 こういう暴発の仕方をするのかもしれませんが・・・・。 地方の小都市の歴史や文化を下敷きにしているところは ちょっと興味が持てましたが、それほど効果的に武器として使えているようにも思えず。 あまり、どの登場人物にも共感できないまま 物語が終わってしまいました。 米澤作品らしさを、あまり感じなかったです。
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『クドリャフカの順番』
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- 2017/01/13(Fri) -
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米澤穂信 『クドリャフカの順番』(角川文庫)、読了。
古典部シリーズ第3弾。 次を読むかどうしようか迷う・・・・と書いた第2弾の感想。 結局、読んでみたのですが、 段々と冗長さには慣れてきたみたいで(苦笑)、結構面白く読めました。 前半は、話の展開がゆっくりだったこともあり、 ことのほか冗長さが気になりましたが、 「十文字」の活動が周知の事実となってくると、 学校全体を動かしながらの騒動となり、 どんな展開になるのだろうかとワクワクしながら読みました。 そして、地味に気になったのが、 どうやって古典部文集『氷菓』を200部も売るのかということ。 誤発注で200部作ってしまい、売値200円ということは、 全く売れなくても耐えられない赤字額ではないとはしても、 文化祭3日間でどうやって売るとするのか、そのプロセスが気になりました。 サイドストーリーではありましたが、 福部の作戦は、意外と好きでした。面白かったです。 わらしべ長者とか、くだらないサイドストーリーも 結構楽しめました。 しかし、それらのサイドストーリーを絡ませていき、 大団円に持っていくための最も要となる場面に お姉さん登場で、その展開は、ちょっと無理過ぎないか???と。 行動に必然性がないように思え、すっと気持ちが醒めちゃいました。 それとも、この行動も謎解きの末の計算の上なのでしょうか? 高校の中という狭い世界で、 文化祭というハレの空間において、 罪のないゲームをワイワイ繰り広げているようで、 読後感はスッキリとした青春作品でした。
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『儚い羊たちの祝宴』
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- 2015/02/06(Fri) -
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米澤穂信 『儚い羊たちの祝宴』(新潮文庫)、読了。
「暗黒ミステリ」という紹介文のとおり、 ブラックというか、ダークなストーリーが5編。 謎解きの方よりも、動機の方に重きが置かれたミステリです。 その動機の暗さが異様なのですが、 それを楽しめるかどうかにかかっている作品集です。 ちょっと私には、異様さが極端すぎて、 あまり上手く受け入れられませんでした。 作り物の度が過ぎているという感じでしょうか。 「実は、こんな人、周囲に居そうだな」という怖さが感じられませんでした。 著者のマニアックな知識に触れられるのは面白かったです。
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『愚者のエンドロール』
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- 2014/03/08(Sat) -
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米澤穂信 『愚者のエンドロール』(角川文庫)、読了。
古典部シリーズの第2弾。 第1弾はちょっとダメだったのですが、念のため再挑戦。 しかし、やはり、冗舌さが受け入れにくく・・・・。 登場人物の会話が冗舌ということよりも、 本筋にあんまり影響がなさそうな描写が多いような印象を受け、 その割には真相へのヒントとなる重大な事象が上手に紛れ込んでいるわけでもなく 結構、文章の中で異様な目立ち方をするというところが・・・・ ストーリーの冗舌さとでも言いましょうか・・・・。 でも、真相自体は面白かったです。 真相の真相があったりして。 素材は良いけど、調理法が苦手という場合は、 第3弾に手を出すべきでしょうか、ここいらで止めておくべきでしょうか、 悩むところです。
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『ボトルネック』
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- 2013/01/15(Tue) -
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米澤穂信 『ボトルネック』(新潮文庫)、読了。
もっとラノベっぽいノリかと思っていたら、意外と面白く読めました。 パラレルワールドものなのですが、結構、重たい展開なんですよねー。 不仲な両親、事故で植物人間の兄、恋人は崖から転落死、 全てに見放されたかのような主人公の特技は「受け入れること」。 そんな主人公が別世界に飛ばされ、そこで出会ったのは「姉」。 その世界では自分は存在せず、仲の良い両親と元気な兄と姉の4人家族。 ところどころ違って見えるこの世界について、違っている理由が、 自分と「姉」との行動にあることが分かってきます。 そして、分岐点になった行動の1つ1つが、いずれも「姉」の方で良い結果を生んでいる。 それが、些細なことなのではなく、人生の幸不幸や、人の生き死にとして 厳然とした結果の相違を生んでいるのです。 これって、知った時の衝撃は凄まじいですよ。 自分の行動が他人の人生を終わらせてしまったりしているのですから。 主人公が終盤に見せる苦悩の重さは、並々ならぬもののはず。 それを一撃で破壊するかのような最後の一行。 うーん、容赦ないです。 ストーリーでやや違和感があったのは、 人の生き死にを左右するほどの影響力を持ちながら、 影響が及んでいる範囲がごくごく限定的で、 日常生活の大半においては、ほとんど差が生じていないこと。 この設定は、ちょっと都合よすぎなように感じました。 バタフライ・エフェクトのような要素を使うなら、それこそ至る所に影響が出て、 全く異なる世界になっているでしょうからね。 ま、そこはご愛嬌かな。 あんまり気にならなかったのは、「姉」のキャラクターによるところが大きいかも。 この登場人物は、ラノベの香りをぷんぷん臭わせているのですが、 意外とすんなり読めちゃったんですよねー。不思議。 こういうサッパリした女性のキャラが好きなのかもしれません。 一方、ノゾミとフミカのキャラクター設定には、 リアリティの無さをひしひしと感じてしまいました。 重要な役回りのキャラですが、ポイントでしか出てこないので耐えられたのかも。 ま、文句も言いつつ、全体的には楽しめました。
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『インシテミル』
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- 2012/04/24(Tue) -
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米澤穂信 『インシテミル』(文春文庫)、読了。
面白かった! 普段は、あまりにも現実世界からかけ離れた設定でになりがちな クローズド・サークルものって好みではないのですが、 本作には、のめり込めました。 「この破格の給料は誰が出すの!?」 「SHMクラブってどんな組織なの!?」 「暗鬼館のハイテクさは何なの!?」 「そもそも何のためにこんなことやってるの!?」 これらの根本的な疑問に一切答えることなく(爆)、物語は終わってしまいます。 ここまで、クローズド・サークルそのもののリアリティを無視して物語ってしまう度胸に ある意味、胸を打たれました(笑)。 ここまで割り切って描くなら、こちらも頑張ろうじゃないかと、 12人のリストを作ったりしてガッツリと取り組みました。 12人が閉じ込められて、殺し合いの準備が整ったとしても、 どうやって殺戮が始まるかの切っ掛けが重要なのですが、 本作では、その端緒となる出来事の納得感は十分にありました。 もちろん、その後の殺されていく理由も、それぞれに納得。 各人の行動も、突飛なものはあまりなく、 考えられる範囲で合理的に動いているように感じたので、 作者の都合での無理な行動は、目に付きませんでした。 これにより、気持ちに水を差されることなく、最後まで一気に楽しめました。 主人公の結城のキャラクターが、 序盤と終盤で、結構、受ける印象が変わってくるのが気になりましたが、 まぁ、なんとか1つの人格には収まっていたと思います。 外面的には「演技でした」「隠してました」で通りますが、 内面の描写は、ちょっと恣意的だったかなと感じました。 あと、キャラクターで言えば、須和名には、ちょっとガッカリ。 もう少し、「えーっ、こんな人だったの!?」的な展開があると期待したのですが・・・。 そして、安東、割と好きなキャラでしたが、 映画版のキャスティングを見たら、なんと北大路欣也(苦笑)。 お前、何歳なんだよ!
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『氷菓』
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- 2010/01/31(Sun) -
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米澤穂信 『氷菓』(角川文庫)、読了。
あちこちのBlogでお名前を見かけますが、本作がお初です。 軽めの学園ミステリー。 北村薫さんの作品を想起させますが、ちょっと感覚が違う感じ。 主人公たちが非常に饒舌で、雑学や教養を会話で楽しむタイプ。 こういう登場人物たちって、興味深さとウザさのバランスの上にいると思うんです。 北村薫作品は、絶妙なバランスで、興味深さの方へ傾いてる感じ。 本作は、ちょっとイラッとするほうに傾いている感じ。 鼻につくというか・・・・。 ま、これは、私がこの作家さんにまだ慣れていないだけなのか、 それとも読んだ時の気分に左右されたのか、 こちら側に原因がある可能性も大なのですが。 手探り状態のままで読み終わってしまったので、 他の作品も試してみようと思います。
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