『あの空の下で』
- 2017/11/11(Sat) -
吉田修一 『あの空の下で』(集英社文庫)、読了。

ANAの機内誌『翼の王国』で連載された短編をまとめたもの。
小説12編とエッセイ6編という編成ですが、
私は小説18編のような印象で読みました。

機内誌という性格上、
すっきり爽やかな小説なのかと思いきや、
意外と人間の暗い感情に触れた部分もあり、
「ANAって度量広いなぁ」と思ってみたり。

1つ1つは短い作品ですので、
それほど踏み込んだ作品はないですが、
でも、余韻は結構感じられるものが多かったです。

「旅」そのものを、ウキウキ、ワクワクだけで描くのではなく、
「面倒」「仕方なしに」「やむを得ず」というシチュエーションでも描いていて、
飛行機という空間を、旅の一部であるとともに、
単なる移動手段として割り切ってみている部分もあることで、
PR臭さが消えているのが良かったです。

しばらく海外に行っていないのですが、
たまには面倒でも海外という異空間に触れるのも良いなぁ・・・・と
思える作品集でした。


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『日曜日たち』
- 2014/09/25(Thu) -
吉田修一 『日曜日たち』(講談社文庫)、読了。

最近、吉田作品は長くて重い内容のものが続いたので、
連作短編集をば。

5人の人物の、彼らにとってごくありふれた日曜日の姿を描きます。
時には時間を遡って記憶を呼び出し、なぜ自分が今日、このような一日を送ることになったのか
考えを巡らせていきます。

最初の物語を読んでいたときの印象は、
著者の芥川賞受賞作を読んだときと同じような、
大したコトの起こらない日常を淡々と楽しむ作品なのかな?と思いましたが、

しかし、次の物語を読み進んで、兄弟に出会ったときに、
あ、そういう仕掛けなのか・・・・と。

段々と、この兄弟が幽霊のような感じを受けるようになり、
私の中では勝手にホラー要素が足されてしまう始末(苦笑)。
決して、そうではないのですが、何だか物語に出てくるその唐突感がなんとも幽霊的で。

この5つの物語を読んでいると、
今日という日は、いくつもの過去の積み重ねの上に必然的に乗っかっているものであり、
しかも、私の今日という日は、他の人の今日という日に繋がっているものなんだという、
極めて当たり前の事実を、非常に自然な感じで納得させてくれる作品でした。

面白かったです。


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『さよなら渓谷』
- 2014/06/30(Mon) -
吉田修一 『さよなら渓谷』(新潮文庫)、読了。

先日読んだ『悪人』に引き続いて、
犯罪と加害者と被害者の不思議な関係を描いた作品でした。

普通の頭で考えると、
この作品で描かれたような人間の結びつきは
あり得ないことだと考えますし、異常だとも考えます。
でも、なぜか、この作品を通して物語を追っていくと、
こんな人たちも居るのかもしれないという気持ちになりました。

『悪人』でも思いましたが、アンバランスな人間たちの物語です。
『悪人』は、どちらかというと、環境によりアンバランスな状態に追い込まれた感じが強く、
本作では、自らの行動の選択により、アンバランスな状態に陥った印象ですが。

なぜ、そういう行為でアンバランスさを解消しようとするのか・・・・・
安全な日常に居る私には、不可解な判断に思える彼らの行動にも、
アンバランスさを解消させる何かを期待してのことだったのでしょうね。

人間とは、難しいし、やはり怖い存在です。


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『悪人』
- 2014/06/18(Wed) -
吉田修一 『悪人』(朝日文庫)、読了。

赤沢温泉のリクライニング・チェアでビールを飲みながら一気読み(笑)。

出会い系サイトや合コンで繋がった男女が
ちょっとした虚栄心の積み重ねで、死を招いてしまうお話・・・・
うーん、ちょっと要約が間違ってるかな(苦笑)。

常々、事件を伝えるニュースを聞いていて違和感を覚えるのが、
「むしゃくしゃしててやった」「金に困っていた」というような
動機についての説明文。

「むしゃくしゃしてたら、みんながみんな人を刺すわけじゃないだろう!」という
単純な反感もあるのですが、それ以上に、
「そんな簡単な言葉で、加害者の気持ちが分かったような気になるなよー」という怒りです。

加害者側の動機を安易に決め付ける行為は、
被害者の無念さを無視する行為に等しいのではないかと思っています。

新聞やテレビが報道する事件の「真相」によって、
この世の中は、本当に、ぺらぺらの薄さしか持たないつまらない社会に
成り下がってしまったような気がします。

本作では、殺人を犯してしまった男、死を引き寄せてしまった女、
そんな男女に全く想像力が追いつかない男、反対に共感しすぎてしまう女、
アンバランスな人間ばかりが登場します。

明るい社会であれば、そういうアンバランスな人間同士が
支えあい、凸凹を補い合いながら、日々の生活を幸せに営んでいけるのでしょうが、
暗く行き詰った社会では、凸に足をひっかけて転び、凹に嵌まり込んで身動きが取れなくなる
そんな人間ばかりが生まれてしまうのでしょうね。

救いのない社会において、
主人公の男と女が手を差し伸べあった切っ掛けとなったのが、
「出会い系サイト」というのが、より一層、心を暗くします。


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『熱帯魚』
- 2012/06/17(Sun) -
吉田修一 『熱帯魚』(文春文庫)、読了。

なんだか、とても不気味な小説に感じました。

描かれているのは、3組の男女の姿。
そのどれもにトリッキーな部分があり、
核となる男女関係での挙動において自分の思考回路に無い展開をするところや、
その男女を取り巻く周辺人物達が、これまた風変わりだったりして、
とにかく、自分とは異質な空間を感じるんです。

しかし、それが、荒唐無稽に見えるのではなく、
変な質感を持って、存在感をアピールしてくるんです。
彼らは、私ではないだけであって、どこかに居そうな感じがするんです。

でも、彼らの行動や思考は、とっても変。
こんな人たちが近くにいたら、嫌だな・・・・・と感じてしまって、
不気味に思ったのです。

ただ、嫌だ、嫌だと思いながらも、
彼らが人間を観察して得た分析には、なかなかうなずかされるところもあり、
油断できないのです。

ちょっと読後感が、爽快になれない作品でした。


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『パレード』
- 2011/07/19(Tue) -
吉田修一 『パレード』(幻冬舎文庫)、読了。

これは面白かったです。

ルームシェアする5人の若者の姿を、それぞれの視点で描いていくのですが、
「ルームシェアしてるほど仲が良い」として描くのではなく、
「ルームシェアできるほど他人を距離を置ける」と見極めたところが
自分にとっては、目からウロコでした。

みんな、誰とも上手くつながることが出来ていない、
そんな孤独感を、軽いノリの一人称で描いていく
そのバランス感覚が素晴らしいと感じました。

孤独な分、周囲の人間や、世の中というものを冷静に眺めていて、
一言一言、表現は気楽な日本語が多いですが、
意外と本質を突いた分析が多くて、
また、そういうコメントを、それぞれのキャラクターがポンと発しても
「あぁ、この人なら、こういうこと気づきそう、言いそう」と納得できる
そんな自然な世界が出来上がっていました。

各章が、孤独を感じさせながらも、滑らかに次の章につながっていく中で、
最後の章は、非常にグロテスクな展開を見せますが、
それをも飲み込んでしまう日常世界が、この作品の中には広がっているように感じました。


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『パーク・ライフ』
- 2009/09/23(Wed) -
吉田修一 『パーク・ライフ』(文春文庫)、読了。

井上ひさしの反動で、薄い本をば。

お初の作家さんです。
Amazonのレビューでは評価が低いようですが、私は楽しめました。

大きな事件は起こらずに、
淡々と日常が進行していくのですが、
日常なんて、そんなものよね~と思います。

収録されている「パーク・ライフ」「flowers」とも
登場する女性が魅力的です。
自分の気持ちに忠実な感じで、しかも、その気持ちを簡単に他人とシェアしないところが。
壁の置きかたが、なかなかに格好よいです。

スターバックス馬鹿みたいな人はあまり信頼しないタチなのですが(苦笑)、

「あの店に座ってコーヒーなんかを飲んでると、次から次に女性客が入ってくるでしょ?
 それがぜんぶ私に見えるの。一種の自己嫌悪ね」


こういう感性、好きですねー。


パーク・ライフ (文春文庫)
パーク・ライフ (文春文庫)
おすすめ平均
stars何だかな、デス。
stars派手さも見せ場もないけれど
starsちゃんと自分の知ってることを書いて欲しい
stars都会で働く若者の普通の恋がいい!
starsそのぐらいかも

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