『用もないのに』
- 2017/05/30(Tue) -
奥田英朗 『用もないのに』(文春文庫)、読了。

脱力系エッセイ。
前半は野球の話、後半は物見遊山の話。

重たい小説を書く作家さんなに(伊良部シリーズ以外・笑)、
エッセイは脱力系なんですよねぇ~。

前半の野球の話は、北京五輪に行き、大リーグに行き、楽天の初ホーム戦に行き。
大ファンらしい中日ドラゴンズとは一線を画したエッセイなのが
程よい脱力感になって良いのでしょうね。
ドラゴンズの話になると、見境なくなりそうですしね(苦笑)。
北京五輪で「あべー(呆)」ってボヤいてる方が面白いです。

深刻な野球解説をするわけでもなく、
北京五輪について鋭い分析を加えるわけでもなく、
中国人のスポーツ観戦マナーを評するわけでもなく、
中国観光をあちこち行くわけでもなく、
単なる野球ファンとして思ったことを冗談も交えながら軽く書き進む。
野球そのものを楽しんでいるファンの姿ですね~。

後半の物見遊山エッセイは、
まーとにかく編集者をたくさん引き連れて
フジロック、愛知万博、富士急ハイランド、四国お遍路さん、
脈略もなく、あちこち歩き回ってます。

どこかの雑誌の編集者が依頼した企画でも、
ライバル紙の編集者たちものこのこ付いてきてて、
へ~、こういう業界文化なんだぁ・・・・と興味深かったです。

どこの会社が言い出しっぺの企画であろうと、
大作家さんが行く物見遊山にはとりあえず付き合って、
作家との距離を縮めるとともに、あわよくば企画のおこぼれでエッセイの1本でも・・・・
みたいなところでしょうか(笑)。
この業界は、横のネットワークが凄そうですね。


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奥田 英朗

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『ウランバーナの森』
- 2016/04/30(Sat) -
奥田英朗 『ウランバーナの森』(講談社文庫)、読了。

世界的なポップスターが、軽井沢で隠遁生活。
便秘に悩まされて病院に行った帰り道で、過去に自分が殺したはずの男に出会い・・・・。

明らかにジョン・レノンとオノ・ヨーコを模した主人公夫妻。
そして、軽井沢の地に夏だけ現れる心療内科医。
彼らを中心とした問答のような会話で話は進んでいくのですが、
作品の中で、会話の座り心地が不安定な印象でした。

心療内科医が主人公に投げかける問いは、
私たちの思い込みを払おうとする思わぬ問いかけが含まれていて
その視点は面白いなと思ったのですが、
その問いを受ける主人公の描写が、何とも幼い印象を受けて、
問答としては面白みが欠けてしまっているように感じました。

夫婦の会話も、家政婦とのやりとりも、
深いようでいて、意外と軽いのではないかと思ってしまい、
あまり腹に落ちてきませんでした。

罪は償うものにあらず、背負って生きるものなり

この言葉は良いなと思い、印象に残りました。

ビートルズ・ファンが読んだら、
もっといろいろ楽しめる作品だったのでしょうかね。


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『町長選挙』
- 2014/08/15(Fri) -
奥田英朗 『町長選挙』(文春文庫)、読了。

伊良部センセって、どんなキャラだったっけ?と思い出す前に、
別の強烈なキャラクターの登場に、そちらに心を持っていかれてしまいました。
ナベツネならぬ、「ナベマン」の登場です(笑)。

ナベマン目線で描かれる世の中の動きに対する将来像、
そして、それを主張する自分と、思うように受け止めてくれない世間のギャップ、
結構、良い線いってるんじゃないかと思います。
ナベツネさんの擬似思考としては。

続いて登場する、ホリエモンならぬアンポンマンも、
彼が陥る「ひらがなが思い出せない」という症状自体が、
なかなか上手くカリスマIT社長の思考回路を象徴しているように思います。

「オーナー」「アンポンマン」と、
時事問題と著名人の思想を反映した面白い作品が続いたので、
後半の「カリスマ稼業」「町長選挙」が、ちょっと凡庸というか
一般論に埋もれてしまって色褪せた感じが。

患者が置かれた環境と、それにより陥る病気の内容、
そして伊良部センセ(もしくはマユミお嬢)の本質を突く一言、
なかなか考えさせられる作品でした。

面白かった!


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『サウスバウンド』
- 2013/12/30(Mon) -
奥田英朗 『サウスバウンド』(角川文庫)、読了。

元過激派の父は、職も持たずに舞いにちプラプラ。
時に年金担当者とやりあったり、学校に乗り込んで行ったりと、
子供たちには迷惑な行動しか起こさず、姉は呆れて疎遠気味。
でも、母は、そんな父に笑顔で従う不思議な家族。
しかし、やがて中野区には居続けられない出来事が起こり・・・・。

主人公の二郎の目線で読むと、
素晴らしい経験を積む機会に恵まれた少年のビルディングス・ロマンです。
厄介な父と優しい母に育てられた少年は、
地頭が良く、周りに配慮もできる少年に育っています。
そんな少年が、過酷というか、壮絶というか、抱腹絶倒というか、
とりあえず父親に振り回されることで、機転が利き、妹を守れる強い兄になっていきます。
この視点で読むと、非常に気持ちの良い作品です。

一方で、父親のキャラクターに関しては、
上巻では、とにかく公の組織の人間とやり合っては論戦に持ち込み相手を辟易させるという
とんでもなく面倒なオヤジとして描かれています。
その理屈としては、内容の正当性よりも、反対のための反対のような
かつてのどこぞの野党のような印象を抱いてしまう難癖のつけ方です。
そのため、あまり、共感が持てません。

ところが、下巻でいったん西表島に移住すると、
コロッと人が変わるんです。
「八重山の人の輪の中で本来の姿に戻ったんだ」という見方もできるのかもしれませんが、
では、上巻で演説ぶってたアレは何だったのかと疑問を持ってしまいます。
というか、市民運動の人々に「俺はもう運動なんてやらんのだ」と言い放ってますが、
それでは、なぜ今まで東京に居続けたのかが不明。
何もやることがない状態で、反国家の活動を「誰かが何か言ってきたら反応する」という範囲で
受身の姿勢で行っていくことに、何か積極的な意味があったのでしょうか?
どうも、思想的に、上巻と下巻の父親では連続性がないように感じてしまいます。
上巻の途中で、「天皇制」とか出てきたときには、
どんな方向に話が進むのかとドキドキしたのですが、その後音沙汰なし(苦笑)。
クッション程度に使うテーマじゃないんだけどなぁ・・・・。

終盤の開発業者との闘争に関しても、
正直、都市から遠い西表島だからこそ、「今の生活で十分」という単純な結論に
島の人たちの総意をもっていっても違和感無かったですが、
これが石垣島クラスの話になってくると、民意もいろいろ複雑になると思うんですよ。
ま、そこは、舞台設定の上手さなのかもしれませんが、
開発と自然保護という社会問題を扱うには、ちょっと逃げた印象も持ってしまいました。

どうしても、父親のバックグラウンドの設定と、扱うテーマの設定から、
疑問に感じるところや不満に感じるところは数多あるのですが、
それでも、少年の成長、少女の成長には目を瞠るものがあります。

個人的には、向井君と七恵ちゃんに、
今の日本社会についての対談を行って欲しいぐらいです(笑)。


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『最悪』
- 2013/12/22(Sun) -
奥田英朗 『最悪』(講談社文庫)、読了。

ガッツリ分厚い小説を久々に。

カツアゲとパチンコで生計を立てる野村、
町工場を経営する川谷、銀行のOLみどり、
重なり合うことがないはず3人の人生が、
それぞれが少しずつ道を外しあうことで、ある日、一度に衝突することに!

これは、犯罪小説なのでしょうか。
計画性の無い犯罪の場面に居合わせたがために、
犯罪に引き寄せられるようにいつのまにか犯罪の主人公になってしまう。
「逃げ場の無さ」や「思考が耐え切れず流される様」が非常によく描かれています。
それはやはり、犯罪に至るまでの三者三様の過程が丁寧に描かれているからだと思います。

この3人に限らず、登場人物たちそれぞれに言い分があるのでしょうが、
唯一受け入れられなかったのが、川谷の鉄工所の向かいのマンションに住む太田氏。
この作品に出てくるどの登場人物も、自分の置かれた立場の中で
「仕方が無い」とか「諦める」とか「妥協する」とかいう思いを味わい、
一方では、無理難題を他人にふっかけているという「疚しさ」のようなものを
心のどこかに抱きながら生活をしています。
しかし、この太田氏だけは、「疚しさ」など一片も持たずに生きているのです。
そう、「私は正しい」「私の主張は正義だ」という類の人種です。

あーーー、苦手!

太田氏と川谷が交渉している場面は、イライラして仕方がありませんでした。
最後、ちょっと太田氏が退散する場面が数行語られていますが、
その心中までは分かりませんでした。
反省したのかしら???

奥田英朗の犯罪小説は、
登場人物だけでなく、読者をもどこか追い詰める息苦しさがあるのですが、
それも作品の力だと思います。


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『ガール』
- 2013/04/11(Thu) -
奥田英朗 『ガール』(講談社文庫)、読了。

おんなじような雰囲気のタイトル『マドンナ』がイマイチだったので、
あんまり期待してなかったのですが、本作は面白かったです!

30代の働く女性たちが主人公。
結婚してても子供が居なかったり、結婚すらしていなかったりして、
何かと世間や親兄弟からの風当たりが強くなる中で、
それでも「ガール」としての矜持と、働く女としての矜持を
両立させようと奮闘する姿に共感。

力が入ったり、強がったり、ふと弱気になったりするところが
どれも自然に描かれていて、女の目で違和感ないです。
しかも、心理描写だけでなく、ファッションなどの小道具の使い方も上手い!
というか、私以上に知ってる感じですわ・・・。

決して肩ひじ張りまくって生きているわけでもなく、
そして、「私はあなたの味方よ!」という不自然なキャラがいるわけでもなく、
主人公は周囲と相応に協調し合いながら日々を送っています。
同性の先輩後輩にも、異性の上司部下にも、取引先にも新しい出会いにも、
それなりに主人公にふんわり寄り添ってくれる人がいて、
でも、それは主人公に気を使っているのではなく、彼らなりの生き方であるところが
小説として、無理のない空間が広がっていて、心地よかったです。

働く女にとって、世の中、敵ばかりではなく、さりとて100%の味方もいない。
でも、見てくれている人はいるし、頼りになる人もいる。
そういう、爽やかで前向きな気持ちにさせてくれる作品です。


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『家日和』
- 2012/04/05(Thu) -
奥田英朗 『家日和』(集英社文庫)、読了。

奥田短編合わないかも・・・・・と言ったことがありましたが、
本作は面白かったです。

前は気になった「軽さ」が、
本作では「前向きさ」「明るさ」に繋がっていて、
読後感が爽快なんです。

倒産、別居、専業主婦の閉塞感・・・・・・
普通なら、暗く落ち込むような事態に遭遇しても、
なぜか、それをプラスに受け止めて新たな自分を見つけ出す主人公たち。

それが、今の時代のヒーローの姿なのかもしれません。

読んで良かったと思える短編集でした。


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『マドンナ』
- 2011/02/25(Fri) -
奥田英朗 『マドンナ』(講談社文庫)、読了。

奥田短編は、実は性に合わないのかもしれない・・・と気づいてしまった一冊。
過去に読んだ短編の感想を辿ってみても、
意外と不満を覚えてしまっているんですよね。

本作でも感じてしまったのは、まず、「軽い」ということ。
「そんな毎日深刻に生きている人間なんて珍しいよ」と言われればそれまでですが、
表面的な生き方をしている主人公のおじさんたちに、魅力を感じられないんですよねー。

体裁つくろい、保身に走る、都合のよい解釈、視野の狭さ、
あー、ウンザリ。

多分、現実の自分のダメな面を読んでいるような気分になってしまっているという
面も往々にしてあるのでしょうけれど・・・やっぱり悲しい。


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『空中ブランコ』
- 2010/05/04(Tue) -
奥田英朗 『空中ブランコ』(文春文庫)、読了。

言わずと知れた直木賞受賞作ですが、
シリーズ第一作より、本作のほうが断然面白く読めました。

前作は、どうもワンパターンな印象を受けたのですが、
本作は伊良部先生の治療方針が、見事に患者の症状に合っているように思え、
どれも楽しく読めました。

また、登場してくる患者それぞれが抱えている悩みというのが、
表出してくる症状としては突飛なものであっても、
悩みの種は誰もが抱えそうなものであり、
共感して読むことができました。

「ホットコーナー」で、5歳の子どもとキャッチボールするシーンが
とても印象に残りました。


空中ブランコ (文春文庫)
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stars笑いました!
stars名医なのか、はたまた迷医なのか
stars第三弾に期待
starsおきがるに
stars疲れを癒してくれる小説

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イン・ザ・プール (文春文庫)
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starsギリギリ
stars第2弾も読まなくっちゃ
stars肩の力がぬける本
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『ララピポ』
- 2008/12/15(Mon) -
奥田英朗 『ララピポ』(幻冬舎文庫)、読了。

「下流文学の白眉!!」との宣伝文句でしたが、
思いの外、お下劣な内容でした(苦笑)。

ポルノまがいの描写に・・・というか一部まさにポルノですが、
朝の通勤電車で読み辛いったらありゃしない(爆)。
人の目よりも、朝からこんなものを読んでしまった自分にゲッソリ・・・みたいな(笑)。

どいつもこいつも残念な人生を送っているのですが、
みーんなどこかでつながっていて、
酷い言い方をすれば掃き溜めのような。

こうやって、下流社会はどんどん濃縮されていって、
突然、自分の目の前にボンッと現れたりするんだろうなぁと、悲しい気持ちに。

でも、みなさん、自分が下流社会の住人であることに程度の差はあれ自覚を持っていて
まだ、それがあるだけ良かったなと。

ただ一人、ゴミ屋敷のおばさんだけは、
もう、自分の置かれた環境も分かっていなくて、
あっちの世界へ行ってしまっていたので、
この章だけは、読んでいてホントに気分が悪くなりました。


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