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『あほらし屋の鐘が鳴る』
- 2020/12/25(Fri) -
斎藤美奈子 『あほらし屋の鐘が鳴る』(文春文庫)、読了。

著者の本はなんと6年ぶりでした。
なかなか100円で見つけられないんですよねー。

メインは雑誌『pink』での連載エッセイ。
本に限らず世相を斬っていくものですが、やっぱり本とか雑誌とかエンタメとか
その手のジャンルのものが多かったので、その毒っぷりに面白く読みました。

ATMの画面に登場する女子キャラクターの銀行別特徴とか、
『失楽園』の勝手にあらすじ紹介&行動パターン分析とか、
まぁくだらないことを何もそんなに一生懸命分析しなくても・・・・って感じで笑えます。

冷静に考えると、それほど深い分析をしていおるわけでもないようにも思えますが、
結構オーソドックスな世の中の批評の枠組みに素直に当てはめて、
ただ具体的な分析を分かりやすく盛り込みズバッと斬っているところが面白いのかなと。
郷ひろみの『ダディ』の話とか・・・・・くだらないけど。

著者の分析力が光るのは、メインコンテンツの世相批評より、
終盤に併録された雑誌批評の方が面白いですね。

以前読んだ『男性誌探訪』の前段に当たる企画のようで、女性誌探訪です。
正直わたくし、ファンションとかに全く興味がないので、いわゆる女性誌ってほとんど買ったことがありません。
極まれにウンナンさんのインタビューがあったりすると買う程度で(苦笑)。

著者はいわゆるフェミニストですから、ちょっと主張がくどく感じる部分もあるのですが、
でも、やっぱり、女性の評価は女性の方が厳しいというもので、
女性誌のカテゴリ分けとか、読者層分析とか、販売戦略の変遷とか
毒まみれの解説で、笑えました。

紹介されている女性誌は、名前は知ってるけど手に取ったことが無いものがほとんどなので、
これでまた、私の中に勝手な各雑誌のイメージが構築されてしまいました。

ところで、タイトルの語感がすごいな~と感心していたのですが、
Amazonレビューを見ていたら、どうやら大阪の方で使われる言い回しのようですね。
こんな表現、初めて知りました。
誰が最初に言い出したのか、すごく気になります(笑)。




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『働くことがイヤな人のための本』
- 2017/12/06(Wed) -
中島義道 『働くことがイヤな人のための本』(新潮文庫)、通読。

別に、働くことがイヤになったわけではないのですが(苦笑)、
私の「読みたい本リスト」の中に著者の別の本がリストアップされていて、
たまたま100円で本作を見つけたので、とりあえず買ってみました。

が、うーん、何言ってるのか分からない本でした。

働くことがイヤな4人の人間を登場させて、
著者と4人との仮想対談という形で話は進んでいくのですが、
読んでて、ものすごく置いてきぼり感がありました。
それは多分、私が、4人の誰にも共感できないからだと思います。
ま、仕事がイヤという気持ちがないので、共感できなくても仕方がないですが。

そして、その4人に向かって著者が語り掛ける内容が、これまた抽象的で良く分からず。
仕事との向き合い方を話すのかと思いきや、もっと大きな生き方とか考え方とか
そういう精神的な話、言ってしまえば、哲学的な話(笑)に終始しており、
仕事というものが持つ現実味のある重さというか差し迫った緊張感というか
そういうものが議論の中から感じられません。

「生きるのがイヤになった人のための本」と銘打ってもらった方がしっくりきます。
生きるのがイヤだという症状を、仕事のせいにしているように感じられて
厭な感情の処理の仕方だなぁと嫌悪感を抱いてしまいました。

ほぼ流し読みでしたが、最後、斎藤美奈子氏の解説を読んで納得。
この本の何がダメなのか良く分かりました。
社会で人間として生きていくには、著者の教えよりも、斎藤氏の観察眼&分析力を
身につけた方が数倍役に立つように思います。


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『男性誌探訪』
- 2014/06/08(Sun) -
斎藤美奈子 『男性誌探訪』(朝日新聞社)、読了。

斎藤美奈子女史が、世の中の男性誌をバッタバッタと斬りまくる。
あぁ、哀れ、男性誌たち、そして、その読者たち。
でも、斬り捨てられるだけでなく、ちょっと愛らしいなという気持ちも湧いてくる不思議さ。
これが上手い批評の姿なんでしょうね。

誌面上の特徴をさらうだけでなく、
編集方針の裏側に潜む潜在的な思想や編集部に課された制約まで
いろいろと想像を巡らしており、それがまた当たってそうなんです。

一見20代の男性をターゲットにしていそうだが、実は作る側も読む側も団塊崩れだろうとか、
他人との違いを目指したい男たちに向けたその実はマニュアル本だとか、
御託を並べても結局はエロだとか、
まぁ、いろんな角度からツッコんでます。

一部の雑誌編集部からはクレームが入ったようですが、
概ね、「良くぞここまで読み込んでくれた!」と喜んでる編集部の方が多そうですね。
ま、シャレが通じるだけ、風通しの良いところはありそうですね。

本作は、女性誌探訪連載の続編の連載だったようですが、
女性誌よりは男性誌の方が、はるかに興味深い世界観を作り上げていそうな気がします。


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『それってどうなの主義』
- 2011/11/07(Mon) -
斎藤美奈子 『それってどうなの主義』(白水社)、読了。

書評ではない斎藤エッセイに挑戦です。

世の中の様々な出来事に対して、何か変だなぁ・・・・・と感じたときに、
「それってどうなの?」とつぶやいてみるというもの。

目の付けどころは、やはり面白いものが多いです。
なるほどね、そういうところに違和感を感じるんだ・・・という新しい視線もあれば、
あぁ、この手の話に感じる違和感というのは、これが原因なんだ・・・と目からウロコも。

ただ、紙面の関係か、「それってどうなの?」というつぶやきで終わってしまうケースも多く、
で、どうしたいの?という答えが見えてこない場合、
ちょっと食い足りない感じも残ります。

書評のときは、批評の対象となるのが一冊の本なので、
バシバシ斬り込む過程で結論が見えてきたのですが、
このエッセイでは、斬り付ける対象が大きなテーマの場合、
ちょっと締め方の座りが悪い(言いっぱなしの感じ)ときがありました。

ま、答えを出すのはこの本の主題でないので、つぶやいた時点で公約達成なのですが。

総括としては、面白い一冊でした。


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『読者は踊る』
- 2011/06/30(Thu) -
斎藤美奈子 『読者は踊る』(文春文庫)、読了。

斎藤美奈子女史による書評集。
いつものとおり、真っ向勝負で、気持ちよいです。

特に、世間みんなが褒めている本(≠売れている本)への
冷静な斬り込みが素敵です。

それにしても、この方の読書の幅の広さには恐れ入ります。
タレント本から「複雑系」まで。
難解な本を取り上げても、何らかの意見をつけられるほどに
読み込めることには、感嘆してしまいます。

読書術の本も書いてほしくなりました。


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『誤読日記』
- 2011/02/21(Mon) -
斎藤美奈子 『誤読日記』(朝日新聞社)、読了。

清水センセの本でお名前を知った斎藤美奈子さん、
ずーっと気になっていましたが、やっと著作を100円で入手。
さっそく読み始めたら、止まらずに夜更かしして読んでしまいました。

最初の章がタレント本の批評から始まったので、
「おっと、B級グルメツアー系なの?」とちょっとたじろぎましたが、
後半になるにつれて、文学賞受賞作品などの章も出てきて、
自分の読んでいるフィールドに近づいてきたので、楽しめました。

自分が面白いと思っていた本がバッサリ斬られてた・・・てなことは無く、
結構、自分の感覚と近い感想が並んでいたように思います。

ただ、文芸評論家として、ここまでバッサリと切って捨てる文章を
堂々と雑誌に載っけてしまう度量は、すごいと思いました。
ある意味、読んでいて気持ちがよいです。

一方で、お仕事とはいえ、下らないと分かっている本を読まねばならないのは、
私だったら耐えられない苦痛だろうな・・・と感じてしまいました。
タレント本とか、純愛ものとか、ケータイ小説とか。
きっと半分も読めないと思います。

ただ、この食わず嫌いが勿体ないことも承知しています。
この作品でも、タレント本の意外な面白さを発掘したりしています。
なるべく雑食性でいたいとは思うものの、
買う時に、ゲテモノと掘り出し物を見分ける力を身につけたいですね。


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