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『四捨五入殺人事件』
- 2019/03/10(Sun) -
井上ひさし 『四捨五入殺人事件』(新潮文庫)、読了。

お気楽推理小説をば。

とある田舎での講演会に出席するため、山の中の温泉に宿泊した作家2名。
大雨の中、古びた旅館に到着すると、なんと増水で橋が流され
小さな温泉町に閉じ込められることに。
何の娯楽施設もなく、テレビすらない旅館の中で起こったのは、殺人事件!

というわけで、一応は推理小説風の展開になっていますが、
わがままな大作家と時代に取り残された古旅館、そして田舎の役場職員と地域住民という
まぁ、ドタバタコメディ系の井上ひさし作品らしい塩梅です。
温泉宿にまつわるエロティックな味付けで。

江戸時代に殿様に搾取された農民たちの歴史をベースにして
現代の農業問題を知らしめようというところが、
この作品の社会性ですかね。
取り残される田舎と、自分の都合だけ考える都会の人間との対比。

そういう重たい問題を、エロティックコメディで語るところが、
井上ひさし氏らしさですね。




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『父と暮らせば』
- 2018/12/15(Sat) -
井上ひさし 『父と暮らせば』(新潮文庫)、読了。

著者名の安心感と、表紙絵の雰囲気から、
軽い読み物かな・・・・著者と娘さんのエッセイとか?という
勝手な推測で、内容を確かめもせずに買ってきたのですが
読んでみたら、冒頭に「ヒロシマ」「ナガサキ」というフレーズが目に飛び込んできて、
そういうテーマの劇の脚本なのか!と読み始めてようやく気付きました。

広島の原爆で生き残った主人公と、亡くなった父。
父は幽霊となって娘の日常に居座っており、
娘に恋愛の気配が漂ってくると、応援団と称して、娘の幸せを願います。
しかし、娘は、「私は幸せになってはいけない」と、お付き合いを拒否する姿勢。

最初は、「何もそんなに頑なに拒否しなくても・・・・」と思いながら読んでいましたが、
主人公が、原爆で生き残った立場の人間として、
自分の身内を亡くした喪失感や、亡くなった人の遺族から投げられる厳しい言葉など
自分のせいではないのに、背負わざるを得ない苦しみがあったことが描かれていき、
「私は幸せになってはいけない」という言葉の意味が、ずっしり響いてきました。

幽霊となって現れる父が、娘の気持ちを和らげようと剽軽にふるまいますが、
娘よりも、むしろ読者としての私の方が救われた気持ちになりました。
それほど、戦争を経験してきた人、特に生き残った人の
行き場のない悲しみのようなものが伝わってくるお話でした。

上演された劇場では、どんな雰囲気だったのでしょうか。
劇の内容よりも、観客も含めた劇場の空間の様子が気になりました。




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『十二人の手紙』
- 2017/07/02(Sun) -
井上ひさし 『十二人の手紙』(中公文庫)、読了。

手紙のやり取りだけで短編集に仕立てたもの。
私信の往復から、届け出書類の羅列まで、
様々な形式の書面が登場しますが、
どれも書面だけで、その裏に流れる物語が想像できるようになっており
さすが井上ひさしという感じの作品です。

しかも、各話がゆるやかにつながっており、
最後に強引ながらも一堂に会させるという手腕と構成力。
ぐいぐい読ませてくれました。

手紙というツールを軸にする以上、
現代を舞台に描くのは難しいかと思います。
逆に、昭和どっぷりな舞台設定が新鮮味もあり、
最後まで気を抜かずに読めました。

今ならメールなりSNSなりになるのでしょうが、
時間のギャップがある手紙ならではの面白さですね。

どの作品も、最後にどんでん返しが待っており、
手紙の往復だけという制約がありながら、
こうも鮮やかにひっくり返してみせるのは、さすがとしか言いようがありません。

驚きに満ちた短編集でした。


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『ニホン語日記』
- 2011/07/11(Mon) -
井上ひさし 『ニホン語日記』(文春文庫)、読了。

この方のエッセイを読むのは、実は初めてかもしれません。

日本語の乱れを指摘する書なのですが、
「乱れはダメ!」と指弾するのではなく、
乱れを変化として、時には肯定的に捉えているので、
読んでいて疲れることがありませんでした。

また、テーマが「正しい表現」という、指弾しやすいものだけでなく、
文法面での指摘や解説も多く、幅の広さが興味深かったです。
さすが、『吉里吉里人』を書いた作家さんなだけはあります。

清水センセや阿刀田センセとは、また違った面白さがありました。


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『青葉繁れる』
- 2010/04/12(Mon) -
井上ひさし 『青葉繁れる』(文春文庫)、読了。

突然の訃報に驚きました。
ご冥福をお祈りするとともに、ちょうど買ってきたばかりだった
本作を読んでみました。

タイトルと「青春文学の傑作」という謳い文句から
勝手に『学生時代』みたいな雰囲気を想像していたら、
いきなり妄想とエロでのスタート。

井上ひさしなんだから!
なぜ久米正雄のイメージが出てきちゃったのかよくわかりませんが、
神妙な心持ちになってしまってたのでしょう。

読んでいる側の気持ちのありようと、
作品の持つバカバカしさのバランスが上手くとれず、
ノリ切れないまま最後まで読み終わってしまいました。

井上作品は、もっとカラッとした心持ちで読むべきなんでしょうね。


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『吉里吉里人』
- 2009/09/23(Wed) -
井上ひさし 『吉里吉里人』(新潮文庫)、読了。

仕事が詰まっているときに、
何を血迷ったのか上中下3巻で1500ページの大作を手にしてしまい、
まー時間がかかってしまいました。

東北のとある農村が日本からの独立を企てる・・・という、
これまた荒唐無稽な作品ではあるのですが、
国際法、日本国憲法、国籍法などが飛び交い、
「あれっ?実は、独立できちゃうのかしら?」と思わせてしまうところは流石。

というと、社会派の作品のようですが、
ズーズー弁満載、かつ、お下劣な下ネタ満載で、
なんとも破壊力のある作品です。

ちょっと、ご飯時には読みにくいかしら・・・・。

でも、上巻に出てくる、吉里吉里語の文法講座は目からウロコ。
ズーズー弁の仕組みが、なんとなく理解できてしまいました。
これは凄い。

とにかく、井上ひさしテイスト満載の、強烈な3巻セットでした。


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