『十二人の手紙』
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- 2017/07/02(Sun) -
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井上ひさし 『十二人の手紙』(中公文庫)、読了。
手紙のやり取りだけで短編集に仕立てたもの。 私信の往復から、届け出書類の羅列まで、 様々な形式の書面が登場しますが、 どれも書面だけで、その裏に流れる物語が想像できるようになっており さすが井上ひさしという感じの作品です。 しかも、各話がゆるやかにつながっており、 最後に強引ながらも一堂に会させるという手腕と構成力。 ぐいぐい読ませてくれました。 手紙というツールを軸にする以上、 現代を舞台に描くのは難しいかと思います。 逆に、昭和どっぷりな舞台設定が新鮮味もあり、 最後まで気を抜かずに読めました。 今ならメールなりSNSなりになるのでしょうが、 時間のギャップがある手紙ならではの面白さですね。 どの作品も、最後にどんでん返しが待っており、 手紙の往復だけという制約がありながら、 こうも鮮やかにひっくり返してみせるのは、さすがとしか言いようがありません。 驚きに満ちた短編集でした。
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『ニホン語日記』
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- 2011/07/11(Mon) -
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井上ひさし 『ニホン語日記』(文春文庫)、読了。
この方のエッセイを読むのは、実は初めてかもしれません。 日本語の乱れを指摘する書なのですが、 「乱れはダメ!」と指弾するのではなく、 乱れを変化として、時には肯定的に捉えているので、 読んでいて疲れることがありませんでした。 また、テーマが「正しい表現」という、指弾しやすいものだけでなく、 文法面での指摘や解説も多く、幅の広さが興味深かったです。 さすが、『吉里吉里人』を書いた作家さんなだけはあります。 清水センセや阿刀田センセとは、また違った面白さがありました。
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『青葉繁れる』
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- 2010/04/12(Mon) -
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井上ひさし 『青葉繁れる』(文春文庫)、読了。
突然の訃報に驚きました。 ご冥福をお祈りするとともに、ちょうど買ってきたばかりだった 本作を読んでみました。 タイトルと「青春文学の傑作」という謳い文句から 勝手に『学生時代』みたいな雰囲気を想像していたら、 いきなり妄想とエロでのスタート。 井上ひさしなんだから! なぜ久米正雄のイメージが出てきちゃったのかよくわかりませんが、 神妙な心持ちになってしまってたのでしょう。 読んでいる側の気持ちのありようと、 作品の持つバカバカしさのバランスが上手くとれず、 ノリ切れないまま最後まで読み終わってしまいました。 井上作品は、もっとカラッとした心持ちで読むべきなんでしょうね。
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『吉里吉里人』
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- 2009/09/23(Wed) -
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井上ひさし 『吉里吉里人』(新潮文庫)、読了。
仕事が詰まっているときに、 何を血迷ったのか上中下3巻で1500ページの大作を手にしてしまい、 まー時間がかかってしまいました。 東北のとある農村が日本からの独立を企てる・・・という、 これまた荒唐無稽な作品ではあるのですが、 国際法、日本国憲法、国籍法などが飛び交い、 「あれっ?実は、独立できちゃうのかしら?」と思わせてしまうところは流石。 というと、社会派の作品のようですが、 ズーズー弁満載、かつ、お下劣な下ネタ満載で、 なんとも破壊力のある作品です。 ちょっと、ご飯時には読みにくいかしら・・・・。 でも、上巻に出てくる、吉里吉里語の文法講座は目からウロコ。 ズーズー弁の仕組みが、なんとなく理解できてしまいました。 これは凄い。 とにかく、井上ひさしテイスト満載の、強烈な3巻セットでした。
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