『二酸化炭素温暖化説の崩壊』
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- 2012/07/21(Sat) -
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広瀬隆 『二酸化炭素温暖化説の崩壊』(集英社新書)、読了。
ブックオフで本書を目にしたとき、「広瀬隆が温暖化論!?」と一瞬驚いたのですが、 「CO2を排出する火力発電所に比べて原発はクリーンエネルギー」と謳われていた ことを思い出し、CO2問題は原発問題と近しいところにいると納得しました。 私は、基本的に、「二酸化炭素の排出を減らしても(増やしても)、 地球の気候変化には大した影響を及ぼさない。もっと別な要因が寄与しているはず」 と考えています。つまり、地球全体に対する人間の力はちっぽけであり、 人間などよりももっと大きな、太陽や地球自身の活動の結果だろうと思っています。 なので、本書で著者が展開している「温暖化自体が起きていない」という点には 賛成しかねるものの、「気候変動に与える人為排出の二酸化炭素の影響は小さい」という 点には同意します。 また、「シミュレーションは目標値に向かってパラメータが調整されている」 「研究予算獲得のために都合の良いシミュレーションが作られている」というような 政治的な問題点の指摘(これは自然科学の問題ではない!)や 「人間は毎年異常気象だと騒ぐ習性がある」というような社会学的な問題点の指摘は 私も感じていることであり、納得的です。 しかし、広瀬本の特徴として、数値を出しながら危機感を煽る手法は、やっぱり疑問。 ホッケースティック論争などを取り上げ、確かに、出典の誤りやデータの修正問題は あったのは事実ですが、事件の調査の結果、誤差はあるもののデータの傾向値としては 合っていて、「結果の捏造」とまでは言えない状況だと判定されています。 本書での糾弾の仕方は、激烈過ぎではないかと感じました。 他も同様。データの部分的な誤りや分析の不十分さを指摘することで、 全てを誤りだと決め付けるような展開は、ミスリードさせる手法だと思います。 そして、最後は、著者にとって本題である(苦笑)、原発問題の話へと進んでいきます。 まあ、原発が温排水を出すことはもともと分かっていたことですし、 むしろ「海洋牧場構想」さえ出ていたぐらいですから、目新しい指摘ではないと思います。 「原発の熱効率は30%しかなく、2/3を海に捨てている!」と主張してますが、 火力だって45%しかないんですよ・・・半分を空に捨てている!(笑) 部分的な数字を取り上げて、主張を展開するのでは、 著者が批判するIPCCと、大して変わらないような気がします・・・。 むしろ、本作で私が深掘りしたいなと感じた観点は、 世間の人々が温暖化問題をどのように捉えているのかという社会学的な調査、 特に、日本でIPCCの各種論争があまり話題にならない理由について。 それと、「30年平均との差」で表されるグラフの妥当性。 「30年平均」って、日本だと10年ごとに更新されているはずなので、 平均との偏差をグラフにしたときに、10年ごとに次のタームに影響が出るのではないか ということの検証です。 なかなか自分で数字を作って、検証するまでのエネルギーは沸いてこないのですが・・・。
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『最後の話』
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- 2011/07/06(Wed) -
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広瀬隆 『最後の話』(新潮文庫)、通読。
またまた広瀬作品。 こちらも震災前、というか何年も前に買って、積読状態だったものです。 やっぱり感想は同じで、 指摘している危険性は、その後、もんじゅの事故が起きていることを考えても 的を射たものだったと思うのですが、 扇動的な表現がどうしても気になってしまいます。 今朝、中吊り広告で「科学難民」という表現を目にしたのですが、 そういう人たちが、この手の本を読むと、マイナスのほうが大きいのではないかと 心配になってしまいます。 反原子力のスピーカーなら、こういう非常時に読むには 高木仁三郎氏のほうが、冷静な物言いで適任ではないかと思います。
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『ジキル博士のハイドを探せ』
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- 2011/04/02(Sat) -
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広瀬隆 『ジキル博士のハイドを探せ』(ダイヤモンド社)、読了。
原発トラブルで時の人となった感のある広瀬隆氏。 私は、大学生の頃に、東海村JCOの臨界事故があったため、 当時いくつか原発関連の本を読んだのですが、 やっぱり、最初は広瀬作品『東京に原発を!』からでした。 ただ、当時も今回も感じる事は同じで、 著者には豊富な原子力の知識があり、危険性について指摘できる能力がありながら、 その指摘の仕方が適切でないように思えてしまいます。 隠蔽されていた危険な事実をピックアップして示していくという手法なため、 全体像が見えないままに、「危険だ」「危険だ」「危険だ!」と 刷り込まれていくようなところがあります。 みんなが無関心な事象に対して警鐘を鳴らすには有効な手法かもしれませんが、 現在のような、みんなが関心を寄せている状況においては、 むやみに不安を煽るだけになってしまい、負の影響も多いような気がします。 科学者などの原発の著作のほうが、 理路整然と原発の仕組みの説明から始まって、その全体像のうち どこに危険があるのかという指摘に至るので、 読んでいる側もリスク評価が冷静にできるとおもいます。 ただ、読み物として面白くないかもしれませんが(苦笑)。 一冊を読み通しても全体感がわからず、 具体性のない危機感だけが募っていくというのは、 やはり問題があるのではないかと思ってしまいます。
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『クラウゼヴィッツの暗号文』
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- 2009/03/02(Mon) -
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広瀬隆 『クラウゼヴィッツの暗号文』(新潮文庫)、読了。
相当に久々の広瀬作品。 プロイセンの軍人が著した『戦争論』についての解説本と思って買ったのですが、 『戦争論』はあくまでも舞台装置にすぎなくて、 戦争について考える広瀬本でした。 『東京に原発を!』を初めて読んだときは、 そのセンセーショナルな内容に引き込まれたのですが、 何冊か反原発本を読んでいるうちに食傷気味に・・・。 文章が扇動的なところが、だんだん苦手になってきました。 もうちょっと冷静に解説してほしいなぁというのが 最近の心境です。
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『黒い輪』
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- 2006/02/01(Wed) -
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ヴィブ・シムソン、アンドリュー・ジェニングス 『黒い輪』(光文社)、読了。
トリノ五輪が始まると言うことで、オリンピック関係の本を読んでました。 ただし、コマーシャリズム、政治的駆け引き、ドーピング等、ブラックな方の五輪ネタですが。 IOCでの権力闘争を描くために、サマランチやアディダス社長等の 中心人物をクローズアップしてますが、 個人的には、ちょっと彼らに寄り過ぎだったかなと思ってます。 数人の人物に順番にスポットを当てていっているため、時間が前後するんです。 そのため、同じ五輪が何度も出てきて、全体像が捉えにくい。 むしろ、ある五輪大会を中心に据えて、それに関わった人々を描いたほうが、 すっきりしたかと思います。 ソウル五輪でのテレビ放映権にまつわる金銭闘争やボクシングでの不正工作、 世界陸上ローマ大会の走り幅跳びでの不正工作等、非常に興味深い話題もありました。 次は、これらの大会をしっかりと描いた作品を読んでみたいですね。 ところで、監訳の広瀬隆氏が、作品に3つの疑問(というか間違いの指摘)をぶつけてます。 こんな解説、見たこと無い! そういう部分も含め、面白い作品でした。
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