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『パンク侍、斬られて候』
- 2022/09/03(Sat) -
町田康 『パンク侍、斬られて候』(角川文庫)、読了。

町田小説、なんと10年ぶりでした
本作が一番有名でしょうか。私的には代表作という認識です。

とある貧乏藩に現れた浪人の男が、
茶店で休憩する老人をいきなり斬り倒し、連れの盲目の娘はオロオロするばかり。
浪人曰く、この老人は「腹ふり党」の一味であり、藩に災厄をもたらすと言う・・・・・。

裏表紙のあらすじを読んだときに、「腹ふり党」って何だろう?と思ったのですが、
なんと江戸時代のカルト集団とのこと。この小説までカルト問題か(苦笑)。

この世の出来事はすべて無意味、だから、ただ腹を振って、この世界からの脱出を図ろう!

これだけを読むとアホすぎて辛いぐらいですが、
でも、ええじゃないかのお伊勢参りも、結局、同じような心情なのかもと思いました。
だって、何にも考えずに、ただ狂乱して踊り狂いながらお伊勢さんに向かうだけ・・・・・
信仰の対象が昔からある神様なのか、新しく起こってきた教祖なのかが違うだけで、
民衆がやってることは腹ふりと本質部分は何にも変わらないですよね。

黒和藩内の家老たち重臣の派閥争いやら、
正論しか通じないバカ藩主にどう話をつけるかとか、
緊張感のない末端の部下たちをどう統率するかとか、
会話のやり取りはくだらない馬鹿話ですが、そこでそれぞれの登場人物が
何をたくらみ、何に気を使い、何を苦悩しているのか考えると、
人間社会のクダラナさが凝縮されていて滑稽です。

過去に読んだ町田作品に比べると、「なんだこの作品は!?」という衝撃は
多少薄まってしまった感じがありますが、正直、よくこれを映画化したなぁと
そういう感嘆は覚える作品でした。




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『人生を救え!』
- 2017/10/15(Sun) -
町田康、いしいしんじ 『人生を救え!』(角川文庫)、読了。

前半が町田康氏による読者の人生相談、後半が対談となっています。

パンクな町田康氏の読者の悩み事とは、やっぱりパンクなんだろうなと
期待して読み始めたのに、最初の相談事が
「セレブ一家の彼との身分違いが気になります」。

なにこの生臭くて青臭い相談は!(怒)
どうも、読者による人生相談は、
相談内容が面白くないことが多くて困ります。

単なるまじめな相談なら、新聞紙面で行わずに、周囲の人に相談しなさいよ
と言いたくなります。
紙面で行う以上は、相談ごとであっても著者の作風を考えて
エンタメ性を意識してほしいものです。

西原女史の読者さんなんかは、
自分は西原女史の作品の登場人物であるときちんと認識して
エンタメ性をもった質問を投げてくるので、読み甲斐があります。
そのレベルに至るまでには、時間がかかったようにも思いますが)

唯一面白かった相談事項は、
「うちのテレビが壊れました。3か月待っても誰もテレビをくれません」というもの。
これぐらいパンチのある相談をしてほしいものです。

で、後半の対談になるわけですが、
浅草、大手町、お台場などの場所を散歩しながら、
町田氏といしい氏が思うままにおしゃべりするというもの。

町の様子や、現れる人々を見ながら会話は進みますが、
時々、人生相談の内容が話題になることも。
人間は何を悩んでいるのか、それを、市井の様子を眺めながら語るのです。

あぁ、前半は、このための材料提供だったんだなと納得。
ちょっと材料の部分が長すぎる気もしますが、
後半で、良いネタになっていました。
人間のダメさを分析するという感じで。

そして、いしいしんじ氏は、らもさんとの対談以来ですが、
インテリなのにどこかネジが飛んでる感じが面白いです。
リクルートのイメージ部出身って、一体どんな経歴なんだ(笑)。


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『くっすん大黒』
- 2011/06/26(Sun) -
町田康 『くっすん大黒』(文春文庫)、読了。

今まで読んだ町田作品で、最も面白かったです。

現実性のあるストーリーが展開され、
しかし、主人公の思考はどこか的外れで、
そのバランスが良かったです。

そして、その理性と不条理のバランスをとっているのが
大黒様の置物だという設定が、またまた不思議な世界観を醸し出しています。

芥川賞の審査員の面々には、
『きれぎれ』のほうが評価が高かったようですが、
私は、あそこまで行ってしまうと、ちょっとついていけなくなってしまいます。
というわけで、いつもながら、「芥川賞は苦手だなぁ・・・」という感想に落ち着きました。


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『きれぎれ』
- 2011/05/01(Sun) -
町田康 『きれぎれ』(文春文庫)、通読。

町田作品2つ目ですが、
本作は、面白さよりも読みにくさの方が気になりました。

なんでだろ?
作品のもつ世界観は、同じような印象なのに。

ちょっとストーリーを追いかけにくかった気がしました。


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『夫婦茶碗』
- 2011/01/17(Mon) -
町田康 『夫婦茶碗』(新潮文庫)、読了。

どんな作家さんかよく知らなかったのですが、
時々、本読みさんのBlogでお名前を見かけるので、挑戦してみました。

2本収録されているのですが、
最初の「夫婦茶碗」で、ぐいぐい世界に引き込まれてしまいました。
「なんなんだ、この、とめどない独り語りは~!?」って感じで。

変に文語体な口調と、でも時々現れる現代の風物とに、
なんだか、今風の落語家さんがアレンジした古典落語のような趣を感じてしまいました。
きっと独り語りという枠組みもあっての印象だと思いますが。

本来は、主人公の空想の世界を楽しむのが王道かと思うのですが、
私は、夫婦2人の間で交わされる、空疎なのか似た者夫婦なのかよくわからない
不思議な会話の世界に引き込まれました。

一方、もう一本の「人間の屑」は、出だしのグダグダさに期待値が上がったのですが、
展開にあまり新鮮味を感じられず中盤がダレたような印象です。

解説は筒井康隆が書いていますが、
私には、町田康の描く世界には生活臭が充満している感じがして、
ちょっと筒井作品とは違うかな・・・と思います。
ま、そのあたりの見極めのためにも、他の作品も読んでみたいですね。


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