『奇跡を起こした村のはなし』
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- 2012/02/09(Thu) -
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吉岡忍 『奇跡を起こした村のはなし』(ちくまプリマー新書)、読了。
著者の名前で買ってきた一冊。 タイトルだけ見て買ったので、 つまものを売り出している「㈱いろどり」の話とかかなぁ? と、勝手に想像していました。 ・・・・・・が、雪深い山村のお話でした。 新潟県黒川村では、終戦から10年経ったときに 31歳で村長になった伊藤孝二郎が、48年という長きにわたって村政を執り、 村の過疎化を防ぐどころか、村営の観光事業を発展させ、 スキー場やホテル、レストラン、牧場までを村で経営してしまうという 奇跡を起こし続けてきたというお話。 最初は、アイデアマンであり、すさまじい馬力をもった伊藤村長という人物の 傑出した能力のお話のように感じて、例えば、ユニクロの柳井会長のような 人物像を頭に描きながら読んでいました。 ところが、最初に取り組んだスキー場経営が成功したあたりから、 次第に話の中に、村役場の公務員さんたちの姿が登場してくるようになり、 彼らが海外留学などを経験して戻ってきてからは、 まさに彼らが村長の右腕となって、新たな事業に次々と取り組んでいきます。 このあたりが、そこらへんの成功した創業者のお話とは違うところで、 まさに、村全体で奇跡を起こしたと言える取り組み方なのです、 村長の巻き込む力も凄まじければ、 村役場側の、村長のアイデアを何とか実現しようという執念も凄まじい。 まさに、村の発展の両輪となっています。 村役場の人たちの働きぶりは毎日深夜まで及んでいたようで、 次々と降ってくる無理難題に取り組むことで精一杯の日々だったと思いますが、 それでも、若手の力を信じて、ここまで期待して任せてくれるトップがいれば、 自ずとやる気が湧いてくるでしょうね。 うらやましい。 これだけの実行力と求心力のある村長が、50年近くも村政を執ってきたという 一種異様な状況下でこそ、起きうる奇跡なのかもしれませんが、 それでも、彼らのガッツには、いろいろと学ぶべきものがあると感じました。
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『教師の休日』
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- 2011/06/18(Sat) -
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吉岡忍 『教師の休日』(朝日文庫)、読了。
吉岡忍の名前と、教師というテーマの組み合わせで買ってきました。 著者の若い頃の話などが出てくるので、 一体どんな出自の人なんだろうと思い、読み終わってからwikiで調べたら、 べ平連などの活動をしていた人なんですね。 ちょっと印象が変わるとともに、 本作の内容からすると、なるほどなぁと思うくだりもあり。 若気の至りということで振り返っている部分もあるので、 今の著者の立場は、もっと視野が広がっているのだと感じたのですが、 やはり、当時の時代背景やその世代のもつ空気のようなものが感じられる 言論がところどころに登場し、私の価値観とは合わないなぁ・・・と思うこともしばしば。 ただ、登場する先生の中には、 学校という環境や、社会、世間について、面白い分析をしている方もいて、 音楽教師や夜学の教師の言葉には、重みと深みを感じました。 インタビューの時期が、かなり古い時代なので、 もし、今の教師たちに対して、著者が同じような取材を行ったら、 いったいどんな作品が出来上がるのだろうかと、気になりました。
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『日本人ごっこ』
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- 2007/07/08(Sun) -
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吉岡忍『日本人ごっこ』(文春文庫)、読了。
日本大使の娘と名乗って 多くのタイ人を騙した14歳のタイの少女を追いかけるレポ。 本作の本質は、 「アジアに浸透した日本文化とは何か」というような 社会文化論的な部分にあるのでしょうが、 なにしろ、舞台設定が「偽日本人のタイ少女を探す」という なんとも突飛な話だったので、読んでいて楽しめました。 最後は、思いの外あっけない展開でしたが、 この事件をタイ社会がどう受け止めているかが感じられて、 ホッとした思いにかられました。
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『散るアメリカ』
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- 2005/09/10(Sat) -
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吉岡忍『散るアメリカ』(中公文庫)、読了。
テーマは興味深いものだったはずなのに、 なぜか内容が頭に入ってこなかった。 読んでいて、目が文字の上を滑っている感じ。 著者の文章スタイルが合わなかったのか? 取材の対象を突き放して客観的に描くのではなく、 取材で受けた感覚や感情をそのまま土台にして 文章をつないでいっているため、 自分には慣れることができなかったのかもしれない。
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