『紙婚式』
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- 2016/11/30(Wed) -
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山本文緒 『紙婚式』(角川文庫)、読了。
結婚をめぐる様々なカップルの形を描いた短編集。 そこらへんに居そうな倦怠期の夫婦の姿もあれば、 かなり歪んだ夫婦の形もあり、 でも、それぞれに、なるほどなぁ・・・と思わせる背景や経緯があって、 すんなり頭に入ってくる物語たちでした。 自分が結婚してたら、きっと凄く共感できる人たちが 登場人物たちのどこかに出てくるんだろうなとも思いました。 それぞれのお話を締めるための最後の三行ぐらいが どれも、しっかりとした締め括りの重みをもっていて、 上手いなと感じました。
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『パイナップルの彼方』
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- 2016/08/18(Thu) -
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山本文緒 『パイナップルの彼方』(角川文庫)、読了。
新書関連が続いたので、久々に小説をば。 ジュニア向け作品を書いていた著者による 最初の一般文芸ということですが、面白かったです! 23歳、信金勤務の独身女子、親元を離れて一人暮らし、 彼氏はいるけど結婚はまだ先で良い・・・・・・ こんな主人公の身の回りに起きる出来事をつづった小説なのですが、 主人公のモノの考え方が私に近くて、親近感を持って読みながらも、 でも、このまま行くとフン詰まるんだろうな・・・・・と危惧している通りの展開で、 我が事のように捉えてしまいました。 多方面に意識を配って、不用意なところに足を踏み入れないように、 面倒な人間関係に巻き込まれないように細心の注意を払っているつもりでも、 ちょっとしたことから崩れてしまい、一気に大変な事態に陥ってしまう・・・・。 私は、他人と一定の距離を取りたがる性質のため、 この主人公の気の配りようというか、関心を持たないようにするための注意が、 非常に良く分かります。 そして、その距離を取る方策が失敗した時の 恐ろしい展開について、いつも想像して不安な気持ちを携えてます。 幸い、今まで、大崩れしたことがないのですが、 かと言って、これから本作のような大崩れを体験しないとも限らないわけで。 本作は、いろいろ苦労をしつつも 最後はみんな落ち着くところに収まったというか、 ハッピーエンドな感じでしたが、 世の中、そう上手くはいかないわよねーという怖さがあり、 こういう等身大の小説を読むと、ドキドキしてしまいます。 それぐらい、身につまされる作品でした。
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『チェリーブラッサム』
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- 2016/05/21(Sat) -
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山本文緒 『チェリーブラッサム』(角川文庫)、読了。
先日読んだ『ココナッツ』の前編です。 読む順番を間違えました。 『ココナッツ』でも感じましたが、 軽いジュニア小説という感じで、文緒節を味わうことができず 物足りない読書となってしまいました。 事件自体も、真相は拍子抜けだし、 家族の物語としても、浅いかなという印象です。
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『みんないってしまう』
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- 2016/05/14(Sat) -
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山本文緒 『みんないってしまう』(角川文庫)、読了。
前回の山本文緒作品がなんだかイマイチだったので、 仕切り直しの短編集です。 大切な何かを喪うお話が12編。 そういうときって、やっぱり心のバランスが崩れていて、 何が大切なのか、きちんと判断できてないということなのでしょう。 通常なら、そういう精神状態の主人公を見て、 「馬鹿だなぁ」と突き放してしまいがちなのですが、 本作は、なぜか納得してしまう展開が多かったです。 客観的にみると、変な行動をとっているのですが、どこか共感できると言いますか。 人間、いつも合理的に動けるわけではないし、 どこか非合理な判断に惹かれてしまうときがあるのでしょうか。 変なことを、「そういうこともありそう・・・・」と思わせてしまうのは、 やはり作家の腕なのでしょうね。 仕切り直しには良い作品でした。
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『ココナッツ』
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- 2016/05/06(Fri) -
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山本文緒 『ココナッツ』(角川文庫)、読了。
最近、BOOKOFFで、山本文緒作品を大量に仕入れてきました。 というわけで、早速、「青春小説」と裏表紙に書かれたものを読んでみたのですが・・・・。 うーん、これは青春小説ではなく、 日常ミステリを扱ったジュニア小説という感じでしょうか。 しかも、他の作品の続編とのことで、 きちんと調べずに読んでしまったことを反省。 山本文緒は人間の嫌な部分を丹念に描く作家さんだと思っているので、 その期待値と本作の軽さのギャップに ついていけませんでした・・・・。
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『きっと君は泣く』
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- 2015/12/27(Sun) -
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山本文緒 『きっと君は泣く』(角川文庫)、読了。
山本文緒の世界観、畏怖を覚えながら、好きだと答えます。 自分の美貌に自身のある主人公。 母は地味でつまらない女、父は事業家だが浮気性でダメな男、その2人を蔑む主人公。 祖母は妾として人生を送り、主人公はその矍鑠とした姿に憧れる・・・・。 この人間関係の設定だけで、かなり読ませてくれる内容になっているのに、 中盤以降、一気に新展開が押し寄せ、勝気な主人公はぶちのめされる・・・・。 この主人公、かなり人生なめてる感じの女性なのですが、 不思議と私は嫌な印象を持ちませんでした。 むしろ、その孤独さに共感を覚えてしまうほど。 外に向かって刺々しいか否かを別にしてしまえば、 この主人公のように世間を突き放して無関心に眺めている自分や、 他人を蔑んでいる自分、自分の将来を理由もなく肯定している自分がいます。 そんな境地で読み進んでいたら、 主人公が身近な人に、「あなたに足りないのは想像力だ」と叱られたシーンにぶつかり、 自分自身、ギクッとしてしまいました。 私も、自分の将来について計画を立てるのは好きですが、他人の動きを想定して想像するのは苦手です。 自分の行動のみを考えてしまいがちです。 他人がどう思うか、他人がどう反応するか、そういうことを考えるのが面倒だと思ってしまいます。 また、どれだけ考えても分からないからムダだと、最初から考えないようにしてしまっています。 そんな自分を、この作品の登場人物に、ズバリと指摘された心持ちになりました。 やっぱり、山本文緒の世界観はエグイです。 主人公を、一回どーんと谷底に突き落とすような展開を作るので、 主人公に共感していると、自分自身もどーんと谷底に突き落とされてしまいます。 それでも、次の作品を読みたくなってしまうのは、 著者の力量のせいなのか、なんとかエンディングで光が見出せるような作品に仕上がっているからなのか。 いろいろ考えてしまう読書でした。
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『アカペラ』
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- 2014/08/11(Mon) -
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山本文緒 『アカペラ』(新潮文庫)、読了。
昨日、一昨日と、中小企業診断士試験を受けてまいりました。 とりあえず、ひと段落ということで、しばらく控えていた小説読みを再開! まずはリハビリがてら軽そうなものから・・・・・ と思いきや、歪んだ家族のお話3つで、真剣に読み込んじゃいました。 明らかに、通常の家族のあり方と違っているのに、 お互いに踏み込み合うことなく、冷たいほどの距離感を置いて接しています。 そんな状態を、異常と思わず(もしくは多少は思っても)、これが我が家の姿と受け入れる主人公。 だけど、そんな違和感満載の思考回路&行動様式を、 この家族に育てられた、この性格の主人公なら、あり得るな・・・・・と思わせてしまうのは 著者の力量だと思います。 頭で分かっていても、行動に移さなければ、それは気づいていないのと同じ。 行動から逃げていれば、いつか、とんでもない展開に襲われる。 そのとんでもない展開は、悪いことなのか、結果的に良かったのかは、 受け止める自分次第・・・・・・。 軽快なタッチで会話多めに進んでいくので すらすらと読めてはしまうのですが、描いている問題は深~いお話です。 面白かったです。
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『落花流水』
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- 2013/03/26(Tue) -
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山本文緒 『落花流水』(集英社文庫)、読了。
なんとなくタイトルの語感から美しい話を想像していたのですが、 なんともエグイお話でした(苦笑)。 最初は、日米ハーフの少年と、5歳の日本人の女の子との交流という、 なんとも微笑ましいところからスタートするんですよ。 なのに途中から、「シングルマザー」「祖母の戸籍に入れる」「貧乏」などという なんとも、どよーんとした要素が次々と出てきて、 しかも母親は男を見る目がないという体たらく。 そして、それは娘に受け継がれ・・・・。 またまた因果応報的な業を感じてしまいました。 最近、こんな読書ばっかりで、ちょい憂鬱(苦笑)。 ちょっと仕事がしんどい時期なので、 もう少し爽やかな作品を読みたかったです・・・・。 ただ、最後に登場した「おばあちゃん」は、ぶっ飛んでて格好良かったです。 ここまで突き抜けられたら天才だわ。
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『おひさまのブランケット』
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- 2013/02/09(Sat) -
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山本文緒 『おひさまのブランケット』(集英社文庫)、読了。
木曜日から体がだるく、のどの痛みと咳も。 でも熱が37.2度と中途半端で、会社にも行き、今日も寝ているわけでもなく・・・。 もっとハッキリとした症状なら、諦めもつくのですが・・・。 というわけで、本日は本&映画三昧。 なるべく、体に優しそうな本を・・・ということで、優しそうなタイトルの本作をば。 地方の高校球児と、その幼馴染の彼女、そして彼らを取り巻く人々のお話。 幼馴染という設定に、「お互い好きなのに気持ちが伝えらず・・・」という ウジウジ系かと思いきや、なんともオープンな交際ぶり(笑)。 周囲が公認し、本人たちも大っぴらに仲良し、でもキスはしない・・・。 ちょっと、こっ恥ずかしいカップルです。 でも、2人とも純なところが、なかなか素敵な2人です。 また、2人の友人として周囲にいる、 奏、咲坂、美衣子など、不器用なキャラクターたちも可愛らしいです。 著者は、併録されている処女作の方が気に入っているようですが、 私は、こちらの作品の方が、奈緒子を難しく作り過ぎている気がして、 また周囲の人々も、意味ありげなところが、やり過ぎな印象を受けました。 ま、微熱の体で読むには、ほっこりする作品たちでした。
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『ブルーもしくはブルー』
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- 2012/10/13(Sat) -
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山本文緒 『ブルーもしくはブルー』(角川文庫)、読了。
世の中にはそっくりな人が3人いる。 旅行先で偶然出会ったそっくりな人は、自分のドッペルゲンガーだった・・・。 今の生活に不満を持つ主人公が、ドッペルゲンガーと生活を入れ替えることを思いつく。 この設定自体は、そんなに目新しいものではなくても、 不満を持っていた自分を見つめなおす過程の描写が、 この作家さんらしい、人間の怠惰さを問うような視線が痛くも心地よいです(笑)。 ただ、ストーリー展開は、やや雑な印象を受けました。 そもそもドッペルゲンガーという現象を、すんなりと受け入れすぎだろうと(苦笑)。 不安とか、困惑とか、恐怖とか、そういう感情が先に立つのではないかと思います。 その後の、入れ替わりの提案をすること自体も、受け入れることも、 なんとなく場当たり的な行動に感じてしまいました。 内省的な人間描写は上手いけど、外的な行動への裏付けの描写がやや弱いかな。 蒼子Bが蒼子Aに向かって投げつけた言葉、 スカッとすると同時に、自分も気を付けなければと、戒めになりました。
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