『日本以外全部沈没』
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- 2015/08/09(Sun) -
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筒井康隆 『日本以外全部沈没』(角川文庫)、読了。
表題作が有名なので、ワクワクしながら読み始めたら、 なんと以前にも読んでました(苦笑)。 読んだことを思い出せただけましですかね・・・・・。 「農協、月へ行く」も同じ本に収録されていました。 というわけで、既読感いっぱいだったのですが、 宇宙人が大阪の大衆酒場に来てしまうという「ヒノマル酒場」や、 アメリカ発の黒人女性大統領が登場する「新宿祭」などが面白かったです。 政治家に向けて毒を吐くモノ書きはたくさん居ますが、 マスコミに向けて実名が類推できるパロディ名を使ってボロクソに書くのは 実はなかなか勇気が要ることですよね。 ま、著者は断筆宣言までやった人ですから、 その思いの強さはずば抜けてますわね。 暑い夏に読むには、こういうハチャメチャな作品も良いですね。
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『文学部唯野教授』
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- 2013/12/27(Fri) -
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筒井康隆 『文学部唯野教授』(岩波現代文庫)、読了。
ようやく100円で見つけることが出来ました。 大学における教授たちや、その下に控える人々の姿を スプラッタ的に揶揄したかと思えば、 生き方が軽すぎる唯野教授の「文芸批評論」の講座は超濃厚! いろんな楽しみ方が出来る作品です。 社会学を学んだ人間としては、 「文芸批評論」の特に後半における現象学や記号論、構造主義のあたりを 非常に興味深く読みました。 この講義のシーンは、どれをとっても非常に分かりやすい解説になってます。 しかも面白い! 一方の、大学機構のお話は、 教授への出世競争であったり、教授会の議論のバカバカしさであったり、 教授の人間性の動物園的恐ろしさであったり、 いろんな角度から極端なキャラクター達に乗せて見せてくれます。 象牙の塔の人たちって、実際もこんな感じで浮世離れしてるのかもしれませんね。 特に、文学部なんていう、実社会と接点のなさそうな学部は・・・。 自分にもう少し社会学や哲学の知識を付けてから再読すると 一層面白いんだろうなと思い、まだまだな知識が残念です。
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『私説博物誌』
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- 2011/12/17(Sat) -
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筒井康隆 『私説博物誌』(新潮文庫)、読了。
筒井先生による、動植物の解説本。 いろんな動植物が紹介されていく中で、 SF世界の空想のものまで紹介されるのが筒井作品ならでは。 それ以外にも、動植物の話から、脱線しまくりで展開される創作世界も 堪能できました~。 筒井先生のお父様は、動物園の園長さんだったんですね。 そこから、自然科学への興味関心が沸き起こり、SF世界に傾倒していく・・・・・ という展開に納得です。 父母の影響というものは絶大だなぁと感じさせてくれる一冊でした。
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『科学の終焉』
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- 2011/11/26(Sat) -
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ジョン・ホーガン 『科学の終焉』(徳間書店)、読了。
ずっと、BOOK OFF で気になっていた一冊。 しかし、いつまで待っても1,000円を割り込まないので、 なんとなく放置してしまっていました。 今回、神田古本まつりで500円で見つけたので、早速、購入~。 平たく言うと、「科学の世界で見つけるべき事象は、そのうち全て見つけ終わってしまい、、 収穫逓減の時期に入ってしまう」という、悲観的な内容です。 このテーマを追いかけて、様々な科学者のもとに著者がインタビューに行くのですが、 単なるインタビュー録ではなく、そのインタビューを通して著者が何を思ったかが記録されています。 従って、インタビュー相手の主義思想については、ちょっと分かりにくいです。 というか、科学の素人には、その人の業績自体が良く分からない(苦笑)。 ただ、科学者も、科学そのものについて、このような質問を面と向かってされると、 様々な答えが返ってくるのだというところが、興味深かったです。 それも、自信を持った回答から、曖昧な回答まで程度も様々。 私なりの感想としては、科学の舞台が私たちの日常生活から どんどん遠くなっている(ミクロの世界とか、深海とか、宇宙の果てとか)ことで、 科学そのものが哲学と接近してきているように思いました。 つまり、最新の科学理論と、神とは何かというような哲学論との 境目が曖昧になってきているのではないかと思うのです。 検証も反証も難しいようなテーマは、結局、結論が出ないんですよね~。 本作では、それは、すでに科学ではないという扱いになっていましたが、 主張している本人は、科学か科学でないかということは関係なく、 自説が正しいことを主張し続けるだけですから、 いわゆる「科学」という分野が衰退することは無いと思います。むしろ活発化!? というわけで、読んでいるうちに、「科学の終焉」ということ自体は 科学分野の隆盛に、あまり関係がないのではないかと思い至りました(苦笑)。 むしろ、この本の中でレッシャーが指摘しているように、 科学におけるコストの爆発的な膨張のせいで、 費用対効果が急激に落ち込むことのマイナス影響のほうが気になりました。 私たちの日常生活を便利にしてくれる応用科学は、 やはり基礎科学の土台がしっかりしている国において発達するのだと思っているのですが、 では、その基礎科学において、どのジャンルに積極的に取り組むのかというのは、 すべて国や大学や大企業の意向にかかっているのです。 つまり、池田清彦氏の言う、「好コントロール装置」にしか扱えないジャンルになってしまっています。 特に、スーパーカミオカンデみたいな施設を作るのは、 相応の国力を持った国家にしか出来ないことだと思います。 となると、米国、日本などの科学大国が、何にどれだけ予算を投じようとするのかが大事であり、 その点において、最近の日本は、非常に頼りないなぁ・・・・・という暗い思いに。 基礎研究そのものでは、儲けは出ないかもしれませんが、 基礎研究から遠ざかると、必然的に応用科学の力も落ちるように思われてなりません。 分かりやすいところでは、最新の研究成果を早く適切に必要量を仕入れるという事などに 支障が出る気がします。 また、例えば、原子力に関する基礎研究などは、今回の震災と事故を受けて、 今後、国や電力会社の予算手当ては、大きく様変わりするでしょうね。 優秀な若い研究者も、この分野に新たに飛び込む人は少なくなりそうですし。 ヒト(研究者)、カネ(研究予算)、モノ(発電所や研究施設)、全て縮小となりそうです。 原子力発電を強く推すつもりはありませんが、 原子力研究の衰退は、極端な話、原発事故の対策を考える科学の衰退にもなります。 また、原子力発電の世界をリードする国が日本から中国などになったら、 それはそれで、別の、政治的なリスクを日本は抱えてしまうのではないかと心配です。 一つの事故という側面だけではなく、もっと将来も見据えた、多面的な検討の結果、 廃止か、縮小か、継続か、推進か、国家として結論を出して欲しいと思います。 最先端の科学の研究が、コスト的に、好コントロール装置のもとでしか 機能しないものになっているので、科学は政治とセットで考えるべきだと この本を読んで、改めて思うようになりました。
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『短編小説講義』
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- 2011/11/11(Fri) -
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筒井康隆 『短編小説講義』(岩波新書)、読了。
筒井康隆×岩波新書という違和感に惹かれて買ってきました(苦笑)。 が、意外にもと言うか、やはり岩波と言うべきか、 非常にオーソドックスに真面目な内容でした。 短編の名作といわれているものをテーマに取り上げ、 それぞれ、どここが素晴らしいのかを解説しているのですが、 まず、取り上げられている短編が、岩波文庫からの出典ということで、 当然、古典の名作ぞろい。 そして、筒井節はどこに行ったのかというぐらい きちんと解説がなされています。 しかも、短編小説の展開やテクニックについて、 原文を参照しながら解説しているので、ほぼ話の筋が分かってしまいます。 従って、「原文を読んでみよう」という気持ちにブレーキがかかります。 だって結末分かっちゃったもんね~。 最後は、筒井康隆が解説するんだからということで、 スラップスティック作品を取り上げていますが、 やはり岩波収録作、話の展開がマイルドです。 短編作品として、一番面白そうだと思ったのは、 アンブロウズ・ビアスの「アウル・クリーク橋の一事件」です。 でも、肝心要の結末を知ってしまったら、改めて読む気持ちも萎えるなぁ・・・。
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『虚航船団の逆襲』
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- 2010/08/07(Sat) -
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筒井康隆 『虚航船団の逆襲』(中公文庫)、読了。
読み始めたら、エッセイでした。 「なんで筒井康隆なのに、小説じゃなくてエッセイを買っちゃったんだろう?」と疑問。 ちゃんと、「買いたい本リスト」に載ってたのを確認して、買ってきたのに・・・。 と思っていたら、最後の章「虚航船団の逆襲」で納得。 本作は、『虚航船団』という小説を発表した後に、いろいろ書評で言われたことに 反論しようという主旨のエッセイというか、主張の場だったのです・・・・・。 そして、「買いたい本リスト」を再度確かめたら、 ちゃーんと「虚航船団」と書いてありました・・・トホホ。 間違えて買ってきちゃったよぉ~。 100円だからって、気を抜いて買い物しちゃぁ、いけませんね。 でも、『虚航船団』が面白そうだということは、わかりました!
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『朝のガスパール』
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- 2009/04/01(Wed) -
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筒井康隆 『朝のガスパール』(新潮文庫)、読了。
読者の意見でストーリーが変わる?? 新しい新聞小説の登場です。 経営者の間で流行っているRPGゲームという題材だけでも 結構新鮮なものを感じたのですが、 突如として挿入される作家と編集担当者の会話 そして読者からのお便りコーナー。 こんなに読者に対して挑戦的な小説は初めてです。 どこまでホントのやりとりだったのかは解説を読むまで半信半疑だったので とりあえず、全ては筒井康隆の自作自演という理解で読んだのですが それでもやっぱりこの物言いは読者に対して挑戦的で、 読んでいて「よくぞ言った!!」と喝采を送ってしまいました。 でも、一番の挑戦は、 この内容を天下の朝日新聞様に掲載させたことでしょうね。 筒井康隆、あっぱれ。 あと、「時田くん」に気付けなかった自分が残念でなりませんでした。
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『旅のラゴス』
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- 2008/09/20(Sat) -
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筒井康隆 『旅のラゴス』(徳間文庫)、読了。
筒井節炸裂のSFかと思いきや、 正統派のファンタジー小説で、びっくり。 とても面白かったです。 ラゴスが旅の間に出会う人々との交流。 別れのシーンはいつも悲しいものです。 そして、旅の過程で少しづつ明らかになっていく この星の歴史とラゴスの旅の目的。 なんだか、ほんとうにこのような世界がありそうで、 畏怖を感じてしまいました。 彼らなりに幸せな生活を営んできたと思うのですが、 ラゴスが歴史の壁を破ったことで、 また悲惨な未来が巻き起こりそうな気がします。 そして、北の果てへと旅立ったラゴス。 急激な世界の進歩を見ずに済んだのは、 ある意味幸せかもしれません。
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『驚愕の曠野』
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- 2008/03/29(Sat) -
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筒井康隆 『驚愕の曠野』(河出書房新社)、読了。
う~ん、難しかったです。 設定が、なんとなく椎名誠を連想させたり・・・・・。 筒井さんも、椎名さんも「痒み」で恐怖を覚えさせるの、うまいですよね。
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