fc2ブログ
『最高のオバハン 中島ハルコはまだ懲りてない!』
- 2023/05/17(Wed) -
林真理子 『最高のオバハン 中島ハルコはまだ懲りてない!』(文春文庫)、読了。

中島ハルコシリーズ第2弾。

べったりではないけれど、中島ハルコは食事や観劇などの連れに利用し、
主人公は相談事をする相手として利用する。
お互いにうまく相手の得意分野を見ているサッパリした関係なので
女性の会話が続く作品ですが、読んでいて重たくないので読みやすいです。
そして、一つ一つの話が短めなので、サクサク読めます。

ハルコの特異なキャラクターを活かしていかないといけないので、
持ち込まれた相談事への回答は、いわゆる一般的な穏やか路線ではなく、
相談者がハッとしたり愕然としたりするようなものを用意せねばならず、
かといって、あまりにトンデモな回答では読んでいて面白くないので、
このバランスを取りながら短い文章の中で説得力もたせて面白がらせてって、
やっぱり力量のある作家さんだなと、この軽めの作品でも実感。

主人公の結婚問題では、なんでそんなにイジイジして前に進まないんだろうと
主人公とそのお相手の慎重さに若干イライラしてしまいましたが、
金持ちの息子、しかも妾の子となると、なかなか家の事情というものが難しいでしょうね。
なんのしがらみもない貧乏人の家に生まれてラッキーだわと思ってしまいました(爆)。




にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  林真理子 | CM(0) | TB(0) | ▲ top
『最高のオバハン 中島ハルコの恋愛相談室』
- 2022/03/22(Tue) -
林真理子 『最高のオバハン 中島ハルコの恋愛相談室』(文春文庫)、読了。

海外旅行中にホテルのロビーで出会ったオバハン・中島ハルコ。
フードライターとしての自費取材に来ていた主人公は、
オバハンの厚かましさに絡めとられて、ホテルそばでのカフェで朝食を一緒に取ることに。

そこから、どんどんオバハンのペースにはまり、
なぜか自分の人生相談をしてしまい、言われたとおりに行動したら、
見事解決・・・・・というよりも新たな人生が開いてきた感じ。

そんなことが続き、主人公はハルコと日本でも付き合うようになり、
自分の悩みを持ち込んだり、他人がハルコに持ち込む悩みに対する
ハルコの回答に驚愕したり。

オバハンって、どんなに極端に描写しても、
「こんな人、どこかに居そう・・・・」という感じになりますよね(苦笑)。
ハルコも、相当自信家だし高圧的だけど、どこかにこんなオバハン居そう・・・・・。
そして、毒舌の中に人生の本質を突いた信念が含まれていて、
それを秘密にせずにみんなにオープンに共有してくれる気前の良さ、
そういうオバハンの良いところ全開の人というのも、リアリティがあります。

主人公も、そんなオバハンにべったりせず、
取材先に交渉したいときとか、必要な時だけオバハンを頼り、
そして見返りに取材先の高級レストランでの食事をおごるという対応で済ませるという
からっとした人間関係が気持ちよいと思いました。
女の人のグループにありがちな、いつでもどこでもベッタリという人間関係が
私は苦手なので、ハルコのスタンスにも、主人公の姿勢にも共感できました。

こんなオバハン、私も、年に1度か2度しか顔を合わせない同業者仲間の中に2人ほど居て、
たまーに会って情報交換とか、こちらの愚痴を聞いてもらってバッサリ自分を斬ってもらったりすると
結構、気持ちがすっきりしてリセットできます。

経験と人間関係をもたらしてくれるオバハンは、最高ですね。




にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  林真理子 | CM(0) | TB(0) | ▲ top
『下流の宴』
- 2017/02/28(Tue) -
林真理子 『下流の宴』(文春文庫)、読了。

医者の娘だった頃は上流家庭にいたはずが、
父が急死し家計は一気に苦しく・・・・しかし早稲田卒の夫を見つけて
中の上ぐらいの家庭を築いたはずが、
息子は高校中退、プー太郎になり、さらには同棲まで。
ここでついに、下流に転落か!?

直球のタイトル、そして物語の導入部分も
いきなり本題に入る感じで、福原家が直面する転落問題が描かれていきます。

息子やその同棲相手を観察する母親の目。
もうね、息子に対する不安の山の中に僅かな希望を探し出そうとする目、
そして、同棲相手がどれだけ不適切な女なのか減点しまくろうとする目、
どちらも瞬間瞬間でぴしっと描かれてて、サスガ真理子女史。

一方で、上流か下流かを判断する指標が
途中から学歴オンリーになってきているような気がして、
「他にもいろいろ指標はあると思うけど・・・・」と感じる一方で、
「でも、結局は、学歴に全てが左右されていくのかなぁ・・・・」とも思ってみたり。

何だかんだ言って、自分も、卒業大学の人脈が一番使えてたりしますし、
初めてお目にかかります・・・という人を最終学歴でとりあえず分類しちゃったりしますもの。

中盤から、同棲相手が確変を起こし始めちゃうのですが(笑)、
この娘、母親の教育方針をきちんと自分の頭で理解してるから、
地頭力はありますよね。
そこに、お勉強の目的を得て、技術を身に付けたら、そりゃ伸びますわな。
まるでどこかのKO大学生のように。

で、その時に、息子が一体どういう行動に出るかが肝だと思ったのですが、
いやはや、下流らしさ爆発の価値観と行動を見せつけてくれます。
内田先生の言う「下流思考」まさにそのものって感じです。

反対に、この息子の姉は、上昇志向が強いというか、
玉の輿狙いギラギラの生活を送っていますが、
本質がない上辺だけの付き合いでは、
家庭生活を上手く送っていくことは難しいようで。

この姉の旦那さん、外資の証券に勤めてますが、
出身は三重県という設定。
男がひ弱で、女(旦那のお母さん)に地力があるというのは
三重県の県民性かもしれませんね。

大学受験の話以外は、変に流れをドラマティックにせずに、
こういうタイプの人は、こういう人生を送るよね・・・・・という
大方の予想の範囲内に収めて、それでも小説として読ませるというのは
さすが林真理子作品だなと思いました。


下流の宴 (文春文庫)下流の宴 (文春文庫)
林 真理子

文藝春秋 2013-01-04
売り上げランキング : 35395

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  林真理子 | CM(0) | TB(0) | ▲ top
『葡萄が目にしみる』
- 2011/04/02(Sat) -
林真理子 『葡萄が目にしみる』(角川文庫)、読了。

傑作青春小説ということで読んでみたのですが、
どうも、林真理子作品は合わないのかなぁ・・・と思い始めてしまいました。

田舎の中学・高校を舞台に、内気な女の子が世界に目を広げていく過程を
描いていきますが、どうにも純粋さが気になってしまって・・・(苦笑)。

人間が持つ悪意(無意識なものも含めて)に感覚的には気付いていながら、
そこに蓋をするような無関心さを装う姿に、
少しイライラしてしまうところがあります。

むしろ、山田詠美や江國香織のように、
悪意に対して悪意で挑むぐらいの、ドロドロとした人間模様が展開されるほうが
私は好きなようです。
現実は、それでは疲れてしまって仕方がないでしょうけれど(苦笑)。

というわけで、ちょっとキレイ過ぎるような印象で終わってしまいました。


葡萄が目にしみる (角川文庫)葡萄が目にしみる (角川文庫)
林 真理子

角川書店 1986-03
売り上げランキング : 156737

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


にほんブログ村 本ブログへ
この記事のURL |  林真理子 | CM(0) | TB(0) | ▲ top
『本を読む女』
- 2011/03/18(Fri) -
林真理子 『本を読む女』(新潮文庫)、読了。

林真理子作品は、最初に『星に願いを』を読んだせいか、
ユーモアに溢れる軽めの作品という思い込みがありました。

で、本作も、『本を読む女』というタイトルから、
ちょっと斜に構えたような主人公でも出てくるのかと思っていたら、
思いのほか真面目な内容で、やや拍子抜け。

「読書が何よりも好き」「自由に生きたい」「結婚なんてとんでもない」
大正生まれでこの発想をする女の子は、
トンでる印象を受けますが、ところが彼女は行動が中途半端。
最初は息巻くのですが、ちょっとつまづくと、後は流されてしまうのです。

このつまづきを真面目に描写するので、
読んでいて、結構、鬱々としてしまいました。
あっけらかんと描いてくれれば、もう少し違った印象を受けたかもしれません。

ただ、この主人公の流され方には、
自分の姿が見え隠れするから、鬱々としてしまうのだろうと思います。
何かきっかけを見つければ、易々と環境に妥協してしまう自分。
主人公の生き方を通して、自分を反省してしまいました

一方で、流されながらも、流されっぱなしではなく、
時々、自分の意思を持ち直して、再び前を向こうとする姿勢を持っています。
この踏ん張りは学びたいところです。

ところで、物語の途中で、主人公は仕事で相馬に引っ越します。
あの、福島県の相馬地区です。
読書をしてても、地震の記憶が追いかけてくるのが辛いです。


本を読む女〈1〉 (大活字文庫)本を読む女〈1〉 (大活字文庫)
林 真理子

大活字 2006-10
売り上げランキング : 1514383

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

星に願いを (講談社文庫)星に願いを (講談社文庫)
林 真理子

講談社 1986-09-08
売り上げランキング : 516991

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


にほんブログ村 本ブログへ
この記事のURL |  林真理子 | CM(0) | TB(0) | ▲ top
『20代に読みたい名作』
- 2009/05/12(Tue) -
林真理子 『20代に読みたい名作』(文藝春秋)、読了。

「名作」と謳っているだけあって、
古典や、古典とまではいかなくとも古い作品の紹介が多かったです。

そのため、作品名すら知らないというものはほとんどありませんでした。
ただ、名作と呼ばれているものを全然読んでいないなぁということも
再認識させられました。

個人的には、有吉玉青さんの『身がわり』が紹介されていて感激しました。
この作品は、私に本の魅力を教えてくれた記念すべき作品なのです。

古典を読むとともに、『身がわり』も再読したくなってきちゃいました。


20代に読みたい名作
20代に読みたい名作林 真理子

おすすめ平均
stars20代に「読んで欲しい」名作〜著者の意図を推測すると〜
stars昭和の文学も読もう!
stars20代でなくても・・・
stars思わず書店に駆けて行きたくなるっ!
stars重なる!

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

身がわり―母・有吉佐和子との日日 (新潮文庫)
身がわり―母・有吉佐和子との日日 (新潮文庫)有吉 玉青

新潮社 1992-03
売り上げランキング : 369922

おすすめ平均 star
star有吉佐和子への招待
star愛する困った家族を持つ方必読

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  林真理子 | CM(2) | TB(0) | ▲ top
| メイン |