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『銃とチョコレート』
- 2020/03/14(Sat) -
乙一 『銃とチョコレート』(講談社文庫)、通読。

久々の乙一作品。

裏表紙のあらすじを読むと、大悪党ゴディバと名探偵ロイズの対決に
少年が絡んでいくという冒険小説ということで、明るい少年小説のように見えて、
どこかで、いつものドロドロとした乙一小説に転換していくのだろうなと思ってたら、
最後まで明るい少年小説でした(苦笑)。

もちろん、移民差別の問題とか、暴力の問題とか、いじめの問題とか、
いろいろ人間社会の暗い部分を描いてはいますが
期待したほどには深く突っ込まなかったなという印象です。

様々な登場人物の真の姿が明らかにされていきますが、
個人的にはお母さん凄いな・・・・ってな感じです。
他の登場人物たちの真相は、想定の範囲内でした。

あと、「悪ガキ」という言葉のニュアンスを超えるような暴力性や衝動性を持っているドゥバイヨルは
主人公をいじめる悪役・汚れ役を担っているように見えて、
なぜか格好よく見えるんですよね。
暴力に迷いがないせいか、即断即決の判断力を持ってるように見えちゃうんですよね。
このキャラクターの活かし方は上手いなと思いました。

文章が読みづらいのは、ひらがなが多いせいかと思いますが、
「講談社ミステリーランド」という企画の中の一冊だったんですね。




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『小生物語』
- 2018/12/21(Fri) -
乙一 『小生物語』(幻冬舎文庫)、読了。

乙一さんというと、どうしてもデビュー作のイメージが強くて、
不気味で早熟な青年という像を勝手に作り上げていたのですが、
本作では、ユーモアあふれる人間性が前面に出ています。
(まぁそれも創作かもしれませんが)

自分のHPを作ったことをきっかけに、
そこに日記を書いて公開し始めた著者。
その日記を一冊にまとめたものです。

ただ、日記の体裁は取っていますが、
全く創作のように思えるものや、短編の没ネタのような感じのものもあります。
虚実入り乱れたところが、この人の不思議な作品の感じとマッチしてます。

作品を書いたりゲラを校正したりという仕事の話はほとんど出てこないので
より創作感が強い印象を受けます。

ところで、この日記の前半は愛知県豊川市が舞台なのですが、
豊橋技術科学大学の卒業直後だったようです。
小説家なのに科学技術大学の工学部で学んだというのは面白い経歴ですね。
著者の作品に活かされているのでしょうか。

そして、著者が作ったというHP、今もあるのかしら?と検索してみたら
それっぽいのがありました(笑)。
まさに、インターネットが一般の人たちに広がり始めたころの
自作HPのレベル感そのまんまです。




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『箱庭図書館』
- 2018/06/13(Wed) -
乙一 『箱庭図書館』(集英社文庫)、読了。

久々の乙一作品は、なんだか可愛らしいジャケット。
6つの作品が収録されていますが、
ところどころで、それぞれの作品の関連が語られ、
そして最後の「ホワイト・ステップ」で、見事に昇華!!

いやぁ、これは面白い短編集でした。
独立した作品としても「ホワイト・ステップ」は素晴らしい!

冒頭の「小説家の作り方」。
山里秀太が小説家になったのは、極度の活字中毒の姉の影響なのか、
それとも習作を毎回読んでくれた担任の先生のおかげなのか。
強烈なお姉ちゃんのキャラと、それに圧倒される弟という
微笑ましい展開だったのに、オチが乙一でした(苦笑)。

「コンビニ日和!」は、島中さんのキャラが良かったけど、
お話自体はコント過ぎててイマイチでした。

「青春絶縁体」、こちらも、小山先輩のキャラが秀逸。
ここまで活き活きした毒舌キャラは、なかなかお見掛けしません。
でも、それは文芸部の部室の中だけ。
教室に戻ると状況は一変して・・・・。
この冷酷な感じが乙一作品だと思いました。
でも、主人公、勇気あるなー。さすが、その後、出世するだけのことはあるわ。

「ワンダーランド」、これは、正直、きちんと読み通せなかったです。
電気の通っていない冷蔵庫に女性の死体を詰め込んで放置という
その状況自体があまり想像したくないという生理的嫌悪もありますが、
登場人物たちが、何を思って行動しているのかが共感できませんでした。
私の苦手な、精神がちょっとズレた人の世界。

「王国の旗」は、子供たちが大人に反旗を翻して、自分たちの世界を作ろうとする話。
でも、大々的に反抗するのではなく、夜中に家を忍び出て、夜明けごろには帰るという
隠密裏の行動です。
中学生の反抗物語はリアリティがあって大好きなのですが、
小学生の反抗物語は、やっぱりどこかファンタジーですね。
でも、物語が動いた終盤の彼らの判断は、大人びてて凄いなと思いました。

そしてそして、最後の「ホワイト・ステップ」です。
大雪が積もった正月。一人やることがない主人公が町をぶらぶらしていたら、
雪面に不思議な足跡を発見。
その足跡の持ち主の姿は見えず、どうやらパラレルワールドの住人の様子。
そして、足跡の持ち主と、雪面のメッセージを介した交流が始まる・・・・・。

まず設定が面白いな思ったのですが、
展開していく物語の内容にだんだんと引き込まれていきました。
片方の世界にいるのは大学院生独身彼女ナシの男、
もう片方の世界にいるのは片親だった母を交通事故で無くし祖父母に引き取られた女子高生。
この2人の交流を介して、別世界にいる自分の存在を意識するようになっていきます。
過去の一点において違う判断、違う行動をしたからこそ生じた「今」の違い。
これって、自分の身に置き換えて想像すると、結構、怖いことですよね。
「今の自分」として存在する可能性があった範囲の中で、
まさにこの自分はどこに位置づけられるのだろうかと。

雪が降り積もる日々は限られているわけで、
異世界との交流も、あと少し・・・・・そうなってからの展開が、さらにグッとくるものがあり、
切なくも、前向きになれる終わり方が、素敵でした。

これまでの5つの短編の中で残された謎というか
深く語られないままだったエピソードについても、この作品の中で真相がわかり、
全てが落ち着いていくような感覚になった作品でした。

いやぁ、面白かった!

あとがきで、著者が、これは読者からの小説作品の投稿を、著者が改作するという企画だったと
種明かしがありましたが、そんな企画を全く知らずに読んで、普通に楽しめました。
むしろ、企画のことを先に知らなくてよかったなと。
それを知ったら、技術的な面というか、どこが元ネタでどこが乙一氏の味付けなのか
そっちばっかり気になってただろうなと思います。

普通に読んで、素直に面白い作品でした。


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『GOTH 夜の章』
- 2014/03/09(Sun) -
乙一 『GOTH 夜の章』(角川文庫)、読了。

相変わらず気持ち悪い乙一作品。

何もここまでグロくしなくても・・・・と思いつつも、
グロくなくては乙一らしくないような気もして、
なかなか困った問題です。

正義感とか倫理観とかからは
大きくかけ離れた主人公たちが出てくるのも乙一作品らしさではありますが、
本作は、そちらもかなり際どいキャラクター設定になっております。

読んでいて「やるなぁ」と思う内容だったのですが、
それを「面白かった」と表現してしまうと、
なんだか自分がまずい人間の側にカテゴライズされてしまいそうな怖さがあります。

というわけで、興味深く読みました・・・という感想にとどめておきます。

冷静に読んでいけば、各短編の「肝となるタネ」の部分は想像できるものですが、
あんまり想像したくない気持ち悪さがあり、
目をそらしながら真相に辿り着くという感じ。
乙一は、たまに読むぐらいにとどめておいたほうが、身のためのような気がします。


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『ZOO2』
- 2014/01/19(Sun) -
乙一 『ZOO2』(集英社文庫)、読了。

『ZOO1』
からたいぶ時間が経ってしまいました。
多ジャンルの短編集です。

初っ端の「血液を探せ!」は、ドタバタコメディタッチで、いきなり吃驚させられました。
ただ、悪いほうの意味で・・・。安っぽいコントのようでした。
スプラッタ・コメディというのは、簡単に狙ってできるものではないようです。

3つ目の「Closet」も、文体はまともですが、それぞれの人物達の行動がぎこちなくて、
そこで笑うべきなのでしょうが、私には合いませんでした。

前半で2つ、自分に合わないコメディをぶつけられたので、
正直、ここで作品との距離ができてしまい、最後まで縮まりませんでした。

最後の「落ちる飛行機の中で」も、みんな思考回路がふわふわしてて
やっぱりどこか笑わせにかかっているのだと思うのですが、なんだかフガフガ。

これらコメディ風の作品の間に、ゾクッとさせる人間の悪意を描いた作品が
入ってくるのですが、なんだかアンバランスなように感じてしまい、
作品の世界に入っていけませんでした。

多ジャンルさ、無ジャンルさが、この作家の特徴なのだとは思うのですが、
どうも自分は合いにくいようです。


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『平面いぬ。』
- 2013/03/19(Tue) -
乙一 『平面いぬ。』(集英社文庫)、読了。

著者の作品に対するイメージと、タイトルの語感から
なんとなくホラーちっくな作品を思い浮かべていたのですが、
表題作は、腕に彫った可愛らしい犬の刺青が動き出すというお話。

他の作品も、物語の作り方によってはホラーになりそうな題材でしたが、
どちらかというとファンタジー寄りなテイストに仕上がってました。
「石ノ目」だけは、じとっとした雰囲気でしたが・・・。

「BLUE」も、人間の利己的な部分を描いているのですが、
なんだか温かい雰囲気でのエンディングとなりました。
人間だけでなく、おもちゃのエゴまで出てきて、結構ドロドロしてたんですけどね。

というわけで、何となく、物足りないところも・・・。
もっとガッツリいやーな情景を描いてくるのかと期待していたので。



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『暗いところで待ち合わせ』
- 2012/04/10(Tue) -
乙一 『暗いところで待ち合わせ』(幻冬舎文庫)、読了。

タイトルとカバーデザイン、そして著者のイメージから、
完全にホラーものだと思って読み始めました。

まさかの人間の繋がりを描いた作品(爆)。

普通に読んでたらすんなり楽しめたのかもしれませんが、
思い込みの頭で読んでしまったので、
なんだか最後までしっくりこないままでした。

登場人物たちの切なさを共有する作品なのだと思いますが、
本読みとして、失敗しました。
残念。


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『死にぞこないの青』
- 2011/08/22(Mon) -
乙一 『死にぞこないの青』(幻冬舎文庫)、読了。

今まで読んだホラー系作品の中で、相当ハイレベルなものでした。
(ま、怖がりの私が読むホラーなんて限られていますが・・・・)

大卒新人教師が受け持ったクラスでは、
生徒の人気を維持しようと、先生自らが、一人の生徒をいじめの標的にした・・・・。

この手の作品を読むと、人間の内面の嫌らしさのようなものに恐怖を感じるのですが、
本作では、それ以上に、アオの存在感が恐怖でした。
その身体的特徴の描写が恐ろしくて。

しかし、しかし、もちろん、人間たちが恐ろしいことには変わりが無く。
特に、担任教師がいじめに走る過程の描写がお見事。

最初は、純粋に、生徒や親たちの期待感により人気があった先生が、
熱心に教育を施そうとした結果、生徒たちが距離を置き始め、
それを取り戻そうとした手段が、「いじめの構造の創出」だったというところ。
やっている行動の程度は異常すぎるのですが、でも、その心理的な部分は
読んでいて理解できるものがありました。この辺の説得力が凄いです。

最後、どのような結末に持っていくのか興味深々でしたが、
担任教師にとっては、不安の種をずっと持ち続けるという復讐になっています。
ある意味、死よりも、過酷な復讐なのかもしれません。

ところどころ、小学5年生にしては難しい思考をしているところがあり、
(著者があとがきで書いているような表現の話ではなく、思考内容のこと)
キャラクター設定を加味しても、ちょっと無理があるかなと思いましたが、
全般的には、このような環境に置かれた子供をよく描いていると思いました。

凄い作品です。


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『ZOO1』
- 2011/04/01(Fri) -
乙一 『ZOO1』(集英社文庫)、読了。

さっそく、乙一作品を広げてみました。
映画にもなったし・・・と期待していたのですが、やや空振り感。

グロさとか、嫌らしさとかもあるのですが、
何より、設定を捻り出すのに力を使いすぎて、
物語自体のヤマが平坦になっているように感じます。

ストーリーテリングの力が、少し弱いというか・・・。
「で、何がいいたかったの?」が、あまり伝わってきません。

作品としては、「SO-far」が面白かったです。
起承転結の「転」が、結構、好みな感じでした。
あとは、最後を、しっかりと印象を残す一文で締められれば、
面白い作品として完成していたのではないかと思います。


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『夏と花火と私の死体』
- 2011/03/21(Mon) -
乙一 『夏と花火と私の死体』(集英社文庫)、読了。

物語の視点の置き方が斬新で、一気に読んでしまいました。
なんせ、死体がストーリーテラーなんですから。

子供が子供を嫉妬で殺す。
殺された子供の視点で、殺した子供が自分をどうやって隠すのか
事の顛末を淡々と報告する。

怖ーい!

そして、この作品を16歳という年齢で描いたという作者・・・

怖ーい!

物語の展開は、かなり都合よく進むところがあり、
また、伏線の張り方も、「ここ、伏線ですよ!」と自己主張が強い印象で、
まだ小説書きとしては幼さを感じるところがありましたが、
併録されている「優子」にしても、作品構成が面白く、
他の作品を読んでみたくなる力量を感じさせます。

やっぱり、子供って怖い!と思い起こさせる作品でした。


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